生物学 第3回 すべての生物は細胞から 和田 勝
すべての生物は細胞から 光学顕微鏡と染色法が改良され、さまざまの生物が顕微鏡で観察されました(第1回からの続き)。 その結果、植物でも動物でも細胞という基本単位からできていることがシュライデンとシュバンによって観察され、細胞説が唱えられました。
細胞説 シュライデンは、いろいろな植物を顕微鏡で観察して、植物は細胞という基本構造からできていることを述べます(1838)。 シュバンも、いろいろな動物を顕微鏡で観察して、動物は細胞という基本構造からできていることを述べます (1839)。 細胞説(cell theory)
細胞説 1850年代になって、ヴィルヒョーが、すべての細胞は細胞からのみ生じる、と明確に表明します。 現在ではこれも加えて、細胞説は、 1)すべての生物は細胞から構成されている 2)細胞はすでに存在する細胞からのみ生成される 3)細胞は生命の最小単位である
細胞説に触発されて 細胞説に触発されて、体細胞分裂、減数分裂、染色体の発見など、顕微鏡を使った、細胞の重要性に関する発見が続いていきます。 さらに、メンデルの法則の再発見と結びついて、遺伝子の実体や細胞の形とはたらきの研究が盛んに行われます。
物を拡大する顕微鏡 さて、 肉眼 小さくて観察できない 顕微鏡 というお話をしましたが、現在使われている顕微鏡にはいろいろな種類があります。
顕微鏡の種類 光学顕微鏡 透過型電子顕微鏡 走査型電子顕微鏡
顕微鏡の原理 光線を 使う 電子線を 使う
体の中へ これらの拡大装置を使って、体の中へ入り込んでみましょう。
光学顕微鏡像
光学顕微鏡像
光学顕微鏡像
光学顕微鏡像
光学顕微鏡像
電子顕微鏡像 撮影:川原昌彦・富山医科薬科大学実験実習機器センター 小腸微絨毛の断面 (x10,000)
光学顕微鏡像 膵臓の細胞
電子顕微鏡像
走査型電子顕微鏡の原理 電子線を 使う
走査型電子顕微鏡像 ツツガムシの成虫の走査型電顕像 (x86) 撮影:安達一男・新潟大学医学部第三解剖電顕室
走査型電子顕微鏡像 アリの成虫の頭部 教材としての走査型電子顕微鏡画像集、撮影:阿達 直樹
アリの複眼(x100)
イチモンジセセリの鱗粉
光学顕微鏡で見ると マルバネカスリタテハの鱗粉
光学顕微鏡で見ると 蝶の羽の模様は、鱗粉による点描なのですね。 マヒメアカタテハの鱗粉
いろいろな植物の花粉
顕微鏡像の違い スギの花粉
走査型電子顕微鏡の応用 ラット小腸の血管鋳型の走査型電顕像 撮影:梅沢敦子・北里大学医学部電顕センター
走査型電子顕微鏡の応用 凍結割断法(freeze fracture)
すべての生物は細胞から 1)ヒトは60兆個の細胞からできている 2)これらの細胞には共通した構造が あり、同じ遺伝情報を有している あり、同じ遺伝情報を有している 3)しかしながら、細胞は置かれた場 所に応じて異なる形と機能を示す (分化しているという) 4)細胞によって使われている遺伝情 報が異なるためである
細胞、組織、器官、器官系 器官系 器官 個体 組織 細胞
細胞、組織、器官、器官系 具体例: 心筋細胞からシマウマへ
組織 細胞は、次の4つの基本的な組織を構成します 組織は、形態と機能からさらに分類されます ●上皮組織 (epithelial tissue) ●結合組織 (connective tissue) ●筋組織 (muscle tissue) ●神経組織 (nervous tissue) 組織は、形態と機能からさらに分類されます
上皮組織 (1)上皮組織は、 ●単層扁平上皮 (simple squamous ep.) ●単層立方上皮 (simple cuboidal ep.) ●単層円柱上皮 (simple columner ep.) ●重層扁平上皮 (stratified squamous ep.) ●多列上皮 (pseudostratified ep.)
結合組織 (2)結合組織は、 ●疎性結合組織 (loose con.) ●密繊維性結合組織 (dense con.) ●弾性結合組織 (elastic con.) ●細網結合組織 (reticular con.) ●脂肪組織 (adipose con.) ●軟骨組織 (cartilage con.) ●骨組織 (bone con.) ●血液 (blood)
結合組織 ふつうはコラーゲンなどが 細胞外マトリックス
筋組織 (3)筋組織は、 ●骨格筋 (skeltal muscle) ●心筋 (cardiac muscle) ●平滑筋 (smooth muscle)
神経組織 (4)神経組織は、 ●ニューロン (neuron) ●グリア細胞 (glia cell) それぞれの組織は、組み合わさって器官を構成する
組織から器官へ 上皮組織 結合組織 筋組織 38
器官 組織が組み合わさって器官が構成される。 上皮組織 結合組織 筋組織
器官系 たとえば、消化器官系は 食道 (esophagus)、胃 (stomach)、小腸 (small intestine)、 大腸 (large intestine)、肝臓 (liver)、膵臓 (pancreas)、 胆嚢 (gallbladder) などの器官から構成さています。 小腸はさらに、十二指腸 (duodenum)、空腸 (jejunum)、 回腸 (ileum)よりなり、大腸は、虫垂突起 (vermiform appendix)、盲腸 (cecum)、結腸 (colon)、直腸 (rectum) より構成されています。
消化器官系 1.食道、2.胃 、小腸のうち3.十二指腸、4.空腸と回腸 、大腸のうち5.盲腸、6.虫垂突起、7.結腸、8.直腸、9.肛門 1.食道、2.胃 、小腸のうち3.十二指腸、4.空腸と回腸 、大腸のうち5.盲腸、6.虫垂突起、7.結腸、8.直腸、9.肛門 41
器官系 ●外皮系 (Integmentary system) ●骨格系 (Skeltal system) ●筋系 (Muscular system) ●消化器官系 (Digestive system) ●循環器官系 (Circulatory system) ●呼吸器官系 (Respiratory system) ●泌尿器官系 (Urinary system) ●神経系 (Nervous system) ●内分泌系 (Endocrine system) ●生殖器官系 (Reproductive system)
階層性 外皮系 骨格系 消化器官系
階層性 個体 (organism) 器官系 (organ system) 器官 (organ) 組織 (tissue) 細胞 (cell)
細胞小器官 電子顕微鏡の発明により、細胞内にはさらに構造物が見え、膜系が発達していることが明らかになります。 これらの構造を、細胞小器官 (organella)と呼びます。 45
細胞より下位へ 細胞 細胞小器官 分子 原子
動物細胞の構造
動物細胞の各パーツ 細胞の各パーツが、どのような構造で、どのような働きを担っているか見てゆきましょう。
サイトゾール 細胞小器官が浮かんでいる液体部分をサイトゾール(cytosol)と言います。 49
核(nucleus) ●核膜 ●核小体 ●染色質
細胞分裂と染色体 ●間期 ●後期 ●前期 ●終期 ●中期
ヒトの染色体 22対の常染色体と2本の性染色体
染色体-染色質-DNA ●ヌクレオソーム ●染色体 ●凝縮した染色質 ●DNA 遺伝情報 ●染色質
小胞体 小胞体(endoplasmic reticulum、ER)は、よく発達した膜系。
リボソーム リボソームは、遺伝情報の写しを見ながら、タンパク質を合成してゆく生産ラインのロボットのような役割をします。
小胞体には2種ある リボソームが結合した小胞体を、粗面小胞体(rough ER)といいます。 リボソームが結合していない管状の小胞体を、滑面小胞体(smooth ER)といいます。
ゴルジ装置 ゴルジ装置(Golgi apparatus)は、分泌タンパク質の配送センターのような役割です。
ミトコンドリア ミトコンドリア(mitochondria)は、エネルギー供給装置です。
ミトコンドリア 内膜 膜間腔 基質 外膜 クリステ クリステ
ミトコンドリア ミトコンドリアは、固有のDNAを持っています→過去に寄生した生物だと考えられています。 分裂によって数を増やします。
細胞骨格 細胞の動きや細胞小器官の移動などに関係するタンパク質で、3種類(左から微小繊維、微小管、中間径繊維)あります。
細胞骨格 微小繊維 (actin filament) 微小管 (microtubule)
細胞膜 タンパク質 脂質の二重膜(lipid bilayer)である。
細胞小器官の膜 細胞小器官の膜も、細胞膜と同じように、脂質の二重膜を基本構造として、そこにタンパク質が埋まっています。 64
動物細胞の構造 もう一度まとめておきましょう
サイズの感覚 10倍ずつ拡大
特に重要な細胞小器官は これからのお話に特に関係する細胞小器官は、核、リボソームと粗面小胞体、ゴルジ装置です。 67
細胞小器官の舞台では これらの舞台の上で何が起こっているか、お話はさらに続きます。 待てしばし!