生物学 第3回 すべての生物は細胞から 和田 勝.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
第 2 章 : DNA 研究法 2.2DNA クローニング クローニングベクター 大腸菌以外のベクター ゲノム分子生物学 年 5 月 7 日 担当 : 中東.
Advertisements

生物学 第4回 多様な細胞の形と働きは      タンパク質のおかげ 和田 勝.
生物学 第12回 ヒトの発生について 和田 勝.
細胞の構造について復習しよう 植物細胞と動物細胞を見てみよう どんなちがいがあるかな? すべての生き物の身体は
1
消化器系のしくみと働き.
細胞と多様性の 生物学 第2回 細胞の構造、細胞小器官など 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
特論B 細胞の生物学 第2回 転写 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
生物学基礎 第4回 細胞の構造と機能と      細胞を構成する分子  和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
動物への遺伝子導入 hGH 遺伝子 右:ひと成長ホルモン遺伝子を 導入したラット 左:対照ラット
遺伝子導入とクローン技術.
活性化エネルギー.
MRテキストⅡ 疾病と治療(基礎) 2012年度版 第1章 人体の構造と機能 第2章 脳・神経系 第3章 循環器系 第4章 呼吸器系
1. 生命界 エネルギー流概観 2. 水と生体分子 3. 細胞 生命の基本単位 4. 生体エネルギーと酵素 5. 蛋白質と生体膜(1) 6
細胞分裂を見よう. 細胞分裂を見よう はじめに 細胞分裂には、 体細胞分裂 と 減数分裂 の2種類がありますが ここでは、 体細胞分裂の観察のしかたを 紹介します.
生物学基礎 第3回 メンデルの遺伝の法則 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
寿命の問題を考える 寿命はなぜ決まっているのか 老化、加齢の問題とは何か.
栄養と栄養素 三大栄養素 炭水化物(糖質・繊維) 脂質 たんぱく質 プラス五大栄養素 ビタミン 無機質.
内胚葉(間葉)から血液と血管系が作られる
好気呼吸 解糖系 クエン酸回路 水素伝達系.
資料2.
8章 食と健康 今日のポイント 1.食べるとは 何のために食べるのか? 食べたものはどうなるのか? 2.消化と吸収 3.代謝の基本経路
・神経 続き シナプス 神経伝達物質 ・ホルモン ホルモンの種類 ホルモン受容体 ホルモンの働き
生命科学基礎C 第3回 神経による筋収縮の指令 -ニューロン 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
生体分子を構成している元素 有機分子   C, H, O, N, P, S(C, H, O, N で99%) 単原子イオン 
生命科学基礎C 第4回 神経による筋収縮の指令 -伝達 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
Keirin 生物 第2部 減数分裂と花粉の発芽 <減数分裂と花粉の発芽>.
個体と多様性の 生物学 第6回 体を守る免疫機構Ⅰ 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
生命科学基礎C 第10回 個体の発生と分化Ⅰ 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
生物統計学・第2回 全体を眺める(1) 各種グラフ、ヒストグラム、分布
コレステロール その生合成の調節について 家政学部 通信教育課程 食物学科 4年 大橋 万里子 佐藤 由美子 鷲見 由紀子 堀田 晴 子
高脂血症の恐怖 胃 基礎細胞生物学 第14回(1/22) 2. 胃酸の分泌 1. 胃 3. 消化管(小腸)上皮細胞の更新
農学部 資源生物科学科 加藤直樹 北村尚也 菰田浩哉
個体と多様性の 生物学 第8回 生きること、死ぬこと 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
細胞周期とその調節.
素材集 コピー&ペーストして使用してください。 すべて著作権のないもの、またはNCGMオリジナルのものです。
DNAメチル化とクロマチン構造の変化による転写制御のモデル
細胞の形と変形のための データ駆動型解析手法
植物系統分類学・第15回 比較ゲノミクスの基礎と実践
「生体小宇宙のなぞにせまる 」 ー生物物理学は生命と物理の架け橋-  物理学専攻 樋口秀男.
特論B 細胞の生物学 第5回 エネルギー代謝 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
代謝成分分析室 11 1 SPR(表面プラズモン共鳴)相互作用解析装置 薬用冷蔵ショーケース 2 走査型電子顕微鏡
生命科学基礎C 第8回 免疫Ⅰ 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
酵母細胞プロジェクト研究センター 春期シンポジウム
生命科学基礎C 第1回 ホルモンと受容体 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
膜タンパク質のインフォマテイクス 必要とされている課題.
カルビンーベンソン回路 CO23分子が回路を一回りすると 1分子のC3ができ、9分子のATPと 6分子の(NADH+H+)消費される.
生命科学基礎C 第2回 筋収縮の信号 カルシウムイオンの役割 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
電子顕微鏡室 平成20年度 電子顕微鏡室の主な業務 電顕機器利用状況 過去5年間の利用数の推移.
Keirin 生物 第1部 体細胞分裂の過程 第1部 実験4 <体細胞分裂の過程>.
生命科学基礎C 第6回 シナプス伝達の修飾 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
生物学基礎 第1回 この科目で学ぶこととゴール      生物学とその方法 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
個体と多様性の 生物学 第6回 体を守る免疫機構Ⅰ 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
遺伝性疾患・先天性疾患  染色体・遺伝子の異常とその分類  遺伝性疾患  先天性疾患.
生物学 第7回 エネルギー代謝 和田 勝.
ライフサイエンス支援センター・バイオ実験機器部門 高木 均
第7回 教育研究推進センター 共同機器セミナー 【はじめてみたいな電顕試料作成基本セミナー1】
細胞の膜構造について.
「生えたかどうか確認できない」とのことでした。
ギャップ結合の機能評価 H27.8.1 体験学習.
Dr. Bruno Humbel (University of Lausanne, Switzerland)
●食物の消化と吸収 デンプン ブドウ糖 (だ液中の消化酵素…アミラーゼ) (すい液中の消化酵素) (小腸の壁の消化酵素)
北大MMCセミナー 第68回 附属社会創造数学センター主催 Date: 2017年6月15日(木) 16:30~18:00
物質とエネルギーの変換 代謝 生物体を中心とした物質の変化      物質の合成、物質の分解 同化  複雑な物質を合成する反応 異化  物質を分解する反応 
好気呼吸 解糖系 クエン酸回路 電子伝達系.
特論B 細胞の生物学 第6回 エネルギーはどこから 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
細胞の構造と機能.
⑥ ⑤ ① ③ ② ④ 小胞の出芽と融合 11/20 ATPの使い途2 出芽 核 細胞質 供与膜 融合 標的膜 リソソーム
Imaging Digitization 細胞イメージ解析セミナー 概要 開催日時・場所・講師 プログラム
好気呼吸 解糖系 クエン酸回路 電子伝達系.
Presentation transcript:

生物学 第3回 すべての生物は細胞から 和田 勝

すべての生物は細胞から 光学顕微鏡と染色法が改良され、さまざまの生物が顕微鏡で観察されました(第1回からの続き)。 その結果、植物でも動物でも細胞という基本単位からできていることがシュライデンとシュバンによって観察され、細胞説が唱えられました。

細胞説 シュライデンは、いろいろな植物を顕微鏡で観察して、植物は細胞という基本構造からできていることを述べます(1838)。 シュバンも、いろいろな動物を顕微鏡で観察して、動物は細胞という基本構造からできていることを述べます (1839)。 細胞説(cell theory)

細胞説 1850年代になって、ヴィルヒョーが、すべての細胞は細胞からのみ生じる、と明確に表明します。 現在ではこれも加えて、細胞説は、 1)すべての生物は細胞から構成されている 2)細胞はすでに存在する細胞からのみ生成される 3)細胞は生命の最小単位である

細胞説に触発されて 細胞説に触発されて、体細胞分裂、減数分裂、染色体の発見など、顕微鏡を使った、細胞の重要性に関する発見が続いていきます。 さらに、メンデルの法則の再発見と結びついて、遺伝子の実体や細胞の形とはたらきの研究が盛んに行われます。

物を拡大する顕微鏡 さて、 肉眼 小さくて観察できない 顕微鏡 というお話をしましたが、現在使われている顕微鏡にはいろいろな種類があります。

顕微鏡の種類 光学顕微鏡 透過型電子顕微鏡 走査型電子顕微鏡

顕微鏡の原理 光線を 使う 電子線を 使う

体の中へ これらの拡大装置を使って、体の中へ入り込んでみましょう。

光学顕微鏡像

光学顕微鏡像

光学顕微鏡像

光学顕微鏡像

光学顕微鏡像

電子顕微鏡像 撮影:川原昌彦・富山医科薬科大学実験実習機器センター 小腸微絨毛の断面 (x10,000)

光学顕微鏡像 膵臓の細胞

電子顕微鏡像

走査型電子顕微鏡の原理 電子線を 使う

走査型電子顕微鏡像 ツツガムシの成虫の走査型電顕像 (x86) 撮影:安達一男・新潟大学医学部第三解剖電顕室

走査型電子顕微鏡像 アリの成虫の頭部 教材としての走査型電子顕微鏡画像集、撮影:阿達 直樹

アリの複眼(x100)

イチモンジセセリの鱗粉

光学顕微鏡で見ると マルバネカスリタテハの鱗粉

光学顕微鏡で見ると 蝶の羽の模様は、鱗粉による点描なのですね。 マヒメアカタテハの鱗粉

いろいろな植物の花粉

顕微鏡像の違い スギの花粉

走査型電子顕微鏡の応用 ラット小腸の血管鋳型の走査型電顕像 撮影:梅沢敦子・北里大学医学部電顕センター

走査型電子顕微鏡の応用 凍結割断法(freeze fracture)

すべての生物は細胞から 1)ヒトは60兆個の細胞からできている 2)これらの細胞には共通した構造が あり、同じ遺伝情報を有している  あり、同じ遺伝情報を有している   3)しかしながら、細胞は置かれた場  所に応じて異なる形と機能を示す    (分化しているという)  4)細胞によって使われている遺伝情  報が異なるためである 

細胞、組織、器官、器官系 器官系 器官 個体 組織 細胞

細胞、組織、器官、器官系 具体例: 心筋細胞からシマウマへ

組織 細胞は、次の4つの基本的な組織を構成します 組織は、形態と機能からさらに分類されます ●上皮組織 (epithelial tissue) ●結合組織 (connective tissue) ●筋組織 (muscle tissue) ●神経組織 (nervous tissue) 組織は、形態と機能からさらに分類されます

上皮組織 (1)上皮組織は、    ●単層扁平上皮 (simple squamous ep.)    ●単層立方上皮 (simple cuboidal ep.)    ●単層円柱上皮 (simple columner ep.)    ●重層扁平上皮 (stratified squamous ep.)    ●多列上皮 (pseudostratified ep.)

結合組織 (2)結合組織は、    ●疎性結合組織 (loose con.)    ●密繊維性結合組織 (dense con.)    ●弾性結合組織 (elastic con.)    ●細網結合組織 (reticular con.)    ●脂肪組織 (adipose con.)    ●軟骨組織 (cartilage con.)    ●骨組織 (bone con.)    ●血液 (blood)

結合組織 ふつうはコラーゲンなどが 細胞外マトリックス

筋組織 (3)筋組織は、    ●骨格筋 (skeltal muscle)   ●心筋 (cardiac muscle)   ●平滑筋 (smooth muscle)

神経組織 (4)神経組織は、 ●ニューロン (neuron) ●グリア細胞 (glia cell)  それぞれの組織は、組み合わさって器官を構成する

組織から器官へ 上皮組織 結合組織 筋組織 38

器官 組織が組み合わさって器官が構成される。 上皮組織 結合組織 筋組織

器官系 たとえば、消化器官系は 食道 (esophagus)、胃 (stomach)、小腸 (small intestine)、  大腸 (large intestine)、肝臓 (liver)、膵臓 (pancreas)、  胆嚢 (gallbladder) などの器官から構成さています。  小腸はさらに、十二指腸 (duodenum)、空腸 (jejunum)、 回腸 (ileum)よりなり、大腸は、虫垂突起 (vermiform appendix)、盲腸 (cecum)、結腸 (colon)、直腸 (rectum) より構成されています。

消化器官系 1.食道、2.胃 、小腸のうち3.十二指腸、4.空腸と回腸 、大腸のうち5.盲腸、6.虫垂突起、7.結腸、8.直腸、9.肛門  1.食道、2.胃 、小腸のうち3.十二指腸、4.空腸と回腸 、大腸のうち5.盲腸、6.虫垂突起、7.結腸、8.直腸、9.肛門 41

器官系 ●外皮系 (Integmentary system) ●骨格系 (Skeltal system) ●筋系 (Muscular system) ●消化器官系 (Digestive system) ●循環器官系 (Circulatory system) ●呼吸器官系 (Respiratory system) ●泌尿器官系 (Urinary system) ●神経系 (Nervous system) ●内分泌系 (Endocrine system) ●生殖器官系 (Reproductive system)

階層性 外皮系 骨格系 消化器官系

階層性 個体 (organism) 器官系 (organ system) 器官 (organ) 組織 (tissue) 細胞 (cell)

細胞小器官 電子顕微鏡の発明により、細胞内にはさらに構造物が見え、膜系が発達していることが明らかになります。 これらの構造を、細胞小器官 (organella)と呼びます。 45

細胞より下位へ 細胞 細胞小器官 分子 原子

動物細胞の構造

動物細胞の各パーツ 細胞の各パーツが、どのような構造で、どのような働きを担っているか見てゆきましょう。

サイトゾール  細胞小器官が浮かんでいる液体部分をサイトゾール(cytosol)と言います。 49

核(nucleus) ●核膜 ●核小体 ●染色質

細胞分裂と染色体 ●間期 ●後期 ●前期 ●終期 ●中期

ヒトの染色体 22対の常染色体と2本の性染色体

染色体-染色質-DNA ●ヌクレオソーム ●染色体 ●凝縮した染色質 ●DNA 遺伝情報 ●染色質

小胞体  小胞体(endoplasmic reticulum、ER)は、よく発達した膜系。

リボソーム  リボソームは、遺伝情報の写しを見ながら、タンパク質を合成してゆく生産ラインのロボットのような役割をします。

小胞体には2種ある リボソームが結合した小胞体を、粗面小胞体(rough ER)といいます。  リボソームが結合していない管状の小胞体を、滑面小胞体(smooth ER)といいます。

ゴルジ装置  ゴルジ装置(Golgi apparatus)は、分泌タンパク質の配送センターのような役割です。

ミトコンドリア  ミトコンドリア(mitochondria)は、エネルギー供給装置です。

ミトコンドリア 内膜 膜間腔 基質 外膜 クリステ クリステ

ミトコンドリア ミトコンドリアは、固有のDNAを持っています→過去に寄生した生物だと考えられています。 分裂によって数を増やします。

細胞骨格 細胞の動きや細胞小器官の移動などに関係するタンパク質で、3種類(左から微小繊維、微小管、中間径繊維)あります。

細胞骨格 微小繊維 (actin filament) 微小管 (microtubule)

細胞膜 タンパク質 脂質の二重膜(lipid bilayer)である。

細胞小器官の膜 細胞小器官の膜も、細胞膜と同じように、脂質の二重膜を基本構造として、そこにタンパク質が埋まっています。 64

動物細胞の構造 もう一度まとめておきましょう

サイズの感覚 10倍ずつ拡大

特に重要な細胞小器官は これからのお話に特に関係する細胞小器官は、核、リボソームと粗面小胞体、ゴルジ装置です。 67

細胞小器官の舞台では これらの舞台の上で何が起こっているか、お話はさらに続きます。 待てしばし!