Pr1-xSrxFeO3 (0.1≦x≦0.9) の p 及び n 型熱電特性と磁性 p-type and n-type thermoelectric and magnetic properties in Pr1-xSrxFeO3 (0.1≦x≦0.9) ○中津川 博1*, 石川 慈樹1, 齋藤 美和2, 岡本 庸一3 1横国大理工, 2神奈川大工, 3防衛大材料 *E-mail : naka@ynu.ac.jp TEL/FAX : 045-339-3854 多結晶試料Pr1-xSrxFeO3 (0.1≦x≦0.9) を一般的な固相反応法を用いて作製した。結晶構造(ペロフスカイト構造) は、x = 0.5 で、斜方晶 Pbnm 相から菱面体晶 R-3c 相へ変化している。また、磁化率の逆数 (χ-χ0)-1 の温度依存性より、x ≦ 0.7 では、Fe のスピン状態が、中間スピンFe3+(t2g4eg1)、低スピンFe3+(t2g5)、及び、低スピン Fe4+(t2g4)イオンによって構成されることが示された。一方、x = 0.8 と 0.9 では、Fe のスピン状態が、低スピンFe3+(t2g5)と低スピンFe4+(t2g4)イオンによって構成されていることが示された。これは、Pr1-xSrxFeO3 の主な伝導キャリアが t2g 及び eg ホールから t2g 電子へ変化していることを意味している。実際、0.4≦x≦0.5 では、温度増加に伴って正のゼーベック係数の絶対値が減少しているものの、x≦0.3では、全温度範囲で大きな正のゼーベック係数が維持されており、0.7≦x≦0.9 では、全温度範囲で負のゼーベック係数が示されている。特に、x = 0.1では、850Kで、20μWm-1K-2 の出力因子と約0.024の無次元性能指数 ZT が示されており、これは、ペロフスカイトFe酸化物が高温 p 型熱電酸化物の優れた候補材料の一つであることを強く示唆している。 序論 実験方法 R-3c 試料作製 一般的な固相反応法を用いて、 化学量論組成で混合 空気中1000℃で仮焼き 酸素雰囲気中1300℃で焼結 ペレット状に一軸加圧 (16MPa) T+ΔT 熱源 h+ e- Al doped ZnO NaxCoO2 p 型 n 型 ヒートシンク T Fig2. LS Fe3+1-x LS Fe4+において、拡張したHeikesの式から見積もった高温極限のゼーベック係数 物性測定 イオン半径 (Å) BVパラメーター r0 (Å) [Ca2CoO3]0.62CoO2 Ca0.9Yb0.1MnO3 粉末X線回折 @RT , RINT2500 リートベルト解析 , RIETAN-FP program χ :5 - 700K @ H = 1T , MPMS ρ :300 - 850K, 直流四端子法 S :80 - 850K, 定常熱流法 κ = dCvα d:アルキメデス法@RT, SMK-401 Cv:示差走査熱量測定@RT, X-DSC7000 α:レーザーフラッシュ法@300 - 973K, TC-7000 Fig1. 典型的なp型とn型の熱電変換酸化物 Pbnm 線膨張係数差の小さいPN素子で構成された酸化物熱電変換モジュールが 求められる。 PN素子は同一組成によって作製されるべき。 Heikesの式より、Pr-richで p 型、Sr-richで n 型が 期待される Pr1-xSrxFeO3 (0.1≦x≦0.9) に着目した。 Fig4. 室温でのPr1-xSrxFeO3 (0.1≦x≦0.9) の粉末X線回折測定 Fig3. IS Fe3+1-x LS Fe4+において、拡張したHeikesの式から見積もった高温極限のゼーベック係数 結果と考察 結晶構造 磁化率 電気抵抗率 ゼーベック係数 熱伝導率 120 minutes 120 minutes Fig5. Pr1-xSrxFeO3 (0.1≦x≦0.9)の Fe-O 間距離 Fig7. Pr1-xSrxFeO3 (0.1≦x≦0.9)の χ-χ0 温度依存性 Fig9. Pr1-xSrxFeO3 (0.1≦x≦0.9)の ρ 温度依存性 Fig11. Pr1-xSrxFeO3 (0.1≦x≦0.9)の S 温度依存性 Fig14. Pr1-xSrxFeO3 (0.1≦x≦0.9)の κとκe 温度依存性 120 minutes Fig10.Pr1-xSrxFeO3 (0.1≦x≦0.9) の σT の T-1 依存性 Fig12. Pr1-xSrxFeO3 (0.1≦x≦0.9) の S の T-1 依存性 Fig13. Pr1-xSrxFeO3 (0.1≦x≦0.9) の S2/L0 温度依存性 Fig15. Pr1-xSrxFeO3 (0.1≦x≦0.9) の κe / κ 温度依存性 LS Fe4+ 出力因子 無次元性能指数 ZT IS Fe3+ LS Fe3+ Fig6. Pr1-xSrxFeO3 (0.1≦x≦0.9) の Fe-O-Fe 角度 Fig8 Pr1-xSrxFeO3 (0.1≦x≦0.9) の (χ-χ0)-1 温度依存性 Table I. Pr1-xSrxFeO3 (0.1≦x≦0.9) の磁化率測定から得られる物理量 Fig16. Pr1-xSrxFeO3 (0.1≦x≦0.9) の S2σ 温度依存性 Fig17 Pr1-xSrxFeO3 (0.1≦x≦0.9) の ZT 温度依存性 Table II. Pr1-xSrxFeO3 (0.1≦x≦0.9) の熱電特性測定から得られる物理量 まとめ Pr1-xSrxFeO3は、0.1≦x≦0.5でp 型熱電特性を示し、0.7≦x≦0.9で n 型熱電特性を示した。 Pr0.9Sr0.1FeO3は、850Kで、20μWm-1K-2 のp 型出力因子を示し、約0.024のZTを示した。 Pr0.3Sr0.7FeO3は、850Kで、 3μWm-1K-2 のn 型出力因子を示し、約0.002のZTを示した。 Pr0.3Sr0.7Fe1-xMnxO3 が n 型酸化物熱電変換材料の候補材料として期待できるかもしれない。 謝辞 : 本研究の一部は、科学研究費補助金 基盤研究(C) (一般) #15K06479 の支援を受けて実施された。