カーボン・オフセットの 価値評価 ~研究報告会~ 2009年12月21日(月) 有田麻奈未
目次 はじめに 研究の目的 カーボン・オフセットの概要 分析方法とデータ 結果と考察 結論と今後の課題
1.はじめに 研究の背景 温暖化問題への意識の高まり But…. 日本でのCO2排出削減の限界 削減技術の遅れている途上国などでは、 温暖化問題への意識の高まり But…. 日本でのCO2排出削減の限界 削減技術の遅れている途上国などでは、 まだ大量にCO2が排出されている カーボンオフセットへの ニーズの高まり!
2.研究の目的 消費者はカーボン・オフセットにどれだけの価値を見出しているか。 クレジットの種類によって消費者の価値評価は変わるか。また、どのクレジットに価値を見出しているか。 コンジョイント分析によるWTPの推測とマーケットシェアの予測。
3.カーボン・オフセットとは? 個人や企業が自らの努力だけでは削減しきれない分の 温室効果ガス排出量を、排出権枠の取得や植林の実施 などにより、オフセット(埋め合わせ)すること CO2削減・吸収量=クレジット 出典:カーボン・オフセットフォーラム(http://www.j-cof.org/cof.html)
クレジットの種類 CER(Certified Emission Reduction) 国連の認証がある! 京都議定書で認められた京都メカニズムの一つである CDM(クリーン開発メカニズム)により生み出されたもの 国連の認証がある! VER(Verified Emission Reduction) 国連以外の認証機関などが検証して生み出されたもの
国内の削減・吸収活動から生じるクレジットを J‐VER制度 VERは、法的拘束力をもった制度に基づいていない 信頼性の構築が必要 これまでの主流は 途上国における削減・吸収量であるCER 国内の削減・吸収活動から生じるクレジットを 用いたオフセットへのニーズの高まり J-VER制度
J‐VER制度 出典:環境省 (http://www.j-cof.org/document/2009_greenexpo/moe_honda01.pdf#search=‘カーボンオフセット J‐VER制度’)
オフセットの対象主体 どの時点で発生したCO2を削減するか? 企業の商品生産時 どの時点で発生したCO2を削減するか? 企業の商品生産時 クレジットを付ける商品やサービスの製造、販売使用、廃棄する過程で発生するCO2量を算定して商品に付加することでオフセットする 消費者の日常生活時 商品を購入する顧客が日常生活全般で排出するCO2をその商品を購入することでオフセットする
カーボン・オフセット【まとめ】 ①クレジットの種類 ②オフセットの対象主体 CER(国連の認証、途上国) VER(第3者機関の認証、途上国) CER(国連の認証、途上国) VER(第3者機関の認証、途上国) J‐VER(第3者機関の認証、日本) ②オフセットの対象主体 企業の商品生産時 or 消費者の日常生活時
カーボン・オフセットはがき 日本郵政グループ 1枚当たり定価「55円」 CER 平成20年の1枚当たりの CO2オフセット量は2.6g (消費者負担:5円、企業負担:5円) CER 平成20年の1枚当たりの CO2オフセット量は2.6g ※10枚分(26kg)は1人当たりの家庭から 出る排出量1週間分に相当する 出典:日本郵政(http://www.carbonoffset-nenga.jp/design.html)
4.分析方法とデータ アンケート調査概要 実施日時・場所 方式 サンプル数 10月31日(土) JR草津駅前広場 郵送回収方式 4.分析方法とデータ アンケート調査概要 実施日時・場所 10月31日(土) JR草津駅前広場 方式 郵送回収方式 サンプル数 85部 (200部配布 回収率42.5%)
質問内容 問1 関心のある環境・資源問題(3つまで回答) 問2 環境・資源問題を意識して行動するもの (当てはまるものすべてに回答) 問1 関心のある環境・資源問題(3つまで回答) 問2 環境・資源問題を意識して行動するもの (当てはまるものすべてに回答) 問3 カーボン・オフセットの認知度 問4 クレジット(CER、VER)に対する信頼度 問5 クレジットの種類、CO2削減国、埋め合わせるCO2 、 1枚当たり削減量、価格の異なるはがきの中で、どのはがきを 購入したいか 問7~9 属性に関する質問 環境政策に対する認知度(知っているもの全てに回答)
回答者属性
回答者属性
消費者の環境・資源問題への意識
消費者の環境・資源問題への意識
消費者の環境・資源問題への意識
認知度 カーボン・オフセットに対する認知度は低い
クレジットに対する信頼度 クレジットに対する信頼は高いとは言えない
コンジョイント分析 属性とそのレベル 属性 レベル クレジットの種類 CER、VER、JVER CO2が削減された国 日本、途上国 埋め合わせるCO2 日常生活時に発生するCO2、商品生産時に発生するCO2 1枚当たりCO2削減量 1kg、2kg、3kg 価格 50円、52円、55円、60円
コンジョイント質問例
分析モデル 条件付ロジットモデル(Conditional Logit Model) V:観察可能な効用関数、xj:価格を除く製品jの属性レベル pj:製品jの価格 ℇj:誤差 ただしガンベル分布(第一種極値分布)に従うとする このとき製品jが選択される確率Pj ・・・・・・・(*)
分析モデル カーボン・オフセットの属性に関する効用関数 変数とその定義 変数 定義 JVER JVER=1、それ以外=0 CER CER=1、それ以外=0 OFFSET(埋め合わせ方) 日常生活時に発生するCO2=1、商品生産時に発生するCO2=0 REDUCTION(CO2削減量) 1kg=1、2kg=2、3kg=3 PRICE(価格) 50円=50、52円=52、55円=55、60円=60 NBUY 買わない=1 買う=0
5.結果と考察 コンジョイントによるWTPの推定 効用関数の推定結果 変数 係数推定値 t統計量 p値 JVER 0.80135599 3.792 0.0001 CER 0.42307539 1.925 0.0542 OFFSET 0.09786434 0.592 0.5541 REDUCTION 0.49622834 4.584 0.0000 PRICE -0.14227029 -5.173 NBUY -6.47224702 -4.343 ※McFaddenのR2 :0.10728
日本郵政で販売されているカーボン・オフセットはがき(CER)は1枚55円 コンジョイントによるWTPの推定 カーボン・オフセットはがきに対するWTP JVER CER VER WTP(円) 60.1 57.4 54.5 ※OFFSETを除いた結果で計算 日本郵政で販売されているカーボン・オフセットはがき(CER)は1枚55円 VERよりもCER、CERよりもJVERの方が選好される!
考察① 消費者は販売価格以上の価値を見出しており、VERと比べて追加的にJVERに5.6円、CERに2.9円支払ってもよいと考えている。 VERよりもCER、CERよりもJVERの方が選好される。 企業の商品生産時に発生するCO2を埋め合わせるか、商品を購入するお客さんの日常生活時に発生するCO2を埋め合わせるかは、それほど関係ない。
マーケットシェアの予測 JVER CER VER don’t buy シュミレーションに使うプロファイル (*)式に従い、各選択確率を計算し、その割合をマーケットシェアとする シュミレーションに使うプロファイル JVER CER VER don’t buy 日本 途上国 なし 2.6kg 0kg open 55円 0円
マーケットシェアの予測
マーケットシェアの予測 69.2%
考察② 同じぐらい流通すれば、非常に強い競争力を持つ。 JVERは、もし同じ価格で売られていれば、他のオフセットはがきよりも競争力を持つ。 JVERは今後普及していく可能性がある。 価格が60円であっても、買わないと考える消費者は、わずか30.8%で、オフセットはがきは69.2%のシェアを持つ。 カーボンオフセットはがきが普通のはがきと 同じぐらい流通すれば、非常に強い競争力を持つ。
6.結論と今後の課題 結論 WTP推定 JVER=60.1円、CER=57.4円、VER=54.5円 消費者の選好 VER<CER<JVER 消費者の選好 VER<CER<JVER マーケットシェア 69.2%(オフセットはがき全体でのシェア) 消費者はカーボン・オフセットを高く評価している。 中でも特にJVERを高く評価しているため、政府はJVER制度の早期構築を目指し、企業側もJVERを積極的に取得すべき。
今後の課題 カーボン・オフセット認知度を高める 信頼性を高める 個人的課題 →宣伝、広告、制度の簡略化 →なぜ信頼度が低いかの検討 (政府への不信感?、認知度の低さ?、制度の信憑性?) 個人的課題 費用対効果の検討 商品属性以外の他の属性による影響
参考文献 日本郵政 カーボンオフセットはがきhttp://www.carbonoffset-nenga.jp/index.html 日本郵政 カーボンオフセットはがきhttp://www.carbonoffset-nenga.jp/index.html 環境省 HPhttp://www.env.go.jp/earth/ondanka/mechanism/carbon_offset.html 気候変動認証対策センター http://www.4cj.org/ カーボンオフセットフォーラム http://www.j-cof.org/ リサイクルワン カーボンオフセット http://www.co2-os.jp/ 日経エコロジー122号(2008年9月8日発行) 「カーボンオフセット活用術」pp.28~43