領域普遍的アプローチから見たGigerenzer:Adaptive Thinking の射程と限界 認知発達理論分科会小講演 領域普遍的アプローチから見たGigerenzer:Adaptive Thinking の射程と限界 第17回認知発達理論分科会 中垣 啓 2005年10月1日
Gigerenzerの2つの顔 Bounded Rationalityの擁護者,その新しい枠組みの提唱者としてのGigerenzer Simple Heuristics that Makes Us Smart 1999 Bounded Rationality –Adaptive Toolbox 2001 Unbounded Rationalityの攻撃者,批判者としてのGigerenzer 主にAdaptive Thinking –Rationality in the Real World 2000
Bounded Rationalityの擁護者 としてのGigerenzerⅠ
B.R.の擁護者としてのGigerenzerⅡ ーBounded Rationality の3特長ー Psychological Plausibility 人間は時間,知識,能力において限られている 現実の人間の意思決定を理解しようとする Domain Specificity 特定の認知的課題,適応的問題を解決しようとするアルゴリズムがHeuristicsである Ecological Rationality 環境構造への適合を目指すこと
Bounded Rationalityの新しい枠組の提唱者としてのGigerenzer Probabilistic Mental Models 課題構造を対応する自然環境の確率的構造に結びつけるモデル OverconfidenceとHard-easy effectを共に説明 Ignorance-Based Decision Making 環境についての知識不足を逆手に取ったRecognition Heuristic One-Reason Decision Making 環境構造の特性を利用したTake The Bast Heuristic
Unbounded Rationalityの批判者 としてのGigerenzer 領域固有のHeuristicsが詰まったToolboxを持ち歩いている存在と人を見ている 伝統的理性への侮蔑 論理学,確率論などのルールを人が従うべき規範とは認めない 認知的バイアスをバイアスとは認めない
Gigerenzer:Adaptive Thinkingの限界と諸問題 Rationality観の問題 構造主義的観点の欠如 発達的観点の欠如
Gigerenzer批判Ⅰ ーRationality観の問題ー RationalityとAdaptationとの区別なし 人間固有のRationality を認めようとしない 規範を何か取り替え可能な文化的産物 規範的なものを説明しようとしない
Gigerenzer批判Ⅱ ー構造主義的観点の欠如ー 領域固有に見える現象も認知システムに内在する観点に立てば,領域普遍的現象として立ち現れる。 領域固有に見える多様な現象も,全体構造論的発想をすれば,同じ認知システム上の異なる現われとして立ち現れてくる。 Overconfidenceとオッペル・クントの錯視 4枚カード問題におけるに視点効果 連言錯誤と基準率無視
過剰信頼バイアスとオッペル・クントの錯視 オッペル・クントの錯視(分割距離錯視) | | | | | | | | | | | | | | | | 客観的には同じ大きさの空間であっても、線分で分割された空間は何もない空間よりも過大視されるという錯視である 。 Overconfidence Bias Overconfidence課題(問2)では,1つの問について信念度を聞かれる。相対頻度課題(問3)では,多数の問について正答数を問われる。 1つの対象を注視したときの過大視の効果とOverconfidence課題において1つの問を注視(注考?)したときの信念度の過大視とは同じ現象ではあるまいか。 実際,信念度評価では過剰評価され,相対頻度課題(問3)では過小評価される傾向がある。
4枚カード問題におけるに視点効果 抽象的4枚カード問題 視点あり4枚カード問題 p⇒¬qに対してカードp,qを選択(論理的正答もp,q) 視点あり4枚カード問題 被雇用者視点つき p⇒qに対してカードp,¬qを選択 (論理的正答もp,¬q) 雇用者視点つき p⇒qに対してカード¬p,qを選択 (論理的正答はp,¬q) 有意味文脈における視点あり4枚カード問題で起こっていることは抽象的4枚カード問題で起こっていることと構造的には全く同じ。 視点あり4枚カード問題では視点がカード選択を反転させているのに対し,抽象的4枚カード問題では否定がその役割を演じている。
連言錯誤と基準率無視 条件確率の困難を仮定すれば,連言錯誤も基準率の無視も容易に説明できる。 それでは条件確率は本当に困難か。 条件確率の困難, P(B|A)をP(B&A)と混同を仮定。 この仮定の下での基準率無視 P(H|D)はP(H&D) ,P(D|H)はP(D&H) と区別されない。従って, P(H|D)とP(D|H)は区別されない。 基準率の無視,つまりP(H|D)を問われて P(D|H) で答えるInverse Fallacyが容易に説明できるし,実際 P(D|H) で答える判断が一番多い。 この仮定の下での連言錯誤 連言錯誤はP(B|D) と P(B&F|D)との比較を求める課題。ここで, Inverse Fallacyが起こるとすれば, P(D|B) と P(D|B&F)との比較を求める課題となる。DとBの重なりよりDとFの重なりの方がおおきいであろうから, P(D|B) < P(D|B&F)という判断となる。これから,連言錯誤P(B|D) < P(B&F|D)が説明できる。 条件確率の困難を仮定すれば,連言錯誤も基準率の無視も容易に説明できる。 それでは条件確率は本当に困難か。
条件確率の困難 条件確率はなぜ困難か。 命題操作システムの構築 確率の2次的量化 条件確率の困難を示す課題例 くじ引き順序の問題 確率付条件文解釈 サイコロ振りの場合 コイン投げの場合
Gigerenzer批判Ⅲ ー発達的観点の欠如ー 構造的変換(Structural Change) と変異的変化(Variational Change)とを区別することが出来ないので,諸現象の意味が見えてこない 頻度表示と確率表示 →人は frequency monitoring deviceである 連言錯誤と包含の量化 →連言錯誤は問題のartifactによる 4枚カード問題の視点効果 →人はCheater-detection heuristic を持っている
演繹的・帰納的推論への 諸アプローチの対応関係 演繹的推論 帰納的推論 Domain General Approach Mental Logic Enlightenment View Mental Model (Mental Model) Heuristic-Analytic Heuristics & Biases (Tversky & Kahneman) Specific Pragmatic Reasoning Schema Social Context of Reasoning Social Contract Theory Fast and Frugal Heuristics (Gigerenzer) Integrative Mental Operation ?
お疲れさまです。ご静聴 ありがとうございます。 終わり お疲れさまです。ご静聴 ありがとうございます。