M1M2ゼミ suzaku衛星搭載XISを用いた観測

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M1M2ゼミ suzaku衛星搭載XISを用いた観測 2007/06/12 M2 長井雅章

目次 Suzaku衛星の概要説明 XISの較正について コンタミの二次元分布モデル 応答関数について

X線天文衛星の歴史 Suzaku衛星 我が国5番目のX線天文衛星と して、2005年7月10日に打ち上 げられました。 直径2.1 m、全長6.5 mの大き さを持ち、太陽パドルを広げると 5.4 mの幅になります。 1日に地球を15周 科学目的 これまでにない広いエネルギー領域(0.3~600keV)にわたって高いエネルギー分解能かつ高感度で観測研究する。 銀河団の高温ガスと宇宙の構造と進化 ブラックホール流入物質の運動と時空構造 X線による高温プラズマの研究 非常に遠方にある暗い原始天体の探索

Suzaku衛星搭載検出器 Suzaku衛星の 内部構造 XRS XIS HXD XRS XIS HXD エネルギー領域 0.5~12keV センサーの数 1 4(CCDチップ当たり) 1 (16ユニット) ピクセル数 32 (2 X 18) 1024 X 1024 ピクセルの大きさ 0.94 X 0.24mm 24 X 24mm センサー当たり 有効面積 190cm2 1300cm2 160cm2(>30keV) 330cm2(>40keV) エネルギー分解能 12eV 130eV 3.5keV(10~49keV) 視野 1.9 X 4.2 19 X 19 arcmin 0.8 deg 撮像能力 Others 2 X 18 ピクセル 0.56°X 0.56°<100keV 4.6°X 4.6° >200keV Suzaku衛星の 内部構造 XRS XIS HXD

検出器の特徴 XRS(X-ray Spectrometer) XIS(X-ray Imaging Spectrometer) マイクロカロリメータ 検出器の原理は、絶対温度約0.06度の極低温に素子を冷し、X線入射に伴う素子の微弱な温度の上昇から入射X線のエネルギーを極めて精度良く決めるものである。 (注) 2005年8月8日、XRSで使用している液体ヘリウムが消失するという不具合が発生し、XRSによる観測は不可能になりました。 XIS(X-ray Imaging Spectrometer) X線CCDカメラ 広い視野での撮像を行いながら精度の高い分光を連続的に行うことが可能 、4台合わせることで世界でも最大級の有効面積を持つことになる。 HXD(Hard X-ray Detector) 硬X線検出器 ガドリニウム・シリケート結晶を用いた無機シンチレータ(GSO)とシリコン検出器を組み合わせたもの

XISの検出原理 FI(表面照射) BI(裏面照射) シンチレータ(電離電子数を脱励起の光子数に変換) カロリメータ(吸収エネルギーをフォノンに変換) FI(表面照射) BI(裏面照射) 光電吸収 入射X線が空乏層で光電吸収により内殻電子たたき出し(1)、 ホットエレクトロンを生成する(2)。 そしてホットエレクトロンが周りの原子の最外殻電子をたたき出す(3)。 入射X線のエネルギーに比例した電荷ができる。

XISの較正情報 読みだしノイズ 電荷転送非送率 (CTI : Charge Transfer Inefficiency ) SCI : Spaced-row Charge Injection 暗電流 バッドコラム、ホットピクセル、フリッカリングピクセル コンタミの分布と時間変化 etc 読みだしノイズ 電子回路起源のノイズのことでX線が入射していなくても有限の波高値を示す。 バッドコラム 電荷の転送不良などで上下に多量の電荷が漏れ出したり、コラム上のどこかにある格子欠陥 CTI SCI : Spaced-row Charge Injection 暗電流 ホットピクセル、フリッカリングピクセル コンタミの分布と時間変化

コンタミとは XISは2005/8/13のファーストフライト(ドア明け)後から、CCD検出器の視野方向に何らかの汚染(コンタミ)物質が付着している兆候が、いくつかの観測データから見られた。こうした、視野方向に付着したコンタミにより、XISの低エネルギー側の検出効率が劣化している。 天体からのX線 コンタミ予測物質 C24H38O4 0.986 ( g / cm3) OBF コンタミ 離れている。 CCD CCD概略の断面図

Eric model ver 2006/10/02 Here is an EPS version of the contamination plot. I've extended and refit the exponential function to include the 2006-08-25 data. Here are the new fit parameters, FYI: [N_C/10^18 cm-2] = a*[1-exp(-day/b)] # fit parameters # a units are 10^18 cm^-2 # b units are days # day is number of days since 2005-08-13 chip a b XIS0 2.889392 170.437176 XIS1 4.579350 176.836204 XIS2 3.958734 102.612617 XIS3 5.883134 87.126996

コンタミ予想物質:C24H38O4 フタル酸ビス(2-エチルヘキシル) 用途 フタル酸ビス(2-エチルへキシル)は水に溶けにくく、常温で無色の液体です。合成樹脂を軟らかくする性質をもっているため、主に合成樹脂の可塑剤として使用されています。 可塑剤は、粘土を軟らかくするために加える水のような働きをもつもので、プラスチック製品や接着剤などをつくるときに、合成樹脂などに添加されます。フタル酸ビス(2-エチルへキシル)は代表的な可塑剤で、その生産量は日本における全可塑剤の半分以上を占めています。 フタル酸ビス(2-エチルへキシル)は、特に塩化ビニル樹脂を効率よく柔らかくするので、さまざまな軟質塩化ビニル製品の製造の際に用いられています。この軟質塩化ビニル製品は、壁紙や床材などの建材、電線被覆材、一般用のフィルム・シートや農業用ビニールフィルムなど、一般家庭で使われる製品も含めて、多方面で使われています。また、塩化ビニル樹脂以外にラッカー(ニトロセルロースラッカー)などにも可塑剤として使われているほか、溶剤として塗料や接着剤などにも用いられています。

コンタミの時間変化 XIS1の昼地球画像 窒素輝線バンド X線望遠鏡の Vignettingの 効果で視野 中心が明るい。

コンタミの測定方法 N-Ka 392.4 eV 1/l=0.537 mm O-Ka 524.9 eV 1/l=1.109 mm ※コンタミの厚さが 点対称と仮定している。 C:表面輝度 l:コンタミの厚み l:吸収係数 ※昼地球のN輝線、O輝線を使用 入射光 CN(0)を基準として r Dl(r) コンタミ l(r) 中心と半径rとでコンタミの厚みの差 ※N輝線、O輝線での独立な二種類の結果が得られる。

N-K、O-K輝線のfit model : phabs*powerlaw+gaussian+gaussian 星間吸収 制動放射 ガウス分布 昼地球のスペクトル エネルギー領域 (0.3 - 0.7 keV) N-Ka O-Ka Regionの区切り方 1024pixel 1024pixel Reduced chi-squared = 1.1952

コンタミの空間分布 コンタミの中心での厚みは Eric model を使用した。 コンタミ:C24H38O4 Senser:XIS-1 打ち上げ後、前期 コンタミの中心での厚みは Eric model を使用した。 コンタミ:C24H38O4 Senser:XIS-1 中期 後期

モデル化 r:中心からの距離 (arcmin) Eric:中心での C column density (1018cm-2) a : free b : fix a : free b : free b a b = 4.8 +/- 0.10 a = (0.64+/-0.11)Eric + (5.0+/-0.4) 上図↑ は以下の式↓ でコンタミの分布をfittingした時のパラメータの値とそのエラー。 r:中心からの距離 (arcmin) Eric:中心での C column density (1018cm-2) days:(2005/08/13)からの日数

空間分布のモデル 打ち上げ後、前期 a = (0.64+/-0.11)Eric + (5.0+/-0.4) b = 4.8 +/- 0.10 中期 後期

応答関数 天体からのスペクトルS(E)と、検出器を通して得られるスペクトル情報D(PH)との間には次の関係がある。 55FeからのX線 55FeのX線をXISで取得したデータ 応答関数を構築するために必要な要素 エネルギー(E)とパルスハイト(PH)の関係 応答のプロファイル 検出効率(量子効率)

(1) (2) (5) (4) (3) (6) メインピーク 入射X線が空乏層で吸収されてできた分布。 メインピーク  入射X線が空乏層で吸収されてできた分布。 サブピーク  入射X線が空乏層で吸収されたが、ピクセルの境界付近で生じたため電荷が複数のピクセルにまたがって一部の電荷を信号として取り出せなかった分布。 三角成分  高エネルギー側:サブピーク同様の原因。  低エネルギー側:入射X線がピクセル毎の境界にあるチャンネルストップで吸収されてできた電荷の一部が不純物の吸収されることが原因。 Siエスケープ  入射X線が空乏層などで吸収された後、Siの特性X線が隣り合うピクセルで吸収されなかったならその分のエネルギーが減る。 Si輝線  エスケープのときの特性X線が検出される。または入射X線が不感層で吸収され放出される特性X線が検出される。 コンスタント成分  入射X線が空乏層と不感層の境界近くで吸収され、できた電荷が不感層の中に入ってしまい、電荷の一部しか検出できなかったイベントの分布。

デコンボーリューション、アンフォールディング 任意の放射線検出器から観測された微分スペクトル dN/dH は固有の応答関数と入射放射線のエネルギー分布のコンボリューション(合成積)である。 ここで、 R(H,E)dHdE は E の近傍の dE 内のエネルギーを持つ量子から H の近傍 dH 内のパルス波高をもたらす微分確率である。 入射放射線が単一のエネルギーのみの場合 これを上式に代入すると                 となる。 この条件下では、測定されたパルス波高分布 dN/dH は応答関数 R(H,E0) と記録されたパルス数 S0 の積として与えられる。 応答関数の形は異なったエネルギー E の入射量子ごとに相違しているが、放射線エネルギーだけが重要なパラメーターとして取り扱われる。 マルチチャンネル波高分析装置で記録する場合には (1)式は不連続形式となる。 ‥(1)

デコンボーリューション、アンフォールディング 放射線検出器の目的はエネルギー分布すなわち Sj のすべての値を求めることである。 ここで、線源分布を L 個の間隔に分割されていると仮定する。また記憶スペクトルは各チャンネルに1つずつの Ni の値 M 個から作られていると仮定する。                 左の式から M 個の連立方程式が立てられる。           であれば全 Sj 要素に対してこれらの方程式を解くことは可能になる。 この過程を一般的にスペクトルデコンボリューションあるいはスペクトルアンフォールディングと呼ぶ。 半導体ダイオード検出器で検出するような場合のように、応答関数 R(H,E) が各エネルギーにおいて狭いピークあるいはデルタ波高と放射線エネルギーには1対1の対応がある。この場合には、パルス波高分布は入射放射線スペクトルとして直接解釈され、アンフォールディングは必要ない。しかし、一般には応答関数はもっと複雑で複数本の2次ピークと全体に広がった連続部の両方を含む場合が多い。このような場合には入射エネルギースペクトルを完全に評価するにはアンフォールディングが必要になる。

まとめ Suzaku衛星搭載検出器には XRS、XIS、HXD がある。 コンタミはXISの低エネルギー側の検出効率を劣化させる。 応答関数は天体からのスペクトルと実際に検出されたスペクトルとの関係を表している。