実践評価の方法 グループ討議 東京学芸大学 高良 麻子 基礎研修Ⅱ 実践評価・実践研究系科目

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実践評価の方法 グループ討議 東京学芸大学 高良 麻子 基礎研修Ⅱ 実践評価・実践研究系科目 基礎研修Ⅱ 実践評価・実践研究系科目 実践評価の方法 グループ討議 ひとつの事例を活用したグループ討議を通して、実践評価の方法を学んでいただきます。 東京学芸大学     高良 麻子

 大石さん(75歳、男性)は妻の死後、未婚の長女と同居しています。長女は常勤勤務のため、大石さんは日中ひとりで過ごしています。長女から最近大石さんの物忘れがひどくなっており、日中が心配だとの相談があなたにありました。最近は誰にも会わず部屋にこもっているそうです。火の始末も不安になってきているということでした。そこで、長女の希望と大石さんの同意でまずは週2回ヘルパーサービスを日中利用することになりました。ヘルパーが打ち合わせのために最初に訪問した時には、長女が自宅におり何の支障もありませんでした。ところが、第1回目のヘルパー訪問の時、ドアを開けず「来るな」や「帰れ」と大声で怒鳴りヘルパーを家に入ることを許そうとしませんでした。ヘルパーから担当であるあなたに連絡があり、こうした状況が伝えられました。ヘルパーの話から、ひとりでいる時に知らない人が来て不安になっているためこのような行動を取ったように考えられます。このことを長女に伝えたところ、以前のおだやかな父の様子からは考えられないので、再度訪問してほしいとの希望が出されました。そこで、再びヘルパーが訪問しましたが、大石さんの反応は全く同じものでした。 事例を共有します。

Step1: 評価対象の選択 (何を評価するのかを決める) 評価対象 大石さんのヘルパーに対する反応 あなたは大石さんのヘルパーに対する反応を評価することにしました。ステップ1では、何を評価するのかを決めます。

Step2: 問題把握 (問題を明確に把握する) 1. いつ、どこで、誰が、何を、どうしたのか 1. いつ、どこで、誰が、何を、どうしたのか 大石さんの自宅をヘルパーが訪問すると、ドアを開けず、「来るな」や「帰れ」と大声で怒鳴り、ヘルパーを家にいれない。 2. どのくらいの時間、頻度で ヘルパーが訪問するたび。 現時点で2回 ステップ2では、評価する問題を明確に把握します。 3. 因果関係の推理 ひとりでいる時に知らない人が来ることに対する不安や恐怖があるのではないかと考えられる。

(具体的な経過目標と最終目標を設定する) Step3: 目標の設定 (具体的な経過目標と最終目標を設定する) 経過目標 ➀大石さんが、2週間以内に、ヘルパーに対して「来る    な」や「帰れ」と怒鳴らなくなる。 ➁大石さんが、1ヶ月以内に、ドアを開けてヘルパーと対  応する。 ③大石さんが、2ヶ月以内に、ヘルパーを毎回家に入れ  るようになる。 ステップ3では、目指すべき経過目標と最終目標を具体的に設定します。経過目標がプロセス評価の、そして最終目標が結果評価を行うための指標になります。 最終目標 大石さんが、ヘルパーのサービスを受け入れる。

Step4: 援助方法の決定 (援助方法を決定し仮説を完成する) Q1. Step3で設定した目標を達成するための援助方法をグ  ループで検討して決めてください。 ステップ4では、「いつ、どこで、誰が、何を、どうするのか」等、具体的な援助方法を決定します。 また、ステップ2のアセスメントの中で行った因果関係の推理をもとに、援助方法を検討する段階であり、これが、ソーシャルワーク過程の「支援計画の策定に該当」します。援助方法が決定すると、いよいよ仮説が完成します。 ステップ4で決定した援助を行えば、ステップ2で具体的に把握した問題は、ステップ3で設定した目標に至るだろうといった仮説です。実際に援助を行うことによって、この仮説を検証します。 ここでは、ステップ3で設定した目標を達成するための援助方法をグループで検討して決めていただきます。

Step4: 援助方法の決定 (援助方法を決定し仮説を完成する) Q1. Step3で設定した目標を達成するための援助方法をグ  ループで検討して決めてください。 検討例(援助方法を加えた仮説) 長女が電話をしてから、同一のヘルパーが継続して訪問すれば(援助・介入方法)、大石さんが、2週間以内に、ヘルパーに対して「来るな」や「帰れ」と怒鳴らなくなるだろう。

Step5: 測定方法の選択 Step6: 評価デザインの選択 大石さんのヘルパーに対する反応を数値化するために、目標達成スケールを活用することにしました。 Q2. それぞれの目標の結果を検討して記入してください。 ステップ5では、問題が援助によってどの程度目標に近づいているのかを測定する方法を選びます。ここでは、信頼性と妥当性がともに高い測定方法を選ぶ必要があります。またステップ6では、問題や目標が設定可能かどうかや、量的データの測定が可能かどうかなどの要因によって評価デザインを選びます。 ここでは、大石さんのヘルパーに対する反応を数値化するために、目標達成スケールを活用することにしました。それぞれの目標の結果を検討して記入してください。

Step5: 測定方法の選択 Step6: 評価デザインの選択 記載例

Step7: 測定の実施 ヘルパーによる訪問時の大石さんの反応をヘルパーが観察し、あなたとともにどの結果に該当するかを判断しました。以下がその結果です。  計算結果 1回 2回 3回 4回 5回 6回 7回 8回 9回 10回 11回 12回 スケール1 重要度 :5 -2 -1 1 スケール2 重要度:7 スケール3 重要度:10 合計値 -44 -39 -34 -27 -5 5

Step7で得られたデータをグラフに表します。 (得られたデータを分析する) Step7で得られたデータをグラフに表します。 ステップ8ではデータを分析します。期待される結果よりも非常に悪い状態が−44で、期待される結果よりも非常によい状態が44になるので、その数値が入るように縦軸を設定します。 今回は介入前の状態を測定することができているので、1回目と2回目の結果が基礎線Aとして、介入後の3回目以降が介入時の問題状況Bと捉えられるため、A-Bデザインとして評価することも可能です。

ディスカッションテーマ 日頃の実践を振り返り、どのように実践評価を活用することができるかについて話し合いましょう。