Cylindrical Drift Chamber ストレンジネス核物理グループ ストレンジクォーク 大強度加速器J-PARC@茨城県東海村 クォーク 通常の原子核=陽子と中性子 通常の原子核ではパウリの排他律のため、原子核深部の情報は引き出せない 陽子・中性子=uクォークとdクォーク 通常は存在しないsクォークを含んだ粒子(ハイペロン)を用いる ハイペロンはパウリの排他律を受けないので、原子核内部まで入り込むことができる 原子核内部をさぐるprobeとなりうる! 陽子 中性子 ハドロン実験施設 Λ粒子 K1.8BR K1.8 K1.8 Cylindrical Drift Chamber CDC 磁場内での荷電粒子の軌道を測定することにより運動量を求めることができる。 K1.8BR SKS Superconducting Kaon Spectrometer 大立体角を有する超電導双極子電磁石を用いることにより高分解能の測定をすることができる。 実験紹介 復興 2011年3月11日に起きた東日本大震災で、我々の実験グループも多大な被害を受けました。しかし今では見事復興し、順調に研究を行なっています。 【E05実験】 S=-2(ストレンジクォークを2個含んだもの)の系はダブルΛハイパー核が2種類見つかっているだけで未開拓の領域です。特にΞ粒子を含んだΞハイパー核に関する情報はなく、その存在自体確定していません。また、ΞN相互作用はSUf(3)での統一的理解に不可欠な要素でもあります。 我々はSKSを用いて(K⁻,K+)反応によるmissing mass分光によって、束縛状態のピーク位置を確定すと同時にΞの核内での強い相互作用(ΞN→ΛΛ)による転換幅の情報を得ようと考えています。 ※通常の核子では、核子とΔはエネルギー的に300MeV程度も離れているのでNとΔの結合はあまり生じませんが、S=-2の世界においてはΞNとΛΛの質量差はたった30MeVしかないため、channel couplingが非常に起きやすいと予想されています。 【E19実験】 クォークの束縛状態としてクォークが3つで構成されているバリオン、クォーク・反クォーク対で構成されるメソンがあります。しかし、量子色力学(QCD)はカラー一重項であることを要求しているだけで、4つ以上のクォークからなるエキゾチック粒子の存在を禁止していません。 1997年にuudds で表わされるペンタクォークΘ+の存在が理論的に予想され、SPring-8において実験的に発見されました。それ以降、様々な実験施設からΘ⁺発見の報告が相次ぎましたが、観測されなかったという報告も数多くあり、未だ存否が確定していません。 我々は、p(π⁻,K⁻)反応を用いたmissing mass分光を行い、Θ+の存否を確かめました。結果、Θ+は観測されませんでした。 2012年2月に追実験が行われ、現在データを解析中です。 Ξハイパー核分光実験 ペンタクォーク探索実験 SKS 震災後、修復のため測定器が取り払われた 測定器がインストールされた様子 現在(2012年6月) J-PARCにて 実験中!! 2012年2月、ビームタイム終了時の写真 予想されるスペクトル 実験で得られたスペクトル 予想されるスペクトル K中間子原子核とは、反K中間子が原子核中に強い相互作用で束縛された系です。K中間子原子核は、実粒子の中間子がバリオンと強い相互作用で束縛するという意味で、存在自体が興味深いものです。 反K中間子と核子がアイソスピン0を組んでいる状態で強い引力となることは以前から知られていましたが、近年になって3He・4 Heなどの軽い原子核中に反K中間子を束縛した系においては100MeV程度の大きな束縛エネルギーをもつという理論予想が出てきました。これは、通常の原子核における核子の束縛エネルギー約8MeVと比べて1桁大きいのです。これほどの強い引力が加わると、反K中間子がその周囲の核子を引き寄せ、原子核内部に高密度状態が形成されることが示唆されています。そうなると「密度の飽和性」を超えた物理を見ることができるかもしれません。 【E07実験】 2002年にΛ粒子を2つ含んだダブルハイパー核がKEK E373実験により見つかりました(Nagaraイベント)。この実験により、Λ-Λ間の相互作用ΔBΛΛが決定されました。この値は多くの理論予想に反して、ΛΛ相互作用が弱い引力である事を発見しました。 我々は、K-ビームをダイヤモンド標的に入射し、準自由反応p(K-,K+)Ξ‐で生成されたΞ‐がエマルション(原子核乾板)中の原子と反応してダブルハイパー核を生成・測定することで、 ΔBΛΛの核種依存性とダブルハイパー核の崩壊分岐比を測定しようと考えています。 ※ΛΛからのΣN崩壊の分岐比は0.1%と理論的に見積もられているにも関わらず、一例のΣN崩壊が報告されています。よって、統計をあげてS=-2の核からの崩壊の分岐比を求める事で、uuddssの6つのクォークからなるHダイバリオンの存否について議論する事ができるのです(Hダイバリオン核からのΣN崩壊の分岐比は50%程度と予想されている)。 【E03実験】 我々は、Ξ− 原子からのX 線のエネルギーを測定することで現在あまり知られていないΞ粒子と原子核の間に働く強い相互作用の情報を得たいと考えています。 鉄ターゲットにK− ビームを当て、(K−,K+) 反応によってΞ− 粒子を作り、同一ターゲット内でFeΞ− 原子を生成させます。このターゲットを高エネルギー分解能をもったGe 半導体検出器(Hyperball-J)で覆い、FeΞ− 原子からのX 線を測定します。このX 線のエネルギーシフト、幅、yield からΞ− 粒子と原子核の間の光学ポテンシャルを求めるのがこの実験の目的です。 K中間子原子核探索実験 ダブルハイパー核探索実験 Ξ原子からのX線測定実験 【E15実験】 3He(K-,n)により、K-中間子と2つの陽子の束縛状態であるK-pp束縛状態の探索を行います。K1.8BRにおいて、CDS (Cylindrical Detector System)と中性子検出器を用いて生成・崩壊反応に伴う粒子を全て測定することができます。 (missing mass法とinvariant mass法の両方用いた実験を行います。) 【E27実験】 d(π+,K+)により、K-中間子と2つの陽子の束縛状態であるK-pp束縛状態の探索を行います。K1.8において、K+の運動量をSKS測定してmissing mass分光によって、束縛エネルギーと崩壊幅を決定します。 また、崩壊から生じる陽子をレンジカウンターで捕えることで、K-pp束縛状態であることを確認します。 予想されるスペクトル Hyperball-J Nagaraイベント