黒部ダム排砂の影響調査 Impact of sediment release from dams on downstream vegetation 村形和也(Kazuya Murakata) 渡部裕介(Yusuke Watanabe) 浅枝隆(Takashi Asaeda) (株)建設技術研究所(CTI)

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黒部ダム排砂の影響調査 Impact of sediment release from dams on downstream vegetation 村形和也(Kazuya Murakata) 渡部裕介(Yusuke Watanabe) 浅枝隆(Takashi Asaeda) (株)建設技術研究所(CTI) ダム等の河川構造物により土砂が下流域に供給されないと下流域の河川環境には様々な影響がでる。黒部川の2つのダムでは近年、ダムの機能維持、下流への土砂供給のため排砂が行われている。排砂前の砂州土壌は比較的大きな礫だったが、排砂後はその上に粒径の細かい土砂が堆積しているのを確認した。本研究は排砂によってダムから供給される土砂が砂州上の植生にどのような影響を与えるかを調査した。調査は現地の砂州で優占していたカワヤナギとアキグミに特に着目して行った。排砂土砂は元々の土壌と比べると含水率、栄養塩濃度とも高く、排砂前後では土壌の窒素とリンの含有率比が約1から約2.5に変化し、排砂前と比較すると植生が成長しやすい土壌環境に変化した。また、樹種により生息エリアに違いが見られた。アキグミは比較的比高が高く排砂土砂の堆積が少ない場所に生息しており、カワヤナギは水際部で排砂土砂の堆積が多い場所に多く生息していた。この違いはアキグミがグミ科の植物であり、窒素固定菌と共生できることと関係がある。 Sediment cutoff by dams significantly alters downstream environments. Thus with the anticipation of restoring the downstream environment as well as maintaining the reservoir capacity, sediment release has been conduct in two dams of Kurobe River. In tandem to the sediment release, once completely gravel down stream sediment bars got covered with sand and witnessed colonization of trees and herbaceous plants. This study aimed of elucidating the relationship between sediment release and subsequent colonization trends of two dominant species; Salix gilgiana and Elaeagnus umbellata. Nutrient analyses on bar sediment suggest ratios of total nitrogen (TN) to total phosphorous (TP) increased from 1 to 2.5 as a result of sediment release. S. gilgiana preferred low lying areas with high soil nutrients budgets and fine particles, in contrast E. umbellata colonized even in areas where soil moisture and nutrients are scarce. Mycorrhiza activities of E. umbellata seemed to be a likely reason for thistrend apart from morphological features of both species. プロジェクトの流れ 調査計画 調査 実験・分析 勉強会 河川事務所等へ の連絡 再計画 共同研究企業や有識者 の方々からの意見 学会発表等 調査地概要 黒部川は、北アルプスの中央部に位置する鷲羽岳を源流として、富山湾に向かって流れる流路延長85km、流域面積682km2、平均河床勾配が1/5~1/119の日本屈指の急流河川。集水域でもある山岳地帯は、年間3000~4000mmの降水量が観測され、大量の水に恵まれていて高低差もあるため、水力発電に有利な条件を備えており、大正時代から水力発電が始められた。黒部川の流域は日本でも有数の土砂流出の激しい地域であるため、出洪水時に上流の出し平ダムへの流入量が一定水準に達したとき、宇奈月ダムと出し平ダムによる連携排砂を実施し ている。連携排砂は2001年6月から実施している。調査は河口より8.8kmの地点で行った。 調査内容 排砂前調査 調査日:2009年5月20日~23日 ・新しく生えてきた樹木の位置・樹高・樹種の測定 ・土砂採取(粒径・栄養塩測定) ・草本類バイオマス・栄養塩を測定 Fig.1 kurobe river Fig.3 new tree of Salix and Elaeagnus umbellata Fig.3 The location of new tree ・ヤナギは水際の粒径の細かいところ、 アキグミは水際から  はなれた粒径の粗いところに分布していた。 ・草本類の分布は水際からの距離や比高の高さなどによって  違いが見られ、また草本の種類にも違いが見られた。 今後の予定 ・今回の調査地点の粒径変化と土砂堆積量の把握(排砂前後の比較) ・今回の調査地点の土砂の栄養塩、含水率、有機物量(排砂前後の比較) ・今回の調査地点の草本の栄養塩、バイオマス(排砂前) ・新たに成長したアキグミ、カワヤナギの分布・密度(排砂前後の比較) ・排砂時の樹木のリタートラップに関するもの 樹木の進出状況と排砂・出水による変化を追跡する。