計算力学技術者2級 (熱流体力学分野の解析技術者) 認定試験対策講習会 ー 8章 ポスト処理 - 計算力学技術者2級 (熱流体力学分野の解析技術者) 認定試験対策講習会 ー 8章 ポスト処理 -
(認定レベル) 認定を取得した技術者は,基本的な流体力学,熱力学(伝熱学を含む)の問題に対して,単相の非圧縮性流/圧縮性流/層流/乱流の範囲において正しく解析問題を設定することができ,解析方法の内容を理解しており,さらに解析結果の信頼性を自分自身で検証することができる.よって,いずれかの信頼のおけるCAE ソフトウエアを用いて適切な解析機能を選択しながら,基本的な熱流体問題を大はずれを出すことなく解けるものと期待できる.
(8章の代表的なキーワード) 速度ベクトル表示 流体力の算出 エネルギー損失 質量流量 流線 コンター図 等値面図
(参考文献) 数値流体力学シリーズ1~6,数値流体力学編集委員会(東大出版会) 数値流体力学ハンドブック,小林敏雄編(丸善) 乱流の数値シミュレーション,梶島岳夫(養賢堂) 流れの数値シミュレーション,日本機械学会編(コロナ社) 熱と流れのシミュレーション,河村洋, 土方邦夫(丸善)
問8-1 ある流路に対して,流入口:速度規定境界条件,流出口:圧力規定境界条件として計算実行を行ったときに,任意断面における圧力の平均値を算出する方法として最も適切なものはどれか. 断面境界における圧力の面積荷重平均値を算出する. 断面内の圧力の流量荷重平均値を算出する. 断面内の節点(格子点)の圧力値を積算し,節点(格子点)数で除してアンサンブル平均値を算出する. 断面内の圧力の最大値と最小値の合計を2で除して算出する.
問8-1 解説 流れ場中の任意断面における平均圧力を算出する場合,断面における面積荷重平均と流量荷重平均の2通りの方法がよく用いられる.それぞれの定義は、次式で与えられる. 面積加重平均: 流量加重平均: ここで、Aは面積、ρは密度、uはその面に垂直な流速である.断面上の節点(格子点)の数値を積算して,節点(格子点)数で除するという方法は,計算格子が全て等分割で生成されている場合には適用できるが,格子幅に粗密がある場合には格子の密な領域の影響が強く出てしまい望ましくない.従って,②が正しい. キーワード: 面積荷重平均,流量荷重平均
問8-2 定常非圧縮性乱流解析を標準(高レイノルズ数型)k-ε乱流モデルと壁関数を用いて計算し収束解を得た.この解析で用いた壁関数の適応条件が満たされているかを確認するための結果処理として最も妥当なものはどれか. 速度ベクトルの分布表示 壁座標y+の分布表示 圧力の分布表示 乱流粘性の分布表示
問8-2 解説 一般的によく使用される対数則の壁関数は以下のように表記される. y+ y+≦y+m u+= 問8-2 解説 一般的によく使用される対数則の壁関数は以下のように表記される. y+ y+≦y+m u+= 1/k ln(Ey+) y+>y+m ここで, u+ : (u-uw)/ut u,uw : 接線方向の速度,壁面速度 ut : (τw/r)1/2 τw : 壁面せん断応力 y+ : 壁座標 ruty/m ≒rCm1/4k1/2y/m E : 実験定数 k : von Karman(フォンカルマン定数) y : 壁面からの法線方向距離 また,y+mは次式を満たす. y+m-1/k ln(Ey+m)=0 一般的に,壁関数を使用が適切かどうかは,y+の分布を表示し,30から200程度の範囲内に入っているかどうかを確認すればよいので,②. yut/n キーワード: y+分布
問8-3 定常非圧縮性乱流解析を行った.計算がきちんと収束しているかどうかを確認するための方法として,不適切なものはどれか. 質量,運動量などの保存則の残差が指定した収束判定値まで下がっていることを確認する. 速度分布表示にて流出境界で逆流が起きていないことを確認する. 追加で適当なイタレーション数の計算を継続し,速度ベクトルや圧力コンターが大きく変化しないことを確認する. 解析結果を評価するための値を任意の位置でモニターしている場合には、その値が変化しなくなっていることを確認する.
問8-3 解説 定常流れ計算( )を実施したときの収束 判定を行う場合,一般的には保存則の残差があ る一定レベルまで下がっていること,物理量の変 化がほとんど無いことなどが判断基準になる.流 出境界で逆流が起こっていないことを確認するこ とは流れ場が収束しているための必要事項の一 つではあるが,逆流が起こっていないから収束し ているという判断は難しい.従って,この中で不適 切なのは②. キーワード: 収束判定
問8-4 定常非圧縮性流れ解析を行った.流入境界は一辺5cmの正方形形状で流れが流入境界面に対して垂直な方向に2m/sで一様に流入している.2cm x 5 cmの長方形形状の出口境界において逆流なしで流れが流出している場合,出口境界での平均流速は何m/sが妥当か. ① 1m/s ② 2 m/s ③ 5 m/s ④ 10 m/s
定常非圧縮流れであるので,連続の式より流入体積流量と流 出体積流量は等しくなる. 問8-4 解説 定常非圧縮流れであるので,連続の式より流入体積流量と流 出体積流量は等しくなる. ・体積流量:断面積×垂直方向平均速度 従って,断面積の関係から算出すると答えは③. なお、粘性を考慮した解析を行った場合、壁面付近に境界層 ができるため、流路中央の流速は上記の値より大きくなる. キーワード: 連続の式
下図のようにx軸方向の流れの中に置いた障害物周りの定常非圧縮流れ解析を行った.抗力を求めるための結果処理として正しいのはどれか. 問8-5 下図のようにx軸方向の流れの中に置いた障害物周りの定常非圧縮流れ解析を行った.抗力を求めるための結果処理として正しいのはどれか. 圧力によるx方向に作用する力を算出する. 圧力によるy方向に作用する力を算出する. 圧力とせん断力によるx方向に作用する力を算出する. 圧力とせん断力によるy方向に作用する力を算出する. 流れ x y
問8-5 解説 抗力を計算する場合,圧力による力(面に 対する法線方向の力)のほかに摩擦による せん断力も考慮する必要がある.抗力は流 れ方向(x方向)の力なので、正解は③. キーワード: 抗力
3次元流れ解析を行った.流れの方向を確認するのに 最も適している結果処理はどれか. 速度の絶対値の3次元等値面図 圧力の3次元等値面図 問8-6 3次元流れ解析を行った.流れの方向を確認するのに 最も適している結果処理はどれか. 速度の絶対値の3次元等値面図 圧力の3次元等値面図 主流方向速度成分の等値線図 速度ベクトル図
解析の目的に応じて,計算結果の可視化方法を使い分けることはよく行われる. 問8-6 解説 解析の目的に応じて,計算結果の可視化方法を使い分けることはよく行われる. 例えば,ある任意の断面において,圧力や温度の分布状況を把握したい場合には,断面のコンター表示(等値線図も含む),3次元的な分布を確認する場合には3次元等値面表示,局所的な流れの向きなどを確認する場合には速度ベクトル表示,さらには,入口から出口までどのような経路で流れているのかを直感的に確認する場合には,流線表示あるいは仮想粒子を飛ばしたアニメーション表示などが用いられる. この設問では,流れの向きを確認することが目的であるので,最も適切な表示方法は④. キーワード: ベクトル図,コンター図,等値面図,流線
ある流路内の非圧縮性流れの解析を行った場 合に,エネルギー損失量を評価する方法として 適切なものはどれか. 問8-7 ある流路内の非圧縮性流れの解析を行った場 合に,エネルギー損失量を評価する方法として 適切なものはどれか. 入口と出口の静圧を比較する. 入口と出口の流量を比較する. 入口と出口の全圧を比較する. 入口と出口の速度を比較する.
エネルギー損失量の評価には全圧(=静圧+動圧)を使用するので③が正解. 問8-7 解説 エネルギー損失量の評価には全圧(=静圧+動圧)を使用するので③が正解. 全圧=静圧(p)+動圧(1/2ru2) キーワード: エネルギー損失量
問8-8 ある流路について流入口に速度規定境界条件(一様流と仮定),流出口に圧力規定境界条件を与えて,非定常圧縮性流れ計算を行った.流出口での質量流量を算出する方法として最も適切なものはどれか. 流入口での体積流量に密度の面積加重平均値を掛けて求める. 流入口での速度の絶対値と密度および面積を掛け合わせた値 を積算して求める. 流出口での体積流量に密度の面積加重平均値を掛けて求める. 流出口境界面に対して垂直な速度,密度および面積を掛け合 わせた値を積算して求める.
問8-8 解説 非定常圧縮性流れ計算なので,必ずしも入口流量と出口流量が等しいわけではない.また流出口での流れの様相によっては流出境界から計算領域に入ってくる場合も存在するので,速度の絶対値から算出するのは不適切.流出境界にて密度が分布を持つ場合には体積流量に平均密度を掛けて求める方法では正確な値を求めることは出来ない.従って,④. キーワード: 質量流量,体積流量
衝撃波を伴う超音速流れの計算を行った.衝撃波の可視化方法として最も適切な方法はどれか. 速度ベクトル図 流線図 速度絶対値コンター図 問8-9 衝撃波を伴う超音速流れの計算を行った.衝撃波の可視化方法として最も適切な方法はどれか. 速度ベクトル図 流線図 速度絶対値コンター図 圧力等値線図
問8-9 解説 衝撃波前後では圧力や密度が急激に変化するため,圧力や密度の等値線図を描くと分かりやすい.速度も急激に変化するが,変化する領域が狭く,よほど衝撃波付近を拡大しないと速度ベクトルが重なって見にくいため,ほとんど使われない.また,流線は,斜め衝撃波であれば流れ方向が変化するため衝撃波を確認することができるが,垂直衝撃波では流れ方向が変化しないため衝撃波がどこのあるのか分からない.したがって,最も適しているのは④. キーワード: 衝撃波,可視化
問8-10 固体が発熱し,固体と流体の熱伝達を考慮した計算を行った.固体から 流体への熱伝達を理解するための結果処理方法として最も不適切と思わ れるものはどれか. 固体と流体を含む断面の温度コンターを表示するために,温度差が大 きいところでは固体部分と流体部分を別々にコンター表示すると温度分布 が分かりやすい. 発熱するのは固体部なので固体の温度コンターだけを表示すればよい. 固体部分の温度がほぼ一様であるならば流体側だけの温度コンターを 表示しても熱伝達の様相はある程度把握できる. ④流体の温度コンターだけでなく速度ベクトルも一緒に表示すると速度 場と温度場の関係が分かりやすくなる.
問8-10 解説 流体と固体の熱伝達の様相を把握するための結果処理を行う場合には,流体側の温度コンターは必須であると思われる.さらに速度ベクトルも併記すると,流れによりどの部分の熱伝達が促進されるかなどのより詳細な情報が得られる.固体と流体で温度差が違いすぎるような場合には,別々にコンター図を作成して両図を合わせると見やすい図となる.従って不適切な方法としては②. キーワード: 温度コンター
問8-11 定常管内流れの計算を行った.下図の結果処理の名称を表わす組み合わせとして正しいものはどれか. 定常管内流れの計算を行った.下図の結果処理の名称を表わす組み合わせとして正しいものはどれか. (a)流線図 (b)速度ベクトル図 (c)圧力コンター図 (a)圧力コンター図 (b)流線図 (c)速度ベクトル図 (a)速度ベクトル図 (b)圧力コンター図 (c)流線図 (a)速度ベクトル図 (b)流線図 (c)圧力コンター図
流線:曲線上の各点において接線が速度ベクトルの方向と一致する曲線 問8-11 解説 管内の流れの結果として, (a)が速度ベクトル図 (b)が圧力コンター図 (c)が流線図を表すので,正解は③. 流線:曲線上の各点において接線が速度ベクトルの方向と一致する曲線 キーワード: 流線図,ベクトル図,コンター図
問8-12 図1のような解析領域,境界条件の下,等温度の非圧縮性流体の定常解析を行ったところ,図2のような静圧力分布および流速分布が得られた.このとき,流線のパターンとして正しいと思われるものは(図3のうちの)どれか. ただし,紙面垂直方向の流れは無視できるものとし,重力の影響は無視できるものとする. (図は次ページ) ① A ② B ③ C ④ 該当なし
問8-12(続き) 図1 図2 図3
問8-12 解説 この問題では予め非圧縮性流体であることを断り,流入(出)境界での圧力の大小関係を境界条件として規定している.通常は高圧から低圧に向かう流れとなるので,最も相対圧の高い流れ境界1が流入境界となり,他の各流れ境界に向かって流れが発生する. 解析形状の影響はあるが,特に差圧が最も大きな流れ境界1と3の間には比較的明確な流れのパターンが観測されることが予測できる.その点で,流れ境界3に明示的な流出の観測されないBは解ではない. また,Cについては,流れ境界4が旋回の途中に位置するような流れが見られる.流れ境界4は,流れ境界3に次いで流入境界との差圧が大きいにもかかわらず,流れ境界4からの十分な流出が起きていないことが予測できる.従ってCも解とは成り得ず,残るAが解となるので①. キーワード: 流線
問8-13 図1のような条件下(一様流速 1m/s,流体密度 1kg/m3)で一様流中の角柱周りの非圧縮性流れ解析を行ったところ,図2のような流速分布が得られた.このとき,解析結果として得られた流入境界での静圧は0.1[Pa]であった.角柱面上のよどみ点Aの静圧として最も適当な値はどれか.ただし,紙面垂直方向の流れの影響はなく,重力の影響は無視できるものとする. ① 0.5 ② 0.6 ③ 0.7 ④ 0.8 スカラー流速 [m/s] 図1 図2
問8-13 解説 流入境界の静圧は0.1[Pa]であり,一様流速は1[m/s]と与えられている.また流体密度は1[kg/m3]であることから,解析領域に流入する全圧は,動圧の与式を用いて, 流入静圧+(1/2)×1×12 = 0.1+0.5 = 0.6[Pa] であることが計算できる.ちなみに外部領域はフリースリップで摩擦損失はないため,解析上,淀み点(速度=0)静圧は流入全圧に等しく0.6[Pa]になるので,②. キーワード: 動圧,静圧
問8-14 以下のポスト処理に関する文章について,最も不適切なものはどれか. 一様流中に置かれた球の周りの圧力分布を三次元的に調べるため,圧力の等値面図を作成した. 二次元計算において,二次元噴流内の渦の様子を可視化するため,渦度の等高線図を作成した. 管路内の断面二次流れの様子を調べるため,任意の管軸垂直断面内の速度成分により速度ベクトル図を作成した. 非定常な流れにおいて,流入部から流出部まで移動する粒子の動きを可視化するため,流線図を作成した.
等値面や等高線図はスカラー量の可視化に有効である.他方,ベクトル図は速度,運動量,力などの大きさと向きを持つベクトル量の可視化に有効である. 問8-14 解説 等値面や等高線図はスカラー量の可視化に有効である.他方,ベクトル図は速度,運動量,力などの大きさと向きを持つベクトル量の可視化に有効である. 流線図は定常流れにおいて,粒子の軌跡と一致する.しかし,非定常流れでは,流線は瞬間ごとに変化するため,流線図では流入部から流出部までの粒子の動きは表現できない. 従って,最も不適切な文章は④. キーワード: 等値面図,等高線図,ベクトル図,流線図