第8章 外部性と公共財 パレート最適が達成するための条件:

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第8章 外部性と公共財 パレート最適が達成するための条件: 市場の普遍性:すべての財に対して市場が存在し,交換が行われる。 完全競争の条件:すべての市場で完全競争が支配し,すべての生産要素が企業間・産業間で自由に移動できる。 凸環境の条件:効用関数・生産関数は他の経済主体の消費量・産出量から独立であり,されに限界代替率逓減の法則,限界費用逓減の法則が成り立つ。 安定性の条件:競争均衡が安定的で,均衡はずれても素早く均衡が回復される。   これらの条件のうちいくつかが満たされずに市場機構(市場メカニズム)を通じて資源の最適配分(パレート効率性)が達成できない状況を市場の失敗market failureと呼ぶ。 ミクロ経済学

第8章 外部性と公共財 (1) 外部性externality ある経済主体の経済活動が,他の経済主体の経済活動に与える(市場を経由せず)直接な影響を,外部効果external economiesあるいは外部性と呼ぶ。 その影響が外部効果の受け手にとって好ましいもの(効用を高めたり生産量を増やしたりするもの)であれば外部経済external economiesあるいは正の外部効果と呼ぶ。逆に好ましくないものであれば外部不経済external diseconomiesあるいは負の外部効果と呼ぶ。 例えば,地球環境と自動車,リンゴ園と養蜂園,パソコンのOS パソコンの生産量とプログラマーの賃金単に市場を通じて,市場の相互関連の結果として,他の市場の均衡価格に変化をもたらす効果は市場の失敗に結び付かず,金銭的外部効果pecuniary external economiesと呼ぶ。これに対して,市場を経由しない外部効果を技術的外部効果technological external economiesとも呼ばれる。 ミクロ経済学

第8章 外部性と公共財 (2) 環境問題のモデル(外部不経済の例) 社会的限界費用  川の上流の企業Aが廃水を川に放出し,その量が多いほど,下流の染物工場(企業B)が浄水能力を増大せざるを得なくなるというのは,企業Aが企業Bに外部不経済を与えている。 企業Aの生産関数: yA=fA(xA) (生産量yAが投入量xAのみに依存する) 企業Bの生産関数: yB=fB(xB , yA) (生産量yBが投入量xBのみならず, 企業Aの生産量yAにも依存する) 産業Aの 生産量 O 価格p 産業Aの企業の行動: 価格p=私的限界費用MCA (供給曲線S) A商品の消費者の行動: 価格p=限界評価MU (需要曲線D) A市場の完全競争解: E点 D S E yA ミクロ経済学

社会的限界費用SMCA=限界外部費用MC*+私的限界費用MCA 第8章 外部性と公共財 (2) 環境問題のモデル(外部不経済の例) 社会的限界費用   産業Aの企業の行動: 価格p=私的限界費用MCA (供給曲線S)   産業Aが産業Bへの外部不経済: 産業Aの生産量を1単位増加するごとに産業Bが一定の浄水費用を被る。 産業Aの社会的限界費用: 浄水費用はA製品の生産によって生じた費用であるが,産業Aにとってこれが外部費用として社会が負担している。 社会的限界費用SMCA=限界外部費用MC*+私的限界費用MCA 産業Aの 生産量 O 価格p SMCA =MC*+MCA 社会的限界費用SMCAが消費者の限界評価MUに等しいときの生産量はyA*である。 D E* S E yA* 産出量=yA* 時の 社会的総余剰 yA MC* ミクロ経済学

社会的限界費用SMCA=限界外部費用MC*+私的限界費用MCA 第8章 外部性と公共財 (2) 環境問題のモデル(外部不経済の例) 社会的限界費用   産業Aの企業の行動: 価格p=私的限界費用MCA (供給曲線S)   産業Aが産業Bへの外部不経済: 産業Aの生産量を1単位増加するごとに産業Bが一定の浄水費用を被る。 産業Aの社会的限界費用: 浄水費用はA製品の生産によって生じた費用であるが,産業Aにとってこれが外部費用として社会が負担している。 社会的限界費用SMCA=限界外部費用MC*+私的限界費用MCA 産出量=yA 時の 社会的総余剰=消費者余剰+生産者余剰-外部費用 産業Aの 生産量 O 価格p SMCA =MC*+MCA 社会的限界費用SMCAが消費者の限界評価MUに等しいときの生産量はyA*である。 D E* 産出量= yA  時の 消費者余剰+生産者余剰 S E yA* yA MC* 産出量= yA 時の 外部費用C* 産出量= yA  時の 社会的余剰の損失 過剰供給 ミクロ経済学

第8章 外部性と公共財 (3) 外部性による市場の失敗(外部不経済の例) 外部不効果の場合 社会的限界費用 > 私的限界費用  (両者の乖離)  供給は過剰になり,資源配分の歪みdistortionが生じる。 市場に任せると,外部不経済の費用が産業Aの行動決定に反映されず,結果として,生産量は社会的に望ましい水準よりも大きくなるのである。 産出量=yA の場合 産出量=yA* の場合 社会的総余剰 社会的総余剰 社会的余剰の損失 生産量 O 価格p 生産量 O 価格p 社会的限界費用 社会的限界費用 D D 私的限界費用 S S 私的限界費用 yA yA* yA* yA MC* MC* ミクロ経済学

第8章 外部性と公共財 (3) 外部性による市場の失敗(外部不経済の例) 外部効果が存在する場合に,私的費用と社会的費用あるいは私的便益と社会的便益と乖離し,それによって,資源が当事者の一方には過剰に,他方には過少に配分されるという「ゆがみdistortion」が生じることになる。 そのような事態の下で,市場機構のみに頼ってパレート最適配分を実現することは不可能となる。 この欠落性を補正するには,外部効果の発生源と影響の方向が明確しているかどうかによって,対策が変わる。 外部効果の発生源と影響の方向が明確している場合,ピグー課税や内部化などの補正手段がある。 外部効果の発生源と影響の方向が明確していない場合,公共ないしは政府の立場からする市場介入が必要とされざるを得なくなる。 ミクロ経済学

第8章 外部性と公共財 (3) 外部性による市場の失敗(外部不経済の例) 外部効果が存在する場合に,私的費用と社会的費用あるいは私的便益と社会的便益と乖離し,それによって,資源が当事者の一方には過剰に,他方には過少に配分されるという「ゆがみdistortion」が生じることになる。 外部効果の発生源と影響の方向が明確している場合,ピグー課税や内部化などの補正手段がある。 外部効果の発生源と影響の方向が明確していない場合,公共ないしは政府の立場からする市場介入が必要とされざるを得なくなる。 ■外部経済の内部化 正の外部経済の場合: (例ば,家電メーカーと音楽ソフト産業の企業) 正の外部経済をもたらす2つの企業間では合併や統合(垂直統合)などを通じて,統一的な意思決定をすることによって,外部経済を内部化する。 負の外部経済の場合: 垂直統合は現実的に容易ではない。 ミクロ経済学

第8章 外部性と公共財 (4) 環境対策(ピグー課税) ピグー課税①: 政府は外部不経済を生む企業に,生産量を1単位当たりに(SMCA-MCA)に等しい税を課する。産業Aに属する企業にとって限界費用は次のようになる。 限界費用MCA*=私的限界費用MCA+課税率 =MCA+(SMCA-MCA) =SMCA (社会的限界費用) 問題は政府税収の使い道が不明である。 民間部門に返還するとしも,どの民間部門に返還するかは不明である。 但し,資源配分の効率性は実現される。 社会的総余剰 産業Aの 生産量 O 価格p SMCA =MC*+MCA SMCA =MCA* D S yA* yA 課税率 政府税収 =外部費用 ミクロ経済学

第8章 外部性と公共財 (4) 環境対策(ピグー課税) ピグー課税②: 政府は外部不経済を生む企業に,yA*以上の生産量に対して,生産量を1単位当たりに(SMCA-MCA)に等しい税を課する。産業Aに属する企業にとって限界費用は次のようになる。 yA*以上生産する時に,限界費用MCA*=私的限界費用MCA+税金 =MCA+(SMCA-MCA) =SMCA (社会的限界費用) この場合,政府税収はゼロとあり,税収の分配問題は発生しない。 但し,資源配分の効率性は実現される。 社会的総余剰 産業Aの 生産量 O 価格p SMCA =MC*+MCA SMCA =MCA* D S yA* yA 課税率 外部費用 ミクロ経済学

第8章 外部性と公共財 (4) 環境対策(補助金) 補 助 金: 政府は外部不経済を生む企業に生産量を1単位減らすことに(SMCA-MCA)に等しい補助金を支払う。産業Aに属する企業にとって,生産量を1単位増加させるごとに私的限界費用を費やす上に,補助金を受け取れる機会をも失う。したがって, 限界費用MCA*=私的限界費用MCA+補助金 = MCA+(SMCA-MCA) =SMCA (社会的限界費用) この場合,政府補助金は,税収として民間部門から徴収するが,どのように徴収するかは不明である。 但し,資源配分の効率性は実現される。 社会的総余剰 産業Aの 生産量 O 価格p SMCA =MC*+MCA SMCA =MCA* D S yA* 政府補助金 yA 補助金 外部費用 ミクロ経済学

第8章 外部性と公共財 (4) 環境対策(当事者間交渉とコースの定理) 外部効果の発生源と影響の方向が明確している場合,当事者間の交渉によって,外部不経済を減少することが可能である。 交渉の結果 外部不経済の発生者が受け手に対して, (SMCA-MCA)に等しい金額の補償金を支払う。こうなれば,政府が課税をする場合と同じく,生産量はyA*に落ち着くことになる。 生産量を減らすとき,1単位に付き(SMCA-MCA)に等しい金額を外部不経済の受け手が発生者に支払う。この場合は補助金制度と同じく,生産量はyA*に落ち着くことになる。 コースの定理: どちらが貨幣を支払うかによって所得分配は変わるが,発生者が受け手に支払う,受け手が発生者に支払う,そのどちらの方法でも,最適な生産量を実現できる。 ロナルド・H・コース (Ronald H. Coase, 1910-) はシカゴ学派の一員である。企業などの経済組織や制度、および「コースの定理」について経済理論への貢献は大きい。1990年にノーベル経済賞を受賞した。 ミクロ経済学

第8章 外部性と公共財 (4) 環境対策(当事者間交渉とコースの定理) 外部効果の発生源と影響の方向が明確している場合,当事者間の交渉によって,外部不経済を減少することが可能である。 交渉の結果 外部不経済の発生者が受け手に対して, (SMCA-MCA)に等しい金額の補償金を支払う。こうなれば,政府が課税をする場合と同じく,生産量はyA*に落ち着くことになる。 生産量を減らすとき,1単位に付き(SMCA-MCA)に等しい金額を外部不経済の受け手が発生者に支払う。この場合は補助金制度と同じく,生産量はyA*に落ち着くことになる。 コースの定理: どちらが貨幣を支払うかによって所得分配は変わるが,発生者が受け手に支払う,受け手が発生者に支払う,そのどちらの方法でも,最適な生産量を実現できる。 つまり,当事者間で交渉に費用がなければ,どちらに法的な権利を配分しても,当事者間での自発的な交渉は同じ資源配分の状況をもたらし,しかもそれは効率的になる。 ミクロ経済学

第8章 外部性と公共財 (4) 環境対策(その他) *数量規制 *市場の創設 もし,最適な生産量の情報を知っていれば,政府は企業に対し,生産水準 をその量と一致するような数量規制の手段がある。 しかし,実際は最適な生産量の情報を得ることが困難であり,実行は難しい。 *市場の創設 環境利用権の市場が形成されれば,環境問題は解決する可能性があるの で,政府はそのような市場の形成を促進する政策を打ち出す手段がある。 具体的には,各企業に汚染物質の排出量を割り当て,各企業は自分に割り当てられた排出の権限量を,市場で売買することができるようにする。 環境技術を進めた企業は排出権を売ることによって利益を拡大し,環境技術の開発が促進される。環境技術が遅れた企業は排出権を買うことによって,限界費用が増加し,生産量が減少することになる。 ミクロ経済学

第8章 外部性と公共財 ■外部経済の内部化のまとめ 方 法 意 味 問題点 合併 垂直統合 ピグー課税 市場の創設 コースの定理 方 法 意 味 問題点 合併 垂直統合 当事者同士で1つの主体として行動する 利害の対立する主体間での合併は困難 ピグー課税 政府が外部効果を相殺するように税金で調整 適切な課税の大きさを政府が認識できるかどうか 市場の創設 市場を通して外部経済が取引されるようにする 市場取引になじまないものが多い コースの定理 当事者同士で交渉すれば,効率的な生産水準に落ちつく 権利の確定が困難 交渉にコストがかかる ミクロ経済学

第8章 外部性と公共財 パレート最適が達成するための条件: 市場の普遍性:すべての財に対して市場が存在し,交換が行われる。 完全競争の条件:すべての市場で完全競争が支配し,すべての生産要素が企業間・産業間で自由に移動できる。 凸環境の条件:効用関数・生産関数は他の経済主体の消費量・産出量から独立であり,されに限界代替率逓減の法則,限界費用逓増の法則が成り立つ。 安定性の条件:競争均衡が安定的で,均衡はずれても素早く均衡が回復される。   これらの条件のうちいくつかが満たされずに市場メカニズムが資源の最適配分を達成できないことを市場の失敗market failureと呼ぶ。 ミクロ経済学

第8章 外部性と公共財 3 公共財 ■公共財とは 非競合性と非排除性の両方の性質を持つ財は公共財と呼ばれる。 例えば,NHK放送,灯台,公園,図書館など。 非競合性non-rivalness: ある消費者が消費することによって他の消費者の消費量が減少することがなく,追加的な費用なしで全員が同時にその財の供給量を消費することができる。 非排除性non-excludability: 対価を支払わない消費行動を排除することができない。(排除不可能性,消費の非排除性、消費の排除不可能性ともいう。) 競合性 非競合性 排除性 非排除性 なお,教育,学校給食,老人医療など,私的財として供給することが容易であったにも関わらず,政府が社会的に重要であると見なし,公共財として供給するサービスもある。これをメリット財(価値財)と呼ばれる。 准公共 財 私 的 財 医療サービス 混雑が起こり安い 道路などの公共施設 食料,住居,衣服 年金,保険 純粋公共 財 テレビ・ラジオ放送 准公共 財 ケーブルテレビ 国防,消防,警察 有料道路,遊園地 伝染病予防 劇場,映画館 ミクロ経済学

第8章 外部性と公共財 3 公共財 ■公共財とは ■公共財の正の外部性 私的財の消費について: 対価を支払った消費者のみがその財の消費で効用を高める。 公共財の消費について: 対価を支払った消費者のみならず,周囲の人々も効用を高めることができる。(例えば,自宅前の街灯設置,自宅の庭を綺麗に整備など) 非競合性と非排除性の両方の性質を持つ財は公共財と呼ばれる。例えば,NHK放送,灯台など。 非競合性non-rivalness: ある消費者が消費することによって他の消費者の消費量が減少することがなく,追加的な費用なしで全員が同時にその財の供給量を消費することができる。 非排除性non-excludability: 対価を支払わない消費行動を排除することができない。(排除不可能性,消費の非排除性、消費の排除不可能性ともいう。) ミクロ経済学

第8章 外部性と公共財 3 公共財 ■公共財とは ■公共財の最適供給:サムエルソンの公式 X=∑xi Y=yi 私的財の消費について: 社会全体の供給量=各消費者の消費量の合計 X=∑xi 公共財の消費について: 社会全体の供給量=各消費者の消費量 Y=yi 非競合性と非排除性の両方の性質を持つ財は公共財と呼ばれる。例えば,NHK放送,灯台など。 非競合性non-rivalness: ある消費者が消費することによって他の消費者の消費量が減少することがなく,追加的な費用なしで全員が同時にその財の供給量を消費することができる。 非排除性non-excludability: 対価を支払わない消費行動を排除することができない。(排除不可能性,消費の非排除性、消費の排除不可能性ともいう。) ミクロ経済学

第8章 外部性と公共財 4 公共財の供給と市場の失敗 ■公共財の最適供給:サムエルソンの公式 私的財の消費について: X=∑xi 消費者1の無差別曲線 U1=一定 4 公共財の供給と市場の失敗 ■公共財の最適供給:サムエルソンの公式 私的財の消費について: X=∑xi 公共財の消費について: Y=yi 私的財と公共財の生産可能曲線: 資源制約の下で,私的財と公共財の 最大可能な生産量組合せを表す。 消費者i の効用:Ui=Ui(xi,Y) 無差別曲線として表せる。 パレート最適:(2人からなる社会の場合) ある個人の効用を所与として,別の個人 の効用を最大にする。 生産可能曲線 公共財 生産量Y O 私的財 生産量X 公共財 生産量Y O 私的財 生産量X 消費者2の 消費機会曲線 U1=一定の下で, U2が最大となるような 消費者2の無差別曲線 ミクロ経済学

第8章 外部性と公共財 4 公共財の供給と市場の失敗 ■公共財の最適供給:サムエルソンの公式 私的財の消費について: X=∑xi 消費者1の無差別曲線 U1=一定 4 公共財の供給と市場の失敗 ■公共財の最適供給:サムエルソンの公式 私的財の消費について: X=∑xi 公共財の消費について: Y=yi 私的財と公共財の生産可能曲線: 資源制約の下で,私的財と公共財の 最大可能な生産量組合せを表す。 消費者i の効用:Ui=Ui(xi,Y) 無差別曲線として表せる。 パレート最適:(2人からなる社会の場合) ある個人の効用を所与として,別の個人 の効用を最大にする。 公共財最適供給の条件: MRS2=MRT-MRS1 MRS1+MRS2=MRT 生産可能曲線 公共財 生産量Y O 私的財 生産量X MRT MRS1 公共財 生産量Y O 私的財 生産量X 消費者2の 消費機会曲線 U1=一定の下で, U2が最大となるような 消費者2の無差別曲線 MRS2 Y* サムエルソンの公式: ∑MRSi=MRT ミクロ経済学

第8章 外部性と公共財 4 公共財の供給と市場の失敗 ■公共財の最適供給:サムエルソンの公式 公共財最適供給の条件: 消費者1の無差別曲線 U1=一定 4 公共財の供給と市場の失敗 ■公共財の最適供給:サムエルソンの公式 公共財最適供給の条件: 生産可能曲線 公共財 生産量Y O 私的財 生産量X サムエルソンの公式: ∑MRSi=MRT 公共財と私的財との各個人の限界代替率の総和 MRT 公共財と私的財との生産における限界変形率 MRS1 ↑ 公共財を1単位追加的に供給してもらえるなら,どれぐらいまで私的財を手放す用意があるかを示す。 公共財の限界評価との関係がある。 ↑ 公共財を1単位追加的に生産するために,どれぐらいの私的財の生産量を減少にしなければならないかを示す。 公共財の限界費用との関係がある。 公共財 生産量Y O 私的財 生産量X 消費者2の 消費機会曲線 MRS2 Y* ミクロ経済学

第8章 外部性と公共財 4 公共財の供給と市場の失敗 ■公共財の最適供給:サムエルソンの公式 = 公共財最適供給の条件: 公共財に対する各個 人の限界評価の合計 公共財生産の限界費用 = サムエルソンの公式の別の解釈 サムエルソンの公式: ∑MRSi=MRT 公共財と私的財との各個人の限界代替率の総和 公共財と私的財との生産における限界変形率 公共財の限界評価: 公共財を1単位追加的に供給してもらえるなら,どれぐらいまでお金を支払う用意があるかを示している。 ↑ 公共財を1単位追加的に供給してもらえるなら,どれぐらいまで私的財を手放す用意があるかを示す。 公共財の限界評価との関係がある。 ↑ 公共財を1単位追加的に生産するために,どれぐらいの私的財の生産量を減少にしなければならないかを示す。 公共財の限界費用との関係がある。 公共財の限界費用: 公共財を1単位を追加的に生産するために,どれぐらいの費用を追加しなければならないかを示している。 ミクロ経済学

第8章 外部性と公共財 4 公共財の供給 ■公共財の最適供給: = = 公共財最適供給の条件: サムエルソンの公式: ∑MRSi=MRT 公共財の量 Aの 限界評価 pA dA サムエルソンの公式: ∑MRSi=MRT 公共財の量 Bの 限界評価 公共財に対する各個 人の限界評価の合計 公共財生産の限界費用 = サムエルソンの公式の別の解釈 pB dB 各個人の公共財に対する限界評価の合計が社会的限界評価と呼ばれるので,上の式は下記ように書き換える。 公共財の量 社会的 限界評価 限界費用MC 公共財に対する 社会的限界評価 公共財生産の限界費用 = サムエルソンの公式の別の解釈 pA+pB E dA+dB y* ミクロ経済学

第8章 外部性と公共財 4 公共財の市場の失敗 ■公共財の最適供給: = 公共財最適供給の条件: 公共財に対する 社会的限界評価 公共財の量 Aの 限界評価 pA dA 公共財に対する 社会的限界評価 公共財生産の限界費用 = 公共財の量 Bの 限界評価 ■公共財の負担とただ乗り 各個人が各自の限界評価に応じて,それぞれの費用を負担すれば,公共財を最適供給することが可能である。 しかし,①政府は各個人の公共財に対する評価の情報を持っておらず,②公共財の非排除性の性質を持つから,公共財利用者が自分の評価を過小に表すようなただ乗り(フリーライダーfree rider)行為を誘発する。 このただ乗り行為は,公共財最適供給を妨げている。 pB dB 公共財の量 社会的 限界評価 限界費用MC pA+pB E dA+dB y*

第8章 外部性と公共財 4 公共財の市場の失敗 ■公共財供給量の決定 = 公共財最適供給の条件: しかし,政府は各個人の公共財に対する評価の情報を持っていない。 ① 投票による決定(モデル:公共財生産の限界費用=c,消費者3人で費用均等分担) 公共財に対する 社会的限界評価 公共財生の限界費用 = 各個人にとって: 公共財の価格=c/3 公共財の望しい供給量=x1, x2, x3 社会的に公共財の最適供給: d1+d2+d3=c ⇒ (d1+d2+d3)/3=c/3 2つの政党の公約競争: XA,XB 政党A 政党B x1 < XA < x2 x1 < XA < XB < x2 XA = x2 XB ≠ x2 結果:公共財の最適供給量の近似値が実現 D/3 d3 d2 公共財の量 各個人の 限界評価 d1 c/3 XA XB x1 x2 X* x3 (B勝) (A勝)

第8章 外部性と公共財 4 公共財の市場の失敗 ■公共財供給量の決定 = 公共財最適供給の条件: ② リンダールの方法(モデル:公共財生産の限界費用=c,消費者2人で不均等分担) 公共財に対する 社会的限界評価 公共財生の限界費用 = 政府の提案: それぞれacと(1-a)cを負担,但し,0 < a < 1 各個人にとって: 公共財の望しい供給量=x1, x2, 公共財の量 各個人の 限界評価 公共財の量 各個人の 限界評価 d2 d1 (1-a)c x2 ac x1

第8章 外部性と公共財 4 公共財の市場の失敗 ■公共財供給量の決定 = 公共財最適供給の条件: ② リンダールの方法(モデル:公共財生産の限界費用=c,消費者2人で不均等分担) 公共財に対する 社会的限界評価 公共財生の限界費用 = 政府の提案: それぞれacと(1-a)cを負担,但し,0 < a < 1 各個人にとって: 公共財の望しい供給量=x1, x2, d2 公共財の量 各個人の 限界評価 (1-a)c x2 d1 公共財の量 各個人の 限界評価 x1 d2 公共財の量 各個人の 限界評価 (1-a)c x2 ac

第8章 外部性と公共財 4 公共財の市場の失敗 ■公共財供給量の決定 = 公共財最適供給の条件: ② リンダールの方法(モデル:公共財生産の限界費用=c,消費者2人で不均等分担) 公共財に対する 社会的限界評価 公共財生の限界費用 = 政府の提案: それぞれacと(1-a)cを負担,但し,0 < a < 1 各個人にとって: 公共財の望しい供給量=x1, x2, x1 < x2 なので,つまり,消費者2は政府により大きな公共財を求める。 政府はより大きな公共財を求めている消費者2により大きな分担比率を課する。aを低く改定し,(1-a)を高く改定する。 x1 が大きくなり,x2 が小さくなる。 ・・・・・・ x1=x2 になるまで, aが改定し続けられる。 公共財の量 各個人の 限界評価 d1 x2 x2 d2 (1-a)c x1 ac x1

第8章 外部性と公共財 4 公共財の市場の失敗 ■公共財供給量の決定 = ■まとめ 公共財最適供給の条件: 公共財に対する 社会的限界評価 公共財生の限界費用 = ■まとめ 公 共 財 私 的 財 特 徴 非排除性 非競合性 排除性 競合性 最適供給の条件 社会的限界評価=限界費用 個人の限界評価=限界費用 受益者負担 の原則の適応 ただ乗りは回避できない 受益者が負担する

第8章 外部性と公共財 4 公共財の市場の失敗 ■公共財の最適供給: = ■まとめ ■ただ乗り問題の対策 ① 負担の均等割り 公共財最適供給の条件: ■ただ乗り問題の対策 ① 負担の均等割り 便益が共通であるような純粋公共財の場合,社会の基本的な制度の設定とその維持運営のための公共支出は,負担の均等割りによって,ただ乗り行為を抑制することができる。 但し,うまくいかない場合がある。 ② 受益者負担の原則 公共財が過大評価するような大きな政府の問題を抑制するには,受益者負担の原則の採用である程度に抑制することができる。但し,その結果として,本来実施すべき公共財計画が不採用になることに注意したい。 ③ その他 所得再分配などの政策で,公平性に関する政府の信頼を形成する。 公共財に対する 社会的限界評価 公共財生産の限界費用 = ■公共財の負担とただ乗り 各個人が各自の限界評価に応じて,それぞれの費用を負担すれば,公共財を最適供給することが可能である。 しかし,①政府は各個人の公共財に対する評価の情報を持っておらず,②公共財の非排除性の性質を持つから,公共財利用者が自分の評価を過小に表すようなただ乗り(フリーライダーfree rider)行為を誘発する。 このただ乗り行為は,公共財最適供給を妨げている。 ■まとめ 公 共 財 私 的 財 特 徴 非排除性 非競合性 排除性 競合性 最適供給の条件 社会的限界評価=限界費用 個人の限界評価=限界費用 受益者負担の原則の適応 ただ乗りは回避できない 受益者が負担する