Microsoft Excel 2010 を利用した 2項分布の確率計算

Slides:



Advertisements
Similar presentations
1 エクセル (3) の目次 ②参照演算子と演算子参照演算子と演算子 ③参照セルの表示法参照セルの表示法 ④セルの参照方法セルの参照方法 ⑤エラーについてエラーについて ⑥シグマ( Σ )関数シグマ( Σ )関数 ⑦条件付書式条件付書式 ⑧問題 (1)問題 (1) ⑨問題 (2)問題 (2) ⑩問題.
Advertisements

1 高速フーリエ変換 (fast Fourier transform). 2 高速フーリエ変換とは? – 簡単に言うとフーリエ変換を効率よく計算 する方法 – アルゴリズムの設計技法は分割統治法に基 づいている 今回の目的は? – 多項式の積を求める問題を取り上げ、高速 フーリエ変換のアルゴリズムを用いた解法.
1 小暮研究会2 第1章ベイジアンアルゴリズ ム 2値選択 ベルヌーイ試行 尤度原理 同一性 交換可能性 尤度についてのまとめ 環境情報学部3年 渡邊洋一.
ホーエル『初等統計学』 第7章4節~5節 推定 (2) 寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部 atsushi [at] si.aoyama.ac.jp 青山学院大学社会情報学部 「統計入門」第 12 回.
統計学 第3回 西山. 第2回のまとめ 確率分布=決まっている分布の 形 期待値とは平均計算 平均=合計 ÷ 個数から卒業! 平均=割合 × 値の合計 同じ平均値でも 同じ分散や標準偏差でも.
放射線の計算や測定における統計誤 差 「平均の誤差」とその応用( 1H) 2 項分布、ポアソン分布、ガウス分布 ( 1H ) 最小二乗法( 1H )
統計学入門2 関係を探る方法 講義のまとめ. 今日の話 変数間の関係を探る クロス集計表の検定:独立性の検定 散布図、相関係数 講義のまとめ と キーワード 「統計学入門」後の関連講義・実習 社会調査士.
コンピュータ演習 Excel 入門 岡田孝・山下雅啓 Excel の機能は膨大 その中のごく一部を紹介 表計算機能 – データの入力、表の作成、計算など グラフ機能 – 棒グラフ、円グラフなどグラフ作成 データベース機能 – 並べ替え(ソート)、検索、抽出など マクロ機能 – VBA で自動化したマクロを作成可能.
2 年 確率の導入 指導手順 身の回りの生活の中の確率の話をする。 10 円玉の表と裏を確認する。 本時の課題を提示する。 ( シート 4) 実験をする。 準備物 ワークシート、 10 円玉 ×2× 生徒数 結果をエクセルに入力 グラフから言えるこ とを発表する。 確率についてまとめる。 教科書の練習問題をする。
シミュレーション論Ⅰ 第 7 回 待ち行列のシミュレーション(2). 第 6 回のレポート(解答例) 乱数表より乱数を記入し、到着間隔・サービス時間にした がってグラフを作成する 例) 最大待ち人数:2人 最大待ち時間:5分 平均待ち時間:3分.
エクセルと SPSS による データ分析の方法 社会調査法・実習 資料. 仮説の分析に使う代表的なモデ ル 1 クロス表 2 t検定(平均値の差の検定) 3 相関係数.
寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部 Fisher の直接確率法 寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部
第1回 確率変数、確率分布 確率・統計Ⅰ ここです! 確率変数と確率分布 確率変数の同時分布、独立性 確率変数の平均 確率変数の分散
疫学概論 二項分布 Lesson 9.頻度と分布 §B. 二項分布 S.Harano,MD,PhD,MPH.
エクセル(7)の目次 関数の書式 関数ウィザードの使い方 四捨五入/切り上げ/切り捨て IF関数 問題(1) 問題(2) 問題(3)
寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部 R での連関測度の計算方法 寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部
第6章 数え上げ理論と確率 B4 酒井 隆行.
確率と統計 平成23年12月8日 (徐々に統計へ戻ります).
全加算回路 A, Bはそれぞれ0または1をとるとする。 下位桁からの繰り上がりをC1とする。(0または1)
ホーエル『初等統計学』 第8章1節~3節 仮説の検定(1)
近似アルゴリズム 第10章 終了時刻最小化スケジューリング
データ構造とアルゴリズム論 第6章 探索のアルゴリズム
Pattern Recognition and Machine Learning 1.5 決定理論
統計解析 第8回 第7章 2項分布.
ファーストイヤー・セミナーⅡ 第8回 データの入力.
Microsoft Excel 2010 を利用した 2項分布の確率計算
ホーエル『初等統計学』 第5章 主要な確率分布
Generating Functions (前半) B4 堺谷光.
寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部 atsushi [at] si.aoyama.ac.jp
寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部 atsushi [at] si.aoyama.ac.jp
放射線の計算や測定における統計誤差 「平均の誤差」とその応用(1H) 2項分布、ポアソン分布、ガウス分布(1H) 最小二乗法(1H)
確率・統計Ⅱ 第7回.
第2章補足Ⅱ 2項分布と正規分布についての補足
統計解析 第8回 第7章 2項分布.
第7回 二項分布(続き)、幾何分布 確率・統計Ⅰ ここです! 確率変数と確率分布 確率変数の同時分布、独立性 確率変数の平均 確率変数の分散
寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部 atsushi [at] si.aoyama.ac.jp
正規性の検定 ● χ2分布を用いる適合度検定 ●コルモゴロフ‐スミノルフ検定
二項分布 大きさ の標本で,事象Eの起こる確率を とするとき, そのうち 個にEが起こる確率 は二項分布に従う 例
寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部 エクセルでの正規分布の グラフの描き方 寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部
寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部 エクセルでの正規分布の グラフの描き方 寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部
第9回:Microsoft Excel (1/2)
母集団と標本:基本概念 母集団パラメーターと標本統計量 標本比率の標本分布
数理統計学 第4回 西山.
情報処理A 第?回 Excelを使ってみる.
確率・統計Ⅰ 第3回 確率変数の独立性 / 確率変数の平均 ここです! 確率論とは 確率変数、確率分布 確率変数の独立性 / 確率変数の平均
正規分布確率密度関数.
混合ガウスモデルによる回帰分析および 逆解析 Gaussian Mixture Regression GMR
確率論の基礎 「ロジスティクス工学」 第3章 鞭効果 第4章 確率的在庫モデル 補助資料
超感覚的知覚の一つである テレパシー能力(者)の存在性 についての統計学的検証
寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部 エクセルでの正規分布の グラフの描き方 寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部
関数の書式 ● SUM関数、AVARAGE関数など代表的ないくつかの関数の書式(数式の構文)は、下記のようなものである。 =関数名(引数1,引数2,引数3,・・・・・) ●引数(入力データ)は、数値で入力しても、セル名で指定してもよい。 例: =SUM(A1:A10,B21:B30,C31:C40)
Basic Tools B4  八田 直樹.
標本分散の標本分布 標本分散の統計量   の定義    の性質 分布表の使い方    分布の信頼区間 
寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部 atsushi [at] si.aoyama.ac.jp
計測工学 -誤差、演習問題 計測工学(第6回) 2009年5月26日 Ⅱ限目.
様々な情報源(4章).
第4回 ファイル入出力方法.
プログラミング 4 探索と計算量.
アルゴリズム論 (第12回) 佐々木研(情報システム構築学講座) 講師 山田敬三
疑似乱数, モンテカルロ法によるシミュレーション
計測工学 計測工学8 最小二乗法3 計測工学の8回目です。 最小二乗法を簡単な一時関数以外の関数に適用する方法を学びます。
表計算 Excel 演習 1.Excel を使ってみる.
経営学研究科 M1年 学籍番号 speedster
最尤推定・最尤法 明治大学 理工学部 応用化学科 データ化学工学研究室 金子 弘昌.
確率論・数値解析及び演習 (第7章) 補足資料
cp-15. 疑似乱数とシミュレーション (C プログラミング演習,Visual Studio 2019 対応)
第3章 統計的推定 (その2) 統計学 2006年度 <修正・補足版>.
統計現象 高嶋 隆一 6/26/2019.
第6回 ベルヌイ試行、二項分布 確率・統計Ⅰ ここです! 確率変数と確率分布 確率変数の同時分布、独立性 確率変数の平均 確率変数の分散
エクセル(3)の目次 参照演算子と演算子 参照セルの表示法 セルの参照方法 エラーについて シグマ(Σ)関数 条件付書式 問題(1)
Presentation transcript:

Microsoft Excel 2010 を利用した 2項分布の確率計算 寺尾 敦 青山学院大学社会情報学部 atsushi@si.aoyama.ac.jp Twitter: @aterao

1.エクセルを利用した 2項分布における成功確率の計算 ベルヌーイ試行おいて x 回成功する確率P{X=x} は,エクセルの BINOM.DIST 関数を用いて求められる.この関数名の由来は Binominal Distribution (2項分布)である. 例題:サイコロを投げる.1の目がでることを「成功」とする.3回投げた時の成功回数の確率分布は,2項分布となる.テキスト表3(p.95),図2(p.96)参照.

エクセルシートの準備 「成功回数」「2項係数」「成功確率P{x}」を記録する列を用意する.サイコロは3回投げるので,成功回数は0回から3回である. BINOM.DIST 関数で P{x} を求めることができる. 2項係数は, テキスト表3との照合の ためと,後で行う検算の ために入れてある.

COMBIN 関数 すべて成功あるいはすべて失敗という試行結果の系列は1通りしかない. その他は複数とおりの系列がある.2項係数はいくつの系列があるかを表す. 2項係数を計算するエクセルの関数は COMBIN 関数である.たとえば, COMBIN(3, 2) は,3C2 を計算して,3を返す. この関数名の由来は COMBINATION である.

2項係数の計算 n 回の試行で x 回成功する系列の数(2項係数)を計算する書式は,=COMBIN(n, x) である.たとえば,サイコロ投げ(1が成功)を3回行って1回成功する系列の数を求めるには,以下のように =COMBIN(3, 1) と入力する.

2項係数を計算する列で,それぞれの成功回数(0回から3回)に対応する2項係数を計算する.COMBIN(3, 0) から COMBIN (3, 3) までを順に入力すると,下図のようになる.

参考:PERMUT 関数 COMBIN 関数は,n 個のものから x 個のものを選ぶ組み合わせの数を計算する. 類似の関数に PERMUT 関数がある.これは, n 個のものから x 個のものを選んで並べる,並べ方の数を計算する関数である.たとえば,PERMUT(3, 2) は,3P2 を計算して,6を返す. この関数名の由来は PERMUTATION (順列)である.

BINOM.DIST 関数 BINOM.DIST 関数を用いて,P{x} を計算する.この関数は,成功数 x,試行回数 n,成功確率 p を指定して, =BINOM.DIST(x, n, p, FALSE) と書く.最後の FALSE は P{x} を求める場合の指定である.これを TRUE とすると,後述する部分和の計算になる.

成功確率の計算 BINOM.DIST 関数を挿入し,成功確率 P{x} を求める.

2項分布 下図のような確率分布(2項分布)が得られる.

検算 検算を行ってみよう.BINOM.DIST 関数を用いずに,成功確率 P{x} を計算する.これは,表3(テキスト p.96)に示されているように,2項係数,成功確率.失敗確率から計算できる.たとえば,1回成功する確率は,

「検算」のための列を用意して,式を入力していく.下図では指数部分を直接に数値(1乗および2乗)で入力してある.これは改良可能(次ページ).

BINOM.DIST関数を用いた計算結果と,検算の結果が一致していることを確認しよう. 指数部分の書き方を工夫した. 1か所だけこの式を用いれば,あとはコピペ.

グラフ 最後に,確率分布のグラフを描く.これは詳細を記さないので,各自やっておくこと.

2.エクセルを利用した 2項分布の部分和の計算 2項分布において,特定の成功回数 k の確率P{k} ではなく,k 回以上(あるいは以下)の成功が得られる確率 P{X≧k} (あるいはP{X≦k})が問題となることはしばしばある. テキストの付録の表III(p.293)は,試行回数n が10までの,「x0 回以上の成功」の確率を与えている.x0 = 0 ならばこの確率は当然1なので,表には x0 = 1 から n までの確率が載せられている.

補間 成功確率 p が0.5を超える場合は表に載せられていないので,「成功」と「失敗」を読み替える.(テキスト p.100) 0.5以下の成功確率で,この表に掲載されていないものに対する部分和 s については,線形補間を行う必要がある.たとえば,テキスト p.100 で説明されている,n = 10, p = 0.33, x0 = 3の場合,表IIIにあるのは,p = 0.30 に対応する 0.6172 と,p = 0.35 に対応する 0.7384 である.よって,・・・

以下の比例式を解いて,s = 0.6972 を得る.この比例式の意味は次のページ.

BINOM.DIST関数による部分和の計算 エクセルのBINOM.DIST関数は,最後の引数(関数への入力値)に TRUE を指定することで,2項分布の部分和を求めるために用いることができる.ただし,テキスト付録の表IIIと異なり,この関数は成功回数が k 回「以下」の確率を返す. たとえば,BINOM.DIST(3,10,1/6,TRUE) は,成功確率1/6の試行を10回繰り返すとき,成功回数が3回以下(0, 1, 2, 3回のいずれか)である確率を返す.

BINOMDIST関数による部分和の計算 さいころを3回投げて,1の目が出る「成功」が k 回以上である確率を,BINOM.DIST関数を用いて求めよう.k の値が1から3までについて2項分布の部分和を計算する( 0回以上の成功確率は1 ).たとえば,2回以上の成功確率は, 1 – BINOM.DIST(1, 3, 1/6, TRUE) として計算できる. 成功回数が1回以下の確率

BINOMDIST関数による部分和の計算 2回以上の成功確率 1 – BINOMDIST(1, 3, 1/6, TRUE) 最初の引数である 1 のかわりに, 下図では A4 – 1 と入力している. ここは直接に 「1」を入力

BINOM.DIST関数による部分和の計算 下図のように,2項分布の部分和(k 回以上成功する確率)が計算できる.

検算 検算は容易である.部分和を構成するP{x} をすべて加えればよい.たとえば,1回以上成功する確率は,P{1}+ P{2}+ P{3}で求められる.