現代ベンチマーキングの普及と展望 ~社会科学研究・教育の今日的課題~ 桃山学院大学 『総合研究所紀要』 40巻3号,2015

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現代ベンチマーキングの普及と展望 ~社会科学研究・教育の今日的課題~ 桃山学院大学 『総合研究所紀要』 40巻3号,2015 現代ベンチマーキングの普及と展望 ~社会科学研究・教育の今日的課題~ 桃山学院大学 『総合研究所紀要』 40巻3号,2015 世界市民 補講用: 上記PDF の 表1,図1-2&4-5を配布 桃山学院大学 経済学部 矢根 真二

最近のトレンド: 経済学と意思決定・判断力 背景 最近のトレンド: 経済学と意思決定・判断力 合理性と非合理性,利己性と利他性,科学と道徳 今回の焦点: 規制・契約における意思決定 Question: 欧米でのベンチマーキング普及の意味? Answer:  数量的把握とその教育の重要性↑

理解してほしいポイント 「現代ベンチマーキング」研究・教育の意義 ベンチマーキングとは? DEAの生産フロンティアと技術効率性 TE SFAの生産フロンティアと技術効率性 TE 教育・研究の今日的意義

現代ベンチマーキング:EFA (Efficient Frontier Analysis) 1 ベンチマーキングとは? 伝統的なベンチマーキング 重要業績評価指標 KPI (Key Performance Indicator) 現代ベンチマーキング:EFA (Efficient Frontier Analysis) フロンティアを推定 ≒ 最高熟達水準 (Best Practice) 乖離度  相対業績評価 (Relative Performance) 複数インプット・複数アウトプットを選択可能 パラメトリック & ノンパラメトリックなソフトの発展

理想:有効性 (Effectiveness)  Bogetoft (2012) 意思決定材料としてのEFA 理想:有効性 (Effectiveness)  Bogetoft (2012) = U(actual) / U(ideal)  But 選好と技術 代替: EFAによる効率性 (Efficiency) の推定 学習 (Learning)  協調 (Coordination)  動機づけ (Motivation)  + 実務家による実施 Bogetoft and Otto(2011)

教育・医療・スポーツ等のサービス産業分野 相互補完的な分析の普及 表1: EFAの普及 規制産業等の伝統的な計量分野 経済学的な生産関数等のパラメトリックなSFA 教育・医療・スポーツ等のサービス産業分野 経営学的なノンパラメトリックなDEA 相互補完的な分析の普及 SFAとDEAの分析結果の比較等

DEA(データ包絡分析)の生産フロンティア Data Envelopment Analysis  最小外挿原理 代表的なノンパラメトリック・アプローチ 3種の生産フロンティア(1input X, 1output Y) 付図1:FDH  Free Disposable Hull 図1  :CRS(CCR)  + 凸性 + Constant Returns 図2  :VRS(BCC)  + 凸性 + Variable Returns

DEAフロンティアの技術効率性TE Farrellの技術効率性TE 投入(Input)指向モデル :TE ≦ 1 産出(Output)指向モデル  ShephardのTE ≦ 1 ∴ 効率的: TE=1(CRSでは,TEo × TEi = 1) 図2のVRSのTEの数値例  付表1のeVRSi と eVRSo フロンティア上のB,E,Iは,eVRSi = eVRSo = 1 C の eVRSi= ½, eVRSo=2/6=1/3 J の eVRSi= 4/6=2/3, eVRSo=1(投入Slack=2)

図2 VRSフロンティアのCとJのTE I(4,8) 8 J(6,8) E(2,6) 6 4 B(1,2) 2 C(2,2) 2 4 6 8

フロンティアが大きくなるほど,TEは低下傾向 図3 DEAの効率性の比較 フロンティアが大きくなるほど,TEは低下傾向 CRSのTE ≦ VRSのTE ≦ FDHのTE ∴異なるモデルでの効率性の絶対値の比較には注意 ∵ 効率性: フロンティアからの乖離の相対尺度 産出指向モデルと投入指向モデルの相関は低い 同一フロンティアでも,指向が違えば相関は低い 異なるフロンティアでも,指向が同じなら相関は高い

SFA(確率的フロンティア分析)の生産フロンティア Stochastic Frontier Analysis  計量経済学 代表的なパラメトリック・アプローチ 正規-半正規モデル (1)式 log(Y) = α + β log(X) + v - u v: 正規の誤差項,u: 半正規の非負の非効率性項 If u≒0, OLSモデル    If v≒0, COLSモデル

SFAの生産フロンティアの効率性は,産出指向 平均ラインのOLSより,上方に位置する 決定論的なCOLSより,下方に位置する Corrected OLS: OLSの最大残差分だけ上方シフト cf. 図4の特殊性  γ≒0:uの分散が微小 フロンティアからの乖離は,ほぼ非効率性(≒COLS)

cf. 規制産業の効率性分析にみられがちな問題 図5 SFAとDEAの効率性の比較 効率性の分布は異なるが,一定の相関 SFAは,産出指向モデルとの相関が高い SFAは,投入指向モデルとの相関が低い cf. 規制産業の効率性分析にみられがちな問題 DEAでは,投入指向モデルが多用される傾向 ゆえに SFAを併用する場合にも,投入モデルと比較

経営:環境・目標・手段の量的関係の見える化 4 教育・研究の今日的課題 経営:環境・目標・手段の量的関係の見える化 科学的な説得手段としてのベンチマーキングの重要性 学生・教職員・職場がDMUとなる可能性 大学における統計・科学的思考の教育の重要性 学生・実務家のEFA実践  有効性にも重要 研究者によるキャッチアップ:環境要因の考慮

参考1:元論文の構成 科学的な意思決定とベンチマーキング 現代ベンチマーキングの普及とその要因 効率性フロンティアモデルと技術効率性 現代ベンチマーキングの普及とその加速化 近年の急速な普及の諸要因 効率性フロンティアモデルと技術効率性 DEA(データ包絡分析)の主な特性 SFA(確率的フロンティア分析)の主な特性 今後の展望と課題

参考2:主要な参照文献 Bogetoft, P.(2012), Performance Benchmarking: Measuring and Managing Performance, Springer. Bogetoft, P.and L. Otto(2011), Benchmarking with DEA,SFA,and R, Springer.

8 6 4 2 4 2 8 6 参考3 純粋技術効率性と規模の効率性 C(2,2)の投入効率性 p.12 注21 技術効率性 =1/3 参考3 純粋技術効率性と規模の効率性 8 J(6,8) I(4,8) C(2,2)の投入効率性    p.12 注21 技術効率性 =1/3 純粋技術効率性 =1/2 規模の効率性=2/3 6 E(2,6) 4 C(2,2) 2 B(1,2) 2 4 6 8 2/3