X線望遠鏡用反射鏡の 表面形状向上の研究 宇宙物理実験研究室 大熊 隼人.

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X線望遠鏡用反射鏡の 表面形状向上の研究 宇宙物理実験研究室 大熊 隼人

X線反射鏡の製作工程 反射鏡面の製作 反射鏡基板の製作 レプリカ法を採用している。  反射鏡面の製作 レプリカ法を採用している。 表面形状の良いガラスに反射膜(金)を蒸着し、エポキシ樹脂などの接着剤を用いて、反射鏡基板に反射膜を写し取る方法である。

レプリカ法の手順 1. マンドレルに金を成膜 2. エポキシ噴霧 3. 真空圧着 恒温槽 4. エポキシ硬化 5. 剥離

X線望遠鏡の反射鏡 母線 (101.6mm) ここを測定する! マンドレル 反射膜(金) エポキシ 基板 反射鏡圧着時の断面図 反射鏡

反射鏡の表面形状 このうねりはなぜできるのか? 理想的な反射鏡の表面はフラットなのだが… 実際にはうねりが生じてしまう 20μm (高さ) 101.6mm (位置) 20μm (高さ) 反射鏡は基板とエポキシと金だけでできているのでこのような形状に影響を与えているのはエポキシではないかと考えました。 このうねりはなぜできるのか?

} 表面形状悪化の原因追及 フラット エポキシが原因では? 金の形状 基板の形状 マンドレル 金 エポキシ 基板 ー 反射鏡 ー 基板 ー マンドレル } フラット 金の形状 基板の形状 エポキシが原因では?

反射鏡の表面形状と厚さの関係 基板(150μm) エポキシ(20μm) 金(0.2μm) 反射鏡断面図 エポキシの厚さムラ マイクロメーター 反射鏡 ー 厚さ ー 表面形状 そこでまず厚さに注目してみました。反射鏡は基板150[um]とエポキシ20[um]と金0.2[um]でできている。基板の厚さは約1[um]の精度で均一であり、金はわずか0.2[um]の厚さしかない。よって反射鏡の厚さ測定はエポキシの厚さの測定であると言えます。この図で黒線が反射鏡の表面形状、赤がマイクロメーターで測定した反射鏡の厚さになっていて、スケールを合わせるために平均値を0としています。これを見ると反射鏡の形状と厚さに関係があるように見えます。そこで表面のうねりの原因の一つがエポキシの厚さムラであるということが分かり、エポキシの厚さの均一化を目指しました。 厚さ測定 エポキシの厚さムラ 反射鏡のうねりの原因 エポキシの厚さの均一化を目指す

エポキシを均一にするには? エポキシが硬化時に垂れてくることによって厚さの均一性が失われていると考えられる エポキシをあらかじめある程度硬めてからスプレーしてみよう! エポキシを均一にするにはどうしたらいいかと考えた時に、今まで圧着したマンドレルを恒温槽で硬化させているときにエポキシが垂れてきてしまうことがよくありました。そこでエポキシが硬まる前に垂れてくるようなことによって均一性が失われているのではないかと考えました。 エポキシが基板の端から垂れている

エポキシの硬化方法 恒温槽(50℃)約2時間 エポキシ製作 エポキシ噴霧 A剤 B剤 エポキシ その方法ですが、エポキシは二つの液体を混ぜることによって接着剤になります。従来はエポキシを作ってからすぐに基板にスプレーしていたが今回我々はエポキシを作ってから時間をおいて少し硬くなってからからスプレーすることにしました。

エポキシの厚さムラの改善 2.3[μm] 4.7[μm] ! 厚さムラが従来の50%以下に改善 厚さの分散(11枚の平均) 従来のエポキシで作った反射鏡の厚さ 硬いエポキシで作った反射鏡の厚さ 2.3[μm] 厚さの分散(11枚の平均) 4.7[μm] その方法で作った反射鏡と従来の反射鏡の厚さを比較してみるとこの図のようになりました。この厚さの分散をとって11枚の平均を出すと4.74umから2.28umになり、約半分になりました。 厚さムラが従来の50%以下に改善 !

すざく衛星の反射鏡との比較 今回製作した反射鏡 HPD=0.62分角 HPD=2.63分角 HPD=0.67分角 HPD=0.52分角 一番良い反射鏡 うねりのある反射鏡 HPD=0.62分角 HPD=2.63分角 HPD=0.67分角 HPD=0.52分角 すざく衛星に搭載された反射鏡 そこで実際に製作した反射鏡の表面形状と去年打ち上げられたすざく衛星に搭載された望遠鏡の反射鏡を比較してみると、左下の図のようにすざく衛星の反射鏡に匹敵するくらいの反射鏡の製作に成功しました。しかし右下の図のようにまだ大きなうねりを生じてしまうものもできてしまっています。よってすべての反射鏡についてうねりをなくすにはもっと工夫が必要であると言えます。

まとめ 反射鏡の表面のうねりの原因の一つがエポキシの厚さムラであることを突き止めた。 エポキシをある程度硬めてから基板にスプレーすることにより、厚さのムラを抑えることができた。 (厚さの分散4.7μm 2.3μm) エポキシの厚さムラを抑え、表面形状の良い反射鏡の製作が可能になったが、常に良い反射鏡ができるわけではないため、更なる工夫が必要である。