星のエネルギー源.

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星のエネルギー源

可視光と紫外線(いろいろな温度)で見た太陽表面の様子 約6万度 約6000度(可視光) 約200万度 Newton 2004.11 P.77-85 Newton 2004.11

黒点:強い磁場を持つ低温の領域 この写真は、地球の13倍ほどの大きさの黒点 4千度!(周囲は6千度) 暗部:黒い部分 圧力はkTなので 周囲の0.6。 残りの0.4は磁場が 支えている。 黒体放射はσT4なので 表面輝度は0.2 (写真提供:NASA/ESA) この写真は、地球の13倍ほどの大きさの黒点 暗部:黒い部分 半暗部:周りの灰色の部分 (国立天文台/JAXA 提供)

コロナループ 太陽コロナの低層部に磁力線に沿って形成される巨大なアーチ状のガスの流れ コロナ活動領域では、100万度から500万度のコロナループが存在 NASA/LMSAL提供 Trace衛星の紫外線画像 コロナ加熱機構の謎を解く鍵!

彩層の一部が磁力線に沿って浮かび上がってきた! プロミネンス (コロナに浮かぶ低温の雲) 1万度! 彩層の一部が磁力線に沿って浮かび上がってきた! http://apod.nasa.gov/apod/ap060807.html コロナ:100万度! Credit: SOHO-EIT Consortium, ESA, NASA

フィラメント (プロミネンスの影) Credit & Copyright: Greg Piepol (sungazer.net) http://www.phys.ncku.edu.tw/~astrolab/mirrors/apod_e/ap041206.html フィラメント (プロミネンスの影)

太陽フレア:太陽表面での爆発現象 高エネルギー荷電粒子が大量に発生! 磁気エネルギーの解放 オーロラの発生につながる! JAXA提供 http://www.nasa.gov/mission_pages/solar-b/solar_009.html オーロラの発生につながる! JAXA提供

「ようこう」が見たX線画像の11 年周期変化 シリーズ現代の天文学「太陽」より

太陽のエネルギー 太陽定数 太陽の明るさ 1天文単位=1億5000万km 46億年間 1年は3x107 s F = 1.96 cal/分/cm2   立方体1cm3の水を1分間に2℃ = 1370 J/s/m2 太陽の明るさ 1天文単位=1億5000万km Lo = 4π r2 F = 4π (1.5 x 1011)2 x 1370 = 3.9 x 1026 J/s 46億年間 1年は3x107 s Er = Lo x 4.6 x 109 x 3x107 = 5.6 x 1043 J 太陽の静止エネルギー   太陽の重さは 2 x 1030 kg Em = Mo c2 = 2 x 1030 x (3 x108)2 = 2 x 1047 J 質量ーエネルギー変換効率 η (エータ) η = Er / Em = 3 x 10-4  これより大きいエネルギー源でないといけない Lo 4.1855 J/cal 4.18と言っても4.19と言ってもよいが。

太陽のエネルギー源 化学反応:空中に石炭のかたまり(=太陽)があって、燃えている場合。 石炭の燃焼熱は5000 kcal/kg = 5000 x 4.2 x 103 J/kg η = 5000 x 4.2 x 103 / (3 x108)2 = 2 x10-10 η足りない。 これでは5000年しかもたない。 燃焼C、H。-> CO2, H2O。ちなみにうちのプロパンガスは、12000kcal/kg、炭素は32000kcal/kg

∫ 自己重力エネルギー 無限遠方から、少しずつガスΔmを持ってくる。 その時の星の質量はmとする。 星の密度ρは一定とする。つまり星の半径rは、m = ρ (4π/3) r3 で与えられる。 その落ちるガスの発する重力エネルギーは、 Δm r E = G m Δm r  星が質量M、半径はRまで成長した時、それまでに発した重力エネルギーの和を星の「自己重力エネルギー」Egと言う。 ρをRで消去 M Eg = dm = M5/3 G (     )1/3 = ∫ G m 3 3 G M2 4πρ r 5 3 5 R  ηは 3 G M η = MとRによる。 5 R c2

質量ーエネルギー変換効率η η 化学エネルギー 2 x 10-10 重力エネルギー 地球 4 x10-10 太陽 3 x 10-6 WD 1 x 10-4 NS 0.12 水素の核融合         7 x 10-3 (0.7%) 46億年光った太陽のηは、η= 3 x 10-4

地球では、 重力~化学 太陽では、核エネルギー WDでは、核エネルギー~重力エネルギー NSでは重力 地球では、  重力~化学 がんばれば、化学ロケットで宇宙に行ける。 太陽では、核エネルギー WDでは、核エネルギー~重力エネルギー 惑星状星雲(核エネ[表面から熱]で表層放出) 古典新星爆発(表面での降着物質の核爆発) I型超新星(中心での星全体の核爆発) わい新星(重力エネ) NSでは重力 NS上での核爆発はX線バースト。でも無限遠までは放出しない。

「がんばって」宇宙に行くとは、 ηmc2 = (1/2) m v2 (1) v = sqrt(2 η) c η=2 x 10-10 なので v=6000m/s  (爆発など)  cf. 超音速 ライフル銃で1000m/s 衛星の速さは7.8km/s 1桁スピードを上げるには(1)式より、100倍のエネルギー。 100kgの燃料を使って1kgを加速。

天体からの脱出するには 質量M、半径Rの天体の表面から、ロケットを打ち上げて、無限遠方に到達するための脱出速度vescは? (つまり、その星の重力圏から逃れる速度は?) ロケットの質量をm、速度をv、中心からの距離をrとするとロケットの力学的エネルギーは 無限遠方では、位置エネルギーはゼロで、運動エネルギーだけとなり、運動エネルギーは正でなければならないので、

いろいろな天体の脱出速度 M(kg) R(km) Vesc(km/s) 月 7.4×1022 1.7×103 2.4 地球 6.0×1024 6.4×103 11 太陽 2.0×1030 7.0×105 620 白色矮星 ~1030 ~5×103 ~5000 中性子星 ~3×1030 ~10 ~200000

高密度星とエネルギー源 連星運動から発見 白色矮星:シリウスの伴星 電波パルサーとして発見 中性子星:かにパルサー X線連星として発見  白色矮星:シリウスの伴星 電波パルサーとして発見  中性子星:かにパルサー X線連星として発見  ブラックホール:白鳥座X-1 注)X線連星には、白色矮星や中性子星からなるものもたくさんある!

かにパルサー かにパルサーは電波、可視光、X線、ガンマ線とあらゆる電磁波のパルスを発信している。 その周期は 33 ミリ秒→この中性子星は1秒間に約30回自転している。 「宇宙科学入門」尾崎洋二著より

電波パルサー ∥ 強い磁場を持って高速で自転する中性子星 電波パルサー ∥  強い磁場を持って高速で自転する中性子星 回転エネルギーを解放して輝いている http://www.jodrellbank.manchester.ac.uk/news/2002/youngpulsar/ http://www.manchester.ac.uk/

かにパルサー(X-ray) NASA提供

かにパルサーのエネルギー源(1) 中性子星を密度が一定の球と近似して、かにパルサーの回転エネルギーErを計算しなさい。ここで、中性子星の半径を10km、質量は1.4Mo = 2.8×1030kg、自転周期を0.033秒とする。

かにパルサーのエネルギー源(2) かにパルサーの周期は、dP/dt=4.21×10-13[ss-1]の割合で長くなっている。かにパルサーが1秒間に失う回転エネルギーを計算しなさい。

自転周期の限界 遠心力と重力の関係から、質量M、半径Rの星の自転周期の限界をもとめなさい。(周期はどこまで短くなれるか?) ヒント)遠心力<重力でないと、星がばらばらになってしまう 例) 太陽(M=2×1030kg,R=7.0×108m):P>2.8時間 白色矮星( M=2×1030kg,R=107m ):P>17秒 中性子星( M=2×1030kg,R=104m ):P>5.4×10-4秒

X線連星の想像図 降着円盤 太陽のような恒星 中性子星 あるいは ブラックホール NASA提供

中性子星では、核エネルギー(η=0.007)よりも効率が非常によい! 質量降着による重力エネルギーの解放 質量M、半径Rの星に、毎秒mの質量が落下するときに解放される重力エネルギー(星の重力によるポテンシャルエネルギー:GMm/R)とこの降着物質の静止質量エネルギー(mc2)の比は、 例) 太陽(M=2×1030kg,R=7.0×108m):η=2.1×10-6 白色矮星( M=2×1030kg,R=107m): η=1.5×10-4 中性子星( M=2×1030kg,R=104m): η=0.15 中性子星では、核エネルギー(η=0.007)よりも効率が非常によい!

ここからあとは数字を直す。

問題:さそり座X-1のX線光度(1) さそり座X-1から2.2×104[個m-2s-1]のX線が検出された。このX線のエネルギーフラックスを、X線の波長を0.5nmとして計算しなさい。また、さそり座X-1までの距離を3.6×102pcとして、さそり座X-1のX線光度を計算しなさい。ヒント)E=c・h/λ 【参考】c=3.0×108[ms-1]、h=6.6×10-34[Js]      1pc=3.1×1016[m]

問題:さそり座X-1のX線光度(2) さそり座X-1のX線光度を中性子星へのガスの降着で発生するエネルギーでまかなうためには、毎秒何kgのガスが中性子星へ落下する必要がありますか。ただし、中性子星の半径を10km、質量を太陽の1.4倍と仮定しなさい。 【参考】太陽質量=2.0×1030[kg]、G=6.67×10-11[Nm2kg-2]

問題:さそり座X-1のX線光度(3) さそり座X-1のX線光度を、中性子星表面全体からの黒体輻射と仮定して、表面温度を求めなさい。 【参考】σ=5.67×10-8[Wm-2K-4]

全天X線画像(MAXI) さそり座X-1 はくちょう座X-1 かにパルサー