K中間子ヘリウム原子 3d2p X線の精密測定

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K中間子ヘリウム原子 3d2p X線の精密測定 2006年3月29日 日本物理学会 第61回年次大会 愛媛大学 K中間子ヘリウム原子 3d2p X線の精密測定 理研 岡田 信二 for KEK-PS E570 collaboration

KEK-PS E570 collaboration list G. Beer1, H. Bhang2, M. Cargnelli3, J. Chiba4, S. Choi2, C. Curceanu5, Y. Fukuda6, T. Hanaki4, R. S. Hayano7, M. Iio8, T. Ishikawa7, S. Ishimoto9, T. Ishiwatari3, K. Itahashi8, M. Iwai9, M. Iwasaki8, B. Juhasz3, P. Kienle3, J. Marton3, Y. Matsuda8, H. Ohnishi8, S. Okada8, H. Outa8, M. Sato6, P. Schmid3, S. Suzuki9, T. Suzuki8, H. Tatsuno7, D. Tomono8, E. Widmann3, T. Yamazaki8, H. Yim2, J. Zmeskal3 Victoria Univ.1, SNU2, SMI3, TUS4, INFN(LNF)5, Tokyo Tech6, Univ. of Tokyo7, RIKEN8, KEK9

Introduction

強い相互作用によるエネルギー準位シフト K中間子原子の観測可能な最終軌道  K中間子-原子核の強い相互作用に強く反映 K中間子ヘリウム原子 3d 3d-2p X線 2p 幅 : G2p 強い相互作用 による シフト : DE2p 2p (クーロン相互作用のみで計算された準位) K中間子ヘリウム原子  最終軌道 = 2p 原子核吸収

The Kaonic Helium Puzzle 2p shift (keV) K中間子原子データ(シフトと幅)のGlobal fit Z=2 実験: ~40eV 非常に大きな 斥力シフト 過去3実験の結果 どの理論もこのような大きなシフトを再現できない(~40eV)! 理論計算 (chiral unitary+ optical model): ~0.2eV 非常に小さなシフト S.Hirenzaki, Y.Okumura, H.Toki, E.Oset, and A.Ramos Phys. Rev. C 61 055205

<~11eVの大きなシフトの可能性を予言 赤石・山崎 : “Deep optical pot. + Coupled-channel model” 最大11eVの斥力 エネルギーシフトを許容 <~ 11 eV K中間子ヘリウム原子の2pレベルシフト 200~300MeV 斥力 核中心ポテンシャル の実部 U0 ~270 引力 Y.Akaishi, EXA05 proceedings (2005)

2p level shifts of the K--4He atom 過去の実験 2p level shifts of the K--4He atom 3d2p C.E.Wiegand and R.Pehl, Phys.Rev.Lett.27 (1971) 1410. X線測定器: Si(Li)検出器 分解能(FWHM) ~300eV @6.5keV シグナルを取りながらのエネルギー較正をしていない シグナルに対して大きなバックグラウンド C.J.Batty et al., Nucl.Phys.A326 (1979) 455. 精密測定が必要 S.Baird et al., Nucl.Phys.A392 (1983) 297. KEK-PS E570実験

Experiment

KEK-PS E570実験 p -(or K-) 3) 入射Kと2次荷電粒子 による反応点の再構成 2) エネルギー較正用 3d2p K中間子ヘリウム原子X線 ~6.4keV Ti Ka1 4.51keV Ni Ka1 7.48keV 3) 入射Kと2次荷電粒子 による反応点の再構成 2次荷電粒子 2) エネルギー較正用 純チタン箔・純ニッケル箔 K-中間子ビーム p -(or K-) Ti,Ni特性X線 X線 1) 高分解能X線検出器 Silicon Drift Detector “SDD” (8個) 液体ヘリウム標的

”SDD” (Silicon Drift Detector) ※ 過去の実験条件との比較 E570 過去の実験 X線検出器 ”SDD” (Silicon Drift Detector) ※ Si(Li) detector 分解能 (FHWM) @6.5keV ~185eV ~300eV 有効領域 100mm2 * 8 SDDs 300 mm2 検出器の厚さ 0.26mm ~4mm エネルギー較正 In-beam calib. No in-beam calib. 反応点再構成による イベント選択 Yes No 1.6倍 2.6倍 1/15倍 ※ SDDの詳細は、27日の “K中間子ヘリウム原子X線測定実験のための検出器系 II”(27aWB-8)において、竜野によって報告。

エネルギー分解能 (55Fe 線源) 185eV@6.5keV 測定: E570と同じセットアップ FWHM = 181.8+0.41eV Mn Ka Kb @5.899keV FWHM = 181.8+0.41eV @MnKa1=5.899keV Escape peaks 185eV@6.5keV cf. 過去の実験: ~300eV @6.5keV

Preliminary result

反応点再構成 K中間子ビーム Fiducial volume cut Z vertex (mm) カーボン エネルギー較正用箔 ヘリウム標的 減速材 ヘリウム標的 エネルギー較正用箔 及び SDD Fiducial volume cut Z vertex (mm) K中間子ビーム

過去の実験との比較 本実験 (E570) …全統計の1/2 過去の実験 3d2p エネルギー分解能 : 約1.5倍改善 統計 : 2.5倍 ~1500events ) 4d2p Ti Ni 5d2p S/N比 : 約5倍改善 過去の実験 S.Baird et al., Nucl.Phys.A392 (1983) 297.

エネルギー較正 (高統計キャリブレーションデータ) エネルギー較正 (高統計キャリブレーションデータ) 同時計測! Energy 高統計のキャリブレーションデータ を用いたエネルギー較正 Ti Ka Ni Ka Channel Ti Kb Ni Kb SDD calibration (Self) trigger events Ti Ka1: 15k events/SDD/8hours

過去の40eVという巨大なシフトを否定 全統計の1/2 (added all SDD) K-4He 3d2p ピーク 過去の実験値 クーロンのみ の場合 全統計の1/2 (added all SDD) K-4He 3d2p ピーク

まとめ K中間子ヘリウム原子 3d2p X線を測定 過去の40eVという巨大なシフトが否定されることはほぼ確実 分解能 : 185 eV @6.5keV (SDD) 統計 : ~2.5倍、S/N ratio : 5倍改善 (fiducial volume cut) シグナルをとりながらのエネルギー較正 (TiとNiの特性X線を使用) 過去の40eVという巨大なシフトが否定されることはほぼ確実 シフトの誤差を2eV以内で決定(統計誤差) 現在鋭意解析中… (系統誤差の見積もり等)

Spare

SDD time spectra for Kaonic Helium 3d2p X-rays s = 141 ns s = 184 ns without Kaon stopping time correction without time-walk correction s = 144 ns cf.) KpX (KEK-PS E228) s = 123 nsec (Si(Li)) with time-walk correction (T.Ito, PRC58,2366)

SDDの温度とエネルギー分解能 温度振動領域 ~ 86 K SDD 温度 [K] 平均 151 ± 5 eV 83 84 85 86 87 88 89 SDD 温度 [K] 170 平均 151 ± 5 eV 160 FWHM @ 4.5keV [eV] 150 140 50 100 150 200 250 300 時間 [hour] 350 温度振動領域でも分解能は不変 温度変化によるゲイン変動は無視可能

SDDの温度 と Ti Ka mean値 SDD温度 [K] Ti Ka mean [ch] 時間 [hour] 89 88 87 86 85 84 83 Ti Ka mean [ch] 時間 [hour]

Ti Ka mean [ch] Ni Ka mean [ch] Mean difference [ch]

ペデスタル ペデスタルを数千イベントごとにガウス関数でフィット ガウス関数の中心 [ch] ふらつき ~±3eV 49 48 47 ガウス関数の中心 [ch] 46 45 ふらつき ~±3eV 44 43 50 100 150 200 250 300 時間 [hour] ペデスタルは2週間という長い実験期間で ±3 eV 程度しかふらついていない ゲイン変動は小さく無視できる