「税法」 Tax Law / Steuerrecht 担当:森 稔樹(大東文化大学法学部教授) Toshiki Mori, Professor an der Daito-Bunka Universität, Tokyo 租税法律主義.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
「税法」 TAX LAW / STEUERRECHT 担当:森 稔樹(大東文化大学法学部教授) TOSHIKI MORI, PROFESSOR AN DER DAITO-BUNKA UNIVERSITÄT, TOKYO 所得の意味/租税の 定義/課税要件.
Advertisements

家族と法律. 婚姻は のみに基づいて 成立し,夫婦が を有す ることを基本として, ○ により,維持されなければな らない。 配偶者の選択,財産権,相続,住居の選定, 離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の 事項に関しては,法律は と両性の ○ に立脚して,制定 されなければならない。 日本国憲法.
「行政法1」 ADMINISTRATIVE LAW / VERWALTUNGSRECHT 担当:森 稔樹(大東文化大学法学部教授) TOSHIKI MORI, PROFESSOR AN DER DAITO-BUNKA UNIVERSITÄT, TOKYO 行政法上の法律関係.
みなさんこんにちは~ プレゼンテーション はじまりますよ. 関係 は?? 企業会計税法 企業会計と税法との関係について かつてない波紋が巻き起こっている.
「行政法1」 ADMINISTRATIVE LAW / VERWALTUNGSRECHT 担当:森 稔樹(大東文化大学法学部教授) TOSHIKI MORI, PROFESSOR AN DER DAITO-BUNKA UNIVERSITÄT, TOKYO 行政裁量その1 裁量の種類.
「行政法1」 ADMINISTRATIVE LAW / VERWALTUNGSRECHT 担当:森 稔樹(大東文化大学法学部教授) TOSHIKI MORI, PROFESSOR AN DER DAITO-BUNKA UNIVERSITÄT, TOKYO 行政立法その2 行政規則.
「行政法1」 administrative Law / verwaltungsrecht 担当:森 稔樹(大東文化大学法学部教授) Toshiki Mori, Professor an der Daito-Bunka Universität, Tokyo 行政契約.
国及び地方公共団体が分担すべき役割の明確化 機関委任事務制度の廃止及びそれに伴う事務区分の再構成
「行政法1」 administrative Law / verwaltungsrecht 担当:森 稔樹(大東文化大学法学部教授) Toshiki Mori, Professor an der Daito-Bunka Universität, Tokyo 開講にあたって.
2014年6月男女平等月間 学習会資料 連合総合男女平等局
法の分類と社会規範.
2016年度 民事訴訟法講義 12 関西大学法学部教授 栗田 隆
衆議院総務委員会及び参議院総務委員会附帯決議
2016年度 民事訴訟法講義 1 関西大学法学部教授 栗田 隆
「行政法1」 administrative Law / verwaltungsrecht 担当:森 稔樹(大東文化大学法学部教授) Toshiki Mori, Professor an der Daito-Bunka Universität, Tokyo 行政上の義務履行確保 強制執行など.
新潟のブラックバス リリース禁止について 新潟53PickUP実行委員会.
【資料3】 条例検討会議について 平成28年8月30日 福岡市障がい者在宅支援課.
【資料5】 条例の基本的な方向性について 平成28年8月30日 福岡市障がい者在宅支援課.
社会保険ワンポイント情報 13号 マイナンバーと社会保険、法人番号 社会保険 法人番号 社会保険実務の留意事項
2016年度 民事訴訟法講義 8 関西大学法学部教授 栗田 隆
2005年度 民事執行・保全法講義 第2回 関西大学法学部教授 栗田 隆.
「行政法1」 administrative Law / verwaltungsrecht 担当:森 稔樹(大東文化大学法学部教授) Toshiki Mori, Professor an der Daito-Bunka Universität, Tokyo 行政立法その1 法規命令.
「行政法1」 administrative Law / verwaltungsrecht 担当:森 稔樹(大東文化大学法学部教授) Toshiki Mori, Professor an der Daito-Bunka Universität, Tokyo 行政上の義務履行確保 強制執行など.
近代国家における社会福祉・ 保育所の役割 土俵にのらない 哲学をもって臨む.
東京財団上席研究員 中央大学法科大学院教授 森信茂樹
障害を理由とする差別の解消の推進に関する基本方針の概要
人たるに値する生活を積極的に保障 ○就労の機会の保障 労働能力がある者 労働している者 労働機会を喪失
於:大阪弁護士会館 2013年6月22日(土) 介護保障を考える弁護士と障害者の会全国ネット 共同代表 弁護士 藤 岡 毅
「行政法1」 administrative Law / verwaltungsrecht 担当:森 稔樹(大東文化大学法学部教授) Toshiki Mori, Professor an der Daito-Bunka Universität, Tokyo 行政裁量その2 裁量に対する司法審査.
裁判の情報保障、手続保障に 関する事前協議の経過について
アスベスト救済法(労災保険適用事業主からの一般拠出金徴収部分)の概要
「行政法1」 administrative Law / verwaltungsrecht 担当:森 稔樹(大東文化大学法学部教授) Toshiki Mori, Professor an der Daito-Bunka Universität, Tokyo 行政裁量その1 裁量の種類.
市民公益税制について 個人が一定の団体等に対して寄附をした場合、所得税及び個人住民税の税額控除が受けられる制度です。 制度の目的
2016年度 民事訴訟法講義 秋学期 第11回 関西大学法学部教授 栗田 隆
2012年度 民事訴訟法講義 12 関西大学法学部教授 栗田 隆
徴収納付制度(源泉徴収制度・特別徴収制度)/年末調整
看護現場における 労務管理の法的側面① <労働法と労働契約>
開講にあたって (教科書や六法の説明など) (以下、前期・後期共通)
審査区分決定までのフローチャート 迅速審査が可能な範囲とは?
「税法」 Tax Law / Steuerrecht 担当:森 稔樹(大東文化大学法学部教授) Toshiki Mori, Professor an der Daito-Bunka Universität, Tokyo 税務調査 (質問検査権)
「税法」 Tax Law / Steuerrecht 担当:森 稔樹(大東文化大学法学部教授) Toshiki Mori, Professor an der Daito-Bunka Universität, Tokyo 納税申告(確定申告を中心に)
2008年度 倒産法講義 民事再生法 7 関西大学法学部教授 栗田 隆.
2012年度 破産法講義 10 関西大学法学部教授 栗田 隆 破産債権(2) 共同債務関係にある債務者 在外財産からの満足.
第14回 法人(法人の意義と種類;法人の対内的・対外的法律関係)
§7. 平和主義 2007年7月3日・10日 社会科学部 憲法.
§5. 平和主義 人間科学部 憲法.
経済学-第7回 住民税+消費税① 2008年5月23日.
第1章 日本の統計制度 ー 経済統計 ー.
2014年6月男女平等月間 学習会資料 連合総合男女平等局
第13回 法律行為の主体②-b(無権代理、表見代理)
国民健康保険における保険料と保険税の現状等について
行政と行政法 法律による行政の原理 (法治主義)
「行政法1」 administrative Law / verwaltungsrecht 担当:森 稔樹(大東文化大学法学部教授) Toshiki Mori, Professor an der Daito-Bunka Universität, Tokyo 行政行為その2 行政行為の効力.
2017年度 民事訴訟法講義 12 関西大学法学部教授 栗田 隆
2013年度 民事訴訟法講義 10 関西大学法学部教授 栗田 隆
「不 当 利 得」 の 構 造 債権 第一章 総則 第二章 契約 第三章 事務管理 第四章 不当利得 第五章 不法行為.
【資料3】 骨子案の検討事項について 平成28年9月30日 福岡市障がい者在宅支援課.
「行政法1」 administrative Law / verwaltungsrecht 担当:森 稔樹(大東文化大学法学部教授) Toshiki Mori, Professor an der Daito-Bunka Universität, Tokyo 行政立法その1 法規命令.
経済学-第8回 消費税② 2008年5月30日.
米国の様な普遍主義的個人主義社会では、 四種類の経済が必要となる。Rev.8
「行政法1」 administrative Law / verwaltungsrecht 担当:森 稔樹(大東文化大学法学部教授) Toshiki Mori, Professor an der Daito-Bunka Universität, Tokyo 開講にあたって.
2008年度 倒産法講義 民事再生法 9 関西大学法学部教授 栗田 隆.
2017年度 民事訴訟法講義 8 関西大学法学部教授 栗田 隆
2014年度 民事再生法講義 3 関西大学法学部教授 栗田 隆
経済学-第3回 租税体系 2008年4月25日.
Kinjo-Gakuin Univ. © 2007 Motohiro HASEGAWA
旧朝鮮半島出身労働者に関する事実とは? 事実その1 事実その2 ところが,
「行政法1」 administrative Law / verwaltungsrecht 担当:森 稔樹(大東文化大学法学部教授) Toshiki Mori, Professor an der Daito-Bunka Universität, Tokyo 行政立法その2 行政規則.
「税法」 Tax Law / Steuerrecht 担当:森 稔樹(大東文化大学法学部教授) Toshiki Mori, Professor an der Daito-Bunka Universität, Tokyo 税と税法 課税要件.
2017年度 民事訴訟法講義 1 関西大学法学部教授 栗田 隆
Presentation transcript:

「税法」 Tax Law / Steuerrecht 担当:森 稔樹(大東文化大学法学部教授) Toshiki Mori, Professor an der Daito-Bunka Universität, Tokyo 租税法律主義

租税法律主義の意義(1) 租税法律主義:租税の賦課・徴収は、必ず法律の根拠に基づいて行われなければならない、という原則。 憲法第84条:租税法律主義を明定。これは、第83条に定められる財政民主主義の一環でもある。 同第30条:第84条と表裏一体。国民は、法律の規定がない限り、納税の義務を負わない。

租税法律主義の意義(2) 租税負担の変更: (1)増税(税率・税額の上昇) (2)減税(税率・税額の下降) 減税が全ての国民の利益になるとは限らない。特定の業種・階層などのみを対象とすることもあり、負担の平等などの観点から問題になることが多い。

租税法律主義の意義(3) 国税→租税法律主義 地方税→地方税条例主義 (地方税法第2条・第3条第1項を参照) 地方税条例主義の憲法上の根拠は? 現在の通説:地方公共団体の課税権は憲法第92条および第94条に由来し、憲法第84条もこのことを予定していると考える。

課税要件法定主義 全ての課税要件 租税の賦課・徴収手続 ↓ 法律(条例)によって規定されなければならない。 問題1:法律と行政立法との関係 問題2:通達 最判昭和33年3月28日民集12巻4号624頁

課税要件明確主義(1) 法律(その下における政令・省令の場合も含む)における課税要件および賦課・徴収の手続に関する規定は、なるべく一義的かつ明確でなければならない。 租税行政庁に自由裁量を認めることは原則として許されず、不確定概念の使用も慎重でなければならない。 しかし、不確定概念の使用はやむをえない場合もあり、必要な場合すらある。

課税要件明確主義(2) 秋田地判昭和54年4月27日行裁例集30巻4号891頁 仙台高秋田支判昭和57年7月23日行裁例集33巻7号1616頁 秋田市国民健康保険税条例において課税要件を定めていた規定が一義的明確性を欠くので憲法第84条に違反すると判断した。

合法性の原則(1) 租税法=強行法規 課税要件が充たされているならば、租税行政庁には租税を減免する自由、さらに徴収しない自由はない。 租税行政庁は、法律で定められた通りに税額を徴収しなければならない。納税者との間で和解や契約をなすことはできない。

合法性の原則(2) この原則に対する制約 納税者に有利な行政先例法が存在する場合には、租税行政庁はこれに拘束される。 納税者に有利な解釈・適用が一般になされ、是正措置もとられていない場合には、合理的な理由がないのに特定の納税者を不利益に扱ってはならない。 信義誠実の原則(禁反言の原則)が認められるべきである(但し、判例は消極的な態度を示している)。

手続的保障原則(1) 租税の賦課・徴収が公権力の行使であることは当然である。 これは適正な手続で行われなければならない。 これに対する争訟は公正な手続によって解決されなければならない。

手続的保障原則(2) 例 更正処分・青色申告承認取消処分の理由付記(国税通則法第74条の14、行政手続法第8条・第14条) 執行機関と審査機関との分離など(審査機関として国税不服審判所がある)

手続的保障原則(3) 日本における租税行政手続 国税通則法などの法律に基づいているが、行政手続法は(一部の規定を除いて)適用を除外されている。 納税者の権利保護との関係で課題を残す。 先進諸国において納税者権利憲章が制定されている例が多いが、日本には存在せず、税務当局も非常に消極的である。

遡及立法の禁止(1) 租税立法不遡及の原則とも言われる。 課税要件法定主義から派生し、解釈上の原則とも考えられてきた。 新たな租税法律が制定され、または従来からの租税法律に改正が加えられた場合 新たな法律や規定は、施行される日以後の事実に適用される。その日より遡って適用されることは、原則として認められない。

遡及立法の禁止(2) 予測可能性や法的安定性の確保のため、遡及立法は原則として認められない。 罪刑法定主義を想起すること! (但し、様々な見解がある。) 最近の重要な判決 最一小判平成23年9月22日民集65巻6号2756頁 最二小判平成23年9月30日集民237号519頁

中間課題(第1回) 課税要件について説明しなさい。 5月21日提出(DB PORTALを利用する場合は5月21日の11時まで)。 字数、枚数は指定しない。