生活困窮する高齢者支援のあり方に対する提言

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第7章 高齢者がいきいきと安心して 暮らせる社会の実現 前田唯衣. 介護保険制度運用 介護保険制度の創設( 2000 年 4 月) 介護保険制度の創設( 2000 年 4 月)  持続可能な制度の構築  認知症高齢者や一人暮らし高齢者への 対応  2005 年介護保険法改正.
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「働き方」に関する詳細・お悩みは【相談窓口】へ 改正法の詳細は厚生労働省HP『「働き方改革」の実現に向けて』をご覧ください。
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生活困窮する高齢者支援のあり方に対する提言 ~離職後2年以内の未就職者を監視する仕組みを作る~ 【生活困窮状態になる前の支援策】 2019年7月8日 都市行政コース 門脇敏弘 M19AB503

問題提起: 高齢者が生活困窮に陥る前に支援できないのか。 1.生活困窮する高齢者が増加している 問題提起: 高齢者が生活困窮に陥る前に支援できないのか。  生活保護を受給する高齢者の割合が非常に高い。 ・2015年度全国の年齢別の被保護人員としては、65歳以上の高齢者の伸びが大きい。 ・被保護人員のうち、全体の45.5%は65歳以上の者が占めている。 年齢階層別被保護人員の年次推移(全国) (グラフ1) (グラフ1)出典:高齢者に対する支援のあり方について(社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会資料(平成29年7月11日) 厚生労働省被保護者調査

55才以上の割合は男性57.3%、女性53.2%となっている。 2.大阪市の生活保護受給開始者の基本的特徴 2015年度大阪市の生活保護全受給開始者のうち 55才以上の割合は男性57.3%、女性53.2%となっている。 貧困の女性化・・・労働市場における女性の不利(非正規の格差) 貧困の高齢化・・・高齢者の所得が少ない 57.3% 53.2% (グラフ2) (グラフ3) 出典:大阪市の地域福祉等の向上のための有効性実証検証報告【大阪市立大学 公共データ解析プロジェクトチーム(2017年7月)】 (グラフ2・3)年度・性別ごとの年齢構成を加工

3.なぜ高齢者が生活困窮に陥るのか 【主な理由と困窮状態になったターニングポイント】 困窮状態になるきっかけ(出来事)から“比較的短期間”に保護開始となるケースが多い 保護開始前年数別困窮状態になったターニングポイント(全国数値) 男性の保護開始2年前までに起こったターニングポイントは、 「疾病」、 「障害の診断・認定」 「初職以外の失職」、 「住まいの喪失」が多い。 (グラフ4:世帯主が男性) 女性の保護開始2年前までに起こったターニングポイントは、 「疾病」、「離婚」、 「世帯主以外の収入源の喪失」 「初職以外の失職」が多い。 (年前) (グラフ5:世帯主が女性) 男女とも、保護開始の2年前 までが大多数占めている。 困窮状態の半数前後は失職、収入源の喪失が原因である。 (年前) 出典:(グラフ4・5)野村総合研究所「生活保護に至る要因に関する調査及び分析業務」(平成28年度) 特別集計

まとまった出費に脆弱、貯蓄で支え切れない 3.なぜ高齢者が生活困窮に陥るのか 【背景要因】 高齢者が生活困窮する主な背景要因 ①病気、失業等で継続就労できなかった、現役時代不安定な就労(介護離職等)  →高齢期のフロー収入(年金、就労等)が少ない。  →老後の備え(貯蓄や持ち家保有)が十分でないまま高齢期に入った。 ②少子化、 三世代同居が減少  →単身世帯(家族内の支え合いや家計のスケールメリットがない、自力解決できない) ③子どもの課題(不登校、 ひきこもり、障害、働き方等)  →自立できない子どもを養う。 まとまった出費に脆弱、貯蓄で支え切れない 生活困窮者自立支援制度の活用 生活保護受給世帯となるリスクを抱える世帯が生活保護世帯に至らないようにするための役割が「生活困窮者自立支援制度」には求められている。 ・就労支援・・・可能な限り就労収入が得られるようにしておくこと ・家計相談支援・・・家計管理ができる能力を身につけておくこと ・ほか、自立相談支援、一時生活支援、学習支援事業、就労訓練事業等

4.生活困窮する高齢者に対する就労支援の状況 生活困窮する高齢者への国・自治体の対応 (注1) 収入確保 の対策 年金生活者支援給付金(H31.10~)、年金の受給資格期間短縮 (H29.8~)、 就労促進 (ハローワーク、シルバー人材センター、 生活困窮者自立支援窓口) 医療(国保・後期):保険料2割軽減・5割軽減の対象者拡大(H26.4~)等 介護:低所得者に対する保険料軽減の強化 世帯ごとの生活状況に応じたきめ細かな支援を強化(生活困窮者自立支援窓口) 支出軽減 の対策 大阪市の取り組みの柱 ~生活保護の適正化に向けて~ 働ける方には働いていただく就労自立支援 1)大阪市就労自立支援・・・総合就職サポート事業(注2) 特徴:民間事業者のノウハウを最大限活用し、職場定着まで一貫して支援を実施。 ①生活保護申請時を含む早期の段階から、「相談・助言」に始まり、「カウンセリング」、  「ハローワークへの同行」、「就職あっせん」など、受給者に寄り添った支援を行っている。 ②事業者への事業提案指示に支援困難者への対策を盛り込むことで就職率の確保や向上  を図っている。 2)大阪市生活保護受給者等就労自立促進事業 (注3) ハローワークの常設窓口 平成26年2月開始:港区、西淀川区、東淀川区、住吉区 平成26年3月開始:浪速区、旭区、城東区、東住吉区、西成区 出典:(注1)高齢者に対する支援のあり方について(社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会資料(平成29年7月11日) 厚生労働省被保護者調査、 (注2、注3)「生活保護の適正化に向けて 」平成27年11月大阪市

5.ターニングポイントを迎える前の支援の状況 公的機関・自治体・法人・企業のセカンドキャリアサポート体制は不十分 主なセカンドキャリア支援の取組み 公的機関 人材銀行、シルバー人材センター、 産業雇用安定センター(注4) 高齢・障害・求職者雇用支援機構 大阪府 シニア就業促進センター(注5) 企業 (主に3000人 以上の大企業) 求職活動のための休暇制度、資金援助、 再就職支援会社を通じての再就職 支援制度、受入企業に対する支援 (注4)人材を送り出す企業と人材を受け入れる企業との  間に立って、情報提供・相談等の支援を行い、出向・  移籍の成立に結び付ける「人材橋渡し」の業務を「無  料」で実施する専門機関、 (注5)大阪府とセブンイレブンとの間で包括連携協定 *中小企業の支援状況の把握は困難。 専門家によるキャリアコンサルティングを 実施しているのは、わずか3.3% (グラフ6) キャリアコンサルティングを行わない理由(グラフ7) (グラフ6・7)出典:厚生労働省「平成29年度能力開発基本調査」

生活困窮前のターニングポイント時点の情報を入手する。 6.生活困窮する高齢者支援の課題 生活困窮者の発掘方法・・・主なセーフティネットの現状 状態 就労可・微妙・否 生活困窮者(前)の発掘方法 主な機関 生活保護 微妙 民生委員等が発掘する 相談窓口に出向く 市町村の福祉事務所等 生活困窮 微妙・可 社会福祉協議会等 生活困窮前(現在自立) 可 ハローワーク 会員に対する広報 シルバー人材センター 企業と機関との連携 産業雇用安定センター等 新聞折込の求人広告紙 シニア就業促進センター(大阪府) →本人が相談等で窓口に出向くまでの情報把握が困難。 生活困窮する高齢者支援の課題 高齢期になってから生活困窮や生活保護に至ることを防ぐ観点から、その前の時期のうちに支援につながり、将来を見据えた就労支援によりできるだけ就労収入を得られるようにしておくことや、家計相談支援により家計管理ができる力を身につけておくことが重要ではないか。 (注6) 生活困窮前のターニングポイント時点の情報を入手する。 (注6)出典:社会保障審議会生活困窮者自立支援及び生活保護部会(第4回)

参考.シニア就業促進センターとは 運 営 者:大阪府高年齢者就業機会確保地域連携協議会 事業形態:国からの事業委託(生涯現役促進地域連携事業) 対 象 者:55歳以上のシニア 機 能:働き方の希望にあわせた仕事  探しのアドバイスや関係機関の紹介 場 所:エル・おおさか本館3階 登録企業数:202社(H31.3月) 出所:大阪府高年齢者就業機会確保地域連携協議会ホームページ

経済状況、心身等の状況に合った指導方法供与 7.生活困窮する高齢者を減らすために・・・対策案 離職する前の支援策(案) 法人・企業と職業紹介機関の連携を強化する。 ・法人・企業にセカンドキャリア支援制度の義務付け(専門家によるキャリアコンサルティング)。 ・法人・企業とシニア就業促進センター等(産業雇用安定センター、シルバー人材センター)  との連携など、雇用対策との連携を強化する。 ・シニア就業促進センター等が法人・企業に紹介する対象者の状態に合わせた指導方法の供与。 退職予定者 退職 再就職 専門家によるキャリアコンサルティング 経済状況、心身等の 状況に合った職業紹介 ハローワーク 前職 企業・法人 大阪府シニア就業促進センター等 情報連携 再就職 企業・法人 契約 経済状況、心身等の状況に合った指導方法供与 セカンドキャリア支援制度 上記を実施するための課題 ・セカンドキャリア支援制度を企業に義務づける法・制度の改定が必要か? ・セカンドキャリア支援制度を導入する中小企業の発掘 ・中小企業経営者のセカンドキャリア支援する意識改革(責任)

7.生活困窮する高齢者を減らすために・・・対策案 離職した後の支援策(案) 未就職者を監視する仕組みを作る(潜在的ニーズの把握) 生活困窮者自立支援制度における支援体制では、対象者の生活困窮前の情報収集が容易ではない。潜在的に生活困窮に陥る可能性のある対象者が相談するまでの過程における情報 収集のしくみ作りが課題。 (注7) 退職 ハローワーク (職業 紹介) 再就職 福祉事務所 アウトリーチ 大阪府シニア就業促進センター等 (経済状況、心身等の把握 職業紹介、アドバイス等) 未就職 離職票 失業保険手続き 失業保険受給終了 登録 上記を実施するための課題 ・個人情報保護の観点で、対象者の経済、心身等の情報を入手可能か。 ・就職を妨げる様々な理由に合わせた支援が可能か。 ・その理由(=課題)を解決するノウハウがあるか。→支援の量と質(知識)の問題 ・対象者に就労意欲があるか・・・対象者の意識の問題 (注7)出典:自治体のコミュニティ政策としての生活困窮者自立支援(尹誠國PLP会館大阪地方自治研究センター研究員)の文章を一部加工

日本版NAV 7.生活困窮する高齢者を減らすために・・・対策案 国として目指すべき支援策(案) ハローワーク、就業支援センター、福祉事務所を包括するシステムの構築。 税務署・年金事務所との個人情報共有。 日本版NAV (登録) マイナンバー管理 (所得、貯蓄、 福祉受給状況) ハローワーク (職業紹介) ハローワーク (離職票提出) 退職 失業保険・職業訓練 就業促進センター等 (就業支援) 職業紹介 税務署 福祉事務所 (生活保護) 年金事務所 生活保護費支給 上記を実施するための主な課題 ・国と地方の共同組織化  ・キャッシュレス社会化 ・デジタルリテラシー社会化 ・マイナンバー法の改正(利用範囲) ・個人データを統合するデータベース構築 ・社会の納得を得ることができるか  ・どれだけの法改正が必要となるか。 引用: NAVにおけるデジタル化(ノルウェー労働社会福祉事務所相談支援員 若林博子氏)資料より引用、一部加工