海外出向等、租税条約を通じての 国際課税の考え方 1海外出向等に関する税務 2租税条約に関する考え方

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海外出向等、租税条約を通じての 国際課税の考え方 1海外出向等に関する税務 2租税条約に関する考え方 海外出向等、租税条約を通じての 国際課税の考え方 1海外出向等に関する税務 2租税条約に関する考え方                 税理士 油 布  寛

1海外出向等に関する税務

居住者・非居住者 区分 定義 課税所得 居 住 者 永住者 国内に住所を有する個人 現在まで引き続き1年以上居所を有する個人 全世界所得 居 住 者 永住者 国内に住所を有する個人 現在まで引き続き1年以上居所を有する個人 全世界所得 非永住者 日本国籍を有しておらず、かつ過去10年以内に国内に住所・居所を有した期間が5年以下である個人 ex.外国企業から3年勤務予定で派遣された外国人社員 国外源泉所得以外の所得、国外源泉所得で国内で支払われたもの又は国外から送金されたもの                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                    非居住者 居住者以外 国内源泉所得 非居住者推定規定:国外において、継続して1年以上居住することを通常必要とする職業を有すること 就労ビザの取得の有無:非居住者の判定には無関係。1年以上か否か決まる

海外勤務者の税務 海外勤務者の居住地 ・納税義務者の判定(居住者、非居住者) ・住所とは、「生活の本拠」 ・住所の推定規定   「国外において継続してⅠ年以上居住することを通常必要とする職業」  辞令、出向契約書で判断 ・住民税と国税の考えの違い   1/1住民基本台帳カード登録→住民税納税義務  → 「海外居住届出書」の提出の必要性(自治体により取り扱いが違う) 給与所得の源泉地(役員の例外的取扱い)  「国内において行う・・人的役務の提供(内国法人の役員として国外において行   う勤務・・を含む)に基因するもの」 租税条約(183日ルール)→国内源泉所得を免税

国内源泉所得 所得の源泉地(日本の税法)所161条 172条申告書 給料等・・・国内において行う勤務その他の人的役務の提供(内国法人の役員として国外にお いて行う勤務・・人的役務の提供を含む。) 事業所得・・・PEの所在地(日中租税条約と比較 6か月超コンサルタント業務を提供する場 合は、PEとみなされる) 配当  ・・・配当支払法人の本店所在地 著作権の使用料・・・著作権の使用される場所(日米租税条約と比較 居住地国) 国内にある資産の運用又は保有により生ずる所得 国内にある不動産の貸付による対価 172条申告書 非居住者が退職所得又は人的役務(給与を含む)の提供を行い、源泉徴収されなかった場合に限り 使われるもの。 Ex.海外子会社から支給される給与のうち、日本出張()に対応する部分(海外子会社の日本支店がな い場合)

租税条約による例外的取扱い(短期滞在者免税) 原則:給与課税の源泉地は、勤務地 租税条約で183日ルールが定められていれば、免税 条件  ・滞在日数  ・支払者(相手国の居住者からの支払)  ・費用負担(自国負担ではない) 日シンガポール条約第15条 1の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者が他方の締約国において行う勤務について取得する報酬に対しては、次の(a)から(b)までに掲げることを条件として、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。 (a)・・継続するいかなる12ケ月の期間においても合計183日を超えない期間・・滞在すること (b)報酬が当該他方の締約国の居住者でない雇用者又は・・から支払われるものであること (c)報酬が雇用者の当該他方の締約国内に有する恒久的施設又は固定的施設によって負担されるものでないこと

給与等の計算期間後に非居住者となった場合 ①計算期間の終了後、出国②給料は出国後支払 ⇒ 国内源泉所得 分離課税 給与等の計算期間後に非居住者となった場合 ①計算期間の終了後、出国②給料は出国後支払 ⇒ 国内源泉所得 分離課税 居住者期間 非居住者期間 4/15 出国 4/25 3/16 4/20 4/21 給料日 ・出国の翌日4/21から非居住者 ・4/25、非居住者は国内源泉所得の支払を受けることになる。 ・非居住者に支払う時に、20.42%の源泉徴収 ・居住者として最後の給与支給時に行われる年末調整には含めない。 給料計算期間

給与等の計算期間の途中で非居住者となった場合 ①計算期間の途中で出国②給料計算期間1月以下 ⇒ 国外源泉所得(所期基通212-5) 給与等の計算期間の途中で非居住者となった場合 ①計算期間の途中で出国②給料計算期間1月以下 ⇒ 国外源泉所得(所期基通212-5)                          非課税 居住者期間 非居住者期間 4/10 4/25 4/11 3/16 4/15 給料日 出国 給料計算期間

出国時に年末調整を 給与等の支払を受ける者が海外支店等に転勤したことにより非居住者となった場合、出国時 に年末調整を行う(所基通達190-1)。 外国人が3年間、日本に居住し、帰国する場合も同じ。 控除対象配偶者、扶養の判定⇒1/1~12/31までの所得見積(合計所得金額)を基に出国時の現況。 社会保険料、生命保険料⇒出国時点までに居住者が支払ったものが対象(所法74、76) 【参考】   ①住宅借入金等特別控除⇒出国時は適用なし(12/31判定)    ・帰国後再適用を受けるための手続きを税務署へ    ・「転任の命令等により居住しないことになる旨の届出」(出国前)    ・帰国後、残りの期間において適用ができる。      ②引っ越し費用⇒通常費消される範囲⇒非課税(所法9条4項)   ③支度金⇒手元に支度金が残らない程度であれば非課税。    社員とし品位又尊厳を維持する上で必要な支度金も認められる。   ④医療費⇒海外出向中(非居住期間)の医療費は帰国後、医療費控除の対象にならない。 

出国後、国内勤務に係る賞与が支給 出国後非居住者となった者の国内勤務に係る部分に、20.42%源泉徴収(所基通161-41) 給与又は報酬の総額× 帰国後、非居住者だった期間の賞与を受け取った場合と比較   賞与支給期間 5/21~11/20   帰国     9/1   支給日    12/20(海外出向中の期間を含めて賞与支給)   非永住者以外の居住者   ⇒帰国後に支払われる給与は所得の源泉地にかかわらず居住者に対し全世界所得課税(所7) 勤務が国内国外双方にわたる場合で、給与等の総額に対する金額が著しく少額である場合は、非課税の可能性もある(所基通161-41) 国内において行った勤務 又は人的役務の提供の期間 給与又は報酬の総額の計算の基礎となった期間

海外出向について 出向契約 出 向 元 出 向 先 就業規則 【指揮命令・勤務管理等】 就業規則 【出向の規定】 業務に 従事 労働契約 出 向 元 出 向 先  就業規則 【指揮命令・勤務管理等】  就業規則 【出向の規定】 業務に 従事 労働契約 業務に 不従事 労働契約  出 向 者 ・雇用の継続 ・労働条件の保証 ・処遇の維持 ・給与水準の維持 ・在宅手当の支給

海外出向負担金 給与負担金 出 向 元 出 向 先 給与:本来は出向先負担 較差補てん金:出向元法人負担 給与の支払 出 向 元 出 向 先 給与:本来は出向先負担 較差補てん金:出向元法人負担 給与の支払 国外源泉所得のため源泉徴収不要  出向者 ・雇用の継続 ・労働条件の保証 ・処遇の維持 ・給与水準の維持 ・在宅手当の支給

海外出向における税務問題 海外子会社の負担がなく、親会社が全額負担 海外子会社が給与負担しているにもかかわらず、さらに親会社でも給与を支 給  ・賞与支給は経営不振等で出向先法人が支給できない時に限るのか? 留守宅手当、単身赴任手当、治安上の必要な費用(ハードシップ手当)など、ど こまでなら合理的理由によりOKになるのか? ポイント 較差補てん金が損金にするためには、 出向者が日本で支給されている給与等と、出向先法人における現地給与規定または現地における同業他社の給与水準による給与を把握し、給与較差を明らかにしておくこと

海外出向規定の整備 現地子会社と給与等負担の書面による取り決め 出向前と後での税負担で均衡になること 出向前と後での税負担で均衡になること  海外出向者と会社側の決めごとを明らかにして、トラブルを軽減⇒安心して赴任 海外出向規定がPEの認定課税の判断材料とされる可能性 手取支給額の保証 現地子会社と給与等負担の書面による取り決め 税務当局とのトラブル回避 手当負担⇒日本で支払うものは日本親会社、赴任後現地で支払うものは現地負担

日本の家族に支払う留守宅手当 海外出向中、自宅を貸付 同じ会社の社員に社宅として貸与⇒20.42%源泉徴収⇒確定申告 海外勤務に起因して支払われる留守宅手当はどこで支払われようと、国外源泉所得⇒課税の必要なし 内国法人の役員の場合、国外勤務は国内源泉所得⇒20.42%源泉徴収 留守宅手当のうち、海外出向者の日本出張中に係るものは国内源泉所得となり源泉徴収が必要 海外出向者が役員の場合であっても留守宅手当が役員報酬でない限り国外所得 法基通達9-2-47(出向者に対する給与の較差補てん)⇒雇用契約に基づく従業員が対象 出向元法人が出向先法人との給与条件の較差を補填するため出向者に対して支給した給与の額(出向先法人を経て 支給した金額を含む。)は、当該出向元法人の損金の額に算入する。 (注)・・次の金額は、いずれも給与条件の較差を補填するために支給したものとする。 1出向先法人が経営不振で出向者に賞与を支給することができないため出向元法人が・・支給する賞与の額 2出向先法人が海外にあるため出向元法人が支給するいわゆる留守宅手当の額 【国税庁照会事例】フランス本社勤務のフランス人が日本出張した場合、国外で留守家族へ支払われる給与 海外出向中、自宅を貸付 同じ会社の社員に社宅として貸与⇒20.42%源泉徴収⇒確定申告 個別に不動産業者を通じて個人と契約貸与⇒源泉徴収不要⇒確定申告

不動産所得(非居住者等に対する不動産の賃借料) 国内にある不動産等の貸付による対価 源泉徴収20.42%を受けたうえ、確定申告 居住者(借主)が(個人)が、自己またはその親族の居住の用に供するために土地や家屋を借りる場合は   源泉徴収する必要はない 日中租税条約第6条1号  「一方の締約国の居住者が他方の締約国に存在する不動産から取得する所得に対しては、当該 他方の締約国において租税を課することができる」(不動産所在地国にも課税を認めている)

納税管理人の届出 不動産所得があって、年の途中に出国 非居住者が国内に不動産所得がある場合 非居住者が国内不動産を売却する場合 給与が国外で支払われる場合 退職所得の選択課税 外国法人を閉鎖する場合 国内にPEを有しない外国法人が国内に不動産所得等を有する場合

非居住者に係る退職所得の選択課税 原則 退職手当等のうち、国内源泉所得 ⇒ 非居住者が居住者であった期間に行った 勤務その他役務の提供に起因するもの     ⇒源泉徴収(グロス金額×20.42%)、退職所得控除及び所得控除なし 退職所得の選択課税 ・国内勤務の長い人は退職所得控除が使えるため、有利  ⇒ 居住者として退職金を全額受領したものとして退職所得控除を使い、    退職所得の金額を計算 ・源泉税額より少ない場合 ⇒ 国内で還付手続き(納税管理人)

2 租税条約の考え方

租税条約の役割 二国間の国際課税権の調整(双方居住者の調整等) 二重課税の排除(恒久的施設の範囲、源泉地国での課税範囲、二重課税の調整 方法、相互協議など) 脱税及び租税回避への対応(情報交換等) 投資・経済交流の促進  特に、居住国と源泉地国が違う場合は、所得源泉地国の課税範囲を制限するこ とで、二か国の課税権の調整を図る役割を持っている。居住地国の課税範囲を何 ら制限するものではない。 *受領者の居住地国と支払者の所在地国との間で締結された条約が適用される。 【租税条約に関する届出】  租税条約に規定する税の減免を受ける際に届け出るもの ・源泉徴収される税率が軽減される場合の届出 ・特典制限条項のある場合の届出

二重課税の排除方法 居住地国で外国税額控除の適用 居住地国で外国所得の免除規定の適用 日本 米国 源泉地国(支払者) 居住地国(受領者)   源泉地国(支払者)   居住地国(受領者) 米国 全世界(受領国)所得課税 源泉地(支払地国)所得課税 20

どの租税条約の適用を受けるの? 租税条約の適用を受けるのは誰? 利子、配当、使用料などの支払を受ける者 支払者が税金負担(グロスアップ契約)⇒支払者コストアップ   租税条約の適用を受ければ、税金分のコスト負担が減る  どの租税条約の適用を受けるの? 受領者の居住地国と支払者の所在地国(所得源泉地国)との間の租税条約が適用される。 受領者の居住地はどこだ? 【例】条約の適用を受ける者(定義)「一方の締約国の居住者とは、・・本店又は主たる事務所 の所在地、管理の場所・・基準により当該一方の締約国において課税を受けるもの」 スイス銀行(本店)シンガポール支店から借入(牧野好孝著「事例でわかる国際課税」参照事例) 所得の受領者⇒居住地国⇒スイス 支払者⇒ 日本 適用租税条約は日スイス租税条約

国内源泉所得 22 参考 日米租税条約 第1条「この条約は、・・一方又は双方の締約国の居住者である者にのみ適用する。」 参考 日米租税条約 第1条「この条約は、・・一方又は双方の締約国の居住者である者にのみ適用する。」 第4条1「・・一方の締約国の居住者には、当該一方の締約国内に源泉のある所得又は当該一方の締約国内にある恒久的施設に帰せられる利得のみについて当該一方の締約国において租税を課される者を含まない。」 国内源泉所得 所得の源泉地(日本の税法) 事業所得・・・PEの所在地(日中租税条約と比較 6か月超コンサルタント業務を提供する場合は、PE とみなされる) 配当  ・・・配当支払法人の本店所在地 著作権の使用料・・・著作権の使用される場所(日米租税条約と比較 居住地国)  「国内において業務を行う者から受ける次の・・使用料・・で当該業務に係るもの  イ 工業所有権・・・使用料   ロ 著作権・・・使用料   ハ 機械、装置の使用料」(所161条) 22

恒久的施設(PE) 事業所得の基本的考え方・・・「PEなければ課税せず」 支店、事務所、工場、その他事業を行う一定の場所(支店PE) 【参考】日中租税条約  「一方の締約国の企業が他方の締約国内において使用人・・を通じてコンサルタントの 役務を提供する場合には、・・・合計6箇月を超える期間行われるときに限り、当該企業は、 当該他方の締約国内「恒久的施設」を有するものとする。」 23

国内法から租税条約の適用まで 日本法人N社 米国法人B社 所得源泉地 配当支払 居 住 地 24

租税条約のポイント 1居住地国 2PEの有無 3所得源泉地 4適用税率5二重課税排除 6租税条約の特典に係る届出 租税条約の規定ぶり ①所得源泉地で課税できるという規定 「当該利子が生じた一方の締約国においても、当該一方の締約国の法令に従って租税を課することができる。」日本香港条約 ②居住地でのみ課税できるとする規定 「一方の締約国内において生じ、他方の締約国の居住者が受益者である使用料に対しては、当該他方の締約国においてのみ租税を課することができる。」日米条約 ③居住地と所得源泉地の両方で課税できるとする規定 25

租税条約の適用例(使用料) 内国法人 (源泉地) 使用料の支払い 外国法人 (居住地) グロスアップ計算 手取額と源泉税率から総支払額を求める算式 手取額÷(100%ーX%)×100 原則:源泉所得税の徴収(20.42%) グロスアップ契約の場合は支払者が税金負担 原則:受取額減少 条約:免税又は軽減 グロスアップ契約の場合は支払者の負担 が減少 条約:受取額アップ 日英条約:所得源泉地では免税で居住地課税 日米条約:所得源泉地では免税で居住地課税 26

国内法(所161①11)では 居住地課税の租税条約例では 債務者主義の租税条約例では 日米租税条約第12条 「国内源泉所得とは、次に掲げるものをいう。 国内において業務を行う者から受け散る次に掲げる使用料又は対価で当該業務に係る もの イ 工業所有権・・使用料 ロ 著作権・・の使用料 ハ 機械、装置・・の使用料」 居住地課税の租税条約例では 日米租税条約第12条 「一方の締約国内において生じ、他方の締約国の居住者が受益者である使用料に 対しては、当該他方の締約国においてのみ租税を課することができる。 日英租税条約第12条 「一方の締約国内において生じ、他方の締約国の居住者が受益者である使用料に 対しては、当該他方の締約国においてのみ租税を課することができる。 債務者主義の租税条約例では 日韓租税条約第12条 「使用料は、その支払者が・・一方の締約国の・・居住者である場合には、当該 一方の締約国内において生じたものとされる。」 27

短期滞在者免税 原則:給与課税の源泉地は、勤務地 租税条約で183日ルールが定められていれば、免税 条件 ・滞在日数  ・滞在日数  ・支払者(相手国の居住者からの支払)  ・費用負担(自国負担ではない) 日シンガポール条約第15条 1の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者が他方の締約国において行う勤務について取得する報酬に対しては、次の(a)から(b)までに掲げることを条件として、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。 (a)・・継続するいかなる12ケ月の期間においても合計183日を超えない期間・・滞在すること (b)報酬が当該他方の締約国の居住者でない雇用者又は・・から支払われるものであること (c)報酬が雇用者の当該他方の締約国内に有する恒久的施設又は固定的施設によって負担されるものでないこと 28

外国人留学生のアルバイト課税 留学生 租税条約 中国 専ら教育若しくは訓練を受けるため・・一方の締約国内に滞在する学生、事業修習者又は研修員であって、・・その滞在の直前に他方の締約国の居住者であったもの・・がその生計・・のために受け取る給付又は所得については、当該一方の締約国の租税を免除する。 フィリピン (1)一方の締約国を訪れた時点において他方の締約国の居住者であった個人であって、主として、(a)当該一方の締約国内の大学その他の公認された教育機関において勉学をするため、・・当該一方締約国内に一時的に滞在するものは、次のものにつき、当該一方の締約国において租税を免除する。 (ⅲ)当該一方の締約国内で提供する人的役務によって取得する所得であって年間15百合衆国ドル又は日本円若しくはフィリピン・ペソによるその相当額を超えないもの (2)(1)の規定に基づく特典は、・・必要とされる期間につてのみ与えられる。ただし、その特典は、いかなる場合も、(1)(a)の場合には引き続き5年を超える期間、・・与えられることはない。 29

留学生 租税条約 韓国 1 専ら教育・・を受けるため・・一方の締約国内に滞在する学生・・であって、・・その滞在の直前に他方の締約国の居住者であったものがその生計・・のために受け取る給付については、当該一方の締約国の租税を免除する。ただし、当該給付が当該一方の締約国外から支払われるものに限る。 1に規定する学生は、・・勤務による報酬が年間2万合衆国ドル・・その相当額を超えない場合には、・・免除される。ただし、・・継続する5年を超える期間当該免除を受けることはできない。 ベトナム  専ら教育・・を受けるため・・一方の締約国内に滞在する学生・・であって、・・その滞在の直前に他方の締約国の居住者であったものがその生計・・のために受け取る給付については、当該一方の締約国の租税を免除する。ただし、当該給付が当該一方の締約国外から支払われるものに限る。 30

留学生 租税条約 ブラジル 1 専ら教育・・を受けるため・・一方の締約国内に滞在する学生・・であり、・・その滞在の直前に他方の締約国の居住者であったものがその生計・・のために受け取る給付又は所得については、当該一方の締約国の租税を免除する。ただし、・・当該所得が当該一方の締約国内で行う人的役務に関して取得するものであって、継続して3課税年度を超えない期間、いずれの課税期間についても千合衆国ドル・・その相当額を超えないものであることを条件とする。 インド  専ら教育・・を受けるため一方の締約国内に滞在する学生・・であって、現に他方の締約国の居住者であるもの又はその滞在の直前に他方の締約国の居住者であったものがその生計・・のために受け取る給付については、当該一方の締約国の租税を免除する。ただし、当該給付が当該一方の締約国外から支払われるものである場合に限る。  31