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通訳の種類 通訳の原理 獨協大学国際教養学部 言語文化学科 永田小絵
通訳翻訳論 第5回 通訳の種類 通訳の原理 獨協大学国際教養学部 言語文化学科 永田小絵
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Simultaneous 【同時通訳】 AIICの定義
In a sound-proof booth with direct view onto the conference room, the interpreter listens to a speaker through earphones and simultaneously transmits the message in another language through a microphone to listeners in the room. 会場を直接見ることのできる防音ブース内で行 う。 発言者はマイクに向かって話し、通訳者はそれ をヘッドフォンで聴く。 聴きながら同時にそのメッセージを別の言語に 変換する。 訳出されたメッセージはマイクロフォンを通じ て会場の聞き手に届けられる。
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通訳の種類・同時通訳 国際会議の通訳で多用される方式 通訳ブースを用いた同時通訳 バイリンガルの会議 マルチリンガルの会議
ヘッドホンから聞こえるスピーチを聞きな がらマイクに向かってほぼ同時に訳出 半日2名体制、一日3名体制のチームで 互いに協力しつつ15~20分ほどで交替 マルチリンガルの会議ではリレー通訳 →詳細は通訳実務「会議通訳」の回で説明
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Consecutive 【逐次通訳】 AIICの定義
Seated at the conference table, the interpreter listens to a speech, takes notes and then renders the meaning of the speaker's message in another language. 通訳者は(発言者や聞き手と同じ)会議 テーブルにつく。 通訳者は発言を聴きながらノートをとる。 訳出する際は発言者のメッセージの意味 するところを別の言語で伝える。
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通訳の種類・逐次通訳 商談、インタビュー、訪問、見学など 逐次通訳を用いる場は非常に多い
二国間交渉など正確性を重視する会議 でも逐次通訳を採用 発言者と通訳者が交替で話す方式 原発言が一区切りしたところで通訳する 短い発話~長い発話まで様々 メモ取り(note taking)技術が必要 →ノートテイキング詳細については通訳訓練に 関する講義で詳述する予定
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Whispered 【ウィスパリング】AIICの定義
Seated in the meeting room, the interpreter whispers in another language, to a maximum of two delegates, what is being said by a speaker. 会議場内に着席する。 二名以下の参加者に対して通訳する。 発言者が何を言ったのかを別の言語に 訳し、ささやいて聞き手に伝える。
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通訳の種類・ウィスパリング ウィスパリング(whispering) 同時通訳の一種
通訳サービスを必要とする少人数の聞き 手の近くに位置し、耳元に囁くように通 訳をする方式 聞き手の人数が数名以上でブースを使用 しない場合パナガイドという簡易同時通 訳機器を使うことも(所謂「パナ同通」)
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パナガイドを使った同時通訳 パナガイド:無線のイヤホンと小型マイクから 構成される簡易型同時通訳装置。 工場視察などで使われることもある。 ウィスパリングと違い、聞き手は多数いてもか まわない。発言者はマイクをつけ、聞き手はイ ヤホンをつける。発言はマイクを通じて通訳者 のイヤホンに届く。 通訳者の訳出はマイクを通じて聞き手に届く。 通訳者は会場の雑音が混じった肉声を聴く必要 がなく、マイクに向かって小さい声で訳出でき る。 但し、通訳者のイヤホンがない場合もあり、現 場の肉声を拾ってのパナ同通は負荷が大きい。
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原稿付き同時通訳 (1) サイト・トランスレーション
原稿付き同時通訳 (1) サイト・トランスレーション スピーカーまたは関係者、関係機関により提供された原稿が ある。発言を聴き、原稿を見ながら通訳する。正式なスピー チに用いられることが多い。通訳者が時間的に余裕のある時 期に原稿を入手できれば十分な準備が可能。 辞書や参考書などで訳語を調べる、スピーチで取り上げられ ている事柄について勉強するなど。 翻訳原稿を作る、通訳用のメモを作る、原稿に書き込みをす る。 発言者は完全に原稿どおりに読むとは限らない。 途中で思いついたことを付け加える、統計数字などを最新の 情報に更新する、聴衆の反応を見て話題を変える、時間の関 係で一部を割愛する等々。 とくに、冒頭のあいさつ、締めの言葉などは原稿に書かれて いないことのほうが多い。 スピーチの直前になってブースに原稿が舞い込むこともある。 →→→ 原稿に拘泥すると失敗する。実際に話されてい る内容に沿って訳すこと。
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原稿付き(2)訳文の読み上げ スピーカーまたは関係者、関係機関により提供された 原稿がある(翻訳された原稿が事前に提供されること も)。あるいは当日放映する映像資料が提供される等。 発言を聴き、原稿を見ながら通訳する。通訳者が時間 的に余裕のある時期に原稿を入手できれば十分な準備 が可能。 発言者は原稿のとおりにそのまま読み上げる。時には 秘書や部下が代読。原稿をそのまま読むのでスピード が速くなる(何も考えずに読んでいるだけ)。棒読み になると聴いてわかりにくい。 →→→ 最初から原稿ベタ読みが分かっていれば同じ時 間内におさまる分量の訳文を作っておくこと。最低限伝えなけれ ばならない部分を抑えておくこと(間に合わなくなったら要点の み訳出してその場をしのぐ)
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原稿なし 読み原稿は提供されない。 発言者も原稿を持っていない。手元に簡単なメモがあ る場合も。
読み原稿は提供されない。 発言者も原稿を持っていない。手元に簡単なメモがあ る場合も。 関連資料(会社案内、パンフレット、以前の議事録、 関連サイトのURL、グロッサリー)などがあれば事前に 参照しておく。 フリーディスカッション、質疑応答は原稿なし同時通 訳になる。発言者は聞き手に伝えたいことを頭の中で まとめつつ話す。さほど早口にはならないはずだが、 実際にはそうとも限らない。何度も同じ内容を話して いる発言者は話す速度が速くなりがち。 →→→ 十分な事前準備をすることが必要。慌て ず、落ち着いて、内容が理解できたところで訳出を開 始すること
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資料のある通訳 発表用資料が提供される (パワーポイントのスライド) 事前準備を行う スピーカーとの打ち合わせ 文字の多いスライド
発表用資料が提供される (パワーポイントのスライド) 文字の多いスライド 画像の多いスライド 事前準備を行う 資料の読み込み 対訳用語の書き込み 参考資料の閲覧 スピーカーとの打ち合わせ 内容の確認
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発言の内容 通訳の難易度を決定する最大要因。 通訳者の知識内容・レベルと、発言者 の知識内容・レベルの間に存在する距 離が大きければ大きいほど通訳は困難 になる。 国際会議はしばしば専門家の集まりで あり、ある分野、あるテーマについて 深い知識がある。 通訳者は各種の知識をすばやく吸収す る能力を有している必要がある。
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発言の論理展開 発言の筋道が明確かどうかが通訳に大 きな影響を与える。 論理が混乱している発言であっても、 通訳者は何とかして論理の展開を見い だそうとする。 どうしても筋が通らない発言の場合、 理解をあきらめて表面的に変換するこ とになる。
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発言の速度 翻訳と通訳の最大に違いは時間的な制 限にある。 同時通訳は発言とほぼ同時に始まり、 ほぼ同時に終わらなければならない。 発言の速度は通訳の完成度に直接の影 響を与える。 日本語で一分間に200~220字以下で話 された場合、内容が全て理解できれば、 ほぼ全ての内容を外国語に訳出するこ とが可能である。
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音声表現 発音とアクセント:方言による訛り、非 母語話者の発音のくせによって理解が阻 害される。通訳者は聴取した後に発音の 補正をして理解しなければならない。 語気、語調:発言者の語気や語調は発言 の理解を助ける。 原稿の棒読みでは内容を理解しにくい。 特に他人の書いた原稿をはじめて読む場 合。単語の音だけが聞こえてきて、内容 が聞こえてこない発言
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発言者の言語能力 非母語による発言 もともと話し下手 頻繁に言い直す ことわざや慣用句の不適切な使用
非母語による発言 もともと話し下手 頻繁に言い直す ことわざや慣用句の不適切な使用 以上のような言語能力上の問題が会っ た場合、通訳がより難しくなる
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通訳者による聴取 普段の話の聞き方とは異なる聴取方法 通訳をするという角度から考えながら 聴かなければならない。→アクティ ブ・リスニング 100%聴き、正しく聴き、絶えず適切 に判断しながら聴くこと。 発言の内容や、自分にとって興味があ るかないかにかかわらず、全てを注意 深く聴く。
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通訳者の理解と思考 聞こえてきた内容を次々に素早く判断し、処 理し、最も適切な訳し方を考える。 発言が伝える内容、感情や思想の正確な理解 にもとづく訳出方法の決定。 言語知識、世界知識、専門知識、情況知識の 総動員による理解と判断が必要。 さらに、メタ言語情報(聴覚情報)と非言語 情報(視覚情報)も重要。 思考、分析、判断、帰納、連想、予測、加工、 転換、表現法決定などの作業が交錯。 同時通訳では労働負荷の軽減と質の確保のた め、二十分程度で交替。
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通訳者による訳出 聞き手が無理なく受け入れられる発音、 発声、滑舌のよさ、語気、語調。 母語と外国語(作業言語)の両方の能 力。 豊かな語彙、臨機応変に対応するため の文法力、ことわざや慣用句の知識。 標準的なアクセント、自然なイント ネーション、適切な速度。
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