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北アルプス医療センター あづみ病院 大羽 明美
高齢者の理学療法(2016) 北アルプス医療センター あづみ病院 大羽 明美
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講義内容 高齢者の背景と特徴 高齢者の運動機能 高齢者の生理機能 高齢者の認知機能 運動療法 在宅での高齢者の関わり まとめ
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高齢者とは? 世界保健機関(WHO)の定義 前期高齢者:65歳以上75歳未満 後期高齢者:75歳以上 末期高齢者:85歳以上
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人口の構成の変化(2025年問題)
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健康寿命と不健康寿命
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介護保険制度の変遷
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日本人の死因と要介護原因
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年齢別の主な原因疾患
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年齢からみた要介護に至った原因 前期高齢者では脳血管疾患が多い 後期高齢者では老年症候群が多い 85歳以上では老年症候群が50%以上を占める
高齢者のリハビリにおいて,老年症候群を考慮した廃用予防をすることがポイントとなる
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骨格筋機能の低下における老化と廃用
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Sarcopenia(サルコペニア) 高齢者における筋量の減少と筋力低下 語源はギリシャ語のsarx(肉)とpenia(損失) メカニズム
老化による成長ホルモンおよびインスリン様成長因子の減少 筋衛星細胞の増殖能の低下 骨格筋ミトコンドリア遺伝子の突然変異
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年齢と筋肉量の変化
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サルコペニアの評価 膝伸展トルク,膝伸展筋パワー,握力,下腿断面積(CT使用)を指標としている(Lauretaniら)
膝伸展筋パワーが最も有用な指標と言われている
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生活機能の変化
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移動能力の変化
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平成25年度転倒報告レポートから
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転倒の要因 筋力低下 転倒の既往 歩行障害 バランス機能の低下 補助器具の使用 視覚障害 関節炎 日常生活活動に支障がある うつ病 認知障害
年齢が80歳を超えている (米国と英国の両老年医学会による報告)
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転倒予測 股関節の筋力低下 バランス障害 4種類以上の服薬
3つの要因を持つ人は、1年以内の転倒予測は100%であるとしている(Robbinsら)
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安曇総合病院リハビリテーショ科 年齢別処方件数
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高齢者はリハのメインターゲット 世界有数の長寿国で、超高齢社会 理学療法士が対象とする患者の多くは高齢者 要介護者の増加
廃用症候群になりやすい 高齢者に対するリハビリのニーズの増加
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高齢者理学療法の目的 高齢者のQOL(生活の質)を保つ 介護予防(廃用予防) 軽度要介護者が重度要介護者に移行しない
軽度要介護者が重度要介護者に移行しない 高齢者が要介護にならない(転倒予防・疾病予防)
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講義内容 高齢者の背景と特徴 高齢者の運動機能 高齢者の生理機能 高齢者の認知機能 運動療法 在宅での高齢者の関わり まとめ
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体力の加齢変化
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高齢者の運動機能の特徴 個人差が大きい ライフスタイルにより低下速度が異なる 回復の遅延 運動による疲労からの回復が遅延する
ライフスタイルにより低下速度が異なる 回復の遅延 運動による疲労からの回復が遅延する 筋力・バランス・歩行能力の向上が、廃用症候群に伴う要介護度の進展を阻止する可能性をもつ
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高齢者の運動機能評価 生活機能自立に必要な運動機能の把握が重要「安全に実施できる活動範囲はどこまでか」 「予備力がどの程度あるか」
「予備力がどの程度あるか」 生活機能に必要なボトムラインを把握する 生活動作に関連した動作で安全な評価が大事となる。
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筋力と生活機能自立閾値 60歳代からの減少率が大きく、80歳では20歳代の50%以下となる 下肢筋力測定方法
☆椅子からの立ち上がり(転倒リスクの判定値) 5回の立ち上がり:14.5秒 30秒椅子立ち上がりテスト:14.5回/30秒(川端ら) ☆段階的に座る台の高さを変化させる (40cm,30cm,20cm,10cmの高さ) 正常歩行:両脚で20cm、階段昇降:片脚で40cm
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立ち上がりテスト
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歩行と生活機能自立閾値 歩行能力:10mまたは5mの距離の最大速度または自由速度で歩く際の速度(時間) 転倒リスク:1.0m/秒(鈴木ら)
屋外活動性の高い高齢者: 自由歩行速度1.16~1.33m/秒 屋外活動性の低い高齢者: 自由歩行速度0.66m/秒(Immsら) 青信号で横断歩道を渡る:1.0m/秒
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バランスと生活機能自立閾値 ☆静的バランス能力評価法 片脚立位保持(閉眼・開眼) 高齢者は閉眼:5秒以下 開眼:20秒以下 転倒リスク:開眼5秒以下 ☆動的バランス能力評価法 Functional reach test(FR):15cm以下でリスク↑ Timed up and go test(TUG): 健常者10秒以内 屋外外出20秒以内,要介護レベル30秒以上 転倒リスク:13.5秒(Shumway-Cookら)
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高齢者の平衡機能 加齢によるバランス能力の低下因子 ①脳幹・小脳の細胞の減少 ②関節や眼筋の固有受容機能の低下 ③前庭系の変化 ④下肢の筋力低下
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姿勢制御方略 立位姿勢調整:①足関節ストラテジー ②股関節ストラテジー ③ステッピングストラテジー
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高齢者の姿勢制御方略
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講義内容 高齢者の背景と特徴 高齢者の運動機能 高齢者の生理機能 高齢者の認知機能 運動療法 在宅での高齢者の関わり まとめ
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加齢に伴う生理機能の低下 骨塩量の低下,筋委縮と筋力低下,肺活量の低下と残気量の増加,血圧の上昇,運動時の最大心拍数や心拍出量の低下,視覚や聴覚の低下免疫機能の低下 個人差が大きい 体の種々の組織,臓器に種々の形で現れる 個人の遺伝的背景の影響が大きい 社会的背景や環境(食事・運動・職業等)の影響を受ける
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高齢者の全身機能 呼吸機能 循環機能 代謝機能 腎機能 栄養 関節 視力・聴力
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呼吸機能の低下 肺弾性収縮力の低下,胸郭の柔軟性の低下 肺・胸郭コンプライアンスの↓⇒残気量↑,肺活量↓,機能的残気量↑⇒呼吸筋短縮位⇒
肺・胸郭コンプライアンスの↓⇒残気量↑,肺活量↓,機能的残気量↑⇒呼吸筋短縮位⇒ 呼吸筋仕事量↑ 呼吸筋力の低下 気道防御機能の低下 粘膜組織の萎縮・線維化,線毛運動の減弱 +免疫↓ ⇒易感染性 +咳嗽↓ ⇒誤嚥性肺炎
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呼吸機能の低下 肺拡散・ガス交換能の低下 肺胞表面積↓,肺毛細血管密度↓肺血流量↓⇒ 肺拡散能↓ ⇒動脈血酸素分圧低下
肺胞表面積↓,肺毛細血管密度↓肺血流量↓⇒ 肺拡散能↓ ⇒動脈血酸素分圧低下 (若年者に比較し、低酸素血症) 換気応答の変化 中枢・末梢化学受容体・肺の伸展受容体などの情報⇒延髄呼吸中枢⇒呼吸調節 安静時の換気応答↓⇒低酸素血症, 高炭酸ガス血症に対する反応↓ 運動中の換気応答↑⇒高炭酸ガス血症に対する 反応↑⇒軽度の運動でも呼吸数や1回換気量↑
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高齢者と若年者のフローボリューム曲線
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循環機能の低下 動脈機能 動脈硬化⇒動脈コンプライアンスの低下⇒ 大動脈のwindkessel機能↓⇒ 収縮期血圧↑,拡張期血圧↓
動脈硬化⇒動脈コンプライアンスの低下⇒ 大動脈のwindkessel機能↓⇒ 収縮期血圧↑,拡張期血圧↓ 自律神経機能 自律神経線維数↓⇒血圧・心拍数の血行動態に影響⇒起立性低血圧,安静時除脈, 運動時心拍数増加反応↓ windkessel機能:動脈が心収縮期に拡張し、心拡張期には元に戻ろうとする作用
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代謝機能の低下 インスリン分泌量↓(18~85歳までに25%↓) インスリン抵抗性の増加 インスリン抵抗性:細胞,臓器,個体レベルで
インスリン抵抗性:細胞,臓器,個体レベルで インスリンの各種作用を得るのに通常必要 以上のインスリンを必要とする状態 身体的変化,環境要因,神経・内分泌の変化,酸化ストレスの影響
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腎機能の低下 腎機能 尿の生成=体液の恒常性の維持 水と電解質の調節,酸塩基平衡の調節, タンパク質代謝産物の排出およびホルモン分泌
尿の生成=体液の恒常性の維持 水と電解質の調節,酸塩基平衡の調節, タンパク質代謝産物の排出およびホルモン分泌 腎機能低下高齢者の運動療法の禁忌 心血管事故の発生率が高くなる 拡張期血圧115mmHgを超える 収縮期血圧180mmHgを超える 透析患者の運動療法が重要視されている
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低栄養 心身機能の低下による食欲低下,嚥下障害などによる 栄養状態の↓ 栄養状態の把握 体格指数(BMI):18.5~25が正常指数
栄養状態の↓ 栄養状態の把握 体格指数(BMI):18.5~25が正常指数 血液生化学データ:血清アルブミンALB(3.5~5.3/dL)、 総コレステロールT-CHO、プレアルブミン 侵襲⇒生体反応(グリコーゲン・脂肪・筋蛋白質の分解) ⇒エネルギーを取り出す 炎症反応⇒CRP血中値↑,血管透過性↑⇒ALB・ T-CHO・ プレアルブミンは組織間液に移動し減少 侵襲後の運動療法の目的:侵襲下で失われた筋肉と 身体機能の回復
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BMIと生存率
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関節の変形の影響 加齢に伴う関節の変形は運動,日常生活 動作時の痛みを生じる
動作時の痛みを生じる 関節運動時の痛みは筋出力の低下の原因となり,関節への負担を増強させる 運動時の関節痛 不活動時間を延長 筋力低下
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視力・聴覚の低下 視力低下⇒空間的情報入力の低下⇒ バランス反応の低下(姿勢保持、立ち直り反応) ⇒転倒・転落の危険の増加 聴力低下⇒言語的情報入力⇒言語指示が入りに くい
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講義内容 高齢者の背景と特徴 高齢者の運動機能 高齢者の生理機能 高齢者の認知機能 運動療法 在宅での高齢者の関わり まとめ
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高齢者の認知機能 認知症:脳器質性疾患による症候群 注意,記憶,思考,理解,判断,計算など↓ 認知症を来す疾患:アルツハイマー,
注意,記憶,思考,理解,判断,計算など↓ 認知症を来す疾患:アルツハイマー, 脳血管性認知症,レビー小体型認知症 身体活動は認知機能に影響を及ぼす 運動トレーニングは神経生理学的刺激効果を有する 運動療法:注意力障害の改善の可能性
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注意力障害に対するリハビリテーション P300バイオフィードバック療法
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講義内容 高齢者の背景と特徴 高齢者の運動機能 高齢者の生理機能 高齢者の認知機能 運動療法 在宅での高齢者の関わり まとめ
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運動療法のリスク管理 ①対象疾患のリスク 疾患そのもののリスク,術後のリスク, 抗癌剤・透析といった治療のリスクなど ②加齢に伴うリスク 循環機能の低下,心肺機能の低下, 関節の変形,視力・聴力の低下, 栄養状態の低下,認知機能の低下など
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アンダーソン・土肥の基準(一部) 理学療法を行わないほうがいい場合 1)安静時脈拍数120/分以上 2)拡張期血圧120以上
1)安静時脈拍数120/分以上 2)拡張期血圧120以上 3)収縮期血圧200以上 4)運動前からすでに動悸、息切れのあるもの 途中で運動を中止する場合 1)運動中、中等度の呼吸困難、眩暈、嘔気など が出現した場合 2)運動中、脈拍が140/分を超えた場合
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高齢者の運動療法 一般に筋力増強運動と有酸素運動を併用した運動療法プログラムが推奨される
運動強度や頻度は症状や合併症を十分に考慮して個別に設定する必要がある リスク管理として血圧,心拍数,SpO2などのバイタルサインの確認,息切れ,疲労感などの自覚症状の確認などを行う
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おおよそ・・・ 運動頻度:毎日または隔日 運動強度: 最大心拍数(220-年齢)の40~60% 自覚的運動強度 Borgスケール12~14
最大心拍数(220-年齢)の40~60% 自覚的運動強度 Borgスケール12~14 運動時間:60分 (長期継続のため20~30分でも可)
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Borg指数
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運動療法の効果 《骨関節疾患》 関節可動域の維持・増加 関節腫脹の軽減 関節の安定性の獲得 筋再教育と筋力強化 骨量の増加 運動耐用能の向上
運動療法の効果 《骨関節疾患》 関節可動域の維持・増加 関節腫脹の軽減 関節の安定性の獲得 筋再教育と筋力強化 骨量の増加 運動耐用能の向上 全身機能の改善
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特定高齢者筋力向上トレーニング事業における評価結果(平均±標準偏差)
初回評価(n=24) 最終評価(n=24) 膝伸展筋力(kg) 18.5±8.1 25.5±9.6 ** 長座体前屈(cm) 27.2±10.1 30.8±8.6 * Timed Up& Go(秒) 12.4±5.9 11.0±5.6 開眼片足立ち(秒) 10.4±15.3 14.9±17.3 ファンクショナルリーチ(cm) 25.5±7.2 29.0±6.1 最大歩行速度(秒) 5.5±3.4 4.9±2.7 **p<0.01 *p<0.05
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筋力とバランスおよび歩行能力の相関係数 TUG 開眼片脚立ち FR 最大歩行 スピード 筋力 0.49 ** 0.38 ** 0.58 ** **p<0.01
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運動療法の効果 《内部障害》 降圧効果 動脈硬化予防 血管内皮機能の改善 自律神経機能回復 インスリン抵抗性の改善 減量効果 抗虚血効果
運動療法の効果 《内部障害》 降圧効果 動脈硬化予防 血管内皮機能の改善 自律神経機能回復 インスリン抵抗性の改善 減量効果 抗虚血効果 脂質代謝異常改善 血栓形成予防 抗不整脈効果
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運動療法の効果(Hambrechtら)
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離床の重要性 座位時間を1日4時間以上確保する 活動時間を1日2時間以上,または4時間以上確保する必要があると報告されている
自分で体位変換ができない高齢者の場合,1時間以上同じ姿勢を保持することは苦痛を伴うことがあるため体位変換をしつつ離床を促す必要がある
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離床に関する先行研究
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運動の習慣化の重要性 運動を習慣化させることが重要 高齢者になるほど身体活動,運動の継続 実施を断念することが多い
実施を断念することが多い 運動処方においては高負荷の運動ほど 継続率が低い
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セルフモニタリング 身体活動・運動の継続を促すための行動科学的アプローチ
患者が自己の態度・行動を観察することにより客観的に理解し,修正が必要な行動への気づきを高める働きがある 自己効力感(セルフ・エフィカシー)を高める 運動習慣の獲得には自己管理能力を高めるような働きかけが重要
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講義内容 高齢者の背景と特徴 高齢者の運動機能 高齢者の生理機能 高齢者の認知機能 運動療法 在宅での高齢者の関わり まとめ
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生活時間の割合 生活行為 ①1次活動(生理的活動:セルフケア) ②2次活動(役割活動:家事や仕事など)
①1次活動(生理的活動:セルフケア) ②2次活動(役割活動:家事や仕事など) ③3次活動(余暇活動:趣味や休息など) 20万人を対象とした基本調査では1次活動の割合は一生を通して20%前後で変化は少ない 2次活動、3次活動の領域は「その人らしさ」に相当する部分と言える
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国民の基本調査(生活時間の推移)
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在宅の障害高齢者の生活時間
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生活期のリハビリテーションの目的 セルフケアの介入にとどまらず,役割の消失と不活発な余暇活動で占められた生活構造を変化させるようチームで支援していくこと 理学療法士は筋力やバランス,生活体力だけに目を向けるのではなく行動変容のプロセスと変容後のニーズへの対応が重要 一時的な身体機能の指標を向上させただけでは自己満足で終わってしまうことに注意する
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講義内容 高齢者の背景と特徴 高齢者の運動機能 高齢者の生理機能 高齢者の認知機能 運動療法 在宅での高齢者の関わり まとめ
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高齢者の理学療法の目的 高齢者のQOL(生活の質)を保つ
機能改善にこだわらず,活動レベルで考える.役割や余暇の時間の有効な使い方を視野に入れ目標を考える 介護予防 運動機能・生理機能の低下でリスクも高いが,運動は効果的.一時的な運動ではなく,習慣にする必要性がある. 廃用予防 離床が重要.入院中であっても,トイレや整容を規則正しく行うことが廃用予防の効果的手段
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まとめ 高齢者の身体的特徴,精神的特徴を把握することが重要である 運動療法の効果は,運動を継続することで維持される
高齢者の理学療法は廃用症候群の予防が重要である 在宅,生活期の高齢者においては生活の中での役割,生活構造にまで目を向けることが重要となる
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参考文献 ①理学療法ジャーナル 2007年1月 高齢者の運動療法の効果と限界 ②理学療法ジャーナル 2009年10月 老化による身体機能低下と理学療法 ③理学療法ジャーナル 2007年11月 地域の高齢者に対する理学療法士の視点 ④Clinical Rehabilitation 2008年12月 後期高齢者はリハのメインターゲット ⑤ Clinical Rehabilitation 2000年4月 高齢者の運動療法 ⑥LAGS 49: ,2001 Guideline for the Prevention of Falls in Older Persons ⑦理学療法ジャーナル 2014年1月 高齢者におけるバランス障害と理学療法
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