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翻訳とは何か(2) ~ ろう通訳者と聴通訳者の協働を考える ~
ろう通訳・フィーダー養成講座 「翻訳とは何か(2)」 2017年度ろう通訳養成講座・フィーダー養成講座 翻訳とは何か(2) ~ ろう通訳者と聴通訳者の協働を考える ~ 2017年11月26日
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1 翻訳・通訳の概念 翻訳・通訳の目的
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手話通訳者(士)の職務は? 1985年「手話通訳制度調査検討報告書」から
ろう通訳・フィーダー養成講座 「翻訳とは何か(2)」 手話通訳者(士)の職務は? 1985年「手話通訳制度調査検討報告書」から (1)「手話通訳士」の職務 「手話通訳士」の職務は、次のとおりとすることが望ましい。 イ)聴覚障害者のコミュニケーションに関すること。 これは、単なる言葉の置換のみではなく、日本語(口話を含む)と手 話双方の語を訳して相手方に伝えることである。 ロ)聴覚障害者への情報提供に関すること。 これは、聴覚障害者問題の正しい理解にたって各種の情報を適確に提 供することである。 ただし、「手話通訳士」は設置場所、地域等により、上記イ)ロ)以外の 業務を行うことも考慮する必要がある。 (1985年「手話通訳制度調査検討報告書」) 本報告にあたって最大の論議を費やした点は、「手話通訳」の「職務」であった。我が国の多くのろうあ者が真に求めているものは、「手話通訳の専門家」プラス「ろうあ者福祉相談員」というものであるといわれている。 ・interpret(英)・・・解釈する、説明する ・interpres(ラテン語)・・・詳述するもの、明確でないことを説明する人、他の人々が理解できないでいることをわからせる “interpret” 1 通訳する(translateと違い、発話を即座に他言語に言い換えること) 2 解釈すること(AをBと解釈すること) 3 意味を説明・解説する “translate” 1 翻訳する、訳す、言い換える 2 形を変える、変換する 3 解釈する、理解する 4 移動させる、移す(平行移動させる) ・・・少なくとも聾唖者に関する限りわれわれをよく理解し、よく手話を駆使し、直接聾唖者の心情を掴み得る仁人でなければならない・・・ (藤本敏文)
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=互いに言語が違うために話の通じない人の間に 立って、その言葉を訳して相手方に伝えること。
ろう通訳・フィーダー養成講座 「翻訳とは何か(2)」 一般的な 翻訳・通訳の概念 『広辞苑』から ●通訳(interpretation) =互いに言語が違うために話の通じない人の間に 立って、その言葉を訳して相手方に伝えること。 (広辞苑 第六版) interpretation ・発話を即座に他言語に言い換える。 ・解釈する。 ・意味を説明する。 ●翻訳(translation) =ある言語で表現された文章の内容を他の言語に 直すこと。 (広辞苑 第六版) ・interpret(英)・・・解釈する、説明する ・interpres(ラテン語)・・・詳述するもの、明確でないことを説明する人、他の人々が理解できないでいることをわからせる “interpret” 1 通訳する(translateと違い、発話を即座に他言語に言い換えること) 2 解釈すること(AをBと解釈すること) 3 意味を説明・解説する “translate” 1 翻訳する、訳す、言い換える 2 形を変える、変換する 3 解釈する、理解する 4 移動させる、移す(平行移動させる) translation ・言い換える。かたちを変える。変換する。 ・解釈する。
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今、ここで、言語と文化の障壁を超えてコミュニケーションに参加したい人々のために行われる
ろう通訳・フィーダー養成講座 「翻訳とは何か(2)」 通訳者の 通訳の概念 翻訳の一形態 今、ここで、言語と文化の障壁を超えてコミュニケーションに参加したい人々のために行われる 『通訳学入門』(フランツ・ポェヒハッカー著・鳥飼久美子監修, みすず書房,2008) 通訳とは言葉を置き換えるのではなく、 意味を伝えるものである。 『会議通訳者』(ダニッツァ・セレスコヴィッチ 著 / ベルジュロ伊藤宏美 訳 研究社、2009) ・interpret(英)・・・解釈する、説明する ・interpres(ラテン語)・・・詳述するもの、明確でないことを説明する人、他の人々が理解できないでいることをわからせる “interpret” 1 通訳する(translateと違い、発話を即座に他言語に言い換えること) 2 解釈すること(AをBと解釈すること) 3 意味を説明・解説する “translate” 1 翻訳する、訳す、言い換える 2 形を変える、変換する 3 解釈する、理解する 4 移動させる、移す
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翻訳・通訳の概念 日本のろう者(手話話者)が望む「通訳」 一般の通訳者が理解している「通訳」 もしかしたら 違うかも…
ろう通訳・フィーダー養成講座 「翻訳とは何か(2)」 翻訳・通訳の概念 日本のろう者(手話話者)が望む「通訳」 一般の通訳者が理解している「通訳」 もしかしたら 違うかも… ・・・・ コミュニケーション 文化 コミュニケーション 相談、支援 ・interpret(英)・・・解釈する、説明する ・interpres(ラテン語)・・・詳述するもの、明確でないことを説明する人、他の人々が理解できないでいることをわからせる “interpret” 1 通訳する(translateと違い、発話を即座に他言語に言い換えること) 2 解釈すること(AをBと解釈すること) 3 意味を説明・解説する “translate” 1 翻訳する、訳す、言い換える 2 形を変える、変換する 3 解釈する、理解する 4 移動させる、移す
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翻訳の概念 翻訳 表現① 表現② 起点発話(SU) 目標発話(TU) SU=source utterance
ろう通訳・フィーダー養成講座 「翻訳とは何か(2)」 翻訳の概念 翻訳 思考② (解釈・理解→意図) 表現① 起点発話(SU) 表現② 目標発話(TU) 思考① (意図) 思考③ (理解) ・interpret(英)・・・解釈する、説明する ・interpres(ラテン語)・・・詳述するもの、明確でないことを説明する人、他の人々が理解できないでいることをわからせる “interpret” 1 通訳する(translateと違い、発話を即座に他言語に言い換えること) 2 解釈すること(AをBと解釈すること) 3 意味を説明・解説する “translate” 1 翻訳する、訳す、言い換える 2 形を変える、変換する 3 解釈する、理解する 4 移動させる、移す SU=source utterance TU=target utterance
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通訳の概念 通訳 表現① 表現② 起点発話(SU) 目標発話(TU) SU=source utterance
ろう通訳・フィーダー養成講座 「翻訳とは何か(2)」 通訳の概念 通訳 思考② (解釈・理解→意図) 視線の調整 行為の促し 文化的調整 発言の確認 訳出の調整 行為の抑制 発言の促し 反応の確認 発言の制止 表現① 起点発話(SU) 表現② 目標発話(TU) 思考① (意図) 思考③ (理解) 翻訳 ・interpret(英)・・・解釈する、説明する ・interpres(ラテン語)・・・詳述するもの、明確でないことを説明する人、他の人々が理解できないでいることをわからせる “interpret” 1 通訳する(translateと違い、発話を即座に他言語に言い換えること) 2 解釈すること(AをBと解釈すること) 3 意味を説明・解説する “translate” 1 翻訳する、訳す、言い換える 2 形を変える、変換する 3 解釈する、理解する 4 移動させる、移す 人間関係の調整 態度の調整 場所の移動 情報提供 SU=source utterance TU=target utterance
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コミュニケーションとは コミュニケーションには意図(目的・要求)がある。
第7回全通研学校Ⅱ「手話と手話通訳」 ろう通訳・フィーダー養成講座 「翻訳とは何か(2)」 石川/110820 2012/7/8 コミュニケーションとは コミュニケーションには意図(目的・要求)がある。 発信者の意図(目的・要求)を、受信者が理解したとき、コミュニケーションが成立する。 コミュニケーションはシンボル(言語・行為・もの)を 介して行われる。 コミュニケーションには意図(目的・要求)がある コミュニケーションの成立=発信者の意図(目的・要求)を、受信者が理解する コミュニケーションはシンボル(言語・行為・もの)を介して行われる 文脈と知識による解釈 「わかる」のレベル 第一:コトバの範囲内で理解すること 第二:文が述べている対象世界との関係で理解すること 第三:自分の知識と経験、感覚に照らして理解すること(身体でわかるレベル) 言語・非言語・文脈がもつ意味は、同一言語話者同士でなければわからない (=言語、文化の共有) コミュニケーションのとり方は 文化によって異なる 9 9
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コミュニケーションのシンボル 言語 行為 モノ 非言語要素 文化 体験 学習 場面 立場 問題意識 前後の文脈 背景
第7回全通研学校Ⅱ「手話と手話通訳」 ろう通訳・フィーダー養成講座 「翻訳とは何か(2)」 石川/110820 2012/7/8 コミュニケーションのシンボル 言語 行為 Ж○▲☆@▽※$●・・・ コンテクスト テクスト 非言語要素 口調 表情 態度 場面 誰から誰に いつ どこで 前後の文脈 背景 文化 体験 学習 立場 問題意識 コミュニケーションには意図(目的・要求)がある コミュニケーションの成立=発信者の意図(目的・要求)を、受信者が理解する コミュニケーションはシンボル(言語・行為・もの)を介して行われる 文脈と知識による解釈 「わかる」のレベル 第一:コトバの範囲内で理解すること 第二:文が述べている対象世界との関係で理解すること 第三:自分の知識と経験、感覚に照らして理解すること(身体でわかるレベル) 言語・非言語・文脈がもつ意味は、同一言語話者同士でなければわからない (=言語、文化の共有) モノ 10 10
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コミュニケーションの成立 言葉の意味がわかる 文脈から文意がわかる 文意を理解するには知識が必要 コンテクストに基づいた推論
第7回全通研学校Ⅱ「手話と手話通訳」 ろう通訳・フィーダー養成講座 「翻訳とは何か(2)」 石川/110820 2012/7/8 コミュニケーションの成立 言葉の意味がわかる 文脈から文意がわかる 文意を理解するには知識が必要 (「わかる」にはいくつものレベルがある) メッセージが わかった! Ж○▲☆@▽※$●・・・ コンテクスト テクスト 非言語要素 口調 表情 態度 場面 誰から誰に いつ どこで 前後の文脈 背景 文化 体験 学習 立場 問題意識 コミュニケーションには意図(目的・要求)がある コミュニケーションの成立=発信者の意図(目的・要求)を、受信者が理解する コミュニケーションはシンボル(言語・行為・もの)を介して行われる 文脈と知識による解釈 「わかる」のレベル 第一:コトバの範囲内で理解すること 第二:文が述べている対象世界との関係で理解すること 第三:自分の知識と経験、感覚に照らして理解すること(身体でわかるレベル) 言語・非言語・文脈がもつ意味は、同一言語話者同士でなければわからない (=言語、文化の共有) コンテクストに基づいた推論 推論によるコミュニケーション 11 11
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コミュニケーションの成立 言葉の意味がわかる 文脈から文意がわかる 文意を理解するには知識が必要 手話の 文法・用法 ろう者に関する
第7回全通研学校Ⅱ「手話と手話通訳」 2012/7/8 石川/110820 ろう通訳・フィーダー養成講座 「翻訳とは何か(2)」 コミュニケーションの成立 手話の 文法・用法 言葉の意味がわかる 文脈から文意がわかる 文意を理解するには知識が必要 (「わかる」にはいくつものレベルがある) ろう者に関する 言語外知識 通訳者自身の 知識・体験・価値観 メッセージが わかった! Ж○▲☆@▽※$●・・・ コンテクスト テクスト 非言語要素 口調 表情 態度 場面 誰から誰に いつ どこで 前後の文脈 背景 文化 体験 学習 立場 問題意識 コミュニケーションには意図(目的・要求)がある コミュニケーションの成立=発信者の意図(目的・要求)を、受信者が理解する コミュニケーションはシンボル(言語・行為・もの)を介して行われる 文脈と知識による解釈 「わかる」のレベル 第一:コトバの範囲内で理解すること 第二:文が述べている対象世界との関係で理解すること 第三:自分の知識と経験、感覚に照らして理解すること(身体でわかるレベル) 言語・非言語・文脈がもつ意味は、同一言語話者同士でなければわからない (=言語、文化の共有) 12 12
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コミュニケーションの成立 ろう通訳者の出番! 言葉の意味がわかる 文脈から文意がわかる 文意を理解するには知識が必要 手話の 文法・用法
第7回全通研学校Ⅱ「手話と手話通訳」 石川/110820 ろう通訳・フィーダー養成講座 「翻訳とは何か(2)」 2012/7/8 コミュニケーションの成立 手話の 文法・用法 言葉の意味がわかる 文脈から文意がわかる 文意を理解するには知識が必要 (「わかる」にはいくつものレベルがある) ろう者に関する 言語外知識 通訳者自身の 知識・体験・価値観 メッセージが わかった! ろう通訳者の出番! Ж○▲☆@▽※$●・・・ コンテクスト テクスト 非言語要素 口調 表情 態度 場面 誰から誰に いつ どこで 前後の文脈 背景 文化 体験 学習 立場 問題意識 コミュニケーションには意図(目的・要求)がある コミュニケーションの成立=発信者の意図(目的・要求)を、受信者が理解する コミュニケーションはシンボル(言語・行為・もの)を介して行われる 文脈と知識による解釈 「わかる」のレベル 第一:コトバの範囲内で理解すること 第二:文が述べている対象世界との関係で理解すること 第三:自分の知識と経験、感覚に照らして理解すること(身体でわかるレベル) 言語・非言語・文脈がもつ意味は、同一言語話者同士でなければわからない (=言語、文化の共有) 13 13
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2 第二言語習得と翻訳・通訳 第二言語から母語への翻訳・通訳
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言語間の距離と習得の難易 第二言語は母語を基礎として習得される 母語の知識が第二言語に転移する 言語間の距離
ろう通訳・フィーダー養成講座 「翻訳とは何か(2)」 言語間の距離と習得の難易 第二言語は母語を基礎として習得される 母語の知識が第二言語に転移する 言語間の距離 言語間の距離が離れていると習得が難しい 言語間の距離が近いと正の転移が強くなる 転移が強いと、間違いに気づきにくい 母語の影響 ■外国語学習時の母語の影響を「言語転移(language transfer)」と呼ぶ。プラスの影響を与えることを「正 の転移 (positive transfer)」マイナスの影響を与えることを「負の転移 (negative transfer)」という。 ■母語と外国語が似ているほど正の転移が起こる。教師の役割は、習得を容易にする正の転移を充分に 活かし、負の転移を最小限に留めること。 正の転移の例…日本人英語学習者は、スペイン語を母語とする学習者よりも英語の所有/属格構造 (John’s book) の習得が容易。これは日本語の「太郎の本」という類似構造の影響によるもの。 負の転移の例…日本人英語学習者は My school is school uniform. (私の学校は制服です) という文を作る ような誤りをしやすい。これは、日本語が「A は B だ」という構造が発達している題目卓越言語である 影響によるもの。
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言語のシステム 音(素材) 語(意味) 文(文法) 視点が異なる 発想が異なる 談話(文章) ・音声が異なる ・意味の区切り方が異なる
ろう通訳・フィーダー養成講座 「翻訳とは何か(2)」 石川/110820 言語のシステム 音(素材) ・音声が異なる ・意味の区切り方が異なる 語(意味) An orange cat いね/米/めし カエル 文(文法) ・文の作り方(語の並べ方)が異なる 「まもなく東京です」 “We will soon arrive at Tokyo Station.” かまわない 固い わかる 「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」 が、サイデンステッカーによる英訳では The train came out of the long tunnel into the snow country. (Seidensticker ) -言語が異なれば- 視点が異なる 発想が異なる 「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。」 “The train came out of the long tunnel into the snow country.“ (Seidensticker ) 談話(文章) ・語り方が異なる 16 16
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言語が異なると視点・発想が異なる 思考 テクスト 推論 概念 言語化 概念化
概念の どの情報項目に着目するか どの情報項目を言語化するかは 言語によって 異なる テクストからわかる意味 コンテクストによる推論 新幹線は現在「品川駅と東京駅の間を走行中。 あと4分で東京駅に到着するところである。 新幹線には乗客が乗っている。 その乗客が下車する準備をできるよう、到着をアナウンスしておく。 概念(思考) 「英語」 We will soon arrive at Tokyo Station. 言語化(テクスト) 英語話者 「日本語」 まもなく東京です。 日本語話者
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言語が異なると視点・発想が異なる 概念(思考) 言語化(テクスト) 概念(思考) 言語化(テクスト) 昨日から頭が痛い。
薬を飲んで眠ればよくなるかと思って、昨夜は薬を飲んで早く寝た。 今朝になっても治っていない。 この状態では仕事ができない。 今日の仕事を休みたい。 上司に承諾してほしい。 概念(思考) 日本語「申し訳ありませんが、 昨日から体調が良くないので 今日は休ませていただけないでしょうか」 言語化(テクスト) 日本語話者 日本手話<申し訳ないが、今日休みたい。 理由は、昨日から頭痛がしていた。眠れば よくなるかと思っていたが、今朝になっても痛い。仕事無理。 一日休みたいがよろしいか> 手話話者 昨日から頭が痛い。 薬を飲んで眠ればよくなるかと思って、昨夜は薬を飲んで早く寝た。 今朝になっても治っていない。 この状態では仕事ができない。 今日の仕事を休みたい。 上司に承諾してほしい。 概念(思考) 日本語「申し訳ありませんが、 昨日から体調が良くないので 今日は休ませていただけないでしょうか」 言語化(テクスト) 日本語話者 日本手話<申し訳ないが、今日休みたい。 理由は、昨日から頭痛がしていた。眠れば よくなるかと思っていたが、今朝になっても痛い。仕事無理。 一日休みたいがよろしいか> 手話話者
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言語が異なると視点・発想が異なる 思考 テクスト 推論 概念 言語化 概念化 概念の どの情報項目に着目するか テクストからわかる意味
どの情報項目を言語化するかは 言語によって 異なる テクストからわかる意味 コンテクストによる推論 The train came out of the long tunnel into the snow country. (Seidensticker) We will soon arrive at Tokyo Station. 国境の長い トンネルを抜けると 雪国であった。 私たちは まもなく 東京駅に 着くでしょう まもなく 東京駅です
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言語習得の度合いが通訳に影響 (母語→第二言語/第二言語→母語)
ろう通訳・フィーダー養成講座 「翻訳とは何か(2)」 言語習得の度合いが通訳に影響 (母語→第二言語/第二言語→母語) 目標言語にどれだけ馴染んでいるかが産出精度に影響する。 (TUへの再構築の迅速性・忠実性が高まる) 日本手話と日本語の違いをふまえて翻訳・通訳する (目標言語における自然なかたちで) スポンテイニアス(Spontaneous)に再表現する ①具体性(CL、対比構文・譲歩構文)←イメージ喚起力の強い名詞を選択。 ②身体性(RS)←RSに付き合わない。被観察者の内面の描写は訳出しない。 ③虚構性(自発構文・使役構文・発見構文)←虚構的表現は直訳しない。 ④時間性(状況設定の前置き、論理的展開の表現)←前置きされた状況設定は直訳せず、後続の展開の中に埋め込む。論理的に自明な展開は翻訳しない。 ⑤構文性(節連鎖構文の多用→情報構造、伝達態度)←節連鎖構文の順序に縛られない。直訳すると伝達態度が盛り込めない。 工夫ではなく「自然」
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We will soon arrive at Tokyo Station
スポンテイニアス(自然)な表現 We will soon arrive at Tokyo Station 私たちは すぐに 東京駅に 着くでしょう。 まもなく東京です。 .
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スポンテイニアス(自然)な表現 本日 女性半額! Today, all ladies are half price!
本日 女性半額! Today, all ladies are half price! 今日 すべての女性 は 半分の 価格(です) Today, 50 percent off for female customers. 今日 50パーセント オフ 女性の お客様 .
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国境の長いトンネルを抜けると雪国であった
スポンテイニアス(自然)な表現 国境の長いトンネルを抜けると雪国であった (『雪国』川端康成) 何が・どこが 雪国? トンネル 抜けたとこが 雪だらけやったんや わかるやろ 誰が 抜けたん? 汽車だけと ちゃう 乗客もいるやろ The train came out of the long tunnel into the snow country. その 列車 出てきた 長い トンネル へ その 雪の 国 (”Snow Country” Seidensticker)
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手話(第二言語)の理解と 日本語(母語)の表現
3 翻訳・通訳技術 手話(第二言語)の理解と 日本語(母語)の表現
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翻訳・通訳の概念 コミュニケーションを支えるために 理解と表現 (通訳者が)わかったことを (受信者に)わかってもらう
ろう通訳・フィーダー養成講座 「翻訳とは何か(2)」 翻訳・通訳の概念 コミュニケーションを支えるために (通訳者が)わかったことを (受信者に)わかってもらう 理解と表現 ・・・・ わかった! 伝える! ・interpret(英)・・・解釈する、説明する ・interpres(ラテン語)・・・詳述するもの、明確でないことを説明する人、他の人々が理解できないでいることをわからせる “interpret” 1 通訳する(translateと違い、発話を即座に他言語に言い換えること) 2 解釈すること(AをBと解釈すること) 3 意味を説明・解説する “translate” 1 翻訳する、訳す、言い換える 2 形を変える、変換する 3 解釈する、理解する 4 移動させる、移す
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理解 きっちりわかる 発信者の言葉がわかる 発話の意図と内容がわかる ・言葉の意味がわかる(語・意味・文法・語用)
ろう通訳・フィーダー養成講座 「翻訳とは何か(2)」 理解 きっちりわかる 発信者の言葉がわかる ・言葉の意味がわかる(語・意味・文法・語用) 発話の意図と内容がわかる ・領域別の知識に基づいた理解 ・しっかりした概念 ・発信者のアタマでわかる ああ こういう 言い方 するなぁ・・・ あのことだなぁ・・・
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表現 わかるよう伝える わかりやすい表現 形式的な一致ではなく意味的な等価 シンプルに情報密度を高く ・受信者が理解しやすい表現
ろう通訳・フィーダー養成講座 「翻訳とは何か(2)」 表現 わかるよう伝える わかりやすい表現 ・受信者が理解しやすい表現 ・受信者のアタマで表現 形式的な一致ではなく意味的な等価 ・正確に、わかりやすく、直訳にならず スポンテイニアスに シンプルに情報密度を高く ・省略ではなく凝縮 ・明快、明瞭 こういう 言い方すれば 大丈夫かなぁ・・ 正確に わかりやすく 自然に ・interpret(英)・・・解釈する、説明する ・interpres(ラテン語)・・・詳述するもの、明確でないことを説明する人、他の人々が理解できないでいることをわからせる “interpret” 1 通訳する(translateと違い、発話を即座に他言語に言い換えること) 2 解釈すること(AをBと解釈すること) 3 意味を説明・解説する “translate” 1 翻訳する、訳す、言い換える 2 形を変える、変換する 3 解釈する、理解する 4 移動させる、移す
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セレスコヴィッチ「意味の理論」 通訳とは言葉を置き換えるのではなく、 意味を伝えるものである。 1 何らかの意味を持った発言を聞き
ろう通訳・フィーダー養成講座 「翻訳とは何か(2)」 セレスコヴィッチ「意味の理論」 通訳とは言葉を置き換えるのではなく、 意味を伝えるものである。 『会議通訳者』(ダニッツァ・セレスコヴィッチ 著 / ベルジュロ伊藤宏美 訳 研究社、2009) 1 何らかの意味を持った発言を聞き 2 分析と解釈を加えてメッセージを理解し 3 直ちに、意図的に、個々の単語・言葉づかい・表現を捨て、メッ セージに示された概念、考え・意見・思想・情報のみを維持し 4 もとのメッセージ全体を表現していて、スポンテイニアスな (自然な)発話を作る ・interpret(英)・・・解釈する、説明する ・interpres(ラテン語)・・・詳述するもの、明確でないことを説明する人、他の人々が理解できないでいることをわからせる “interpret” 1 通訳する(translateと違い、発話を即座に他言語に言い換えること) 2 解釈すること(AをBと解釈すること) 3 意味を説明・解説する “translate” 1 翻訳する、訳す、言い換える 2 形を変える、変換する 3 解釈する、理解する 4 移動させる、移す
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翻訳・通訳の4つの質 ①正確である(accurate) ②適切である(adequate) ③等価である(equivalent)
ろう通訳・フィーダー養成講座 「翻訳とは何か(2)」 翻訳・通訳の4つの質 ①正確である(accurate) 起点言語のテクストが表している概念に忠実である ②適切である(adequate) 目標言語の聞き手が理解できるテクストを明瞭に産出できている ③等価である(equivalent) 原発言者の意図を表現している ■原文に忠実であることとは?(正確性) ・足さない、引かない、変えない (補足、省略、勝手な意味の変更はしない) ■聞きやすい通訳とは?(適切である) ・論理の整合(話の筋が通っている) ・一貫性がある ・受け手が理解できないのでは通訳とはいえない ■話者の意図を反映した通訳とは?(等価性) ・語用論的能力 -妥当な推論による文脈の把握 -意図をつかむ -間接的表現(含意の明示or非明示) -人間関係(力関係、面子) ■コミュニケーションとして成立しているか?(成功) ・参加者は互いに影響を与え合いながら意味を作っていく ・参加者の目的は達成できたか? ・通訳を介することにより、当事者間の理解は深まったか? □等価性 ①内容:命題と話者の主観性(捉え方、態度) ②機能:意図、要求、申し出、約束、人間関係の構築・保持 ③レジスター:場面や相手に応じた形式の選択 ④情動:形式と意味のギャップ(皮肉、イヤミ・・・) ⑤語りの作用:共感/反発・・・ ⑥話者に対する印象:知的/幼稚/無教養、感情的/冷静、謙虚/尊大・・・ (Isham 1986) ④成功している(successful) コミュニケーションの目的を達成している
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コミュニケーションの4つの能力 ①文法能力(言語能力)(正確さ) ②談話能力(明瞭さ) ③社会言語能力(適切さ) ④方略的能力(賢明さ)
ろう通訳・フィーダー養成講座 「翻訳とは何か(2)」 コミュニケーションの4つの能力 ①文法能力(言語能力)(正確さ) 小さな要素を組み合わせて正しい文を組み立てる能力 ②談話能力(明瞭さ) 前後の文脈をつなげ、一貫したわかりやすい談話を作りだす能力 ③社会言語能力(適切さ) その場の状況に合ったふさわしい表現を選びだす能力 石黒圭(2013)『日本語は「空気」が決める』光文社 pp272 ④方略的能力(賢明さ) コミュニケーション上の問題が発生したときに対応できる能力 Canale(1983)
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コミュニケーションの4つの能力 失礼・非常識と評価 ①文法能力(言語能力)(正確さ) 自然ではない表現 ②談話能力(明瞭さ)
ろう通訳・フィーダー養成講座 「翻訳とは何か(2)」 コミュニケーションの4つの能力 ①文法能力(言語能力)(正確さ) 小さな要素を組み合わせて正しい文を組み立てる能力 自然ではない表現 場に不適切な表現 ↓↓ 失礼・非常識と評価 文化的摩擦や不要な誤解を作り出していないか ②談話能力(明瞭さ) 前後の文脈をつなげ、一貫したわかりやすい談話を作りだす能力 ③社会言語能力(適切さ) その場の状況に合ったふさわしい表現を選びだす能力 石黒圭(2013)『日本語は「空気」が決める』光文社 pp272 ④方略的能力(賢明さ) コミュニケーション上の問題が発生したときに対応できる能力 Canale(1983)
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「銀行の閉店時間」から(第27回手話通訳技能認定試験聞取り試験問題)
ろう通訳・フィーダー養成講座 「翻訳とは何か(2)」 翻訳を対照することで傾向を学ぶ 「銀行の閉店時間」から(第27回手話通訳技能認定試験聞取り試験問題) A
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翻訳・通訳の意義と目的 母語によるコミュニケーションを保障すること 母語を保障することは人権(言語権)を保障すること やりがいあるやろ
頑張らんとな! 「障害者の権利に関する条約」(平成26年1月30日、政府訳) 第三十条 文化的な生活、レクリエーション、余暇及 びスポーツへの参加 4 障害者は、他の者との平等を基礎として、その独自 の文化的及び言語的な同一性(手話及び聾文化を含 む。)の承認及び支持を受ける権利を有する。
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【参考引用文献】 石黒圭(2013)『日本語は「空気」が決める』光文社. 市田泰弘(2014)「手話は自然言語である」『平成25年度手話通訳士専門研修会』国立障害者リハビリテーションセンター 近藤正臣(2015)『通訳とはなにか』生活書院. 白井恭弘(2008)『外国語学習の科学-第二言語習得論とは何か』岩波新書. 鈴木孝明・白畑知彦(2012)『ことばの習得-母語獲得と第二言語習得』くろしお出版. ダニッツァ・セレスコヴィッチ著、ベルジュロ伊藤宏美訳(2009)『会議通訳者』研究社. 永田小絵(2015)「通訳者としての心構え」手話教師センター翻訳・通訳講師養成講座. 西原哲雄(2012)『言語学入門』朝倉書店. 西村義樹・野矢茂樹(2013)『言語学の教室』中央公論新社. 船山仲他(2012)「通訳するための思考」『通訳翻訳研究』No.12 フランツ・ポェヒハッカー著、鳥飼玖美子監訳(2008)『通訳学入門』みすず書房.
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