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REASE公開講座「合理的配慮――対話を開く,対話が拓く」 多様性を踏まえた合理的配慮に向けて
2016年7月16日(土) 飯野由里子(東京大学)
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本報告の前提 社会的障壁は、障害という差異のみによって生じているわけではない。
むしろ、障害という差異が他の差異と重なり合う(交差する)、より複雑な状況の中で生じている。 合理的配慮について考える際には、障害者集団内部に存在する差異にも注意を払う必要がある。
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本報告の目的 今回の法整備によって、障害とその他の差異が交差する地点で生じる社会的障壁の問題は、どの程度、解決可能なものになっていくのか?
障害とジェンダーの交差性(障害女性の同性介助にかかわるニーズ) 今後取り組まれるべきものとして、どのような課題が残されているのか? 障害とジェンダーの交差性(トランスジェンダーの障害者のニーズ) 性的マイノリティの障害者のニーズ ニーズ表明にまつわる不安感や抵抗感 合理的配慮が障害分野を超えてもつ可能性とは?
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障害とジェンダーの交差性 「当該障害者の性別、年齢及び障害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施」が必要(差別解消法7条の2、8条の2)
「女性である障害者は、障害に加えて女性であることにより、更に複合的な状況に置かれている場合がある」 (基本方針) 今回の法整備によって、性別に応じた合理的配慮の提供が望ましいという理念は支持された。 「身体介助は、同性である女性にお願いしたい」という要望は正当なこととして受け止められなければならない。
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見落とされてしまった差異 ? 「性別に応じて、社会的障壁の除去の実施」が必要
「性別」に応じた配慮の中に、トランスジェンダーの障害者のニーズを尊重した配慮は含まれるか? 戸籍ではなく、「自認」に基づく性別に応じた配慮は法的にも支持されるのか? 性的マイノリティの障害者についてはどうか? 「身体介助は、ホモフォビックでない人にお願いしたい」という要望は、正当なものとして受けとめられるか?
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残された課題(1) ——差別構造の連動性をめぐる課題
法律も、より大きな社会的文脈の中に根深く存在しているトランスフォビア、ホモフォビア、異性愛規範の影響下にある。 特定の差異が「逸脱的・例外的」なものと受けとめらてしまう可能性 結果、そうした差異に基づく要求の妥当性・正当性・重要性が低く見積もられてしまう可能性 障害者の差別禁止に関する法律を検討・見直ししていくプロセスの中でも、非異性愛的なあり方に対する差別の働きを緩めていく必要性
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残された課題(2) ——「申出」をめぐる課題
障害者からの「申出」は、曖昧かつ暗示的な形でなされることもある。 障害者の声を潜在的なニーズとしてディコーディングして受けとめる構えの必要性 障害者の中には、自らのニーズが正当なものだという感覚を十分にもつことができない者もいる。 ニーズ表明にまつわる不安感や抵抗感 障害者の中には、社会的障壁が除去された状態を経験したことがない者もいる。 「申出」ができる障害者からだけではなく、「申出」ができないでいる障害者からも学ぶことは可能か?
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合理的配慮の可能性——障害分野を超えて 合理的配慮において必要とされる対話
=互いが正当な言い分を持った存在として認め合い、互いの事情を考慮して応答し合うことで、問題を解決していくための対話 相手に耳を傾けることの困難、相手の声を聞き取ることの困難 → わたしが「考えずに済んできた」事柄を学び、「考えずに済んできた」わたしの社会的位置を問う契機 「考えずに済んできた」わたしと「考えざるを得ないできた」他者との間に新たな関係性を構築 → わたしに何ができるのか? という問い 多様性が共存可能な方向で、問題を把握し直し、理解し直す(「学び直す unlearn」)こと、社会の中でわたしが担う責任について考えること =「聞くことのできる以上のものを聞く」 =「共生の技法」
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