イノベーションと異文化マネジメ ント 文学部 教育学科 09AE125B 渡邉 烈士
第6章 異なる価値を統合するか
1 ● 共同認知プロセスとコンセプト創造 ☆前回までの内容☆ 文化的多様性を活かす組織環境づくりのためには … ①信頼関係を構築すること ②モチベーションの向上を促すこと ①②によって、個人にアイディアを表明させると いうステップ1について論じてきた。 (p.63 参照 )
本章の目的 「異なる意見、多様なアイディアを結合し、新た なコンセプトの創出につなげるためのマネジメント について明らかにすること」 →p.63 ステップ2、3の過程 尚、ここでは p. 111から p. 122までを説明して いく。
2 ● 文化的多様性のデメリットとマネジメント上 の課題 (1)文化的多様性による2つのデメリット 文化的多様性のもたらす最大のメリット → 多様な意見や考えが交換され、互いの意見や情報を共有し合 い、新たなコンセプトが創造される。結果、 新しい製品 や技術、そしてイノベーションの創出を促していく、「異文 化シナジー」の効果が発生すること。 ※シナジー … 経営戦略で、事業や経営資源を適切に結合するこ とによって生まれる相乗効果のこと しかしその反面 …
☆異文化であることの最大のデメリット … カルチャー・ギャップに起因するコミュニケー ション・ギャップによって、「意見の統合が困難に なること」 ↑ N・J・アドラーも、多様性のデメリットとして 「合意形成の困難性」や「行動の統一の困難性」な どを指摘 そもそも、多様な意見を1つの形に統合し ていくス テップ2,3は「多様性」と「結合」とい う相反する2つ の概念を内包しているために、達成が非常 に困 難 !!
なぜ困難なのか …?? 本書では、2つの側面においてデメリットが存在す るためだと考えられた。 ①量的側面 ②質的側面
①量的側面のデメリット 意見の物質的な量の増加 ● 従来 ⇒リーダーがトップダウンで指示を出し、意見を 選択、 統合 ● 多様性が求められる現代 ⇒より創造的なアイディアを求めて、広くの個人 の意見、 アイディアを取り入れることが理想 ☆つまり … 意見が増えれば増えるだけまとめるの が困難であるということ !
②質的側面のデメリット 質的側面 ⇒文化的背景が異なることで生じる意見の内容 ( コ ンテンツ ) の違いを指す。 この違いが意見の衝突、つまりコンフリクトを生 じさせる可能性を高める。 注)コンフリクトとは、表層的には意見そのもの(コンテンツ)が対立して いるようにみ えるが、実際はその裏にある文化的多様性から生まれる、価値観・考 え方の枠 組みの対立のことを意味する。
☆2つに区分されるコンフリクト ①情緒的コンフリクト ⇒対人関係の情緒的、感情的側面からくるコンフリ クト … 「人」に原因のあるコンフリクト ②本質的コンフリクト ⇒課題の本質に根ざしたコンフリクト … 「内容」に原因のあるコンフリクト
(2)文化的多様性とマネジメントの問題 多様な意見つまり「質の違い」が取り入れられるこ とで、何故このような2つのコンフリクトが生じて しまうのか ?? ⇒異文化間のカルチャー・ギャップが発生し、その ギャッ プが大きくなる結果としてコンフリクトがする と本書では 考えられている。 ● コミュニケーションとは … ⇒人々が互いに世界観、価値観、信念などを『共 有』すること ★ コミュニケーションは各々が影響を受けてきた文化によって大きく異なり、 自分が意図した意味を相手が理解できなかったり、誤解が生んだりする場合 もある。
● 文化が違うことで、コミュニケーション にズレ(ギャップ)が起こる理由 コンテキストの差異 コンテキスト … 「コミュニケーション事象に含ま れている情報」、「コミュニケーションする際に利 用可能な情報」 文化によって、コンテキストの度合いは様々 !! … コンテキストの度合いの異なる人々がコミュ ニケー ションをとることで、そこにギャップが生じ、 コンフリクト が起こりやすくなる。
①情緒的コンフリクトの原因 本書ではコミュニケーション・ギャップからくる 「不信感」から生じるものであると考えた。 ● グループ・シンクに陥った際の他者に対する不 信感 ※本書の前提として、「人はより高い自己効力感を 求めて積極的に自分の意見を表明し、人に認められ たいと考え、自分の考えが結論に反映されることを 望むもの」とある。
②本質的コンフリクトの原因 文化的多層性がいることで、自分とは相反する意見 を持つ人もいる可能性が高い。そのため主張する論 点がミスマッチすることも多くなる。 我を強く推そうとするあまり、自分の意見に固執 し、強く自分の意見を通そうとする可能性が考えら れる。 メンバー間での WIN-LOSE の関係が構築
結論 いくら文化的多様性が活かされる組織環境を作り上 げて も、最終的に意見を統合する際にはこうした問題が 起こる 可能性が高く、画期的・創造的なアイディアや結論 を出す 上での障害となる。同時に、こうした事態が起きた 際に、両 者には大きな溝が出来てしまい、結局その組織事態 が失 敗に終わってしまう。 ⇒ p.120 の図6 - 6参照
● コンフリクトを別の方向から見る ⇒このような悪い面ばかりではなく、コンフリクトがあ るからこそ、相反する要素のトレードオフが調整され、 創造的なコンセプトが生まれてくる。 つまり !! 文化的多様性を活かすためには 上手なマネジメントが必要 !! ☆ J.Hall&M.S.William や G. ハーシュバーグの例を参照 ( p.121~p.122 )
つまり … こういった対立、コンフリクトは確かに異文化 シナジー の享受を妨げる原因ではあるものの、うまくマ ネジメント することで、創造的な結論へと導く重要な要素 であり、 新たなコンセプトの創出のために前向きに捉え るべき 事象なのである。 だからこそ … 創造的な合意を導くためには量的にも質的にも 文化 的多様性をうまくマネジメントしていかなけれ ばならな い。
質問 より多様な組織環境を築くにあたって、本書の述べ ている このデメリットは避けられるものではないと私は考 える。本 書はうまくマネジメントすることで避けることが可 能と最後 に述べていたが、マネジメントの前にこの問題に対 して何 か手を打つ術はないのか。