重油流出 磯部雄一郎
目次 過去の事故例 重油流出が実際に及ぼす影響 重油流出後の新たな対策 まとめ 参考資料
過去の事故例
トリーキャニオン号の事故 ・英国政府は船内に残った 4 万トンの原油を燃焼させる ために本船を爆破 !! ①1967年3月18日 リベリア国籍のトリーキャニオン号が英国のシリー諸島とランズエン ド間の公海上で座礁 ②8万トンの油流出 英海岸を100マイル以上汚染 → フランスのブルターニュ海岸にも被害 ③オランダのサルベージ会社の船体救出失敗 ④英国は、油抜き取りが不可能なので船体爆破による油清掃を政府が計画し、公表。 ⑤船舶所有者バミューダ・タンカー会社(国籍バミューダ)は船舶の所有権放棄 ⑥3月28日、英海軍・空軍が船体爆破 ⑦英国、保険会社に爆破を通知 ⑧リベリア 抗議なし
トリーキャニオン号の事故 タンカーからの流出油による損害に対する責 任と補償に関する問題 ↓ IMCO により、 「油濁損害の場合の公海上の措置に関する国際条約」 「油濁損害に対する民事責任に関する国際条 約」 船主の厳格責任、責任限度額、強制保険が規定
ナホトカ号について 沈没時積載重油:約 19,000 トン 船体が船首近くで2つに折れ、沈没。その際、タンク3つが破損し重油約 3600 トンが 流出
重油の性質 蒸発 拡散 エマルジョン化 沈降 水中分散 微生物分解、生物蓄積
エマルジョン化とは エマルジョン ある液体が他の液体中に 微細に分散して入り込み 安定な乳状となったもの 油の場合は、油の中に 水を取り込んだ形の乳化 粘度が数 10 倍から数 1000 倍に増加 軟らかな固形状に変質 含水率の増加とともに体積も増加 非常に安定で長期間その形状を保つ ムース化した油の特徴 ムース化
重油の変化 短期間で多量の海水を取り込み、 24 時間以 内に強固なムース油を形成 含水率の増加、蒸発率は 24 時間以内に収束 C 重油の 性状変化 石油連盟が行った C 重油の経時性状変化実験(海水温度 10 ℃)
及ぼす影響 ナホトカ号重油流出事故による水鳥救 護 ・羽毛の保温作用も奪われる ・体内で胃や腸の粘膜が炎症を起こす
及ぼす影響 ナホトカ号重油流出事 ↓ 油ミスト測定 大気環境測定車による炭化水素の測定
及ぼす影響 水島重油流出事故 昭和 49 年
どのようにすれば防げるのか 1) 海上にあるうちに回収 2) 漂着する地点を予測し、対策を講じる。 3) 漂着後効率の良い回収
回収方法 オイルフェンス 高性能ゲル化剤 吸収剤 吸収マット 海上の重油 オイルフェンス(拡散を防ぐ) ↓ 重油を吸収シートなどで回収 ・海岸に漂着した重油 油処理剤(油の濃度を下げる ) ↓ 人海戦術 ( 河川も同様 )
漂着する地点を予測する方法 浮流重油自動追従ブイシステ ム 重油拡散再現シミュレーション 潮汐流・海流・吹送流を考慮した流れの計算 重油粒子を追跡 風の頻度特性の解析
バイオレメディエーション 「生物による修復」 石油を分解して自分の体を作る 栄養分にする微生物を利用。 図 2 微生物による C 重油分解の消失油分量の経時変化
まとめ ・回収に向かう速度を上げることは難しい。 ・回収の効率を高める。 ・漂着する前に回収をおえてしまう。 ・重油の広がっている範囲を把握しておく事が必要。 ・漂着後にも効率の良い回収方法を駆使する。
参考 主要なタンカー油流出事故について 「ナホトカ号」からの重油流出事故まとめ 福井県みどりのデータバンク 石川工業試験所 長岡技術科学大学 産業技術総合研究所