我が国沿岸の想定高潮偏差 九州大学大学院 山城 賢 第 11 回九州地区海岸工学者の集い 平成 13 年 7 月 28 日(土)

Slides:



Advertisements
Similar presentations
ヤマセ海域の SST 変動と 海洋内部構造の関係 ー2011年の事例解析ー 理工学部 地球環境学科 気象学研究室 4 年 08 S 4025 佐々木 実紀.
Advertisements

熊野灘海流予測システム開発 進捗状況報告 (株)三菱総合研究所. 熊野灘海流予測システム 内容 – 熊野灘で作業中である、地球深部探査船「ち きゅう」のために海流予測を行う 黒潮の変動を数キロメートルのオーダーで予測 –JCOPE をネスティング » 日本近海 1/36 度モデル(同化あり)
都市域で起こる水害の防止対 策 C07047 村上彰一 C07048 森田紘 矢 C07049 矢口善嵩 C07050 矢田陽 佑 C07051 山河亮太 C07052 山下優 人.
1968年に起こった十 勝沖地震について 社会開発工学科 建築コース 02T3076H 松本 和久.
CMIP5 気候モデルにおける ヤマセの将来変化: 海面水温変化パターンとの関係 気象研究所 気候研究部 遠藤洋和 第 11 回ヤマセ研究会 1.
名古屋市南区の水害 防止対策について 8班8班 C08036 寺町 文宏 C08037 富田 哲平 C08038 野村 漠 C08039 服部 壮良 C08040 花井 一樹.
反射波が支配的な状況下でのマルチパス誤差低減
下左の図が,最大1時間降水量,下右の図が,最大24時間降水量の分布を示したもの.宮川,海山,紀伊長島で異常な量の降水があったことがわかる.また,津近辺でも大きな降水量があったことがわかる.左の図の+は,AMeDAS観測点,◆は,解析に用いた県の観測点(AMeDAS欠測のため).紀伊長島の観測点が,微妙に強雨域から外れていることがわかる.そのため,あとで示す統計値が,小さく出る.
高度情報演習1A “テーマC” 実践 画像処理プログラミング 〜画像認識とCGによる画像生成〜 第四回 演習課題 画像中からの物体抽出処理(背景情報を手がかりとして) 芝浦工業大学 工学部 情報工学科 青木 義満 2006/05/15.
JRA-55再解析データの 領域ダウンスケーリングの取り組み
島田照久(1) 沢田雅洋(2) 余偉明(2) 川村宏(1)
数値気象モデルCReSSの計算結果と 観測結果の比較および検討
台風について 製作:プロダクションHOMODERA
名古屋市南区の水害防止対策について 8班 C08036 寺町 文宏 C08037 富田 哲平 C08038 野村 漠
いもち病感染危険度予測へ向けた 観測・モデル研究
土木計画学 第5回(11月2日) 調査データの統計処理と分析3 担当:榊原 弘之.
Ⅱ.東南海・南海地震に関する調査研究-予測精度向上のための調査研究- 2.微小地震分布を把握するための海底地震観測研究 2-1.想定震源域および周辺における地殻構造と地震活動の対比等に関する研究(東南海・南海17-1-3) 九州大学理学研究院附属地震火山観測研究センター 課題:想定震源域と周辺域(日向灘)の地震活動、地殻構造、起震応力場を比較して、震源域の固着状態とその要因を推定する。
酒井哲郎:海岸工学入門,森北出版 第3章(pp.27-36)
酒井哲郎:海岸工学入門,森北出版 第6章(pp.66-87)
リモートセンシングによる緑被面積率を用いた 行政区画別環境評価
自然教育園における 冷気の「にじみ出し現象」の実測 方位による冷気流出の差異について
情報検索課題 ・室戸台風に関する当時の記事を入手 中央気象台に最低気圧データが  もたらされた日を調べよ.
西大阪地域 高潮対策 (株)ニュージェック 齋藤 憲.
 防災工学 10月5日課題 02T3031H  佐藤 基志.
1 日本と世界の降水量 日本と外国の1年間の降水量を表しています。 世界の降水量の平均は807mm
CMIP5マルチ気候モデルにおける ヤマセに関連する大規模大気循環の 再現性と将来変化(その2)
川崎浩司:沿岸域工学,コロナ社 第4章(pp.58-68)
中国地方整備局TEC-FORCE『応急対策班(航路啓開)』の活動状況(H )
東京大学地震研究所 地震予知研究センター 平田直
【沖縄県の地理】 沖縄の位置・地勢 日本とアジアを結ぶ沖縄県 面積は全都道府県中44位
東北太平洋岸4県44市区町村の震災前経済規模 全企業数 全労働者数 44市区町村 32,341社 363,796人 青森県 5,286社
小標本検査データを元にした 疲労破損率のベイズ推定
夏季における首都圏の ヒートアイランドの実態について
関東平野スケールでみた 夏季夜間の冷気生成域の分布   山内 恵太.
第5世代移動通信における構造物の影響の解明
バングラデシュにおける対流活動と局地風に関する研究
ひび割れ面の摩擦接触を考慮した損傷モデル
中越沖地震で発生した 津波のシミュレーション  環境・建設系 犬飼 直之 助教.
※今後、気象台や測候所が発表する最新の防災気象情報に留意してください。
ハロン湾、ハイフォン港の水環境問題に関する海岸工学的研究
YT2003 論文紹介 荻原弘尭.
みずから守るプログラム~大雨が降ったら~
GISを用いた 『日向』『日影』地名の 立地の解析
スケールモデルサイトにおける「風の道」の野外実験
九州気候区の高専における太陽光発電 ◯葉山清輝,大山英典 (熊本電波高専) 中川重康 (舞鶴高専) 仲野 巧 (豊田高専)
相互調整によるエージェントのクラスタ化: コンピュータシミュレーションによる検討
都市表面における 熱輸送速度の実験的研究 スケールモデルによる野外実験と風洞実験の比較 大久保 典明
流氷運動の数値予測における氷の初速度の算定法について
2.3 津波の基礎.
かけ算 九九.
会場 国際ファッションセンター KFCホール(東京都墨田区)
流速ベクトル.
冬季、東シナ海・日本南方海域における 温帯低気圧の発生に関する気候学的研究
ヤマセ時に津軽海峡で発生する強風 島田照久(1) 川村宏(1) 沢田雅洋(2) 余偉明(2)
CMIP5気候モデルにおける ヤマセの将来変化
2015 年 5 月下旬のインドの熱波について 報 道 発 表 資 料 平成 27 年 6 月 2 日 気 象 庁
2015 年5 月下旬のインドの熱波について 報道発表資料平成27 年6 月2 日気 象 庁
川崎浩司:沿岸域工学,コロナ社 第4章(pp.58-68)
潮流によって形成される海底境界層の不安定とその混合効果
川崎浩司:沿岸域工学,コロナ社 第8章(pp )
地球環境気候学研究室 513M230 松本直也 指導教員 立花義裕
地球温暖化実験におけるヤマセ海域のSST変化- CMIP3データの解析(序報)
津波 tsunami 修正.
400MHz帯ウィンドプロファイラとCOBRAで観測された台風0418号の鉛直構造
1.5層スペースフレームの 接合方法に関する研究
雲解像モデルCReSSを用いた ヤマセ時の低層雲の構造解析
地球環境気候学研究室 谷口 佳於里 指導教員:立花義裕 教授
豪雨災害の被害予測に向けた土粒子‐流体‐構造の大規模連成解析の 国際標準V&V例題の確立
防災工学 関東大震災.
資料-2 設計津波の設定について 大阪府危機管理室.
Presentation transcript:

我が国沿岸の想定高潮偏差 九州大学大学院 山城 賢 第 11 回九州地区海岸工学者の集い 平成 13 年 7 月 28 日(土)

背景 台風 9918 号による高潮災害 特に八代海・周防灘で大きな被害 三大湾(東京湾,大阪湾,伊勢湾)では高潮災害について活発に検討されている他の沿岸域では必ずしも十分ではない 我が国沿岸の全域を対象とする高潮シミュレーション 高潮の危険性の高い沿岸域を把握 高潮の危険性の高い沿岸域を把握 湾の平面的な形状や海底勾配等による 湾の平面的な形状や海底勾配等による 高潮の特性について検討 高潮の特性について検討 目的

高潮シミュレー ション 想定台風 既往の代表的な台風をモデル化 伊勢湾台風 : 太平洋沿岸から上 陸 台風 9119 号 : 西九州沿岸から上 陸 北進タイプ東進タイプ 伊勢湾台風の上陸時刻位置 ( o E, 33.4 o N ) を ( o E, 31.0 o N ) ~ ( o E, 36.0 o N ) の範囲で 等間隔に 31 地点移動 → 31 ケース 北進タイプ 東進タイプ 台風 9119 号の上陸時刻位置 ( o E, 32.8 o N ) を ( o E, 29.8 o N ) ~ ( o E, 35.8 o N ) の範囲で 等間隔に 7 地点移動 → 7 ケース

高潮シミュレー ション 計算領域 日本全体を含む広域 外洋から沿岸域を 13 分 割 外洋から沿岸域を 13 分 割外洋から沿岸域を 13 分 割外洋から沿岸域を 13 分 割

高潮シミュレー ション 高潮推算法 非線形長波理論に基づく単層モデ ル 高潮発生の外力 海上風(海面上 10m 高度の風)の推 算 気圧低下による吸い上 げ 気圧低下による吸い上 げ 風による吹き寄せ 風による吹き寄せ Myers の気圧分布を仮定した台風モデル 自由大気の風(傾度風,場の風) 海上風 海面摩擦を考慮 風速の低減率 0.75 偏向角 30° 偏向角 30° 従来多く用いられている高潮推算手 法

高潮シミュレー ション 高潮推算の妥当性 伊勢湾台風,台風 9918 号 による高潮推算(観測値との比較) 全体的な傾向は良く表 しており,本研究の目 的に 対しては妥当と判断 内湾 → 推算値大 湾口,外洋沿岸 → 推算値小 → 推算値小

高潮推算結果 最大高潮偏差分布 北進タイプ 北進タイプ 顕著な高潮発生域 三大湾 瀬戸内海沿岸 西九州沿岸 鹿島灘,仙台湾 でも 1m 以上 でも 1m 以上

高潮推算結果 最大高潮偏差分布 東進タイプ 東進タイプ 顕著な高潮発生域 伊勢湾奥 瀬戸内海沿岸 西九州沿岸 日本海沿岸, 北海道でも 1m 以上 1m 以上

高潮推算結果 代表点代表点における高潮偏差 代表点 〔外洋沿岸〕 内湾

高潮推算結果 代表点における高潮偏差 外洋沿岸 wave-setup の効果

高潮推算結果 高潮の地域特性 内湾の高潮に対する湾形状の影響 海底勾配による高潮偏差の比較海底勾配が小さく湾長が長い湾大きな高潮偏差が発生しやすい

高潮推算結果 高潮の地域特性 内湾の高潮に対する湾形状の影響 湾形状による高潮偏差の比較 上位3位で比較湾奥が狭くなる形状の湾湾奥の高潮偏差が大きい 湾形状の分類

高潮推算結果 高潮の地域特性 外洋沿岸の高潮に対する高波浪の影響 wave-setup の効果

結論 (1)全国の沿岸を対象に最大規模の高潮偏差を予 測した結果,三大湾,瀬戸内海及び西九州沿岸で大 きな高潮が発生する傾向があることを明らかにした . (2)内湾では,湾形状,海底勾配等の地形の特徴 が,湾奥における高潮増大の一因となることを明ら かにした. (3)外洋性の波浪が直接来襲する沿岸では,高潮 に wave-setup の効果を考慮する必要がある.