学区制は不要なのか 金井 智史 木田 啓子 栗城 英典 野澤 寛 今井 礼華 河野 友紀子 白川 裕子 長野 浩太 1 社会工学における戦略的思考 マッチング 班 指導教員:渡邊直樹先生 2009 年 11 月 13 日
実験の背景 (現在20都県が学区を撤廃, 9道府県が学区を減らしている. ) 近年, 学区制(受験できる高校を制 限する)を廃止する県が増加. (現在20都県が学区を撤廃, 9道府県が学区を減らしている. ) 学区制を続けている福島県の場合, 高校浪人が多いという事実がある. 学区外の生徒は定員の20%まで しか受け入れられない. 私立高校は偏差値が低い. 学区による高校の偏り. 2 浪人が発生する理由
問題意識となった事例 生徒の選択肢を増やす → 学区制廃止. 「学習意識の高い生徒を選べる」と賛成の声があ る 一方, 「学校間の人気差拡大」を懸念する声も. しかし学区制の是非を定量的に考察した研究はな い. 出典: 日本経済新聞夕刊 / 2008 年 5 月 2 日 3
実験の目的 学区制の廃止によって, 高校浪人を 減らせないか検証する. 定員割れと人気校への集中は起こるのか 検証する. 4 λλ 学区を なくすと.. λλ λ三λ三 λλλλ… λλλ ♪ 定員3人! あと一人欲し い 入れない... やった!
実験の方法① ~実験の内容と設定~ 実験回数 学区あり, なし各5回+練習1 回 選抜方法 1:偏差値が高い順 2:出身学区(学区内出身者を優先) 3:内申書(参加者 a> ・・・ >q ) 生徒 ・参加者:17人 ・成績 (5 段階 ) ・出身地 (3 学区 ) ・内申書 ・私立高校の合否 学校 ・6校(定員3人) ・ 3 段階の偏差値 ( 上・中・下 ) 5 西 東 中央学区のイメージ 上 上 中 中 下下
実験の方法② ~手順と得点の算出方法~ 得点の決め方(右図) (生徒)合格校の志望度 (学校)合格した生徒の偏差値 合計 生徒の得点表得点 第1志望 5 第2志望 4 第3志望 3 浪人 1 ※私立高校へ進学の場合 志望した公立高校の最低得点より1点少ない 実験の流れ 1:選好表に志望校を記入 2:実際に受験する高校に選好表を提出 3:回収した選好表を元に合否の発表 6 <得点の決め方>
実験の方法③ ~厚生関数~ 厚生関数とは? 社会を構成する構成員の選好指数を要素と した社会全体の厚生(豊かさ)の大きさを表 す 異なる3つの厚生関数の評価方法 ①功利主義的厚生関数 ②ナッシュ厚生関数 ③ロールズ厚生関数 社会全体の 効率性を表す 社会公平性の 判断ができる 7
実験結果① ~ 生徒側 の厚生関数~ 全ての厚生関数で, 「学区なし」の方が増加. 特に, ナッシュ, ロールズ厚生関数が増加. → 社会の公平性を表す指標の増加率が顕著. 功利主義型ナッシュ型ロールズ型 学区あり ×10^101 学区なし ×10 ^ 増加率 8.70%1,816.67%80.00% 8
実験結果② ~ 学校側 の厚生関数~ 全ての厚生関数 → 「学区なし」が増加. ロールズ型の厚生指標も増加. 功利主義型ナッシュ型ロールズ型 学区あり ×10 ^ 学区なし ×10 ^ 5 4 増加率 4.07%46.37%11.11% 9
考察① 学区の撤廃 D さん (2) ・生徒の選択肢が増加 ・学校の人気差拡大もなかった → 学区を撤廃したほうが良い. 10 西 東 中央 下 下 中 上 上 中 3つの厚生指標が増加 → 学区制廃止により, 浪人が減少
考察② ~懸念された人気校集中~ 予想: 学校側のナッシュ, ロールズ型の厚生指標は減少. ∵学区なしの場合 進学校の競争が激化, 定員割れ, 浪人増加. 結果:厚生 指標 がすべて増加. 理由: ( 練習回 ) 不合格者が多数発生 ← ( 本番 ) 学習し特定校への集中を避ける動き 11 乖離
( 練習回 ) 進学校に集中 → 高倍率 (本番) 受験者が学習し, 特定校を避ける動きが高 まった 現実でも、倍率(出願者数)を提示. 考察③ ~特定校に集中した事例~ cさんcさん eさんeさん 下 西 東 中央 A B C D E F gさんgさん qさんqさん nさんnさん m さん l さん 上 上 中 中 下 考察②の説明
結論 学区制の廃止によって, 高校浪人を減らせた. 定員割れと人気校への集中は起こらなかっ た. 厚生 + 結論 学区制を廃止したほうが良い 生徒 学校
今後の課題 得点のつけ方を, 自分の偏差値よりも上の高校 に入れたら高い点, 下の高校だったら低い点に なるように調整して実験. 実際の受験校決定要因(通学時間や学費)も 考慮して実験. 県立高校が優位な県だけでなく, 私立高校の方 が偏差値の高い首都圏に関しても実験. 14
出典および参考 URL 福島県高校入試ナビ 福島県教育委員会 県立学校入試 全国私塾情報センター 北海道・東北の学区制 福島県公立高校偏差値 日本経済新聞夕刊: 2008 年 5 月 2 日 15 面, 最終版 総務省「社会生活統計指標」 平成 19 年 文部科学省「学校基本調査報告書」 平成 20 年 5 月 1 日 15