はじめに 近年、飲酒が関与する重大な交通事故が発生しており、未成 年の時からのアルコールについての正しい教育がより重要と なってきている。 タバコは学校において健康被害等の防煙教育が徹底されてき ているが、アルコールは喫煙と異なり健康を促す側面もあり全 否定できないため防酒教育導入の難しさがある。しかし、一方 でアルコールによる健康被害がある人やアルコール依存症に悩 む人が多いのも事実である。 そこで、早良区薬剤師会では、子どもたちへの防酒 教育の重要性を広く認識していただくために、成人 を対象として飲酒の開始時期および未成年者に対し て飲酒を勧めた経験の有無を調査・研究したのでこ こに報告する。
A. 年代 B. 男女比 【調査対 象】 早良区薬剤師会所属の薬局 84 店舗に対して一店舗あたりアンケート 15 部ずつ配布し て回答を得た。 【方法】 早良区薬剤師会所属の薬局に関わりのある成人を対象。 【有効回答 数】 調査対象数 1260 名に対して有効回答数 852 名( 67.6 %)であった。 852 名の内訳は 20 代 218 名、 30 代 184 名、 40 代 182 名、 50 代 144 名、 60 代以上 124 名で 男性は 315 名、女性は 537 名であった。
【調査項目】 以下の項目についての質問を行った。また、回答方法は 選択肢の中の番号を選んで記入してもらった。 A. 年代 B. 性別 C. あなたはお酒を飲みますか? D. あなたの初めての飲酒の経験はいつですか? E. それは誰に勧められましたか? F. あなたは未成年者へ飲酒を勧めたことがありますか? G. それは何才くらいの未成年者に勧めましたか?(複数回答 可) H. あなたは未成年者の飲酒についてどう思いますか?(複数回答 可)
C. あなたはお酒を飲みますか? ・全体の 75 %( 639 名)がお酒を飲むと回答した。
D. あなたの初めての飲酒の経験はいつですか? ・全体の 77 %の人が 20 才未満での飲酒を経験していた。 ・全体の約 60 %は高校生の時と高校卒業後 20 才未満の時に飲酒を経験した人で 占めていた。
E. それは誰に勧められましたか? ・周りの人から勧められて飲酒をした人が全体の 85 %を占めていた。
勧められた周りの人の内訳 ・友人・先輩から飲酒を勧められた割合が最も高く、次に多いのは家族・親戚 からだった。
F. あなたは未成年者へ飲酒を勧めたことがありますか? ・全体の 27 %の人が未成年者へ飲酒を勧めたことがあった。
G. それは何才くらいの未成年者に勧めましたか? (複数回答可) ・全体の 61 %の人が大学生くらいの未成年者に飲酒を勧めていた。高校生くら いの未成年者に飲酒を勧めた人と合わせると全体の 91 %となった。
(複数回答可) H. あなたは未成年者の飲酒についてどう思いますか? ①成人するとどうせ飲むから構わない ②体に悪い影響を与えるからよくない ③迷惑かけなければいい ④法律で禁止されているからよくない ⑤少量なら構わない ⑥体への影響を知らないので判断できない ⑦付き合いがあるのでしょうがない ⑧その他
アンケート結果から ・未成年者のほとんどが飲酒を経験している。 ・未成年者の飲酒に関して大人は寛容な意識がある。 また、アンケート結果を未成年者に飲酒を勧めたことがある人とない 人とで比較検討したところ以下に示す傾向がみられた。 以上の 2 つのことが推測できた。
未成年者に飲酒を D. あなたの初めての飲酒の経験はいつですか?
未成年者に飲酒を (複数回答可) H. あなたは未成年者の飲酒についてどう思いますか? ①成人するとどうせ飲むから構わない ②体に悪い影響を与えるからよくない ③迷惑かけなければいい ④法律で禁止されているからよくない ⑤少量なら構わない ⑥体への影響を知らないので判断できない ⑦付き合いがあるのでしょうがない ⑧その他
・未成年者に飲酒を勧めたことがある人の 92.5 %は、自分自身が未成年の時に飲酒を経験 していた。 ・未成年者に飲酒を勧めたことがある人は、 未成年者に飲酒を勧めたことがない人と比較 して未成年者の飲酒に対する意識が寛容であ る傾向がみられた。 2 つのグラフから以下のことが示唆された。
未成年者に飲酒を勧めたことがある人 未成年者の飲酒 ・迷惑かけなければい い ・少量なら構わない ・付き合いがあるのでしょうがない 未成年者に飲酒を勧めたことがない人 ・体に悪い影響を与えるからよくない ・法律で禁止されているからよくない 未成年者の飲酒に対 して寛容な意識の傾 向
まとめ ・アンケート結果より全体の 77 %が未成年の時に飲酒を 経験していることから、私たち薬剤師は未成年者への服 薬指導の際にも飲酒の有無を確認し、飲酒の経験がある 未成年者にはアルコールの危険性を伝える必要がある。 ・未成年者に飲酒を勧めたことがある成人は自分自身が 未成年の時に飲酒を経験している傾向がある。さらに未 成年の飲酒に対する意識が寛容である傾向が強い。 したがって、未成年者にアルコールついて正しい指導 を行うことは、将来的に未成年者に飲酒を勧める大人の 減少につながるのではないかと考えられた。