ジェンダーと近代 第12回 2005/01/16
今後の予定 1 月 16 日(月) 1 限 第12回 本日の講義 1 月 18 日(水) 1 限 最終テスト <月曜代講 日>
最終テストの概要 最終テスト 必須 (配点の6割、残り4割は中間テス ト) 持ち込み可(ただし PC 等は不可) 総合政策学部全員: Ω 21 環境情報学部、看護医療学部: Ω 12 試験範囲は基本的にすべての内容
第8回 仕事と家族の二重役割 1. a 「生産労働」 +b 「再生産労働」 2. a 職場での仕事 +b 家庭での仕事(家事労 働) 3. a 有償労働 + b 「シャドー・ワー ク」(無償労働) 社会規範による「男性役 割」 社会規範による「女性役 割」 a 生産労働、職場での仕事、 有償労働 b 再生産労働、家事労働、 無償労働 a + b 生産 + 再生産 職場 + 家事 低賃金 + 無償労 働
第8回 仕事と家族の二重役割 二重役割が見られる場面 国レベルでの政策 (「世帯主優先」の制度) 共働き/非共働き夫婦の生活時間 緊急時の「援助者」 「子育て」という仕事 ・パートの女性の誕生 ・「責任ある仕事」をしたくなくなる/できない ・他よりも家事を一手に引き受ける ・二重労働をせざるを得なくなる
第9回 労働者階級とジェンダー・産業 革命 日本とヨーロッパの産業革命の共通点 1. 安価な労働力の需要 2. 重労働の需要 3. 長時間・超過時間労働の需要 4. 男性の職人組合(同業組合)があったために、 工場の安価な重労働を拒否する立場にいた。 製糸業、鉱業が中心 生計の補助とみなされる女性、子供
第9回 労働者階級とジェンダー・産業 革命 児童・女性労働の保護 1. 雇用者の視点:健康悪化による労働力悪化を懸 念 2. 人権の視点 ⇒ 労働法制が整備(日本では工場法、労働基準法な ど) ・「保護」の名の下での児童、女性の就職制限・ 労働市場から追いやられる現象が発生 ・前近代の家計へ主な貢献した女性の賃金が なくなる ⇒結果、家庭の貧困化
第9回 労働者階級とジェンダー・産業 革命 産業革命以後 1. 「男性賃金」の誕生 2. 女性の「工場からの退場」 3. 労働の「女性の道徳」、「女性の健康」へ の「悪影響」という言い訳が、女性労働を 禁止するために歪んで用いられてきた 4. 男性は過労となるまで働き、全家族の支え とならなければならない
第9回 労働者階級とジェンダー・産業 革命 産業革命以後: 児童と女性労働の保護の結果 「家庭」の構築: 産業革命前に存在しなかった「家庭生活」を構 成する・通念として伝達していく。 子供・女性の家庭への退場 男性を家、畑の周辺ではなく、労働市場へ送る 次世代労働力の確保を担う存在としての女性、そ の現場としての家庭
第10回 (女性の)経済活動への参加 開発計画における女性と男性の理想的な役割 50 年代から現在までの国際調査によると、 経済開発計画の観点からの「女性」と「男性」の想定 男性=生計を担う人、世帯主 であるはず 女性=補助する人間 であるはず 男性労働=世帯の土台、主な労働力 であるはず 女性労働=(夫、生計)を補助する労働 であるはず
第10回 (女性の)経済活動への参加 経済計画における統計データの前提と問題点 国単位の統計である (国内の富の分配、所得格差が 見えない) 企業や他のデータ収集対象となる部門のみの「公式経 済」だけを扱う 「非公式経済 informal sector 」を見ていない 契約や保証のない労働の存在を不可視化 家事などの無償労働も対象外
第10回 (女性の)経済活動への参加 世界経済の展開:国際市場の途上国への影響 輸出指向型経済:自己消費財でなく輸出品を生産 ( ex. プランテーション、加工食品、ぜいたく品 など) NIEs という成功事例 「安い労賃が競争力の切り札となる」ことの意味 女性=「安価な労働力」 経済開発、開発計画による 生活水準の向上は 誰にとってのもの?
第10回 (女性の)経済活動への参加 労働現場、職場での男女差別のその要因 1. 賃金差別 (男性>女性) 2. 労働内容と労働条件 選択できる・できない労働とその質に表れる格差 職場の条件の格差 職場でも職場以外でも無償労働の時間数の格差 産業革命以降の女性の位置: 補助労働力としての女性 安い労働力としての女性、補助労働の担い手
第11回 国際分業とジェンダー 植民地下における資本主義経済 産業化、賃金による生活(貨幣化)、自家消費 から域外への輸出品目の生産へ 植民統治下における途上国の分業とジェン ダー関係の変化 1. 3世代家族構造から核家族構造へ 2. 女性の外での仕事への従事から、「主婦」仕事 へ(発展途上国の「主婦化」) 3. 農業労働による男女役割区別から、世帯内分担 へ 4. 意思決定過程からの女性の排除
第11回 国際分業とジェンダー 先進国の開発計画における途上国にあわない 3つの前提 1. 世帯の構造(大人2人、子供2 - 3人) 2. 世帯は経済単位であり、生計・資源をめぐる世帯 内の意思決定は平等である 3. 世帯内分業:男は生計の担い手、女は家内労働全 般 上記の3つは理想的な世帯構造のみを反映する。 西洋諸国でも日本でも例外的である。世帯の理想的な構造を支える諸体系~その国の 法律制度・教育制度・マスメディア・家族計画プログラム
第11回 国際分業とジェンダー 開発計画とジェンダー 地域所得を向上するための先進国型開発計画の問題点: プランテーションでの余剰生産に従事する世帯の形態や ニーズ 世帯の「理想的な」構造は、先進国の家庭内 ジェンダー役割・分担を自然化していく。 ⇒「理想」以外のものを想定しない開発計画
第11回 国際分業とジェンダー ミースによる新国際分業と開発の分析 途上国の経済体制が、先進国の消費者の要求を満 たすための輸出品の生産にシフト 新国際分業とジェンダー関係の変化 先進国における女性の「主婦化」 途上国における女性の役割の増大 再生産労働、生産労働、コミュニティの管理
第11回 国際分業とジェンダー 新国際分業とジェンダー関係の変化 先進国における女性の「主婦化」 途上国における女性の役割 再生産労働、生産労働、コミュニティの管理 先進国における男女役割の途上国への移転 観念レベルでの同一視 先進国の男女役割を前提にした開発計画や制度の構築
第11回 国際分業とジェンダー まとめ 途上国の有償労働者は主に自分の必需品ではなく、先進国 が購入するものを生産 (自分の低賃金でそのモノを買えな い)。 途上国の男性賃金労働(有償労働)は主に出稼ぎ、 換 金作物、小規模土木(=インフラ建設)などとなり、これ らに従事するために家族を村に残す。 その結果、女性だけが家族の支えとなってしまう。 女性労働は主な労働力として認められないために、補助労 働として低賃金以下の報酬で生計を担おうとする。 その結果、世帯、共同体が貧困化して行く。
第11回 国際分業とジェンダー 開発とジェンダー: 新しい経済学への視点 NHE ( New Household Economics ) 個人ではなく、世帯を資源による効用の拡大の舞台と 捉える 先進国に起源を持つ世帯モデルを前提とする 途上国での実際の世帯は先進国と異なる構成をし ていることも多く、そのまま適用してしまっては 理解できない要素が大きい ミクロレベルでの実証調査の必要性
最終テストの概要 最終テスト 必須 (配点の6割、残り4割は中間テス ト) 持ち込み可(ただし PC 等は不可) 総合政策学部全員: Ω 21 環境情報学部、看護医療学部: Ω 12 試験範囲は基本的にすべての内容