ジェンダーと近代 第12回 2005/01/16. 今後の予定 1 月 16 日(月) 1 限 第12回 本日の講義 1 月 18 日(水) 1 限 最終テスト <月曜代講 日>

Slides:



Advertisements
Similar presentations
井手 鑑人 岡村 佳祐 中嶋 仁 橋本 佳奈.  生活水準の向上には、物価上昇しないことが関係  衣料費の場合 ファストファッションブランドが多数誕生  その背景には 安価 安価 良質 安い労働力を提供する中国などの発展途上国が役割担う安い労働力を提供する中国などの発展途上国が役割担う.
Advertisements

なぜ貧しい国はなくならないの か 第 1 章 開発経済学とは何か 1. まず定義から始めよう 筆者による定義 「貧しい開発途上国 の貧困削減に貢献する 戦略を研究する学問分 野」 2.
地域社会論 第9回 _2 ⅩⅠ.自立する世帯 12 月 14 日. 1.大きな世帯.
経済の仕組みと経済学. 経済学とは 「経世済民」経済 世の中を治め、民の苦しみを救うこと 人々が幸せに暮らすためのしくみでありその活動 = 経済学とは: 「希少な資源を競合する目的のために, 選択・配分 を考える学問」 2.
ジェンダーから世界を読む ジェンダーの概要
GDPとは? GDP(Gross Domestic Product:国内総生産)
~国民経済的な視点から見た社会保障~ 2000/6/14 木下 良太
ちょっと待った! 65歳定年制 ~知ってるようで知らない雇用の話~
最低賃金1000円の是非.
非正規雇用の現状 MR1051 アキ.
植民地制度による資本経済の中のジェンダー変化・ 消費主義の中のジェンダー変化
国際分業とジェンダー 先進~後進国関係の背景
組織の経営学 第1章 ニモ・クルー・からあげ.
入門 計量経済学 第02回 ―本日の講義― ・マクロ経済理論(消費関数を中心として) ・経済データの取得(分析準備) ・消費関数の推定
若者の早期離職を防ぐために c 日野美里.
グローバル化に対応した 日本の雇用制度改革
第2章 経済生活とビジネス 1 経済のしくみとビジネス 5秒間待つか,クリックすると次の画面に変わります。
Web.sfc.keio.ac.jp/~thiesmey/shakainote.htm.
NPO法人財政収入  三層構造・大規模化  全体 保健・医療・福祉  構成比(%) 99年 04年 09年 100万円未満
5 国際貿易の構造と理論 ーーグローバル化と貿易理論ーー
経済学特殊講義(医療経済学) ―医療経済学の理論を学ぶ―
2.非正規従業員の活用 非正規従業員の雇用量と構成 非正規雇用・・・雇用期間に定めのある(有期契約)労働者
(新エネルギー等の導入・普及に当たっての評価方法や基準への適合性評価の課題)
第7章 途上国が「豊か」になるためにすべきこと
わが国の社会福祉現場における 人材確保の動向と今後の展望
前回分(第1章 準備,1-1):キーワード ・ 生産,分配,消費 ・ 市場と組織 ・ 競争市場と均衡 ・ 市場の失敗と政府の介入
入門B・ミクロ基礎 (第7回) 第4章続き 2014年12月1日 2014/12/01.
なぜ貧しい国はなくならないのか 第3章 なぜ貧困を撲滅できないのか?.
児童労働問題とILOの取り組み ー条約の重要性ー
『大阪府人口ビジョン(案)』の概要 ■はじめに ■人口の将来見通し(シミュレーション) ■大阪府の人口の潮流 c ■基本的な視点
無償労働の貨幣評価 専修大学 経済統計学・経済の世界 作間逸雄.
民営化とグローバリゼーション 国家の役割は何か.
第13講 Q1 非正規雇用の規模? Q2 手取り20万円の職は簡単に見つかるか? DVD 2008年10月10日録画.
資源ナショナリズムについて 2012/01/20 長谷川雄紀.
ワークライフバランス 「仕事と家庭の調和」 ~女性活躍の展望~
公共政策大学院 鈴木一人 第7回 政治と経済の関係 公共政策大学院 鈴木一人
労働経済学 安部由起子 10月24日 安部ゼミ説明会 労働経済学 安部由起子
東アジア文化論(11/6) 『成長するアジアと日本の位置づけ』.
キーワード 絶対的な貧困 相対的な貧困 伝統社会 誘発されるニーズ 干渉主義(外からの干渉) 1
先週からの続き ~ 産業革命以後のジェンダー
箱庭経済シミュレーションの基礎モデル、および政策分析への可能性
経済学とは 経済学は、経済活動を研究対象とする学問。 経済活動とは? 生産・取引・消費 等 なぜ、経済活動を行うのか?
国際貿易の外観.
市場経済 商品を買 いたい人 商品を売 りたい人 市場 (いちば) 外国と交易し, 商品範囲を広げる 商人は 利得を拡大 客の要望 が増大.
国際分業と途上国の経済 先進~後進国関係の背景
よりよい消費生活をめざして ~フェアトレードについて考えよう~
マイクロファイナンス(MF)の課題とJICAの取組み 2012年1月
日本の産業革命、ヨーロッパの産業革命の共通点
日本の初期産業革命、ヨーロッパの初期産業革命:目次
2019/4/8 ストリートチルドレン 村瀬絵里奈 寺島友広 武田剛.
グローバリゼーションと 人の移動 移民・難民問題.
第7回 社会福祉の法制度.
西洋諸国で働いていた女性と男性と中産階級の構成 ヨーロッパの初期中産階級 発生に伴う「女性」・「男性」の定義:
恋愛の社会学 筆者:山田昌弘 (中央大学文学部教授。専門=家族社会学)
ジェンダー別経済活動と先進国・途上国の相違
性差と、性別(=ジェンダー)の相違とその調べ方
ミースの「国際分業と女性」 国際分業 キーワード I A.歴史背景: B.説明:
地域社会と子育て 杉田 雅実.
労働市場 国際班.
持続可能な開発目標(SDGs:Sustainable Development Goals)について
ジェンダー・開発・HIV 経済・国際市場による開発
ジェンダー学:様々な分野の中のジェンダー分析の対象
日本の初期産業革命、ヨーロッパの初期産業革命:目次
厚生白書 人口減少社会の到来と少子化への対応 971221 波多野宏美.
80年代のアメリカ経済 現代資本主義分析.
3,賃金体系 ▼賃金原資・・・人にかかる費用のうち、賃金にあてる部分の合計
北海学園大学経済学部 現代資本主義分析 ガイダンス 2006年4月17日 内田 博.
現代資本主義分析 資本主義という見方.
経済学入門 ミクロ経済学とマクロ経済学 ケインズ経済学と古典派マクロ経済学 経済学の特徴 経済学の基礎概念 部分均衡分析の応用.
Presentation transcript:

ジェンダーと近代 第12回 2005/01/16

今後の予定 1 月 16 日(月) 1 限 第12回 本日の講義 1 月 18 日(水) 1 限 最終テスト <月曜代講 日>

最終テストの概要 最終テスト 必須 (配点の6割、残り4割は中間テス ト) 持ち込み可(ただし PC 等は不可) 総合政策学部全員: Ω 21 環境情報学部、看護医療学部: Ω 12 試験範囲は基本的にすべての内容

第8回 仕事と家族の二重役割 1. a 「生産労働」 +b 「再生産労働」 2. a 職場での仕事 +b 家庭での仕事(家事労 働) 3. a 有償労働 + b 「シャドー・ワー ク」(無償労働) 社会規範による「男性役 割」 社会規範による「女性役 割」 a 生産労働、職場での仕事、 有償労働 b 再生産労働、家事労働、 無償労働 a + b 生産 + 再生産 職場 + 家事 低賃金 + 無償労 働

第8回 仕事と家族の二重役割 二重役割が見られる場面 国レベルでの政策 (「世帯主優先」の制度) 共働き/非共働き夫婦の生活時間 緊急時の「援助者」 「子育て」という仕事 ・パートの女性の誕生 ・「責任ある仕事」をしたくなくなる/できない ・他よりも家事を一手に引き受ける ・二重労働をせざるを得なくなる

第9回 労働者階級とジェンダー・産業 革命 日本とヨーロッパの産業革命の共通点 1. 安価な労働力の需要 2. 重労働の需要 3. 長時間・超過時間労働の需要 4. 男性の職人組合(同業組合)があったために、 工場の安価な重労働を拒否する立場にいた。 製糸業、鉱業が中心 生計の補助とみなされる女性、子供

第9回 労働者階級とジェンダー・産業 革命 児童・女性労働の保護 1. 雇用者の視点:健康悪化による労働力悪化を懸 念 2. 人権の視点 ⇒ 労働法制が整備(日本では工場法、労働基準法な ど) ・「保護」の名の下での児童、女性の就職制限・ 労働市場から追いやられる現象が発生 ・前近代の家計へ主な貢献した女性の賃金が なくなる ⇒結果、家庭の貧困化

第9回 労働者階級とジェンダー・産業 革命 産業革命以後 1. 「男性賃金」の誕生 2. 女性の「工場からの退場」 3. 労働の「女性の道徳」、「女性の健康」へ の「悪影響」という言い訳が、女性労働を 禁止するために歪んで用いられてきた 4. 男性は過労となるまで働き、全家族の支え とならなければならない

第9回 労働者階級とジェンダー・産業 革命 産業革命以後: 児童と女性労働の保護の結果 「家庭」の構築: 産業革命前に存在しなかった「家庭生活」を構 成する・通念として伝達していく。 子供・女性の家庭への退場 男性を家、畑の周辺ではなく、労働市場へ送る 次世代労働力の確保を担う存在としての女性、そ の現場としての家庭

第10回 (女性の)経済活動への参加 開発計画における女性と男性の理想的な役割 50 年代から現在までの国際調査によると、 経済開発計画の観点からの「女性」と「男性」の想定 男性=生計を担う人、世帯主 であるはず 女性=補助する人間 であるはず 男性労働=世帯の土台、主な労働力 であるはず 女性労働=(夫、生計)を補助する労働 であるはず

第10回 (女性の)経済活動への参加 経済計画における統計データの前提と問題点 国単位の統計である (国内の富の分配、所得格差が 見えない) 企業や他のデータ収集対象となる部門のみの「公式経 済」だけを扱う 「非公式経済 informal sector 」を見ていない 契約や保証のない労働の存在を不可視化 家事などの無償労働も対象外

第10回 (女性の)経済活動への参加 世界経済の展開:国際市場の途上国への影響 輸出指向型経済:自己消費財でなく輸出品を生産 ( ex. プランテーション、加工食品、ぜいたく品 など) NIEs という成功事例 「安い労賃が競争力の切り札となる」ことの意味 女性=「安価な労働力」 経済開発、開発計画による 生活水準の向上は 誰にとってのもの?

第10回 (女性の)経済活動への参加 労働現場、職場での男女差別のその要因 1. 賃金差別 (男性>女性) 2. 労働内容と労働条件 選択できる・できない労働とその質に表れる格差 職場の条件の格差 職場でも職場以外でも無償労働の時間数の格差 産業革命以降の女性の位置: 補助労働力としての女性 安い労働力としての女性、補助労働の担い手

第11回 国際分業とジェンダー 植民地下における資本主義経済 産業化、賃金による生活(貨幣化)、自家消費 から域外への輸出品目の生産へ 植民統治下における途上国の分業とジェン ダー関係の変化 1. 3世代家族構造から核家族構造へ 2. 女性の外での仕事への従事から、「主婦」仕事 へ(発展途上国の「主婦化」) 3. 農業労働による男女役割区別から、世帯内分担 へ 4. 意思決定過程からの女性の排除

第11回 国際分業とジェンダー 先進国の開発計画における途上国にあわない 3つの前提 1. 世帯の構造(大人2人、子供2 - 3人) 2. 世帯は経済単位であり、生計・資源をめぐる世帯 内の意思決定は平等である 3. 世帯内分業:男は生計の担い手、女は家内労働全 般 上記の3つは理想的な世帯構造のみを反映する。 西洋諸国でも日本でも例外的である。世帯の理想的な構造を支える諸体系~その国の 法律制度・教育制度・マスメディア・家族計画プログラム

第11回 国際分業とジェンダー 開発計画とジェンダー 地域所得を向上するための先進国型開発計画の問題点: プランテーションでの余剰生産に従事する世帯の形態や ニーズ 世帯の「理想的な」構造は、先進国の家庭内 ジェンダー役割・分担を自然化していく。 ⇒「理想」以外のものを想定しない開発計画

第11回 国際分業とジェンダー ミースによる新国際分業と開発の分析 途上国の経済体制が、先進国の消費者の要求を満 たすための輸出品の生産にシフト 新国際分業とジェンダー関係の変化 先進国における女性の「主婦化」 途上国における女性の役割の増大 再生産労働、生産労働、コミュニティの管理

第11回 国際分業とジェンダー 新国際分業とジェンダー関係の変化 先進国における女性の「主婦化」 途上国における女性の役割 再生産労働、生産労働、コミュニティの管理 先進国における男女役割の途上国への移転 観念レベルでの同一視 先進国の男女役割を前提にした開発計画や制度の構築

第11回 国際分業とジェンダー まとめ 途上国の有償労働者は主に自分の必需品ではなく、先進国 が購入するものを生産 (自分の低賃金でそのモノを買えな い)。 途上国の男性賃金労働(有償労働)は主に出稼ぎ、 換 金作物、小規模土木(=インフラ建設)などとなり、これ らに従事するために家族を村に残す。 その結果、女性だけが家族の支えとなってしまう。 女性労働は主な労働力として認められないために、補助労 働として低賃金以下の報酬で生計を担おうとする。 その結果、世帯、共同体が貧困化して行く。

第11回 国際分業とジェンダー 開発とジェンダー: 新しい経済学への視点 NHE ( New Household Economics ) 個人ではなく、世帯を資源による効用の拡大の舞台と 捉える 先進国に起源を持つ世帯モデルを前提とする 途上国での実際の世帯は先進国と異なる構成をし ていることも多く、そのまま適用してしまっては 理解できない要素が大きい ミクロレベルでの実証調査の必要性

最終テストの概要 最終テスト 必須 (配点の6割、残り4割は中間テス ト) 持ち込み可(ただし PC 等は不可) 総合政策学部全員: Ω 21 環境情報学部、看護医療学部: Ω 12 試験範囲は基本的にすべての内容