嫌悪施設建設における住民同意について 平成 21 年 5 月 15 日 NPO 法人廃棄物政策フォーラム 理事 中西 元太郎 第 3 回 TS-net 環境セ ナー.

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嫌悪施設建設における住民同意について 平成 21 年 5 月 15 日 NPO 法人廃棄物政策フォーラム 理事 中西 元太郎 第 3 回 TS-net 環境セ ナー

Ⅰ.住民同意について 近年、環境破壊(以下廃棄物処理・処分施設という)が懸念される施 設建設 において周辺住民の同意を得ることは、益々困難となってきている。 その要因は、 ①建設場所選定理由が十分理解できない。 ②施設から発生する環境破壊に対する住民の恐怖心。 ③子孫に対する責任感。 ④建設に同意すると、事業者は、その後勝手に何をするか判らない 不安等 が考えられる。 これらの要因を取り除くためには、事業者は永い年月と相当の努力 が要求 される。 Ⅱ.建設同意までの基本的考え方 住民同意は、場所の選定、施設建設計画、維持管理運営方針について 一 括同意を求めるのでなく、選定から段階をおって進めることが、施設 建設に 対する信頼、理解を得るとともに、責任感、不安感を取り除くことが できる。 なお、地域等によって状況も異なるので、ケ-スバイケ-スで対応し なけれ ばならない。 以下、本事例は、最終処分場設置を1つの事例として述べる。

Ⅲ.事例研究 1.施設設置箇所選定までの対応 (1)自治体のケ-ス ① 首長は、全住民に今後の廃棄物処理・処分の方針を説明し、 こ の方針を地元議会で議決する。 ② 首長は、施設設置周辺の地域振興に努力することを約束する。 ③ 首長は、建設計画から地元住民に公開して進めることを約束 する。 ④ 周辺の環境に影響を与えないことを約束する。 (2)民間事業者のケ-ス ① 地元自治体に設置箇所の選定理由、維持管理運営方針、地域 振 興について十分説明する。 ② 産業廃棄物のみの処理・処分でなく、周辺自治体の一般廃棄 物を 受け入れる計画とする。 ③ 住民同意範囲を地元自治体、関係機関等と協議して決める。

2.選定場所の提示と予備調査等 ① 複数の候補地を選定しないで、1箇所を提示する。 ② 地元自治会内のオピニオンリ-ダ-又は有力者を探し、候 補地 の選定場所を個別に説明して、疑問点等について意見交 換し、 理解を求 める。 ③ 選定場所が、処理・処分施設として適地かどうかを、既存 資料で の調査について、地元住民の同意を求める。 ④ 処理・処分施設について、十分理解していない住民のため に、 先進施設の視察を実施する。 ⑤ 自治体、自治会、地元リ-ダ-等の予備調査結果を説明す る。 3.予備調査の結果、適地と判断後 ① 予備調査の結果を詳細に説明し、現地調査を自治体、地元自治 会 の同意を求める。 ② 用地内の地主に、現地調査の同意及び施設設置が可能な時の 用地買収の意向を調査する。 ③ 現地調査についての住民同意範囲を、関係機関、地元自治体、 地元 自治会等の意見を交換して決める。

4.現地調査の結果、重大な問題が無い ① 調査結果を説明し、自治体、地元自治会、地主、搬入道路沿線住 民、 処理水放流河川団体等に施設設置の同意を求める。 ② 具体的地域振興策を地元住民から意見を聴取し、計画を策定し て 提案する。 (住民個人に現金を渡すことは止め る。) ③ 施設設置に関する基本協定(施設建設のみの協定であって、細 目協 定として公害防止協定、維持管理運営協定は別途とする。) を自治体、 地元自治会、事業者の3者で締結する。 (漁業団体等は別途協定 を締結する。) ④ 環境影響評価書作成の原案を、関係機関、自治体、地元自治会 等に 説明し同意を得る。 ⑤ 環境影響評価結果を関係機関、自治体、地元自治会等に説明し 同意を得る。

5.施設建設段階 ① 地元自治体、地元自治会に定期的に工事進行状況の説明・工事現場 見学会を実施する。 ② 地元自治会内に、工事施工確認委員会等の設置を求め、設計図に 基づく施工内容の確認を、定期的に求める。 ③ 維持管理運営についての意見交換を実施する。 6.施設維持管理運営段階 ① 公害防止協定を、自治体、地元自治会(搬入道路沿線関係自治体、 処理水放流河川団体は、別途協定)と3者協定を締結する。 ② 維持管理運営協定を上記団体と3者協定を締結する。 ③ 地域振興策の実施にあたっては、事前調整を十分行ってから実施す る こととする。 ④ 地元自治会内に維持管理運営の運営確認委員会を設立を求め、 定期 的に 維持管理運営状況を確認して貰う。

Ⅳ.まとめ 1.地元自治体や自治会の意見・質問等を十分尊重して、施設建設・維 持管 理運営を進めるという姿勢等により、地元関係者との信頼関係を確 立する 努力を行うべきである。 2.地元自治会住民が、地元自治体、他地域の住民、事業活動者等のた めに 犠牲的精神を発揮して同意した意識を持って貰う努力を、事業者は 行う べきである。 3.お金で、すべてを解決する意識を事業者は、排除すべきである。 4.事業実施関係者は、住民の意見・質問等にはできるだけ即断するよ うに 心がけるべきである。 5.地元自治会内で、信頼されている住民を見付け、事業実施の理解し て貰う 努力が必要である。 6.地元振興策は、地元住民の意見を十分取り入れる姿勢が必要である が、 実現不可能なことは明確に断る。 7.現金は、住民個人には決してばらまかない。 8.住民個人を対象に、施設建設について説明して、1人でも多くの理 解者を 求める努力を行うべきである。 9.予想されない小規模の事故を含め、事故が発生したときは、 直ちに対応策を作成して住民に報告する。