フリードマンも消費の平準化に注目して、 恒常所得仮説を提唱した。 消費の平準化を行う各個人は、消費が現在 の所得よりもむしろ、好調な年と不調な年 を 平均した生涯の全所得 ( 恒常所得と呼ばれ る ) に強く依存する。したがって、フリードマ ンは人々は一時所得と恒常所得を区別でき ると主張した。 好調な年と不調な年の間で、消費を平準化.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
1標本のt検定 3 年 地理生態学研究室 脇海道 卓. t検定とは ・帰無仮説が正しいと仮定した場合に、統 計量が t 分布に従うことを利用する統計学的 検定法の総称である。
Advertisements

資本市場論 (9) 債券投資分析 - 金利の期間構造 - 三隅隆司 1. 短期金利と長期金利の関係 1990 年 12 月 1994 年 6 月 1992 年 4 月 1993 年 2 月 1996 年 6 月 1999 年 1 月 1994 年 1 月 日本銀行 HP のデータより作成 2 はじめに.
Lesson 9. 頻度と分布 §D. 正規分布. 正規分布 Normal Distribution 最もよく使われる連続確率分布 釣り鐘形の曲線 -∽から+ ∽までの値を取る 平均 mean =中央値 median =最頻値 mode 曲線より下の面積は1に等しい.
終章 結論~迷走する経済学~ E班 堀口・石川・細野・武井・赤見・伊藤 デフレの原因はマネーサプライでもない!人工減少でもな い!ではデフレの正体は何か … この章ではその正体を含め、歴史的に見る経済低滞とデフレ の関係性、デフレの害悪、そして現在の経学の現状について も論じていく。 1.
Miguel, Edward (2005) “Poverty and Witch Killing”. Review of Economic Studies, 72(4): 報告者:有本寛 2009/11/18 1.
国民所得 エンゲル係数:生活費に占める食事の割 合 所得の増加と逆に動く指数 食費:所得が増加してもそれほど増えな い なぜなら 娯楽費:所得が増加すると増加する このエンゲル係数を国際比較すれば、各国の生活水準を比べることができ る しかし ある国の衣服費だけ上昇したとする 生活費は上昇する、が、食費は上昇しないエンゲル係数は低下する.
消費者行動の理論 (3) 貯蓄・労働供給の決定 貯蓄の決定理論 – 2 期間モデル – 割引価値,生涯の予算制約 – 貯蓄の決定 – 利子率の変化 労働供給の決定理論 – 基本モデル – 後方屈曲的労働供給曲線 – コーナー解 – 所得再分配政策.
2014 年 10 月 17 日初級ミクロ経済学 1 初級ミクロ経済学 -消費者行動理論- 2014 年 10 月 17 日 古川徹也.
2016 年度 計量経済学 講義内容 担当者: 河田 正樹
入職率・製造業 同志社大学 経済学部 14100077 藤原由佳.  テーマの説明 入職率・製造業が何に影響するのかを分析する。  選んだ理由 自分の興味のある分野が製造業であり、どのくらいの 人が入職を求めているのか気になったため。  テーマの重要性 経済活動は需要・供給から成り立っている。
MBA 国際金融 外国為替市場の効率性. 2 効率的市場仮説 効率的市場( efficient market )とは? 為替相場が、為替相場に関連するすべての 利用可能な情報に即座に完全に反応。
金融経済論(小川英治) 1 貨幣の機能と貨幣需要. 金融経済論(小川英治) 2 貨幣の機能 計算単位(価値尺度) 交換される商品の価値をある貨幣の数量で 一元的に表示する機能 交換手段 貨幣がすべての商品と交換され、すべての 商品の交換の媒介となる機能 価値貯蔵手段 貨幣が一定の価値を少なくとも一時的に蓄.
エクセルと SPSS による データ分析の方法 社会調査法・実習 資料. 仮説の分析に使う代表的なモデ ル 1 クロス表 2 t検定(平均値の差の検定) 3 相関係数.
ケインズ型「短期消費関数」とクズネッツ 型 「長期消費関数」を矛盾なく説明する理論 フランク・モジリアニとアルバート・ア ンドウは ライフ・サイクル仮説を提唱した。 個人の消費行動は、今期の所得によって 決めれると言うよりも、貯蓄を通じて、そ の個人が一生の間に消費することのできる 所得の総額 ( 生涯所得.
●母集団と標本 母集団 標本 母数 母平均、母分散 無作為抽出 標本データの分析(記述統計学) 母集団における状態の推測(推測統計学)
第1章 金融の基本的要素 Q.4~Q /5/6 棚倉 彩香.
乗数効果 経済学B 第6回 畑農鋭矢.
まとめ ケインズの消費関数 消費=f(現在所得) ライフ・サイクル仮説や恒常所得仮説 消費 =f(現在所得・富・期待将来所得・利子率) +
21世紀のアメリカ経済 藤女子大学人間生活学部 内田 博
様々な仮説検定の場面 ① 1標本の検定 ② 2標本の検定 ③ 3標本以上の検定 ④ 2変数間の関連の強さに関する検定
入門 計量経済学 第02回 ―本日の講義― ・マクロ経済理論(消費関数を中心として) ・経済データの取得(分析準備) ・消費関数の推定
時系列の予測 時系列:観測値を時刻の順に並べたものの集合
  個人投資家向け株式分析   と予測システム A1グループ  劉 チュン.
第16章 総需要に対する 金融・財政政策の影響 1.総需要曲線は三つの理由によって右下がりである 資産効果 利子率効果 為替相場効果
実証分析の手順 経済データ解析 2011年度.
初級ミクロ経済学 -生産者行動理論- 2014年10月20日 古川徹也 2014年10月20日 初級ミクロ経済学.
プロ野球観客動員数の 要因分析.
マクロ経済学 I 第3章 久松佳彰.
第8章 家計部門でいま起こっていること.
第4回 (10/16) 授業の学習目標 先輩の卒論の調査に協力する。 2つの定量的変数間の関係を調べる最も簡単な方法は?
戦時中の高度成長期 高度成長期にはいくつかの制度がある。 一つ目は金融機関の専門化戦中に金融機 関が均質化したのとは著しくことなり、 高度成長期の金融制度は各金融機関ごと の分業主義に沿って組織化された。
土木計画学 第5回(11月2日) 調査データの統計処理と分析3 担当:榊原 弘之.
統計的仮説検定の考え方 (1)母集団におけるパラメータに仮説を設定する → 帰無仮説 (2)仮説を前提とした時の、標本統計量の分布を考える
Effect sizeの計算方法 標準偏差が正確に求められるほど症例数が十分ないときは、測定しえた症例の中で、最大値と最小値の値の差を4で割り算した値を代用することが出来る。この場合には正規分布に従うことを仮定することになる。
ミクロ経済学II 第18回 要素価格と所得分配 2 所得分配率 現在割引価値と土地の価格決定.
心理統計学 II 第7回 (11/13) 授業の学習目標 相関係数のまとめと具体的な計算例の復習 相関係数の実習.
担当者: 河田 正樹 年度 経済統計講義内容 担当者: 河田 正樹
第3章 重回帰分析 ー 計量経済学 ー.
第3章 重回帰分析 ー 計量経済学 ー.
短期均衡モデル(3) AD-ASモデル ケインジアン・モデルにおける物価水準の決定 AD曲線 AS曲線 AD-ASモデル
第5章 回帰分析入門 統計学 2006年度.
マクロ経済学初級II タイプIIクラス 白井義昌
正規性の検定 ● χ2分布を用いる適合度検定 ●コルモゴロフ‐スミノルフ検定
第1回家計班 これからの日本の経済成長は 可能であるか
土木計画学 第6回(11月9日) 調査データの統計処理と分析4 担当:榊原 弘之.
第4章 投資関数.
早稲田大学大学院商学研究科 2016年1月13日 大塚忠義
離婚が出生数に与える影響 -都道府県データを用いた計量分析
第3章 消費関数.
相関分析.
バブル崩壊後の日本経済の 貯蓄率低下について
貨幣の流通速度 貨幣が平均して1年間にいくつの経済主体 の間を移動するのかを表わす MV=取引総額(年間) Vは流通速度あるいは平均回転率.
VI 短期の経済変動.
第8回講義 マクロ経済学初級I .
標本分散の標本分布 標本分散の統計量   の定義    の性質 分布表の使い方    分布の信頼区間 
市場調査の手順 問題の設定 調査方法の決定 データ収集方法の決定 データ収集の実行 データ分析と解釈 報告書の作成 標本デザイン、データ収集
7: 新古典派マクロ経済学 生産要素の完全雇用 ケインズ経済学の中心的な考え方(需要サイド,4章と5章のIS/LMモデル) ↑ ↓
1.母平均の検定:小標本場合 2.母集団平均の差の検定
早稲田大学大学院商学研究科 2014年12月10日 大塚忠義
データの型 量的データ 質的データ 数字で表現されるデータ 身長、年収、得点 カテゴリで表現されるデータ 性別、職種、学歴
第7章 単回帰で「消費関数」を計測する 1.所得の定義 1.1 国民純生産 国内総生産(GDP) ⇔ 所得
「アルゴリズムとプログラム」 結果を統計的に正しく判断 三学期 第7回 袖高の生徒ってどうよ調査(3)
マクロ経済学初級I タイプIIクラス 白井義昌
確率と統計2007(最終回) 平成20年1月17日(木) 東京工科大学 亀田弘之.
古典派モデル(1) 基本モデル 生産要素市場の均衡(労働市場,資本市場) 生産関数 消費関数,投資関数 財市場の均衡 政策の効果
第9回講義 マクロ経済学初級I タイプIIクラス.
重回帰分析入門 (第5章補足) 統計学 2007年度.
経済学(第7週) 前回のおさらい 前回学習したこと(テキストp.16,19) ◆ マクロ経済学における短期と長期 ◆ 完全雇用とはなにか ◆ 短期のマクロ経済モデルの背後にある考え方 (不況の経済学/有効需要原理) ◆ 民間部門はどのように消費や投資を決定するか ◆ ケインズ型消費関数とはなにか ◆
回帰分析入門 経済データ解析 2011年度.
企業ファイナンス 2009年10月21日 実物投資の意志決定(2) 名古屋市立大学 佐々木 隆文.
Presentation transcript:

フリードマンも消費の平準化に注目して、 恒常所得仮説を提唱した。 消費の平準化を行う各個人は、消費が現在 の所得よりもむしろ、好調な年と不調な年 を 平均した生涯の全所得 ( 恒常所得と呼ばれ る ) に強く依存する。したがって、フリードマ ンは人々は一時所得と恒常所得を区別でき ると主張した。 好調な年と不調な年の間で、消費を平準化 させる点で貯蓄の役割を重要である。

ライフサイクル仮説どう違う のか。 貯蓄の役割を強調する点はライフサイク ル仮説と同じであるが、ライフサイクル 仮説では、所得のパーンが一生涯では規 則的なパターンに従うことを強調してい るが、恒常所得仮説では、人々が年々、 所得の不規則的で一時的な変化を経験す る点を強調した点で異なる。

恒常所得仮説 M. フリードマンは、所得を 「恒常所得 (permanent income) 」と 「変動所得 (transitory income) 」の 2 つの 部分に分けた。

恒常所得とは、自己の学歴・資産・所得 獲得能力からして、将来予想しうる平均 所得。 昇進やより所得の高い職をえると、消費 は増加する。このように消費を増加させ るのは恒常所得。 変動所得とは、景気の良し悪しによって 左右される所得。宝くじやギャンブルで の臨時収入(=変動所得)は、その分だ け消費を増やそうとはせず、貯蓄に回す。

フリードマンは、消費は主に恒常所得に依存 しているという恒常所得仮説を提唱した。 平均消費性向は

:好調時 :不調時

経済成長により賃金等が増加する 生涯賃金が増加すると予想して、生涯所 得の現在価値の増加、すなわち恒常所得 の増加する。 消費が原点からの直線に沿って増加する。 =短期消費関数の上方シフト 所得の一時的変動に対する消費変化はゼ ロ

短期と長期の消費関数 C Y 短期消費関数 恒常所得変動所得

統計的事実の説明 長期的には、変動所得は差し引きゼロと みなしうる。よって、長期的には、可処 分所得は 恒常所得 ( ) に一致する 。 短期的には、恒常所得は変化しないのに 対して、変動所得は大きく変化する。 このため、消費はあまり変化しないが、 平均消費性向は上下に変動する。

恒常所得とは何か? 消費者個人の「人的資本」(彼の全将来 所得の現在価値)を含めて、彼が持って いる全資産の現在価値から得られる所得。 :財産 :人的資本の収益 :賃金

3 期間の所得の割引現在価値 3 期間にわたり所得が同一とすれば ( ならし所得 )

これを整理すると、 現在所得の一時的変動は、生涯にわたる 平均所得(=恒常所得)を少し変動させる。 よって、消費も少し変化する。

恒常所得仮説の数値例 現在の所 得 恒常所得一時所得消費 APC 1期1期 370 万円 300 万円 70 万円 240 万円 期2期 230 万円 300 万円- 70 万円 240 万円 期3期 300 万円 0 万円 240 万円 0.8 利子率はゼロ物価は一定 恒常所得

しかし、実際には将来所得の予想は困難で ある。家計が恒常所得を予想する場合、現 在所得から完全に独立には決まらない。フ リードマンは過去の所得系列から、恒常所 得を予想すると考えた。 順次逓減 ただし、 を用いた。

恒常所得仮説は、本来、将来の所得ある いは その予想に基づく理論であるが、過去の 所得 によって推計せざる点は、大きな問題で ある。 消費の習慣化仮説との区別ができない。

恒常所得の最も簡単な例 :今期の所得 :前期の所得 短期の消費関数

C Y E E” E’

前期までの所得 今期の所得は に増加 その後も が継続 短期消費関数は上方へシフト

もし、2期間にわたり同じ所得が 実現すると、その一定の所得が恒 常所得として認識される。

割引現在価値 将来受け取る金額が、現在ではどれだけ の価値があるかを示す。 今日受け取る 1 万円は、 1 年後に受け取る 1 万円より価値が大きい 例えば 今日受け取った 1 万円を銀行に預金すると、 利子率 5 %の時、 1 万 500 円になる。

1 年後受け取る 1 万 500 円は、今日受け取る と 1 万円の価値である。 = 1 年後の 1 万 500 円の現在割り引き価値は 1 万円である。 1 年後の 1 万円の現在割り引き価値 = 1 万円 1 +利子率 1 年後に受け取る

受領時割引現在価値 1 1+r1+r × 1 万円= 1 万円 1+r1+r 1 1+r1+r × = (1+r)²(1+r)² 1+r1+r 1 1+r1+r × = (1+r)³(1+r)³ (1+r)²(1+r)² 1 年後 2 年後 3 年後 N年後 = 1 万円 (1+r)ⁿ(1+r)ⁿ

家計のクロスセクション・データ に 対する説明 平均所得に等しい所得階層 平均所得はゼロ 平均所得より高い所得階層 の結果その所得階層に入って いる人の方が、 の結果その所 得階層に入ってくる人数よりも多い(図 を見よ)。 ∵ 母集団が正規分布しているため。

母集団の人数分布 平均所得より高い所得階層において、 の人数の方が、 の人数より多い。 低所得平均所得高所得

平均所得より低い所得階層 の結果その所得階層に入っている 人数は、 の結果その所得階層に 入っている人数より多い。 母集団の平均所得より 高い階層では、 低い階層では、

クロスセクションの消費関数 階層別 所得 負の変動所得正の変動所得

消費は常に、どの所得階層においても、 恒常所得に依存する。

有配偶継続世帯 固定効果法および変動効果法においても、 月々の世帯収入は消費に有意義に影響を 与えていない。 一時的な所得の低下は消費支出を減 らさないが、これが恒常化すると消費支 出は減少する。 他に、子供の就学および住宅ローン残 高が、消費支出に対して有意な説明変数。

未婚女性の消費支出 その月の収入が有意であるが、過去 3 年間 の 移動平均収入は有意な係数ではない。 恒常所得仮説は不成立 親の年間収入、親同居ダミー、無職ダミー、 専門・管理職ダミー、技能職ダミーは有意。 ( マイナス ) 預貯金残高が多い時、親と同居している時、 消費支出は少なくなる。

t 検定 回帰分析において、回帰係数の優位性を 検定すること。次の手順を踏む。 (1) 回帰係数の t 値を求める。 t 値=回帰係数 / 標準偏差 (2) この t 値と t 表の値を比較する。 (3) |t 値 | の方が高ければ、その係数の信頼 性が高いことを意味する。逆の場合は、 信頼性が低い。 ( およそ 2 以上 )

恒常所得仮説の問題点 ① 消費者が将来所得を正確に予測できる のか? ② 実証結果によれば、恒常所得仮説が予 測 するほど、現在消費に対して将来所得 は 影響を持たない。 借り入れ制約の存在 ③ 消費の平準化仮説は正しいのか?

短期の消費関数 ライフ・サイクル型 今年の可処分所得 ケインズ型 現実の消費 関数