当院における 脊椎内視鏡手術について 三宿病院 整形外科 森信太郎
現在までの経歴 H8.3 月防衛医大卒業 H8.3 月防衛医大卒業 H14.8 月自衛隊熊本病院に配 属 H17.4 月熊本中央病院勤務 H23.6 月~ 9 月和歌山県立医大で研修 年間 500 例の脊椎手術症例 術者 3 人 1 人当たり 150 から 200 例 ( 6 年間で 1000 例以 上) H26.4 月三宿病院勤務
内視鏡手術手技取得に至った動機 表向きは およその手術手技をマス ターし 新たな手術手 技取得のため 本音は 結果 予想以上に優れた術式手術症例数も増加 負担が増え、精神的肉体的疲労、 ストレスが蓄積 ???
腰椎椎間板ヘルニア (LDH) 腰部脊柱管狭窄症 (LCS) 椎間孔狭窄症( FS) 頸椎症性脊髄症 (CSM) 頸椎椎間板ヘルニア (CDH) 胸髄症( T h CS,ThOYL) な ど 脊椎内視鏡手術( MED,MEL) の適応となる疾患 *最近は MED(16mm 径の内視鏡システ ム ) よりさらに径の小 さい PED(7mm 径 ) で手術を おこなう施設も増えている。
腰椎疾患( LDH LCS FS EDH ) 内視鏡手術の適応が難しい症 例 再手術、すべりや不安定性の強い症例もの、 椎体骨折の合併 胸髄疾患 ( 胸髄症、 OYL ) 頸椎疾患( CDH,CSM) 連続型 OPLL 、後弯症、正中型ヘルニア 連続型 OYL 、 OPLL 合併( beak- type)
腰椎疾患の分類 腰部脊柱管 狭窄症 腰椎椎間板 ヘルニア 腰椎変性 すべり症 特に高齢者は重複している事が多い 境界内の診断名 は実はけっこう アバウト 椎間孔 狭窄症 椎間孔狭窄症
ヘルニア? 狭窄症? すべり症? 診断は?
特に腰椎疾患の 最近のトピックとして、、、
① IS ② IF 神経根 椎間孔狭窄症の概念 ① intraspinal ( IS ) ② intraforaminal ( IF) ②③ IF での神経根の圧迫が主体 ③ EF ③ extraforaminal ( EF)
単純 X 線写真 圧倒的に下位腰椎 におこりやすい。 変性側弯の Wedge side (凹 側) すべりや不安定性 を伴っているとさ らに高率に発症
MR I 矢状断水平断 矢状断では椎間孔部での神経根周囲に 脂肪像が消失、水平断では神経根の 走行に左右差がみられている。
MR ミエロ (3 DMRI ) 横走化 欠損 細小化 神経根の走行に横走化 や欠損像、細小化など の左右差
double crush type の神経根 圧迫 単一神経根が lateral recess と椎間孔部で障害 L4/5 椎間板 L4 神経根 L3/4 椎間板
から導入 3 年間で 204 例(男性 116 例女性 88 例) 自身の内視鏡手術経験(熊本中央病院) ~ 和歌山県立医大で研修 腰椎疾患 ( 192 例) 90 % 以上 CSM10 例 CDH 2 例 LDH91 例 LCS49 例 LCS/LDH26 例 EDH12 例 FS9 例 LCS/FS (内外開窓 4 例) Facet cyst1 例 頸椎疾患 ( 12 例) 胸椎疾患 ( 1 例) OYL1 例
自身の内視鏡手術経験(三宿病 院) 腰椎疾患 ( 26 例) CSM 1 例 CDH 1 例 LDH11 例 LCS12 例 LCS/FS (内外開窓 1 例) Facet cyst2 例 頸椎疾患 ( 2 例) 月から現在まで 脊椎内視鏡手術症例 :28 例(男性 10 例 女性 18 例) 平均年齢 67.6 歳( 17 ~ 90 )
術前に透視で高位を確認し 皮膚にマーキングをおこな う。 モニターは Stryker : Full high vision モニターを用いている。 立体像も十分認識可能
内視鏡 Medtronic Sofamor Danek 社 METRx System 通常は Short scope 体重 100 ㎏ Over で Standard scope Tubular retractor 16mm Scope 径 4mm Short scope : 7.7cm 長 Standard scope : 9.3cm 長
Medtronic Midas Rex High speed drill ドリルの先端は 4.5 ㎜ と 3.5 ㎜の 2 種類 ケリソンパンチ各種 狭い筒の中での操作を 考慮して先が弯曲している。
手術侵襲 2 椎間除圧まで 1 皮切( 16mm 長) 3 椎間、 4 椎間除圧は 2 皮切 腰椎 頸椎 皮膚切開 通常 1 か所の皮切で OK 後療法 患者さんの痛みに応じておこなうが、 通常 No brace にて翌日から歩行訓練可 能
脊椎内視鏡手術のパス 入院 手術 リハビリ開始 創ドレーン抜去 0 2 1 3 4 (日 ) 5~75~7 自宅退院 2W2W Desk work 可能 4W4W 運動、肉体労働可能 ガーゼ Off 高齢者や麻痺などで ADL 自 立 していない場合は転院 も考慮
同一術者の平均手術時間、出血量の比較 初期1 Y MED45 例 86.3 分 35.6g MED 前 LOVE17 例 72.1 分 29.4g LDH 最近1 Y MED41 例 68.3 分 25.0g 手術時間 出血量 L2/3 L3/4 L4/5 L5/S1 高位高位
初期1 Y MEL6 例 分 50.8g MEL 前 開窓術 9 例 67.0 分 40.6g 同一術者の平均手術時間、出血量の比較 LCS 最近1 Y MEL32 例 45 椎間 91.3 分 24.3g 1 椎間 手術時間 出血量 高 位 L2/3 L3/4 L4/5 L5/S
{ Learning curve LDH L5/S1 時間 ( 分 ) 、出血量 (g) 手術時間 出血量
手術時間 出血量 Learning curve 時間 ( 分 ) 、出血量(g) LCS L4/5
手術患者の高齢化に伴い、様々な 合併症を保有している症例が増加 抗凝固剤や抗血小板剤の内服薬が問 題になってくる。 ・術後は過凝固状態となる。 ・アスピリンは脳血管障害の発生率を 15% 、虚 血性心疾患の発生率を 33% 軽減させる。 内服中断にて虚血性合併症 が増える可能性 ( 2005 日本脳卒中学会 ガイドラ イン)
脊椎手術において術前に抗凝固剤や 抗血小板剤の内服を中断しない。 H 日本脊椎脊髄病学会で発表 従来法における脊椎手術で内服継続群は術後出血 量は有意に増加したが、手術時間、術中出血量で 有意差なし 有意差があった術後出血量においても、臨床上問 題となる合併症はみられなかった。 脊椎内視鏡手術においても術前に抗凝固 剤や抗血小板剤の内服を中断しない。 従って、、、
内視鏡手術の利点 術創が小さく(直径 1.6 ㎝)筋肉の剥離も最低限 ですむため、通常の手術に比べ創痛が少なく、リ ハビリ開始や社会復帰が早い。 2 椎間までの除圧 であれば同一皮切でおこなえるためさらに有利で ある。 内視鏡手術は医師 1 人で遂行できるため、外傷、 関節系手術を並列でおこなう際に人手がかからな いため大変助かる。 25 度の斜視鏡を用いて Full high vision monitor に映し出される映像を見ることで、繊 細な映像を前後左右幅広く可視することができ る。立体像の可視も顕微鏡と比べ遜色ない。
器械が高価である。 ガス滅菌器では消毒に1日半かかるため手術件数が 限定される。 ちなみに、プラズマ滅菌器であれば2時間程度で滅菌 可能であり、現在院長に打診中である。 急峻な Learning curve が存在するため、指導者 がいない施設では手術手技向上に時間がかかる。 除圧部位が狭い閉鎖空間であり、術後出血に対して血 腫の影響を受けやすい。 内視鏡手術の欠点
今後の目標 内視鏡手術は腰椎だけでなく頚椎や胸椎にも施行でき る。 適応を見極め幅広く症例を経験していきたい。 通常の手術と比較し時間を要している。 愛護的な神経操作を心がけつつ、さらなる手術時間短 縮を目指していきたい。 術者が 2 人以上いれば両側からの同時手術( Tandem 手術) が可能である。手術時間短縮のためには理想的な方法 であり、精進していきたい。
内視鏡手術は腰椎だけでなく 全脊椎に渡って可能である。 小皮切で多椎間除圧可能 抗凝固剤などの内服も中断する必要が なく合併症を有している高齢者などに 有利である 将来的に、器材と術者がそろえ ば、 手術時間短縮のため 2 か 所同時の Tandem 手術も可能 まとめ 1 2 3