1 メディア社会学 (第3回) 2016 年 5 月 2 日(月) 1
2 1.3 社会学の独自の類型論 -理念型ー 理念型(理想型)(イデアルティプス) ウェーバーが提唱 世界観に近い・・・信ずる宗教とも近 い・・・その点でそれ自体属性に近いと もいえる(アンケートで聞くレベルの属 性の説明力のみ低下しているともいえる かも)
3 マックス・ウェーバー( ) wikipedia からの画像及び
4 理念型① 「社会学独自」 (?) 通常の類型論・・・平均的な像 VS 理念形・・・極端な事例、両極端、色立 体、 研究者の想念(頭の中) OK 現実の多様性 索出的
5 理念型② 現実の世界に対応物がなくて構わない マックス・ウェーバー『プロテスタン ティズムの倫理と資本主義の精神』 – 禁欲的カルヴィニスト – あの世のためだけに金儲け – 本当? 意図と結果のパラドックス(マー トン)
6 理念型③『プロ倫』(1) 『プロテスタンティズムの倫理と資本主義 の精神』(通称・プロ倫)についてのやや 詳しい説明 (今年は4/20にほぼやったのでここは流す) 救霊予定説 – 不安 → 恩寵の証 → 蓄財 (この心理プロセスは事故のときの安否情報や入 試後の合格祈願のよう) 人に喜ばれる行為 → 儲け 禁欲的蓄財 → 資本の蓄積、産業基盤 → 雇用の促進
7 理念型④『プロ倫』(2) ベンジャミン・フランクリン「時は金な り」 「遊びは二重の出費」 (ウェーバーの挙げているものではない が、) – プロテスタント的行動の例 ・・・ 『エデン の東』 – カトリック的行動 ・・・ カーニバル、宵越 しの金は持たない南米・・・あるいは休日・ 余暇は何もせずに瞑想することを重視するト マス・アクィナス
8 理念型⑤ 丸山真男『日本の思想』( 1960 年、 岩波新書) 丸山真男 – 日本の戦後最大の政治学者の一人とさ れる。ウェーバーの影響を受ける。 「実感信仰」と「理論信仰」 「タコツボ型」と「ササラ型」 「であること」と「すること」 Amazon.co.jp からの画像
9 丸山真男( ) 並びに からの画像
丸山真男( ) の経歴1 著名なジャーナリスト丸山幹治( )の次男(松代藩士の家) 父親の親友で20世紀の日本を代表する 大ジャーナリストで左派の長谷川如是閑 ( )に、幼少期より可愛がられ る。 兄は NHK プロデューサー後、音楽評論家 一中 → 一高 → 東大法学部 → 戦争中、キリ スト教徒の反戦政治学者南原繁の下、東 大助手 10
丸山真男( ) の経歴2 学生時代、父の親友如是閑の出る唯物論 研究会の講演会を覗き、特高(特別高等 警察)に拘留されることあり。 東大助教授、教授。ファシズム研究で知 られ、進歩的知識人・岩波文化人の代名 詞のように。 東大紛争( )で学生の突き上げを 受け体調を崩し、東大を辞任。研究とク ラシックの音楽鑑賞の日々を送る。 11
12 「実感信仰」と「理論信仰」① 丸山の問題意識 ① キリスト教(例;南原)とマルクス主義(例 ;マルクス主義者ではないが如是閑がある程度 吸収) なぜ日本で根付かないか? ← 不寛容な者への不寛容 無限抱擁(クリスマス~正月) (その反対が踏み絵-体系 性) ② 日本の学問・制度 ・・・ 直輸入 背景部分、根っこを無視した移植
13 「実感信仰」と「理論信仰」② 実感信仰 ・・・ 担い手・庶民 背景 : 維新以降、西欧の進んだ文明流入 エリート官僚、知識人への反撥 「現実と理論は違うんだ」 「理屈じゃない」「上から外国の難しい 理論や仕組みを押しつけられても分から ないよ」 → 抽象と現実との往復関係(相互媒介) 欠如
14 「実感信仰」と「理論信仰」③ 理論信仰 – 担い手・知的エリート(帝国大卒の官僚・学 者) 理論を絶対視 理論をその背景にある現実との相互作用 でみない 庶民蔑視
15 「実感信仰」と「理論信仰」④ 庶民 ・・・ 日本の一般的文化風土 理論の首尾一貫性、体系性への嫌悪 マルクス主義やキリスト教を排除 日本の固有信仰にルーツ(神仏習合) 寛容な人々(何でも受け入れる文化)( 12 月末から1月初めの皆さんの行動様式 ) → 逆に、「不寛容な人々」を排除
16 「実感信仰」と「理論信仰」⑤ 知識人 – 日本の風土への反撥 首尾一貫した理論に惹かれる マルクス主義やキリスト者 理論や制度を絶対的なもの(信仰の帰依 の対象)として受け取り、庶民に押しつ けようとした
17 「実感信仰」と「理論信仰」⑥ 庶民、知識人どちらも 現実と理論との相互作用で捉えない ↑ 西欧の学問、制度が生煮え状態で入る 本来の学問 – 理論と現実の相互参照・絶えざる修正
18 「実感信仰」と「理論信仰」⑦ 理念型である理由・・・グレーの部分の 存在(丸山は理念型だとおそらく明言せ ずだが) 現実の知識人(の多く or の一部)は現実と の相互作用を無視はしないどころか、そ れを何とか定着させようと。 現実の庶民(の多く or の一部)は理論や制 度の有効性を全否定するばかりではない 。
19 「タコツボ型」と「ササラ型」① 丸山の問題意識 日本の学問・・・輸入学問 背景無視した輸入、根っこの部分みない → 細分化された成果の部分のみ輸入 欧米の学問・・・根っこの部分、共通性 がある 枝分かれして今の学問に ギリシア・ローマ以来の伝統
20 「タコツボ型」と「ササラ型」② タコツボ型 – 専門が交流のない学問ないし閉ざ されており、相互のは文化 – 日本 ササラ型 – 専門に分かれているが、根の部分 、底の部分は他の領域に繋がって いる学問ないしは文化 – 欧米
21 「タコツボ型」と「ササラ型」 ③ ここでの丸山の問題(丸山批判) こんなにきれいに日本-タコツボ、欧米 -ササラと分かれるのか? 近代(化)主義者、「向こう良い・日本 ダメ」 理念型の提示なのか、理念型に基づく現 実の描出なのか? – ウェーバー自身の問題でもある
22 「であること」と「すること」① 丸山の関心 属性価値から達成価値へ 政治の世界と学芸の世界の価値逆転 政治・・・本来 達成価値 重視されるべき 現実 属性価値 重視 学芸・・・本来 属性価値 重視されるべき 「私は誰であるか」の存在証明 一つの作品を目指す 現実 達成価値 重視
23 「であること」と「すること」② 「であること」 – 地盤・看板・経歴(家柄・血筋・性別 )で選ばれる政治家(丸山は学歴はこ こに入れていないというか微妙-丸山 が福沢崇拝者であるせいか) 「すること」 – 何をしたいか?何をしたかで選ばれる 政治家
24 「であること」と「すること」③ 日本「であること」で選 ばれる 欧米「すること」で選ば れる – 成果と今流にいえば「マニ フェスト」
25 「であること」と「すること」④ 学芸の領域 本来、真実は一つ – 答えが一つという意味ではない。 – 目指すべき最終目標は一つ 本質的な問いは「量」ではなく「質」 しかし現実、 – 芸術 ・・・ 作品一つ ・・・ 食べられない – 学問 ・・・ 業績一つ ・・・ 評価されない
26 丸山真男への批判・評価① 批判はあるが、基本的に大きな存在。 But ・ ・・ 日本と欧米を対比し、日本に欠如するも のを指摘するのみ 極端なまでの近代主義者 ヨーロッパ近代の歪みが指摘される現代 において、近代主義は限界がある –cf .「未完の近代」(ハーバーマス)・・・ それでも近代主義は貫くべきという主張
27 丸山真男への批判・評価② 理念型は本来、現実を見るモデルに過ぎ ないのに、理念型の提示と現実の証明と を混同している(ウェーバー自身にも向 けられうる批判) 中間的事例の調査(少なくとも報告)が ない。極端な事例のみ。 知識人としての自分を相対化しえていな い – 左派なのにエリート主義