ブラックホール時空での摂動 冨松 彰 御岳セミナー 2011.9.1
内容 1. Anti-de Sitter (AdS) BH と第1法則 2. BH− 円盤系における電磁波の伝播
BH 研究の発展における3つの側面 ○ 数学的: 種々の重力理論における種々のタイプの解 → BH コレクション、 BH zoo ○ 物理的:量子重力へのステップ → 熱力学、流体力学、物性論との類似 特に、モデルとして AdS 時空 ここでは、 ” 変形と第1法則 ” ○ 天体物理的: BH− 円盤系 天体現象における BH 重力の検証 ここでは、 ” 電磁波強度分布の振動パター ン ”
1. AdS BH と第1法則 “dynamical BH entropy” の提案 Wald (1993,1994) n 次元時空でのラグランジアン( n-form ) その変分は 場に対する運動方程式 → E = 0
時空上のベクトル場 ξ に対応して、 (n-1) 形式の Noether current を導入 特に、 E = 0 の場合、 J = dQ が成立 → (n-2) 形式の Noether charge Q また、リー微分 と仮定すると、 変分 に対して
BH 時空における超曲面上で δJ を積分 ただし、 ξ を時間 t 方向の Killing ベクトル場 境界からの寄与 ・ bifurcate Killing horizon ξ=0 ・ asymptotic region ( r→∞ ) ⇒ BH 第1法則 ・ S : Wald entropy ( でも成立 ) ・ H : ξ 方向の変位を生成するハミルトニアンの表面項
ここでは、 ・ 4次元真空重力場 ・ Einstein-Hilbert action と負の宇宙定数 Lagranjiann 4-form Noether charge 2-form これに対して、背景場の無限小変換を考察 δg :線形 Einstein 方程式を満足 ξ :背景重力場 g の時間 t 方向の Killing ベクトル
ハミルトニアンの表面項の変分 → 系の全重力質量エネルギ − の変化を定義 ただし、 静的 AdS BH 時空の摂動 δg を用いて、 Wald 形式の適用性を考察 → Abbot-Deser 質量の変化に対応
○ 静的な変形摂動 背景場: SAdS BH 対角成分の軸対称摂動 に対する、質量エネルギ − 密度の変化 遠方で となるような変形モードに対して発散 → 第1法則の修正が必 要?
○ ダイナミカルな変形摂動 背景場: planar AdS BH 対角成分の軸対称摂動 遠方で という変形モードに対して、質量密度の変化=0、つ まり → 重力波摂動に対する Abbot-Deser 質量密度の保存
ダイナミカルな変形に対しては、 1次摂動のレベルで、 ・エントロピー密度の変化=0 ・質量エネルギ − 密度の変化=0 → Wald 形式による第1法則は成 立 ☆エントロピー密度の増大(散逸効果)を 見る には、2次摂動でのチェックが重要 ☆静的状態が回復すると、変形は消失?
2. BH− 円盤系における 電磁波の伝播 大質量 BH による星の捕獲など → 周辺の円盤への摂動 → コヒーレントな電磁波の放射 → BH による吸収と散乱、 輻射(光子)とは異なる強度パターン 波の特徴の1つとしては super-radiant scattering BH 円盤
円盤放射の電磁波モデルとして、 Kerr-Schild 場の放射波とその散乱波 ただし、 thin disk 近似(赤道面上での面電流) ・遠方へ伝播する成分 ・ BH によって吸収・散乱される成分 super-radiance の効果を評価 Kobayasi- A.T.(2010) ただし、エネルギ − の流れとしては、 遠方への放射量> BH から円盤への供給量 逆の状況では、 天体における BH bomb 現象 ( 爆発的 spin 減少) が期待できる。
電磁波放射の直接的な観測量としては、 遠方でのエネルギ − フラックスの分布 F ( θ ) → 天頂角 θ への依存性 Kobayashi-A.T. ( 準 備中 ) ここでは、 Schwarzschild BH (質量 M )時空 において F ( θ ) を評価 [手法] outgoing flux を与える電磁波の N-P 量の スペクトル分解( BH 円盤系は軸対称) 基本振動数パラメーター σ
遠方( r→∞ )では、 また、時間平均したエネルギ − フラックス 放射波( K-S 場)と散乱波の混合 に対応して、遠方での干渉効果を明示 ○ 第1項は円盤放射の主要項( K-S 場のみ)
○ 第2項は放射波と散乱波による干渉項 → BH 重力の特徴を示すパターン生成 ・ 係数 D lm は K-S 場で決定 ・ spin(-1) spherical harmonics ・ 係数 T lm は遠方からの入射波の透過係数に一致 高振動数近似( ωM ≫1)では T lm = 1 for l l cm ただし、 l の臨界値
重要な点は 干渉項では、 l > l cm ≫1のモードのみ寄与 よって、 l ≫ |m| の場合の漸近形 を用いると、 l > l cm ≫1のモード和によって 遠方でのエネルギ − フラックス の角度分布( θ 依存性)に振動パターン → 周期
実際、遠方でのエネルギ − フラックスを と書くと、主要項 f m (θ) に対する 補正項(干渉効果) δ m (θ) に振動的な振舞 → BH 質量 M の観測 ☆小さな振動強度 ☆ θ 小(極方向) で増大 ☆ θ 固定では、 ω による依存 性 ☆ Kerr BH では、 スピンの影 響?