ブラックホール時空での摂動 冨松 彰 御岳セミナー 2011.9.1. 内容 1. Anti-de Sitter (AdS) BH と第1法則 2. BH− 円盤系における電磁波の伝播.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
エリスワームホール時空における ダスト流解とそのシャドウ Yamaguchi University Takayuki Ohgami, Nobuyuki Sakai ブラックホール地平面勉強会 10 月 4,5 日 湯田温泉.
Advertisements

相対論的場の理論における 散逸モードの微視的同定 斎藤陽平( KEK ) 共同研究者:藤井宏次、板倉数記、森松治.
宇宙ジェット形成シミュレー ションの 可視化 宇宙物理学研究室 木村佳史 03S2015Z. 発表の流れ 1. 本研究の概要・目的・動機 2. モデルの仮定・設定と基礎方程式 3. シンクロトロン放射 1. 放射係数 2. 吸収係数 4. 輻射輸送方程式 5. 結果 6. まとめと今後の発展.
ブラックホール宇宙の構成方法と その構造 阿部君, 中尾さん, 孝森君 ( 大阪市立大学 ) 柳 哲文( YITP)
ニュートン重力理論における ブラックホール形成のシミュレーション
電磁気学C Electromagnetics C 7/27講義分 点電荷による電磁波の放射 山田 博仁.
自己重力多体系の 1次元シミュレーション 物理学科4年 宇宙物理学研究室  丸山典宏.
・力のモーメント ・角運動量 ・力のモーメントと角運動量の関係
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 6/5講義分 電磁波の反射と透過 山田 博仁.
(Fri) Astrophysics Laboratory MATSUO Kei
第5回 黒体放射とその応用 東京大学教養学部前期課程 2013年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
スペクトル法による数値計算の原理 -一次元線形・非線形移流問題の場合-
第5回 黒体放射とその応用 東京大学教養学部前期課程 2012年冬学期 宇宙科学II 松原英雄(JAXA宇宙研)
電磁気学C Electromagnetics C 7/1講義分 光導波路と光共振器 山田 博仁.
大阪工業大学 情報科学部 情報システム学科 宇宙物理研究室 B 木村悠哉
木村 匡志 極限ブラックホール近傍の 高速粒子衝突における “バックリアクション“の影響について (YITP 元OCU)
5.アンテナの基礎 線状アンテナからの電波の放射 アンテナの諸定数
大阪市立大学数学研究所 孝森洋介 共同研究者: 大川、諏訪(京大基研)、 高本(京大理)
電荷を持つ5次元ブラックホールにおける地平線の変形と特異点
カオス力学系と重力波 木内 建太 & 前田 恵一 (早稲田大学)  PRD、 (2004)
周期境界条件下に配置されたブラックホールの変形
輻射優勢円盤のMHD数値実験 千葉大学宇宙物理学研究室 M2 松尾 圭 Thu.
電磁気学C Electromagnetics C 7/13講義分 電磁波の電気双極子放射 山田 博仁.
流体のラグランジアンカオスとカオス混合 1.ラグランジアンカオス 定常流や時間周期流のような層流の下での流体の微小部分のカオス的運動
量子ビーム基礎 石川顕一 6月 7日 レーザーとは・レーザーの原理 6月21日 レーザー光と物質の相互作用
2.伝送線路の基礎 2.1 分布定数線路 2.1.1 伝送線路と分布定数線路 集中定数回路:fが低い場合に適用
ガンマ線バーストジェット内部における輻射輸送計算
1次元電子系の有効フェルミオン模型と GWG法の発展
黒体輻射とプランクの輻射式 1. プランクの輻射式  2. エネルギー量子 プランクの定数(作用量子)h 3. 光量子 4. 固体の比熱.
統計的震源モデルと 半無限平行成層グリーン関数 による高振動数強震動の計算法
ブラックホール周辺の 磁場構造について 大阪市立大学 孝森 洋介 共同研究者 石原秀樹,木村匡志,中尾憲一(阪市大),柳哲文(京大基研)
電磁気学C Electromagnetics C 5/28講義分 電磁波の反射と透過 山田 博仁.
フォースフリーブラックホール 磁気圏 ~BH時空におけるGS方程式の解析~
YT2003 論文紹介 荻原弘尭.
重力・重力波物理学 安東 正樹 (京都大学 理学系研究科) GCOE特別講義 (2011年11月15-17日, 京都大学) イラスト
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 6/30講義分 電磁波の反射と透過 山田 博仁.
電磁気学C Electromagnetics C 7/17講義分 点電荷による電磁波の放射 山田 博仁.
量子系における 確率推論の平均場理論 田中和之 東北大学大学院情報科学研究科
高エネルギー天体グループ 菊田・菅原・泊・畑・吉岡
量子力学の復習(水素原子の波動関数) 光の吸収と放出(ラビ振動)
星形成時間の観測的測定 東大天文センター M2 江草芙実 第4回 銀河shop 2004/10/19.
東邦大学理学部物理学科 宇宙・素粒子教室 上村 洸太
重力波の重力レンズでの 波動効果 高橋 龍一 (国立天文台PD).
(昨年度のオープンコースウェア) 10/17 組み合わせと確率 10/24 確率変数と確率分布 10/31 代表的な確率分布
広大院先端研A,広大総合科B,北大工C 小杉範仁A,松尾繁政B,A,金野幸吉C,畠中憲之B,A
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 8/4講義分 電気双極子による電磁波の放射 山田 博仁.
2.4 Continuum transitions Inelastic processes
pp-wave上の共変的超弦の場 における低エネルギー作用
瀬戸直樹(京大理) DECIGO WS 名古屋大学
平面波 ・・・ 平面状に一様な電磁界が一群となって伝搬する波
チャネル結合AMDによる sd殻Ξハイパー核の研究
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 8/11講義分 点電荷による電磁波の放射 山田 博仁.
大学院理工学研究科 2004年度 物性物理学特論第5回 -磁気光学効果の電子論(1):古典電子論-
バリオン音響振動で探る ダークエネルギー ~非線形成長と赤方偏移歪みの影響~
偏光X線の発生過程と その検出法 2004年7月28日 コロキウム 小野健一.
統計的震源モデルと 半無限平行成層グリーン関数 による高振動数強震動の計算法
滝脇知也(東大理)、固武慶(国立天文台)、佐藤勝彦(東大理、RESCEU)
曲がった時空上の場の理論の熱的な性質と二次元CFT
大阪市立大学 宇宙物理(重力)研究室 D2 孝森 洋介
インフレーション宇宙における 大域的磁場の生成
1:Weak lensing 2:shear 3:高次展開 4:利点 5:問題点
定常剛体回転する宇宙ひもからの 重力波放射
Massive Gravityの基礎と宇宙論
卒論中間発表 2001/12/21 赤道の波動力学の基礎 北海道大学理学部 地球科学科 4年 山田 由貴子.
BH science for Astro-E2/HXD and NeXT mission
電磁気学C Electromagnetics C 7/10講義分 電気双極子による電磁波の放射 山田 博仁.
Massive Gravityの基礎と宇宙論
電磁気学Ⅱ Electromagnetics Ⅱ 6/7講義分 電磁波の反射と透過 山田 博仁.
60Co線源を用いたγ線分光 ―角相関と偏光の測定―
固体→液体 液体→固体 ヒント P131  クラペイロンの式 左辺の微分式を有限値で近似すると?
Presentation transcript:

ブラックホール時空での摂動 冨松 彰 御岳セミナー 2011.9.1

内容 1. Anti-de Sitter (AdS) BH と第1法則 2. BH− 円盤系における電磁波の伝播

BH 研究の発展における3つの側面 ○ 数学的: 種々の重力理論における種々のタイプの解 → BH コレクション、 BH zoo ○ 物理的:量子重力へのステップ → 熱力学、流体力学、物性論との類似 特に、モデルとして AdS 時空 ここでは、 ” 変形と第1法則 ” ○ 天体物理的: BH− 円盤系 天体現象における BH 重力の検証 ここでは、 ” 電磁波強度分布の振動パター ン ”

1. AdS BH と第1法則 “dynamical BH entropy” の提案 Wald (1993,1994) n 次元時空でのラグランジアン( n-form ) その変分は 場に対する運動方程式 → E = 0

時空上のベクトル場 ξ に対応して、 (n-1) 形式の Noether current を導入 特に、 E = 0 の場合、 J = dQ が成立 → (n-2) 形式の Noether charge Q また、リー微分 と仮定すると、 変分 に対して

BH 時空における超曲面上で δJ を積分 ただし、 ξ を時間 t 方向の Killing ベクトル場 境界からの寄与 ・ bifurcate Killing horizon ξ=0 ・ asymptotic region ( r→∞ ) ⇒ BH 第1法則 ・ S : Wald entropy ( でも成立 ) ・ H : ξ 方向の変位を生成するハミルトニアンの表面項

ここでは、 ・ 4次元真空重力場 ・ Einstein-Hilbert action と負の宇宙定数 Lagranjiann 4-form Noether charge 2-form これに対して、背景場の無限小変換を考察 δg :線形 Einstein 方程式を満足 ξ :背景重力場 g の時間 t 方向の Killing ベクトル

ハミルトニアンの表面項の変分 → 系の全重力質量エネルギ − の変化を定義 ただし、 静的 AdS BH 時空の摂動 δg を用いて、 Wald 形式の適用性を考察 → Abbot-Deser 質量の変化に対応

○ 静的な変形摂動 背景場: SAdS BH 対角成分の軸対称摂動 に対する、質量エネルギ − 密度の変化 遠方で となるような変形モードに対して発散 → 第1法則の修正が必 要?

○ ダイナミカルな変形摂動 背景場: planar AdS BH 対角成分の軸対称摂動 遠方で という変形モードに対して、質量密度の変化=0、つ まり → 重力波摂動に対する Abbot-Deser 質量密度の保存

ダイナミカルな変形に対しては、 1次摂動のレベルで、 ・エントロピー密度の変化=0 ・質量エネルギ − 密度の変化=0 → Wald 形式による第1法則は成 立 ☆エントロピー密度の増大(散逸効果)を 見る には、2次摂動でのチェックが重要 ☆静的状態が回復すると、変形は消失?

2. BH− 円盤系における 電磁波の伝播 大質量 BH による星の捕獲など → 周辺の円盤への摂動 → コヒーレントな電磁波の放射 → BH による吸収と散乱、 輻射(光子)とは異なる強度パターン 波の特徴の1つとしては super-radiant scattering BH 円盤

円盤放射の電磁波モデルとして、 Kerr-Schild 場の放射波とその散乱波 ただし、 thin disk 近似(赤道面上での面電流) ・遠方へ伝播する成分 ・ BH によって吸収・散乱される成分 super-radiance の効果を評価 Kobayasi- A.T.(2010) ただし、エネルギ − の流れとしては、 遠方への放射量> BH から円盤への供給量 逆の状況では、 天体における BH bomb 現象 ( 爆発的 spin 減少) が期待できる。

電磁波放射の直接的な観測量としては、 遠方でのエネルギ − フラックスの分布 F ( θ ) → 天頂角 θ への依存性 Kobayashi-A.T. ( 準 備中 ) ここでは、 Schwarzschild BH (質量 M )時空 において F ( θ ) を評価 [手法] outgoing flux を与える電磁波の N-P 量の スペクトル分解( BH 円盤系は軸対称) 基本振動数パラメーター σ

遠方( r→∞ )では、 また、時間平均したエネルギ − フラックス 放射波( K-S 場)と散乱波の混合 に対応して、遠方での干渉効果を明示 ○ 第1項は円盤放射の主要項( K-S 場のみ)

○ 第2項は放射波と散乱波による干渉項 → BH 重力の特徴を示すパターン生成 ・ 係数 D lm は K-S 場で決定 ・ spin(-1) spherical harmonics ・ 係数 T lm は遠方からの入射波の透過係数に一致 高振動数近似( ωM ≫1)では T lm = 1 for l l cm ただし、 l の臨界値

重要な点は 干渉項では、 l > l cm ≫1のモードのみ寄与 よって、 l ≫ |m| の場合の漸近形 を用いると、 l > l cm ≫1のモード和によって 遠方でのエネルギ − フラックス の角度分布( θ 依存性)に振動パターン → 周期

実際、遠方でのエネルギ − フラックスを と書くと、主要項 f m (θ) に対する 補正項(干渉効果) δ m (θ) に振動的な振舞 → BH 質量 M の観測 ☆小さな振動強度 ☆ θ 小(極方向) で増大 ☆ θ 固定では、 ω による依存 性 ☆ Kerr BH では、 スピンの影 響?