企画セッション:法・裁判と統計 合理的討論と統計学 石黒真木夫(統計数理研 究所) 法廷における統計 中村多美子(弁護士法人リブラ法律事務 所) 不確実性下の意思決定 椿広計 (統計数理研究 所) 裁判における科学的な証拠 / 統計学の知見の評価と利用 弥永真生 (筑 波大学大学院) 法と統計学 宮本道子 (秋 田県立大学) 事実の認定を支える証拠と公的な判断 柳本武美 (中央 大)
座長からアナウンス (1) 荷物からは目を離さないように (2) 展示コーナー(受付のところとその 2階)には できるだけ足を運ぶように。 (3) 自分のPCを使う報告者は、 前もってPCを立ち上げておくよう に。
合理的討論と統計学 企画セッション 統計関連学会連合大会 石黒真木夫@統計数理研究所名誉教授
アウトライン 1. 調査 2. 「ことば、ことば、ことば。」 3. 法・裁判におけるベイズ公式の利用 4. 「統計学が最強の学問である」 5. 経緯
調査(1) 専門分野を「法律関係」と「統計関係」に分けたとして … 自分は「法律関係」だと思う方、 手を上げて下さい。 満員で100名の部屋がほぼ埋まったなかで手を上げたのは 1人
調査(2) 1. 次のスライドで示すことばを以前からご存知だったら 手をあげて下さい。 2. ことばの意味が分かるかどうかの調査ではありません。 いままで知らなかったことばだったら手をあげないで ください。 3. あげた手はつぎの質問まで下げないでいてください。 4. お分かりいただけたでしょうか?
「帰責」 ということばを以前からご存知だっ たら手をあげて下さい。 1. 意味が分かるかどうかではありません。 2. 次の質問まで、あげた手は下ろさないでいてくだ さい。 3. 調査(1)で自分の専門として法律 分野をお選びになった方は手をおろ して下さい。 4. ありがとうございました。 手を上げたのは6人
「ことば、ことば、ことば。」 (注)小田島雄志訳「ハムレット」2幕2場 (注 ) [ ことば1 ] 訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学 的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結 果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり、その判 定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであるこ とを必要とし、かつ、それで足りるものである(最裁昭和 50 ・⒑・ 24 民集 29 巻 9 号 1417 ページ)。 [ ことば2 ] 裁判所の事実認定は、法律要件に直接あてはまる事実が間接事 実や証拠に基づいて認められるかどうかという観点から行われ、証拠調べの結果 および弁論の全趣旨に基づいて裁判官が自由に形成する心証による(民事訴訟法 247 条, 刑事訴訟法 318 条)。 [ ことば3 ] 証拠の証明力は裁判官の自由な判断に委ねられているのである が、この自由心証は裁判官の恣意を意味するものではなく、論理の法則、経験則 に基く合理的なものでなければならない ( 東京高判昭和 37 ・ 1 ・ 23 下刑集 4 巻 1=2 号 16 頁 ) . [ ことば4 ] 統計学が最強の学問である。
「ことば、ことば、ことば。」 法分野のことば v. 統計分野のことば 帰責 v. ? 事実認定 v. ? 因果関係 v. 因果関係 ? 「 v. 」 v.? 「 vs. 」 証拠能力 v. ? 心証 v. 主観確率 ? 証明力 v. 事後確率 ? Versus の略語の記法の「調査」を追加。結果は「 2 v. 絶対多数」
「心証=主観確率=蓋然性」を仮定すると … [ ことば1 ´] 訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学 的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結 果発生を招来した関係を是認しうる高度の主観確率を証明することであり、その 判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものである ことを必要とし、かつ、それで足りるものである。 [ ことば2 ´] 裁判所の事実認定は、法律要件に直接あてはまる事実が間接事実 や証拠に基づいて認められるかどうかという観点から行われ、証拠調べの結果お よび弁論の全趣旨に基づいて裁判官が自由に形成する主観確率による。 [ ことば3 ´] 証拠の証明力は裁判官の自由な判断に委ねられているのであるが、 この自由主観確率は裁判官の恣意を意味するものではなく、論理の法則、経験則 に基く合理的なものでなければならない. [ ことば4 ] 統計学が最強の学問である。
法・裁判におけるベイズ公式の利用 (1) 討論が必要 その判定は、通常人が疑いを差し挟まない程度 に真実性の確信を持ちうるものであることを必 要とし 討論が必要 科学的知見
訴訟上の … の立証は、 … 、経験則に照らして全証拠を総合検討し … 討論が必要 法・裁判におけるベイズ公式の利用 (2) 科学的知見が 必ずしも用意 されていない
「統計学が最強の学問である」 (注)西内啓氏の著作のタイトル (注 ) 理想と 現実 「統計学」は絶対的に 強い学問ではなく、相 対的に強いに過ぎない が、これを使うしかな い。
経緯 2009 年 11 月 日 : 統計 数理研究所公開講座「法 廷のための統計リテラ シー:合理的討論の基盤 として」 2014 年 8 月 31 日:「法廷 のための統計リテラ シー:合理的討論の基盤 として」 (ISM シリーズ:進化す る統計数理 3, 近代科学 社 ) 2009 年 10 月 : 科学技術振興機構 ( JST )社会技術研究開発セン ター( RISTEX )において、委託 研究「不確実な科学的状況での法 的意思決定」プロジェクトスター ト 2010 年 12 月 19 日:法と科学の哲学 カフェ「合理性の衝突」 2012 年 8 月:法と科学のハンド ブック 2014 年 6 月 26 日:法と科学の交錯 ( 岩波講座 現代法の動態 第 6 巻 ) 2014 年 9 月 15 日;統計関連学会連合大会企画セッション「法・裁判と統 計」 2013/06/11 Subject: Re: JIR 受け入れ 統計数理 研究所 From: Tamiko Nakamura To: Hiroe Tsubaki 「法」の側で「統計」の側で
ご清聴ありがとうございました。 裁判所 統計数理研究所 背後に立川市役所 司法と行政とアカデミズムの風景