● カメムシ目(半翅目) Hemiptera 針のような長い口吻を持つ.前翅が全体に膜質の同翅亜目 ( Homoptera )と,前翅の基部が革質化した異翅亜目 (Heteroptera) に大別される.同翅亜目:体長は 2 ~ 100 mm. 植食性で,多くの重要害虫を含む.さらに,頸吻群(セミ, ツノ ゼミ,アワフキ,ヨコバイ,ウンカ,ハゴロモ),鞘吻群 (オーストラリア,チリなどに産し,日本にはいない),腹吻 群(キジラミ,コナジラミ,アブラムシ,カイガラムシ)に分 けられる.コナジラミとカイガラムシでは蛹期がある(どちら もオスのみ).日本に約 2,000 種,世界に約 50,000 種が分布す る.異翅亜目:体長は 0.5 ~ 110 mm. 強い臭いを出すものが多 い.植食性または捕食性で,植物の液汁を吸う植食性のものに は多くの農業害虫が含まれる(クサギカメムシ,ホソヘリカメ ムシなど).動物の体液を吸う捕食性のものには,天敵として 評価されるものもいる(例,アザミウマ類の天敵であるハナカ メムシ類).捕食性の一部は水生(タガメ,タイコウチ,ミズ カマキリ)である.日本から約 920 種,世界から約 39,000 種が 知られる.
カメムシ目(半翅目) Hemiptera 異翅亜目 Heteroptera 同翅亜目 Homoptera 頸吻(ケイフン)群 腹吻(フクフン)群 鞘吻(ショウフン)群 口吻の基部が鞘に収まれている。 日本にはいない。南米,オー ストラリア,ニュージランドに分布。
頸吻群 腹吻群 コナジラミ 触角短い 口吻は頭部 の基部から 生じる 触角長い 口吻は前脚 基節間より 生じる
頸吻群
小循板 頭頂 複眼 前胸背板 肩板
前頭 単眼 頬
セジロウンカ
黒点米 別名 くさ び米。イネシンガレ センチュウの加害に よりクサビのような 割れ目を生じ,その 部分が黒色~褐色に なります
p.62
ヒメトビウンカ ♂
ヒメトビウンカ ♀
縞葉枯れ病 ヒメトビウンカ が 縞葉がれ病ウィ ルスを罹病株か ら健全株に運ぶ ウィルスは経卵 伝染により保毒 メスから子に, 通常 90 %以上の 率で子に伝わる。
ツマグロヨコバイ ♂ イネ萎縮病,黄萎病のベクター 経卵伝染はしない
← ツマグロヨコバイ ♀ ♂
ツノゼミ Butragulus flavipes
奇妙な形の角は,擬態のため?
マツアワフキの泡巣
マツアワフキの幼虫 (泡巣から人為的に出す): アワは,外敵に対する防御と温度と湿度の制御に役立つ。幼虫 は,吸汁した樹液の余分なものを腹部の腺で作られた分泌物と 混ぜて,肛門からにじみ出す。気門の穴から空気を送りこんで アワを作る。
オオアワフキ
腹吻群 コナジラミ 角状管を持つものが多い
ミカントゲコナジラミ ミカントゲコナジラミ (柑橘の害虫) シルベストリコバチの導入により防除成功 以前ミカントゲコナジラミと酷似していて混合され ていたチャトゲコナジラミ(茶の害虫;近年多発) に対してのシルベストリコバチの防除効果が期待さ れている シルベストリコバチ
クワキジラミ(若虫)による被害
クワキジラミ
ワタアブラムシ 寄主植物:キュウリ,ジャガ イモ,ナス,ワタ,スイカ, キクなど多種。 モモアカアブラムシ 寄主植物:キャベツ, ダイコン,ハクサイ, キュウリ,ホウレン ソウ,ジャガイモ, モモ,ウメなど多種
ムギクビレアブラムシ 単為生殖 角状管
トウモロコシ ムギ イネ サクラ,モモ,リンゴ アブラムシではオスは XO, メスは XX. 性染色体でのみ減数分裂 がおこりオスが作られる と考えれている。 オスの作る精子のうち性 染色体のないもの( O ) は退化する。その結果, 受精した卵は全てメスと なる。 ♂ 卵胎生,単為生殖
ルビーロウカイガラムシ ー> ルビーアカヤドリコバチの導入 により防除成功 ← イセリアカイガラムシ (右) べダリアテントウ(左) の導入により防除成功
ヤノネカイガラムシ( ♀ ) ヤノネキイロコバチ ヤノネツヤコバチ の天敵導入により防除成功 雄蛹 →
翅は 1 対 オスは口吻がなく, 寿命は長くて数日。 摂食しない 雄雌とも 3 齢期がない種も多い。
前胸背板
刺針
カスミカメムシ +グンバ イムシ +トコジラミ +ハナカメムシ 一部ウンカ 類の卵から 吸汁 捕食性
ホソヘリカメムシ 大豆, 稲の害虫 斑点米をつくる
斑点米
ホソハリカメムシ 斑点米の原因
アカスジカスミカメ 斑点米をつくる
ニシキキンカメムシ
アカシマサシガメ
ヨコヅナサシガメ
ナベブタムシ
● アザミウマ目(総翅目) Thysanoptera 体長は 1 ~ 10 mm. 翅は翅脈が退化し,細長い毛がその周辺を 取り巻いている.口器は吸収型で左右非対称.不完全変態群に 属するが運動性のある前蛹期と蛹期を経る( 3 蛹期をもつ種もい る).植食性のものが多く,重要な農業害虫も含むが,肉食性 や菌食性のものもいる.性は半数倍数性で決まる。日本から約 200 種,世界から約 5,000 種が知られている.ミナミキイロアザ ミウマ,ミカンキイロアザミウマは, 害虫と有名である。
種によっては蛹期は第 2 期まで (アザミウマ亜目では 蛹期は第 2 期まで) 蛹期は摂食しない 半数倍数性 多くは植食性であるが 肉食, 菌食のものもいる