1.異種移植の推進になぜ遺伝子改変が必要か. 2.マウスでの遺伝子改変 (gene targeting) 法. 3.ミニブタでの遺伝子改変 (gene targeting) 法. -マウスと異種移植用動物での gene targeting 法の違い- 4.異種移植用遺伝子改変ミニブタ開発における現在の問題点と解決の方.

Slides:



Advertisements
Similar presentations

Advertisements

アメフラシ属 Aplysia Aplysia californica アメフラシ(雨降らし、雨虎、雨降)は、腹足綱後鰓類の無楯類 (Anapsidea, Aplysiomorpha) に属する軟体動物の総称。 より.
第 2 章 : DNA 研究法 2.2DNA クローニング クローニングベクター 大腸菌以外のベクター ゲノム分子生物学 年 5 月 7 日 担当 : 中東.
細胞の構造について復習しよう 植物細胞と動物細胞を見てみよう どんなちがいがあるかな? すべての生き物の身体は
Gene Constellator SystemTM
IPS細胞の可能性 地域文化論講座二回 高瀬浩規.
細胞性粘菌は遺伝子機能解析リソースの 優れもの!
個体と多様性の 生物学 第7回 体を守る免疫機構Ⅱ 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
RNA i (RNA interference).
DNA鑑定によるコメの トレーサビリティーの確保 東京工科大学 バイオニクス学部 多田雄一.
特論B 細胞の生物学 第2回 転写 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
メンデルの法則:本日のメニュー メンデルの法則 優劣の法則 分離の法則 独立の法則 人に見られるメンデル遺伝 メンデルの法則が合わない例
絶滅危惧植物シラタマホシクサの 保全に関する研究 岩井貴彦 システムマネジメント工学科 UCコース
バンク事業 動物胚バンク ヒト組織バンク 品質管理 研究資源 保存 分 譲 情報提供 (データシート等) 研究者へ提供 (%) p.2
動物への遺伝子導入 hGH 遺伝子 右:ひと成長ホルモン遺伝子を 導入したラット 左:対照ラット
遺伝子導入とクローン技術.
多様性の生物学 第9回 多様性を促す内的要因 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
Targeting of Receptor for Advanced Glycation End Products Suppresses Cyst Growth in Polycystic Kidney Disease The Journal of Biological Chemistry, 2014,
リスクの把握と自己管理(ロードマップ) 安価なゲノム解析技術 (固定リスクの把握) 塩基配列情報
氏名: 塚田幸絵 所属:熱帯医学研究所 国際保健学分野 担当教員:江口克之、山本太郎
分子医学の急進展:発生分化を中心として 受精、発生がわかってくると すぐ生殖医療が始まった
寿命の問題を考える 寿命はなぜ決まっているのか 老化、加齢の問題とは何か.
岡山大学重点研究プロジェクト(学内COE) 「生殖生命科学研究教育拠点の形成」 第1回公開シンポジウム 「生命の継承:その機構と応用」
内胚葉(間葉)から血液と血管系が作られる
分子医学の急進展:遺伝子を中心として.
生命科学基礎C 第9回 免疫Ⅱ 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
再生医療分野のロードマップ (2) 再生医療の研究と実用化 機器・技術等開発 2005年 2010年 2025年 2020年 2015年 骨
動物テクノロジー概論 今川 和彦 K. Imakawa, Ph.D. 東京大学大学院農学生命科学研究科 獣医・動物育種繁殖学研究室
Lecture No. 3 動物テクノロジー概論  東京大学大学院農学生命科学研究科 高等動物教育研究センター・附属牧場 今川 和彦
論文はざっと見る。最初から細かく読まない!
岡山大学重点研究プロジェクト(学内COE) 「生殖生命科学研究教育拠点の形成」 第1回公開シンポジウム 「生命の継承:その機構と応用」
個体と多様性の 生物学 第6回 体を守る免疫機構Ⅰ 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
生命科学基礎C 第10回 個体の発生と分化Ⅰ 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
血液学入門セミナー 第15回:悪性リンパ腫ってなぁに? 日時:2009年2月25日(水) 午後7時から
哺乳動物卵子における染色体分配に関わる  細胞骨格再編成の制御機構の解明 弘前大学特別研究員 椛嶋(かばしま)克哉 農学生命科学部畜産学研究室.
農学部 資源生物科学科 加藤直樹 北村尚也 菰田浩哉
PTLV-1の起源と進化 ~ニホンザルに感染してるSTLV-1の系統学的位置の解明 ~
メンデルの分離の法則 雑種第1世代どうしを交配すると草丈の高いものが787個体、草丈の低いものが277個体であった。
樹状細胞療法 長崎大学輸血部 長井一浩.
PDGF-Bのretention motifを欠損させると、 pericyteが血管内皮へ誘引されにくくなる
個体と多様性の 生物学 第7回 体を守る免疫機構Ⅱ 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
個体と多様性の 生物学 第8回 生きること、死ぬこと 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
遺伝子の機能は、どのようにしてわかるのか
コレステロールの合成 と 脂肪酸の合成 これからコレステロールの合成と脂肪酸の合成についての説明をはじめます。★
第19回 HiHA Seminar Hiroshima Research Center for Healthy Aging (HiHA)
細胞周期とその調節.
Traits 形質.
DNAメチル化とクロマチン構造の変化による転写制御のモデル
植物系統分類学・第15回 比較ゲノミクスの基礎と実践
個体と多様性の 生物学 第3回 多細胞生物への道   ー個体の数を増やす 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
シミュレーション学講義 第**回 スケジューリング問題とJSSP.
骨粗鬆症治療薬のスクリーニング系 ライフ 主たる提供特許 技術概要 応用分野
ゲノム科学概論 ~ゲノム科学における統計学の役割~ (遺伝統計学)
生命科学基礎C 第8回 免疫Ⅰ 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
研究内容紹介 1. 海洋産物由来の漢方薬の糖尿病への応用
福井大学においてP2遺伝子組換え生物等の使用等に関係する実験を行う場合の手引き
Central Dogma Epigenetics
遺伝子診断と遺伝子治療 札幌医科大学医学部 6年生 総合講義 2001年4月16日 2019/4/10.
生体親和性発光ナノ粒子の医薬送達担体への応用
卒業研究進捗報告 2009年  月   日 研究題目: 学生番号:         氏名:          
何が遺伝子か ● ウイルスの構成要素: タンパク質と核酸だけ; どちらが遺伝子か?
個体と多様性の 生物学 第6回 体を守る免疫機構Ⅰ 和田 勝 東京医科歯科大学教養部.
遺伝性疾患・先天性疾患  染色体・遺伝子の異常とその分類  遺伝性疾患  先天性疾患.
1.細胞の構造と機能の理解 2.核,細胞膜,細胞内小器官の構造と機能の理解 3.細胞の機能,物質輸送の理解 4.細胞分裂過程の理解
ギャップ結合の機能評価 H27.8.1 体験学習.
老化研究 最近の進展 ウェルナー症の原因遺伝子の特定 Yuら(1996) 遺伝子ノックアウト法によるヒト老化モデルマウス ( kl - /
学習目標 1.細胞の構造と機能の理解 2.核,細胞膜,細胞内小器官の構造と機能の理解 3.細胞の機能,物質輸送の理解 4.細胞分裂過程の理解
11月21日 クローン 母性遺伝.
バイオ特許 2002.12.04.
疫学概論 疫学研究の目的 Lesson 1. 疫学研究 §A. 疫学研究の目的 S.Harano,Md.PhD,MPH.
Presentation transcript:

1.異種移植の推進になぜ遺伝子改変が必要か. 2.マウスでの遺伝子改変 (gene targeting) 法. 3.ミニブタでの遺伝子改変 (gene targeting) 法. -マウスと異種移植用動物での gene targeting 法の違い- 4.異種移植用遺伝子改変ミニブタ開発における現在の問題点と解決の方 向性. 異種移植と遺伝子改変

1.異種移植の推進になぜ遺伝子改変が必要か. 同種移植、すなわちヒトからヒトへの移植においては免疫抑制剤 の開発によって拒絶反応 ( この場合には「急性拒絶反応」と「慢性 拒絶反応」 ) をコントロールできるようになり、移植医療が進展し た。 一方、ブタなどの臓器をヒトやサルに移植した場合には、移植後 数分以内に急激な拒絶反応 ( 「超急性拒絶反応」 ) がおきる。ブタを 含めほとんどの哺乳類は細胞表面に  ガラクトース抗原という糖鎖 をもっている。一方ヒトやサル ( 旧世界サルおよび霊長類 ) はこの糖 鎖をつくる酵素を欠損しているため、体内に  ガラクトース抗原を もたず、この抗原に対する自然抗体を作っている ( 図 ) 。ブタの臓器 をヒトやサルに移植するとブタの  ガラクトース抗原にこの自然抗 体が結合し、これに補体が加わって細胞破壊のプロセスがはじまる。 この 「 超急性拒絶反応 」 を防ぐためには遺伝子改変によって上記 の糖鎖をつくる酵素を失活させ、ブタ臓器の細胞表面から  ガラク トース抗原を除くことが最も有効な方法であると考えられている。

2. マウスでの遺伝子改変 (gene targeting) 法 ( 下津 2005 を一部改変 )

Gene targeting とは? 特定の遺伝子に任意の突然変異を導入する技術. トランスジェニックとの違い・・・トランス ジェニックでは、導入遺伝子が染色体上にラン ダムに挿入される。 ・用途・・・ノックアウトマウス・ノックインマ ウスの作製 - ノックアウトマウスは染色体上のある特定の遺 伝子を人為的に破壊し,機能を失わせたマウス. - ノックインマウスとは特定の場所に、特定の遺 伝子を導入したマウス. これらは遺伝子の機能を個体レベルで明らかにす るために有用である。

Gene targeting の流れ 1. ES 細胞を作る 2.遺伝子を組み換える 3.キメラマウスを作る 4.交配によって遺伝子欠損マウスを作る

1. ES 細胞を作る ・ ES 細胞とは? embryonic stem cell (胚性幹細胞)のこと. 体中のあらゆる細胞に分化する能力をもつ. ・ ES 細胞の作り方 胚盤胞期の卵の内部 にできる細胞塊を取り 出し、分化阻害因子な どを添加しながら培養 する. 全能性を保つには未 分化状態を維持するこ とが重要. ○ 通常は生殖系列 (germ line) に入ることが確認されている ES 細胞の line を入手して利用することが多い。

2.遺伝子を組み換える 相同組換えという 現象を利用する 相同組換えとは? DNA の二重らせ んの一部がほぐれ、 そこに相同配列の 遺伝子がくると、 本来の鎖との間に 組換えを起こす現 象をいう.

・相同組換えを起こ す確率は低いので、 組換えが起こった ことを見つける工 夫が必要。 ↓ ・ポジティブ選択 ・ネガティブ選択

3.キメラマウスを作る キメラマウスとは?・・・個体を構成する細胞 が、異なった遺伝的背景を持ったものから構成 されているマウスのこと。 選別した ES 細胞を 増殖させて、胚盤胞 期の初期胚に注入し、 キメラマウスを作製 する. ES 細胞

4.交配して遺伝子欠損マウスを 作る キメラマウスの体内に, ES 細胞に由来する生殖 系列の細胞があることが重要. これを生殖系列キメラと呼び、このキメラマウ スを交配することによって、 ES 細胞由来のマウ ス個体を得ることができる.

3.ミニブタでの遺伝子改変 (gene targeting) 法. -マウスと異種移植用動物での gene targeting 法の違い-

マウスでは ES 細胞を用いた gene targeting が日常的におこな われるようになったが、マウス以外の実験動物や家畜については 個体への分化後に生殖系列細胞 (germ line) に寄与する ES 細胞 は知られていない。 1996 年に体細胞核移植によるクローン羊の誕生が報告されて 以後、核移植クローン技術を用いた遺伝子改変 (gene targeting) 個体の作出がおこなわれるようになった。すなわち、体細胞を培 養して体外で gene targeting などの遺伝子操作をおこない、この 細胞をもちいて核移植クローンをつくることにより個体とする方法 である。 ブタについても上記の方法で knock out 個体がつくられている。

Gene targeting の流れ 1.体細胞を準備する. 2.遺伝子を組み換える. 3.核移植クローン個体をつく る.

1.体細胞を準備する. ○ 通常は embryonic fibroblasts などを使うことが多い。 ミニブタ培養体細胞

2.培養体細胞を用いて遺伝子を組み換える 相同組換えという現 象を利用する. 相同組換えとは? DNA の二重らせん の一部がほぐれ、そ こに相同配列の遺伝 子がくると、本来の 鎖との間に組換えを 起こす現象をいう. 選択マーカー X X 標的遺伝子 正常ゲノム targeting construct t argeting により改変された allele ・ ES 細胞は組換え活性が高いことが知られており、体 細胞で は組換えが起こったことを見つける工夫がさらに重要と なる.

3.核移植クローン個体を作る fused embryos の活性化 体外成熟卵子の作成 除核 遺伝子改変細胞の導入 融合 発生開始 受胚雌に移植

4.異種移植用遺伝子改変ミニブタ開発にお ける 現在の問題点と解決の方向性. 培養体細胞での遺伝子操作と核移植クローン作出で、マウス以 外の動物においても gene targeting を含む遺伝子改変が可能と なった。しかし、遺伝子操作をおこなった細胞からの核移植ク ローン作出効率は低く、また、体細胞クローン由来産子ではさま ざまな発生異常がおこることが知られている。 これらに対する対策として、より未分化で継続的な培養が可能 な細胞株を取得して核移植に用いることが考えられている。移植 核の初期化の機構については不明であるが、未分化な細胞ほど初 期化が容易であろうと考えられている。また、近年第 4 の幹細胞 として GS 細胞 (germ line stem cell 精子幹細胞 ) が注目されている。 この細胞は精巣より樹立され、 in vitro で長期に培養可能、かつそ の間染色体異常がほとんど起こらない。遺伝子導入が比較的容易 とされており ( マウスについては gene targeting も報告されている ) 、 遺伝子改変 GS 細胞よりできた精子を用いて個体をつくることが できる。