なぜ貧しい国はなくならないのか 第4章 飢餓は是が非でも避けた い 堀佑太
第1節 経済発展と農業問題 第一の農業問題 食糧不足 人口増加により未開の耕地が減少、また畑の休閑 期間が短くなり、土地の肥沃度が減少する にもかかわらず、生産性を上げる技術が開発され ないと食糧不足が起こる 肥沃 … 地面が肥えて、作物がよくできること
第1節 経済発展と農業問題 第2の農業問題 所得問題 農業は製造業やサービス産業ほど急速に発展でき ないため、農家世帯と非農家世帯との間に所得格 差が発生する
第1節 経済発展と農業問題 第3の農業問題 食糧自給率の減少 所得の上がった消費者は、穀物よりも食肉や乳製 品を好むようになる → 飼料向けを含む穀物の総需要が増加する (例) 1 キロの牛肉を生産するためには 10 キロ近 くの穀 物が必要になる → よって海外からの穀物の輸入が増える
第1節 経済発展と農業問題 今後、ベトナムやインドネシア、インド、 フィリピンなどが経済発展に成功すれば、 食糧自給率の問題にぶつかるかも アジア諸国全体の食糧の輸入量が巨大にな り、世界全体の食糧需給のバランスが崩れ る可能性もある
第2節 アジアとアフリカの食糧問題 1960 年代のアジア農業と最近のアフリカ農 業を比べると、類似点が多いことがわかる 1960 年代後半から緑の革命が始まり、徐々 に穀物の収穫量の伸びが人口の伸びを上回 るようになっていった 。
第 3 節 熱帯アジア 絶望的食糧不足から食糧増産へ 図 4-2 から ① 生産量の大幅な増大 → 2010 年の生産量は 1960 年代後半の 2.7 倍 に ② その原因が作付面積の増加ではなく、収量の 増加 に起因している点 ③ 緑の革命が長期的なプロセスをともなったこ と
第3節 熱帯アジア 絶望的食糧不足から食糧増産へ 図 4-3 から 近代品種が徐々に普及していった 近代品種は灌漑があるとより高収量性を発 揮し、 2 期作も可能になるため、灌漑投資の 収益率が高まった
第3節 熱帯アジア 絶望的食糧不足から食糧増産へ 図 4-4 から 緑の革命は、農民を潤したというよりは、コメの 価格の下落を通して消費者を潤した コメの価格の下落によって、貧困者の生活に大き な恩恵を与えた
第4節 アフリカ 慢性的食糧不足から脱却するチャ ンス 図 4-6 農家の経営規模でも、アフリカとアジアに 大差はなくなりつつある。 アジア的な収量増大技術の開発と普及に よって、アフリカ農業が発展する可能性も ある
第 4 節 アフリカ 慢性的食糧不足から脱却するチャ ンス 図 4-7 ① 緑の革命が始まる 1960 年代前半には両地域に 収量格差がほとんどなかったこと → 生産環境の差に起因するわけはない! ② コメと小麦は緑の革命によって両地域間で大 きな格差が生まれたが、アフリカでも収量が徐々 に増大していること
第4節 アフリカ 慢性的食糧不足から脱却するチャ ンス ③ アフリカでもっとも重要な穀物であるトウモ ロコシについては、両地域間で収量格差がほとん どないこと → アフリカでトウモロコシの緑の革命を実現する には、独自の技術開発が求められる アフリカではコメが有望 水稲は、アジアの品種のアフリカへの移転の可能 性が高い
第5節 アジア農業の未来に 日本の戦後の農地改革は、長期的な農業の発展に は大きなマイナスであった。 多くの制約や、減反政策、補助金によってコメの 生産規模の拡大が妨げられた その結果、非効率な零細経営の温存、国際競争力 の喪失、輸入穀物の増加
第5章 アジア農業の未来 図 4-9 から 日本、台湾、韓国の食糧自給率が問題 近年では、中国も問題がある? 中国では労働賃金が上昇しており、大規模化を達 成しない限り、農産物の生産費の上昇は避けられ ない → 日台韓のように多くの作物を輸入に頼る可能性 がある
第5節 アジア農業の未来 表 4-3 農地が広大にある南アメリカの国々が、世界の食 糧基地になると考えられる 南アメリカ 科学的農業の実践 農業科学者が土壌の管理や品種の開発まで行って いる 東アジアの国々もそうした方向に進むべき
世界の穀物マーケットはつながっている 図 4-10 ①輸出価格と輸入価格がほぼ平行に推移している こと → これらの穀物の国際市場が正常に機能している ②価格の変動パターンが似ている → これらの穀物が代替可能である もしアジアが食糧の巨大な輸入地域になったとす れば、食糧価格は高騰し、食糧への消費支出の高 い貧困者が苦しくなる。