独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 甲賀地域障害児・者サービス調整会議 「特別支援教育部会」 2013年11月26日(火) 発達障害者のある方の支援 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 滋賀障害者職業センター 糸 原 宏 明
障害者職業センターにおける 発達障害者へのサービス、支援状況について ご紹介させて頂きます *障害者に対して ・職業相談、職業評価 ・職業準備支援 ・ジョブコーチ支援 *事業主に対して ・障害者の雇用管理に関する助言・援助 ・職場復帰支援(リワーク支援)
平成24年度滋賀障害者職業センター 新規取扱状況 ※新規利用者256人の内訳
平成24年度 職業準備支援 障害別利用者の割合 ※支援開始者41人の内訳
職業評価の視点 ~本人の課題を見極め、 対処方法を検討する~ 職業評価の視点 ~本人の課題を見極め、 対処方法を検討する~ ◆指導の課題 まだ達成していないが、指導により達成が見込まれる課題。 ◆配慮の課題 まだ達成しておらず、今後も達成するのは難しいと思われる課題(達成するとしても、それには長い時間がかかると予測される課題)。 環境の整備や人的支援
職業評価 生活歴や職業経験の聞き取り、作業検査や模擬的就労場面(実際の職場に近い環境での作業)の実施等を通じ、ご本人のセールスポイントや、負担になりやすいことなどを整理し、適応しやすい職場環境などを知り、就職に向けた今後の進め方について考えていくことを目的にしています。 *就業支援の方針 本人を変える ⇒職業準備支援 環境を変える ⇒ジョブコーチ支援 ※就労の可否判定や職種を見極めるものではありません。今後の就労の進め方を検討するためのものです。
個人特性の評価 職業環境の評価・地域や雇用環境の評価 健康状態 体力 身体機能 など 性格 知的能力 学力 など 身体的側面 精神的側面 身体機能 など 性格 知的能力 学力 など 身体的側面 精神的側面 金銭管理 移動能力 社会生活 など 社会的側面 職業的側面 指示理解 作業能力 労働意欲 職業興味 など 職業環境の評価・地域や雇用環境の評価
評価における4つの側面 ①身体的側面 身長、体重、握力、荷物の運搬、健康状態 など ②精神的側面 身長、体重、握力、荷物の運搬、健康状態 など ②精神的側面 学力(漢字、計算)、知能検査(WAIS-R)、東大式エゴグラム、POMS、内田クレペリン精神検査 など ③社会的側面 社会生活能力調査票 など ④職業的側面 厚生労働省編一般職業適性検査(紙筆、器具)、ワークサンプル、職業レディネス・テスト、職業ストレス検査 など
作業面での特徴も評価しますが、ご本人の特徴的な考え方など全体像を把握します。 発達障害の方の評価のポイント ・障害の受容・自己理解 客観的に自分を見るのが苦手、自己肯定感の低さ ・考え方、行動、 ・コミュニケーションの傾向 受け取り方が特徴的 ・職業観 強いこだわり ・ストレスの処理の仕方 別の視点で考える難しさ、不安感 ・作業上のつまずきやすさ 特性上のうまくいかなさ 作業面での特徴も評価しますが、ご本人の特徴的な考え方など全体像を把握します。
職業準備支援 利用者(発達障害者)の傾向 ①職歴がほとんどない。 ②職歴あり。職場で不適応。 (あるいは、ごく短期の就労で離職。) 職業準備支援 利用者(発達障害者)の傾向 ①職歴がほとんどない。 (あるいは、ごく短期の就労で離職。) →課題意識が薄い場合も多い。 ②職歴あり。職場で不適応。 →「どうしてだろう?」と考え、「障害かも・・・」と捉えはじめて相談支援機関等の利用開始。 →うつ病などを発症し、受診の際、「発達障害」と診断、告知される。
◆ 職業準備支援 ◆ ・いろいろな作業場面の体験を通して職業適性を確かめます。 ・ご自身の対応スキルUPを図ります。 ◆ 職業準備支援 ◆ ・いろいろな作業場面の体験を通して職業適性を確かめます。 ・ご自身の対応スキルUPを図ります。 (職場で必要なコミュニケーションやストレス対処など) ・特性の自己理解をサポートします。 ・支援を受けながら作業することを体験します。 *受講期間:2~12週間程度 *時間:月~金 9:15~15:45 *個別カリキュラムによる支援 一人ひとりの課題等に応じた支援内容や、支援期間を設定します。 (費用は無料。ただし、交通費、昼食代等は自己負担) 受講者の特性に応じた カリキュラムを作成
発達障害者就労カリキュラム
●発達障害者就労支援カリキュラム ナ ビ ゲ I 職場対人技能 シ ョ ン 問題解決技能 ブ ッ ク 作 成 リラクゼーション技能 【スキル付与支援と自閉症スペクトラムの障害特性との関連】 ナ ビ ゲ I シ ョ ン ブ ッ ク 作 成 職場対人技能 コミュニケーション 職場でのコミュニケーションの基礎的スキル 問題解決技能 社会性 対人行動、身だしなみ等基礎的スキル リラクゼーション技能 想像力 不安や混乱となりうる事項への対処スキル マニュアル作成技能
Aさんの事例 ~職業センターでの取り組みを通して~
A Aさんの支援経過 職業準備支援(12週間) X年 夏 高校3年生 (学校の先生の勧めで医療機関受診⇒アスペルガー) Aさんの支援経過 X年 夏 高校3年生 (学校の先生の勧めで医療機関受診⇒アスペルガー) X年+2年 3月 介護関係の専門学校を卒業(試用期間中に解雇) X年+2年 5月 障害者職業センター利用(職業評価) X年+2年 7月 ケース会議 X年+2年 7月 ↓ X年+2年10月 X年+2年10月~ 障害者雇用・生活支援センター、障害者職業センター でフォローアップ中 職業準備支援(12週間)
職業センターでの相談(職業評価)の中で・・・ 自分に向いている仕事をさがしたい A 職業評価の状況から見えた課題 *実習時にうまく質問出来なかった経験から、コミュニケーションにおける課題意識はある。障害についてはよくわからない様子(性格からきているものでずっと前からのもの)。 ⇒本人が気付いている課題だけではなく、障害の自己理解が課題 <ケース会議> ご本人、母、ハローワーク、雇用・生活支援センター、職業センター 職業準備支援を提案 「障害の理解を深めながら自分に合った仕事をみつけていこう」
●職業準備支援の中で・・・① A A わかったこと ・定型、反復作業は得意だと思う。忘れっぽいけどメモを見返すと確実にできた。 作業支援+個別相談 できることは 何だろう・・・ A *模擬的就労場面で体験した作業 部品組立、検査、ピッキング、事務課題、袋詰め わかったこと ・定型、反復作業は得意だと思う。忘れっぽいけどメモを見返すと確実にできた。 ・慌てずに点検・確認すればミスは減ることがわかった。 A
●職業準備支援の中で・・・② A こんなふうに確認すればいいんだ! *SSTでの気付き 職場対人技能(SST) こんなふうに確認すればいいんだ! A *SSTでの気付き ・他の人のロールプレイを見て、「自分もできるようになりたいと思った」。 ・「たとえ怒られることがあっても確認することは重要だと思った」
●職業準備支援の中で・・・③ A *講座『ジョブコーチ支援について』で気付いたこと 講座+個別相談 このようなサポートがあるんだな A *講座『ジョブコーチ支援について』で気付いたこと ・ジョブコーチ支援があることがわかった。相談しながらだと仕事の質が上がると思った。できれば活用したい。
●職業準備支援の中で・・・④ A *職場体験実習(食堂の食器洗浄) ・聞き方、質問の仕方がわかった(「これも洗うんですか」と意欲的)。 ・こうした方が良いよと言われ、見本を見せてもらえて直すことができた。 A
●Aさんのまとめ~体験からの気づきをふまえて~ ナビゲーションブックの作成 僕はこうです! A
●職業センターの支援を振り返って ~次の一歩に踏み出せたのは?~ ニーズ: 就職したい! でも、何ができるのか、わからない・・・ A 職業準備支援プログラムでの体験、相談を通して A 職場のマナーを知ることが出来て役だった。 面接のやり方や自分の長所を見つけられて良かった。
働くための土台をつくる・・・ ・自分のことを良く知る →できることがわかる。 ・自分のことを良く知る →できることがわかる。 ・どんな対処方法があるのか知る→自分に合いそうなものを選んでやってみたら、前よりもできた。 ・何か困ったことがあっても、こうすれば大丈夫・・・ (例えば、誰かと相談する。) 自分がわかってきた、 自分にできそう、やってみよう・・・ (自己認知が進む → 自己効力感) どのような経験を積むか? それをどのようにサポートするか?