2016年 前期 日本法制史講義 近世法 4 0713-20 5 近世法⑷ 庶民社会の法と出入でいり  

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2016年 前期 日本法制史講義 近世法 4 0713-20 5 近世法⑷ 庶民社会の法と出入でいり  

5 近世法⑷ 庶民社会の法と出入でいり 1 領主法と庶民法 ⑴ 庶民生活と法の領域 (領主⇒庶民社会) ⑵ 庶民法(→村法・町法・仲間法) 5 近世法⑷ 庶民社会の法と出入でいり 1 領主法と庶民法  ⑴ 庶民生活と法の領域 (領主⇒庶民社会)               cf 欲しがりません勝つまでは〈こんな時代がありました〉・・・倹約令  ⑵ 庶民法(→村法・町法・仲間法) 2 出入物 小早川欣吾『近世民事訴訟法の研究』(有斐閣)   ⑴ 目安懸りの訴訟   ① 本公事 通常民事訴訟    ② 金公事 特別民事訴訟                    ③ 仲間事 訴訟法上無保護の債権関係 → 無取上(=自然債務) 頼母子講 伊勢講

「庶民社会」 からの連想 近世における 庶民 or 民衆 という言葉から 諸君は何を、どんな人々を思い浮かべるか? 「庶民社会」 からの連想 これまで扱ってきたのは 領主 esp. 武家社会の法 近世における 庶民 or 民衆 という言葉から 諸君は何を、どんな人々を思い浮かべるか? 兵農分離 ⇨⇨ 士農工商 ⇨⇨ 町と村

近世社会の骨格は・・・ 「 村 」 幕藩統一権力 正保・元禄の国絵図 ⇩ 領分絵図・村絵図 天保郷帳 近現代の市町村 近世社会の骨格は・・・ 「 村 」 幕藩統一権力 正保・元禄の国絵図 ⇩ 領分絵図・村絵図 天保郷帳 近現代の市町村 村には 村法 と 村八分 この嫌な言葉!の意味は? いじめ 窓際(族)→リストラ 自閉症フリーター・ニート・・・ 日本的美質・・・封建社会・序列・ お上意識 (ときとして上から目線) 希望格差社会 ←均貧→均富

正保 国絵図 また武家領主の話にもどりそう→でも絵図の作成には 特定の大名家中+(国)絵図師が関与していた

近世日本の法社会 -17世紀後半に到来した法化社会- トピックス 近世日本の法社会  -17世紀後半に到来した法化社会- 1 近世の庶民社会ー位置づけー 2 寛文4 (1664) 年の勢州用水相論    ⑴ 訴訟手続の概略と相論の実体ー絵図裏書ー    ⑵ 相論の経緯ー手続の追体験ー    ⑶ 形成途上の評定公事 3 封建法廷と法社会 自力救済から法廷へ その前に近世の庶民社会とは・・・

近世日本の社会構造 -庶民社会の位置づけ-  近世日本の社会構造 -庶民社会の位置づけ- 公家社会 武家社会 封 建 法 廷 庶 民 社 会

(概略図) 村と町 vs 非農業民(網野) 百姓は農民に非ず

←もとは百姓 ひゃくせい 5 近世法 ⑷ 庶民社会の法と出入 民衆の世界   

⑴ 訴訟手続の概略と相論の実体 訴 状 ☞ 史料 1 目安裏書(裏判訴状) ☞ 史料 2 返答書 ☞ 史料 3 絵図・裏書(裁許状) トピックス 寛文四年の勢州用水相論     ⑴ 訴訟手続の概略と相論の実体 訴 状 ☞ 史料 1 目安裏書(裏判訴状) ☞ 史料 2 返答書 ☞ 史料 3 絵図・裏書(裁許状)

⑴ 訴訟手続の概略と相論の実体 訴状 ☞ (史料 1 略) 目安裏書(裏判訴状) ☞ (史料 2 略) 返答書 ☞ (史料 3 略) トピックス 寛文四年の勢州用水相論                      評定所(一座)へ出訴(井堰設置の相論)                  リアルな審問のシーン                  検使の派遣と実見                  裁決 ⑴ 訴訟手続の概略と相論の実体 訴状 ☞ (史料 1 略) 目安裏書(裏判訴状) ☞ (史料 2 略) 返答書 ☞ (史料 3 略) 絵図・裏書(裁許状)

論所 1664寛文四年の 鈴鹿川用水(=井堰)相論

五ヶ村半大河井 論 所 寺井六ヶ村 論所 横弐丁十七間 内七間程ニ水有

鈴鹿山脈 伊勢湾 鈴鹿川48井堰(26村1町)

絵図裏書 裁判担当吏僚

訴状 (目安裏書)

目安裏書 寺社奉行 原告(訴訟人) 相(合)手方

返答書

日次記

⑵ 相論の経緯 日次記による経過と訴訟手続の追体験 ☞ 史料 4 江戸着到(届、公事宿届) 寺社奉行所出頭(絵図合せ) トピックス 寛文四年の勢州用水相論 ⑵ 相論の経緯 日次記による経過と訴訟手続の追体験 ☞ 史料 4 江戸着到(届、公事宿届) 寺社奉行所出頭(絵図合せ) 勘定頭駕籠訴 (勘定奉行) 評定所対決・審問(寺社奉行井上アレンジ、老中主導) 評定所(式日)へ参上、検使引き合わせ・面談

⑶ 形成途上の評定公事-評定所一座以前- ☞ 次にその完成形態を 1631寛永 8 老 中 全員が会合・評定 トピックス 寛文四年の勢州用水相論 ⑶ 形成途上の評定公事-評定所一座以前- 1631寛永 8 老 中 全員が会合・評定 12 評定衆 の成立→評定所制の確立→「評定所」 老中・寺社奉行・ 町奉行・勘定頭・大目付 〔老中宅寄合〕 1657明暦 3 大火 〔伝奏屋敷で評定〕 1661寛文 1 伝奏屋敷脇に独立役所 4 鈴鹿川相論 cf 家綱の寛文印知 8 式日(老中出座、傍聴のみ)・立合に分離 →評定衆の主役は三奉行⇒ 評定所一座 ☞ 次にその完成形態を

公事だくみする者・公事好き(数寄)する者 享保期 : 法律将軍の出現→ 法化社会 トピックス 封建法廷と法社会 中世~戦国期 : 用水相論は 自力救済 が原則 統一国家の成立: 出頭人から老中制へ 寛文期 : 評定所制の確立 ⇩ 訴訟は面倒に プレ法化社会? 封建法廷の成立=治者の裁判 被治者の訴訟感情 公事だくみする者・公事好き(数寄)する者 享保期 : 法律将軍の出現→ 法化社会

近世の訴訟風土 (法文化) 勢州(三重県)から江戸へ 江戸(東京 400㎞ の彼方) は身近な舞台 トピックス 寛文四年の勢州用水相論 近世の訴訟風土 (法文化) 勢州(三重県)から江戸へ 江戸(東京 400㎞ の彼方) は身近な舞台 藩邸(領主)何するものぞ (←転封で交替したばかり) リアルな審問のシーン ・・・老中を相手に・・・ 検使の実見と対検使工作 ・・・西へ東へ・・・ 訴訟人は 驚異のエネルギー されど封建法廷・・・・ 贈答儀礼社会≠賄賂<定量化された贈答>

近世から近代へ あるいは 近世に内在した 近代的要素 近世から近代へ あるいは 近世に内在した 近代的要素 裁判吏僚の忌避 ないし 自発的 遠慮 (←眼病を理由に相役へ?) 任役誓詞 ←起請文(誓い+神罰・仏罰←中世以来の訴訟風土) 公私分別 ⇒ 法化社会 文書主義 ←稟議方式は社会機構の常識 ←文字社会←豊富で安価な紙 かなりの飛躍を承知の上でいえば 近世→明治日本→外地 (台湾) への移入

小早川欣吾・石井良助による近世民事訴訟法の研究/高橋敏『江戸の訴訟』(岩波新書) 庶民社会の法と出入でいり   ⑵ 出入筋の手続 小早川欣吾・石井良助による近世民事訴訟法の研究/高橋敏『江戸の訴訟』(岩波新書) 内済取替証文 訴訟人 (原告) 月番裁判所 内済 目安 双方出廷 対決 審問 裁許 裏判下付 裏判訴状 裁許請証文 裏判消印願 初而公事合 (一通吟味) 追々吟味 口書作成 裁許状作成 相手方 (町村役人) 答弁書 公事宿 代言人 与力・同心 弁護士制の原初形態?

近世法 ⑷ 庶民社会の法と出入でいり -村法と近世村落- 近世法 ⑷ 庶民社会の法と出入でいり           -村法と近世村落- 1 村 法 前田正治 『日本近世村法の研究』・神崎直美『日本近世の法と刑罰』 2 近世の村落          ⑴近世的村落の形成      ⑵村落の自治と 幕藩体制   ⑶村落の構成   ⑷法的性格 (法人格性)  ⑸村役人(村方三役)   ⑹村寄合(村民の集会) 嘉永3年 海西郡塩田村絵図

5 近世法 ⑷ 庶民社会の法と出入でいり 村法と近世村落 1 村 法 5 近世法 ⑷ 庶民社会の法と出入でいり 村法と近世村落 1 村 法 ⑴村法の意味   近世村落(⇦庄園村落)における 村の自治的規約 大部分は不文の慣習法 cf 近代初期の村規約・郡是 村定・村極・村掟・村中取締一札 条々・条目・法度・覚・申合・議定 協約・連判状・・・(起請文の形もある) 郡上の立百姓

⑵ 村法の由来 ① 中世庄園の隠置文(一味同心) ② 戦国期の村法 (一揆契状) ③ 検地と逃散 (傘連判状) 5 近世法 ⑷ 村法と近世村落 1 村 法  ⑵ 村法の由来   ① 中世庄園の隠置文(一味同心)   ② 戦国期の村法   (一揆契状)   ③ 検地と逃散    (傘連判状)

⑶ 内容・性格 ① 強制作用としての制裁 一定限度の制裁権は村法上の慣習として領主が黙認 ⇦ 封建的協同体的性格 5 近世法 ⑷ 村法と近世村落 1 村 法 ⑶ 内容・性格   ① 強制作用としての制裁 一定限度の制裁権は村法上の慣習として領主が黙認  ⇦ 封建的協同体的性格 村八分(村法に独自的な制裁) 追放 (村法上最も重い制裁罰) 過料 (適用の最も多い制裁罰) 陳謝・体罰(簀巻・片鬢剃・晒・・・) 自由刑的制裁(謹慎・手鎖)  勝手次第 不苦・無構 (運命共同体) 制裁事由 領主法上の犯罪概念とは相違

⑶ 内容・性格 ① 強制作用としての制裁 一定限度の制裁権は村法上の慣習として領主が黙認 ⇦ 封建的協同体的性格 24 近世法⑹ 村法と近世村落 1 村 法 ⑶ 内容・性格   ① 強制作用としての制裁 一定限度の制裁権は村法上の慣習として領主が黙認  ⇦ 封建的協同体的性格 村八分(村法に独自的な制裁) 追放 (村法上最も重い制裁罰) 過料 (適用の最も多い制裁罰) 陳謝・体罰(簀巻・片鬢剃・晒・・・) 自由刑的制裁(謹慎・手鎖)  なぜか?   

現代の 村八分

制裁事由 vs 領主法 ←勝手次第・無構 ② 入会争論に関する村法 ③ 倹約と 「五人組前書」 ④ 村の組織に関する規定 5 近世法 ⑷ 村法と近世村落 1 村 法 制裁事由 vs 領主法 ←勝手次第・無構 1) 親不孝・集会不参・農事不出精 2) 農耕・用水秩序違反 3) 博奕・山盗・畑盗 ② 入会争論に関する村法 ③ 倹約と 「五人組前書」 ④ 村の組織に関する規定 村寄合への出席義務 決議の遵守を要求 年貢・ 村費・出役の義務 農耕・用水秩序に関する規制 我田引水 総有

五人組帳 現代向う三軒両隣り 隣は何をする人ぞ 組(与)頭 孤独死・・・絆

5 近世法 ⑷ 村法と近世村落 2 近世の村落 ⑴近世的村落の形成 ⑵村落の自治と 幕藩体制 ⑶村落の構成 ⑷法的性格 ⑸村役人(村方三役) 5 近世法 ⑷ 村法と近世村落 2 近世の村落          ⑴近世的村落の形成      ⑵村落の自治と 幕藩体制   ⑶村落の構成   ⑷法的性格 (法人格性)  ⑸村役人(村方三役)   ⑹村寄合(村民の集会) 村鑑 村明細帳

⑴近世的村落の形成 ①氏族村落 → ②律令郷村制 ③庄園村落 →惣村→検地 ④近世村落 →自治 5 近世法 ⑷ 村法と近世村落 2 近世の村落 ⑴近世的村落の形成 ①氏族村落 → ②律令郷村制 ③庄園村落 →惣村→検地  ④近世村落 →自治 

⑵ 村落の自治と幕藩体制 ⒜ 地縁団体(←自然村落) ⒝ 公法的な行政区画 ⒞ 一定範囲の自治 ⑶ 村落の構成 5 近世法 ⑷ 村法と近世村落 2 近世の村落 相給 ⑵ 村落の自治と幕藩体制  ⒜ 地縁団体(←自然村落)  ⒝ 公法的な行政区画  ⒞ 一定範囲の自治 ⑶ 村落の構成 本百姓(=高持・平百姓・小前)  水呑百姓(=小作人) 郷士・僧尼・神官・職人・商人 名子・披官・穢多・非人 非農業民

近世法⑹ 村法と近世村落 2 近世の村落 ⑷ 法的性格(法人格をもつ)   村役人と村民の総体より成る 総合人 (ゲルマン Genossenschaft )   村自体が納税・土地所有・契約・債務負担・訴訟etc. 権利義務の主体      ⇩⇧              村民各個の変動に影響されない 単一体   各村民の人格と分離・独立・対立せず           ⇩⇧   村民の人格によって組織され支持される 実在的総合人

①名主・庄屋 村政一般を管掌、対外問題には村を代表 5 近世法 ⑷ 村法と近世村落 2 近世の村落 年貢割符・皆済帳 ⑸ 村役人(村方三役)  ①名主・庄屋 村政一般を管掌、対外問題には村を代表 代官・地頭よりの御触の伝達  宗門改・人別改 戸籍事務 年貢の割当・取立・上納 村費の賦課・取立 財政事務 公水利・土木 地方行政事務  風紀取締・消防・水防 警察事務 訴訟・争論の仲裁、訴状・証書etc 加判 裁判事務 ②組頭・年寄(長百姓・畔頭) ③百姓代(横目)

① 村民の利害事項についての協議・決定機関 ② 村民の集会出席義務を強調 5 近世法 ⑷ 村法と近世村落 2 近世の村落 ⑹ 村寄合(村民の集会)  ① 村民の利害事項についての協議・決定機関  ② 村民の集会出席義務を強調 (→故なく欠席すれば村制裁)

トピックス 鈴鹿川相論から見えるもの 何とエネルギッシュな 庶民たち・・・

村法の独自性とそれを可能とした近世社会 自立した村落の構造 領主による「勝手次第」 村独自の制裁・・・