民法教育におけるカリキュラムおよび教育方法の改革

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子どもをとりまく ネットトラブル 子どもをとりまくインターネット社会におけるトラブルの種類とそれに対応する情報モラル教育の必要性について考えていきます。
情報スキル活用 第1週    ガイダンス.
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民法教育におけるカリキュラムおよび教育方法の改革 2003年8月2日 名古屋大学大学院法学研究科教授 加賀山 茂

目次 法科大学院の教育目標 民法の教育方法 家族法の教育実践 民法における新しい予習用教材の作成 民法の教育目標 予習の重視 事実関係の重視 発見の重視 家族法の教育実践 民法における新しい予習用教材の作成

法科大学院の教育目標 司法制度改革審議会『意見書-21世紀の日本を支える司法制度』(平成13年6月12日) 専門的な法知識を確実に習得させるとともに,それを批判的に検討し,また発展させていく創造的な思考力,あるいは 事実に即して具体的な法的問題を解決していくために必要な法的分析能力や法的議論の能力等を育成する。

民法の教育目標 民法及びその関連法並びに民事法実務に関する法知識を確実に習得させるとともに,それを批判的に検討し,また発展させていく創造的な思考力を育成する。 別冊ジュリスト『判例百選』に掲載された判例,および,最近の『重要判例解説』に掲載された判例等を題材として,事実に即して具体的な法的問題を解決していくために必要な法的分析能力や法的議論の能力等を育成する。

民法の教育方法 予習の重視 事実関係の重視 発見の重視 教師と学生間の対等なコミュニケーションの実現 教育の原点は教えることではなく,学習環境を整えて,自ら学ばせること 事実関係の重視 大陸法における体系重視の考え方と英米法の事実重視の考え方の融合←要件事実教育批判 発見の重視 批判的な考え方も,創造的な思考力も発見から始まる 主観的な発見と客観的な発見は,連続的に起こる 発見には,比較(時間的比較=法制史,場所的比較=比較法)が有効

予習のための教材開発とインターネット環境の整備 インターネットを利用できる図書館で,優れた教材(ケース・ブック)と判例等のデータベースを駆使して予習に励むロー・スクールの学生(シカゴ・ケント大学)

判例の事実関係を重視した講義(ソクラティック・メソッド) 教師と学生,学生同士のコミュニケーションがうまく取れるように,机の配置が馬蹄形となっている講義室(W&M大学における不法行為法の講義)

ルールに基づく事実の発見と事実に基づくルールの再発見

家族法の教育実践 予習教材をホームページ上で公開 予習を前提にした講義展開 双方向コミュニケーションのための電子掲示板の利用 試験による評価 法科大学院用のホームページ 講義レジュメ 関連法令,関連判例(1審,2審,最高裁)の全文データベース 予習を前提にした講義展開 ソクラティック・メソッド,事実関係の重視 家族法判例百選第 1事件(子に嫡出性を与えるための婚姻の効力) 統計の利用と多様な読み方(離婚統計のからくり) 家族法判例百選第22事件(推定の及ばない嫡出子) 双方向コミュニケーションのための電子掲示板の利用 学生からの質問に即座に答える 電子掲示板での質疑応答の例 学生同士の情報交換 試験による評価 試験問題と模範解答例

民法における新しい予習用教材の作成 民法の編成 教材例 家族法,団体法 財貨帰属法(物権法) 契約法 債権担保法 不法行為法 契約法の1単元(弁済の場所)

予習は,本来,講義の前に行うものであるが,わが国では,これが学生の習慣となっていないため,講義の中で,強制的に予習をさせてみた。 予習教材を使った予習と講義 予習は,本来,講義の前に行うものであるが,わが国では,これが学生の習慣となっていないため,講義の中で,強制的に予習をさせてみた。

パソコン実習室での試験とログによる教材・講義の評価 学生たちが,教材のどのページを何回見ながら答案を作成したかが自動的に記録される。これを分析して,教材と講義の評価に利用することができる。

プレゼンテーション終了