宇宙科学データアーカイブDARTSの現状と課題

Slides:



Advertisements
Similar presentations
プラグイン作成講座 Control System Studio 3.0 Takashi Nakamoto
Advertisements

プロジェクト名称 Inception Deck (Project Charter) 201X.XX.XX.
WagbyR6.5 Update 14 PPT版 更新情報
NORWAY ENGLAND AMERICA FRANCE
北大における Super-SINET 接続と利用: 2004 年度報告
物理実験 I 情報実験第9回 Modified 2005/12/2 徳永 義哉Original 2003/12/12 中神 雄一
WEBから確認できる 駐車場管理システムについて
ここに若林の絵が入る Ⅰ 従来型サービスの課題 Ⅴ Solaris基盤ヘルスチェックサービス ●従来型サービス Ⅱ 新サービスの概要
電子社会設計論 第11回 Electronic social design theory
『どこでも運用システム』の開発状況 (第二報) iPad版衛星状態監視システム (プロトタイプ) どこでも運用システムと他システムとの接続
SoftLayerへのお引越し方法 お客様環境(或いは他社クラウド)からSoftLayerへの移行は簡単です。
DBバックアップあーんどリカバリ HN おいろん.
DBバックアップあーんどリカバリ HN おいろん.
解析サーバの現状と未来 2006/07/18 衛星データ処理勉強会 村上 弘志 現状のシステム構成など 統合解析環境としての整備
事業計画 発表者名 | 会社名.
Webサイト運営 09fi118 橋倉伶奈 09fi131 本間昂 09fi137 三上早紀.
第6章 トランザクション管理 6.1 トランザクションの概念 6.2 同時実行制御 6.3 障害回復.
Debian GNU/Linux ー Linuxインストールに必要な基礎知識 ー 三上 彩 鈴木 倫太郎
於:県立中村高等学校 同朋学園本部事務局 河邊憲二
既存システムを連携させることによるeラーニング ― MoodleとXoopsのアカウント情報を交換するモジュール ―
研究基盤総合センター 応用加速器部門 木村博美
InfoLibDBRによる      システム構築  山口大学 情報環境部 深川昌彦.
千代浩司 高エネルギー加速器研究機構 素粒子原子核研究所
共同ローカリゼーション フレームワーク 井上 謙次.
パッケージソフトウェア利用コンピュータシステム構築委託契約書 パッケージソフトウェア、OS、第三者ソフトウェアの使用許諾契約
ネストした仮想化を用いた VMの安全な帯域外リモート管理
サーバ構成と運用 ここから私林がサーバ構成と運用について話します.
(B2) 親: minami, kazuki 多様な認証機器に対応する 認証システム (B2) 親: minami, kazuki.
インターネットビジネスと クリアリングハウス
サスペンドした仮想マシンの オフラインアップデート
政府情報システムのコスト削減の 取組状況について
2016年度秋期 成果発表会 2016年11月25日 大阪開発センター 技術一部 畑中 龍樹.
技術参照モデルとシステム要件定義 に関する学習システム
MPIによる行列積計算 情報論理工学研究室 渡邉伊織 情報論理工学研究室 渡邉伊織です。
次期経営情報システムの 段階的なWeb化事例
北海道大学 理学院 宇宙理学専攻 惑星宇宙グループ 修士2 年 三上 峻
azbil-eラーニングとは、aG共通のeラーニングによる教育システムです。
ITIL V3 ファンデーション 紹介 2012/6/27  担当 藤生.
Riakデータベース on SoftLayer
グリッド M1 kawai.
思考支援ツールを用いた 情報処理技術知識の学習方式
NASのアクセス履歴を記録・検索できる! マイナンバー制度対応のファイルサーバー(NAS)ログ管理ソフト
新たなバックアップソリューション「クローン機能」はここがスゴイ 新たなバックアップ方法「クローン機能」なら全て解決!
新たなバックアップソリューション「クローン機能」はここがスゴイ 新たなバックアップ方法「クローン機能」なら全て解決!
IaaS型クラウドにおける インスタンス構成の動的最適化手法
リモートホストの異常を検知するための GPUとの直接通信機構
事務所における情報化の問題点 データが所内で共有されていない、各課ごとに個別に利用されている
クローンセットに対する主要編集者の分析法の提案と調査
FUJITSU Security Solution SYNCDOT MailSuite
仮想計算機を用いたサーバ統合に おける高速なリブートリカバリ
地球温暖化防止に必要なものは何か E 石井 啓貴.
オープンソース開発支援のための ソースコード及びメールの履歴対応表示システム
Web - 01 IIS を インストールしよう.
オープンソース開発支援のための リビジョン情報と電子メールの検索システム
安全管理体制とリスクマネジメント.
IoT活用による糖尿病重症化予防法の開発を目指した研究
宇宙科学統合解析環境の構築とAstro-E2解析支援
未使用メモリに着目した 複数ホストにまたがる 仮想マシンの高速化
インターネット             サーバーの種類 チーム 俺 春.
Parallel Setsによるライブラリの 組み合わせと利用状況の可視化
ネットワークをシンプルにする エンタープライズ NFV
+ = Basic Microsoft Azure 活用講座 (無償ワークショップ) 選ばれたお客様だけに、いまだけ無償でご提供
SQL Server ベースの SAP システム における高可用性ソリューション
衛星回線を含むネットワークにおける 動的経路制御に関する研究
第2回 Webサーバ.
サーバ(UI)とサーバ(通信)が動作する装置が必要
IPmigrate:複数ホストに分割されたVMの マイグレーション手法
関数の変更履歴と呼び出し関係に 基づいた開発履歴理解支援システム
P2P & JXTA Memo For Beginners
Presentation transcript:

宇宙科学データアーカイブDARTSの現状と課題 殿岡 英顕、松崎 恵一、海老沢 研、山本 幸生、北條 勝己、藤嶋 幸美、稲田 久里子 宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 科学衛星運用・データ利用ユニット 2016/2/12 宇宙科学情報解析シンポジウム

本講演の目的 宇宙科学データアーカイブDARTSの現在の構成及び過去の運用上の問題点とその解決策をまとめ、報告する。 DARTS URL .. http://darts.isas.jaxa.jp/

目次 DARTS の特徴 DARTS の計算機構成 DARTS の計算機管理 DARTS のコンテンツ開発 まとめと課題 概要・構成 問題点と解決策

1. DARTSの特徴 多様なデータのアーカイブ 1997年にあすか、ようこうのデータ公開から始まった。 DARTS は天文学、太陽物理学、STP、月惑星科学、微小重力科学といった多くの学問分野にまたがるデータの集積を行っている。 1997年にあすか、ようこうのデータ公開から始まった。 現在は16のJAXAの宇宙機・宇宙実験のデータを公開している。 データの長期保存を目標の一つとする。 天文学 太陽物理 STP 月惑星 微小重力科学

2. DARTSの計算機構成 ほとんどのサーバを科学衛星データ処理システム(DPSS)仮想マシンで構築。 OSは Linux (Red Hat Enterprise Linux 6)を利用している。

データの出口としてのDARTS 宇宙機から送信されたデータは、地上局で受信されたのちに、リフォーマッタにてデータ処理をされて科学データになる。 DARTSは処理された科学データを全世界に公開する。 地上局 データ分配装置 データ蓄積装置 SIRIUS データベース リフォーマッタ 一次データ処理 一次データ処理 高次データ処理 EDISON DARTS 科学データ 工学値データ

DARTSの主流サービス DARTSでは、データの公開と検索サービスの大半を1台の公開サーバで行っている。(ここでは主流サービスとする) 試験的サービス(DARTS Labs.)などは、主流サービスとは別のサーバで行っている。(非主流サービス)

DARTS標準システム DARTSの主流サービスを行うサーバ(標準システム)では、1台の本番サーバに対して多くの補助サーバが存在している。 C-SODA Mercurial コンテンツ C-SODA NAS データ 開発DB 試験DB 本番DB 部門別開発サーバ 統合開発サーバ 試験サーバ 本番サーバ pull push 参照 クローン rfdarts データ生成・書込 公開サービス構築 データ公開サービスの維持・運用 C-SODA リフォーマッタ Step1 Step2 Step3

3. DARTSの計算機運用 サーバの役割分担の明確化 コンテンツのリリースがサービスに影響を与えないサーバ構成 OSアップデートに対して影響を最小限にするサーバ構成 運用分担の明確化

サーバの役割分担の明確化 リスク例 外部に公開されているDARTSサーバがクラックされて、データが消失する。復旧のために多大な時間をとられる。 DARTSサーバではデータストレージは Read Onlyとし、データの加工(書き込み)は基本的に行わないようにして、役割を分けた。 データの加工はリフォーマッターで行う。 万一 DARTS サーバがクラックされても、被害範囲を限定できる。 リフォーマッタ (データ処理) DARTSサーバ Web DB NAS

コンテンツリリースがサービスに影響を与えないサーバ構成 リスク例 不具合のあるコンテンツ(HTMLページ、アプリケーションもしくは設定)のリリースにより、本番サーバのサービスが停止する。 主流サービスは 3(+1)ステップ のリリース手順とし、事前に不具合を検出できる体制を構築した。 分野別開発機: 開発者がコンテンツの開発を行うマシン。 統合開発機: DARTS管理者が全分野を統合した状態での動作確認を行うマシン。 試験機: 本番に近い状態で試験を行うマシン。JAXA外の関係者からも確認を行えるようにしている。 本番機: 実際に外部に対するサービスを行うマシン。 非主流サービスについても、開発機と本番機を分けたサーバ構成を取っている。 分野別開発 統合開発 試験 本番

OSアップデートに対して影響を最小限にするサーバ構成 リスク例 OSアップデート時にパッケージ間の不整合により、サービス停止もしくは対処に時間がかかるトラブルを伴う予期せぬ障害が出やすくなっている。 このような不整合はOS供給者以外のサードパーティパッケージで起きやすい。 主流サーバはOS標準パッケージで構成し、アップデート不具合によるサービスの全停止を防ぐ。 サードパーティパッケージに依存するサービスは極力避けるか、非主流サービスとしてサーバを分割して提供する。(部分停止はやむを得ないと考える)

運用分担の明確化 リスク例 開発チームと運用チームが同一だと、なれ合いのためサーバの構成変更情報の記録を忘れることがある。構成情報の記録漏れは、システム更新の再構築時に大問題となる。 DARTS開発チームは極力管理者権限を持たない。構成変更は運用支援チームに依頼する。運用支援チームには記録を取ることを手順化し、残してもらう。 開発チーム 運用支援チーム 開発機 試験機 公開機

4. DARTSの開発 手堅いアプリケーション開発 Mercurial リポジトリの活用

手堅いアプリケーション開発 アプリケーションの保守コストを上げるプログラム言語のリスク要因 仕様がころころ変わるものは、バージョンアップと共に修正が必要となる。 更新が止まってセキュリティパッチが供給されなくなるとサービスが停止する。 フレームワークは流行り廃りが激しく、習得コストもばかにならない。さらにバージョン依存があると管理が煩雑。 理想的には開発後に手をかけずに長期間安定して利用できるものがベスト。 開発後になるべく保守を必要としない言語を選ぶ。現在は PHP が主流。 とはいえ、将来何が起きるかわからないのも事実。(例: Adobe Flash の終焉、など)

Mercurial リポジトリの活用 コンテンツ開発でのリスク例 コンテンツを更新したら不具合が発生したが、どこを変更したかわからない。 コンテンツを長期間更新し続けるうちに、状態がわからなくなった。 コンテンツの履歴管理のために、履歴管理ソフトMercurial を利用し、変更点の記録を残すようにした。 さらにプロジェクト管理ソフト Redmine と組み合わせることで変更点を容易に確認できるようにした。 Mercurial を境界点として、コンテンツの開発フェーズと展開フェーズ(試験・本番)を明示的に切り分けることができるようになった。 Mercurial リポジトリ 開発環境 試験・本番機

5. まとめと課題 DARTSでは、サーバの安定的な運用を行うために、様々な工夫を取り込んできた。 手堅いサーバ運用のためには規則が多くなる傾向にある。だが、時代の変化により状況は変わるため、変化に応じた規則の適用条件の調整は必要である。 自由な開発への対応も検討すべきである。一例として、手堅く運用するサービスと新たな技術で開発するサービスの分離を進めることが考えられる。 コストが上昇する傾向に対して、掛けられるリソースは限られている。リソース不足に対して開発を止めない策の検討を開始している。(外部リソースによるアプリケーション開発など)