日本のテレビ放送の歴史 国産テレビの誕生、放送番組の歴史(2)

Slides:



Advertisements
Similar presentations
情報家電 09FI125 福石隆之介 09FI138 水上諒亮 - Contents - 1. 情報家電とは 2. ディジタルカメラ 3. 薄型テレビ 4.HDD & DVD レコーダー 5. ホームセキュリ ティ 6. 家庭用ロボット - Member -
Advertisements

テレビ 〜生活の中の映像社会〜 1990 年代に入って、ようやく、 効果研究とは別の、 テレビメディア論が台頭してきた。
1. はじめに 2. テレビ視聴行動の特徴 3. 幼児期と児童期に視聴していた 番組に関する記憶と評価 4. 社会的出来事の記憶と テレビの報道機能に対する評 価 5. 子育て世代にとってのテレビ.
JPN 311: Conversation and Composition Introduction.
Copyright©2004 ROOT,Inc. All rights reserved. 1 ITRC IHK ルート株式会社 真野 浩 インターネットを用いた地上波 放送の遠隔録画、再生システム.
テレビ放送の歴史 国産テレビの誕生、放送番組の歴史 (1) 1. テレビの発明 2. テレビで何が放送されたか 3. テレビ放送開始 1.
1.欧州. 特許会社  特許会社とは …. 経営権が国に保留されている事業の、 一部または全部の経営権を、法律などに より付与された会社。  世界で最初の特許会社 モスクワ会 社.
インターネット世代のテレビ・コ ミュニティ ー大学生のテレビ視聴ー 1. はじめに 2. 大学生のテレビ視聴 ― 進行する「パーソナル 化」 3. 若者たちによるテレビ視聴の共有プロセス 4. テレビ+多メディア時代の「公共的記憶」の可 能性 5. 多メディア時代のテレビの役割.
日本の動画共有サイトの 拡大と問題 MG9356 小沢直宏(nao).
島根大学法文学部 野田哲夫 (情報経済論担当)
ヤフーとグーグル 代理店とメディア ■米国マスメディアは、オンラインメディアに視聴者が流れている現状を認識、新たなプロモーション施策を実施している。 ■WEb2.0系企業は、ネット上のコミュニティは分散していると認識、中小のオールドメディアと提携している 既存メディアはマスターゲットを集客することにこだわる。一方、ウェブ2.0系企業は、分散化されたターゲットを広く浅く集めるために既存メディアを利用する。2.0系企業の考え方のほうが、現状の消費者の動向に即している。
UNIT31 テレビを見る 1group 노수정 권민정 구동례.
1.白黒テレビからカラーテレビへ 2.ENGの登場 3.衛星放送のスタート 4.地上デジタル放送へ 5.難視聴地域(離島)でのテレビ視聴
第14回 日本の放送制度 担当:野原仁(地域科学部)
視聴覚教育関係の 発明・技術発展  人文学部「視聴覚教育」 須曽野 仁志.
1990年代に入って、ようやく、 視聴の効果研究とは別の、 テレビメディア文化論が台頭してきた。
獨協大学 国際教養学部言語文化学科 永田小絵
コンテンツ・クリエイティビティ・ビジネス
放送産業の特徴(1) 日本の放送産業の構造的特徴
放送(1) 放送産業の歴史的変遷と特質 1.ラジオの時代 2.テレビ放送の開始 参考文献.
分担 6-2-1 デジタル放送の歴史と意義  担当    福田 智 6-2-2 インターネットによる配信  担当    儘田 遼.
3.表現メディアの特性 文字=日時や数値などを正確に伝えることに適している (例)新聞,法律,小説
テレビ時代の記憶 ー現在の高齢者たちー 1.現在の高齢者の世代的特徴 2.調査概要 3.テレビとの出会いと受像機購入の記憶
アニメ産業の光と影 大東文化大学 11班 渡辺翔 森田健慈 山崎義弘
メディア論 第13回 テレビと政治 ( ) 担当:野原仁.
メ デ ィ ア ・ リ テ ラ シ ー.
1.バラエティ番組とは 2.バラエティ番組の変遷 3.バラエティ番組の特徴と機能 4.バラエティ番組の是非を問う
通信情報化社会の進展.
メデイアと現代社会 田村貴紀.
媒體日文(一) 進修部・夜間部 09月18日(水・三) 担当 神作晋一.
情報通信産業論A - 日本の情報通信産業4 – 放送市場
第8回 記憶研究とテレビ 1.集合的記憶とは 2.社会的出来事に関する集合的記憶 3.外国の社会的出来事に関する集合的記憶
第13回 情報操作とやらせ 野原仁(地域科学部)
第2章 バブル崩壊後における経済の長期停滞の原因をどうみるか
放送日変更のお詫び 2月13日に戸田院長が出演する とのお知らせをしていましたが、 前日の2月12日になって、 突然テレビ局から連絡があり、
1.ジャーナリズムとニュース 2.テレビニュースの流れ 3.テレビ報道は何をどう伝えるべきか
親の支配権が及ぶ範囲で、過度な芸を含むバラエティー番組を見せるべきではない。
歌手で俳優の福山雅治さんと俳優の吹石一恵さんが、今日(28日)結婚したことを、2人の所属する事務所を通じて発表しました。
1.視聴率とは 2.視聴率の算出方法 3.視聴率は誰のためのものか
講義の背景にあるテキスト: 小林修一・加藤晴明『<<情報>>の社会学』 加藤晴明『メディア文化の社会学』
日本と韓国の沐浴文化 정혜인.
川越市市民講座 2008.6.23 7.7 7.14(3回) シニア情報生活アドバイザー 山家 澂
MS製開発ツールの歴史とか….
4大メディア+1の未来を予想する ~新聞はネットの勢力に対抗できるのか~
1.日本の放送産業の基本的構造 2.日本の放送産業と法制度 3.技術革新と放送産業
安心してネット上でコンテンツを流通できる環境の形成
2節 なぜ消費者行動が重要になってきたか(市場の変化)
~「日本の奇跡」の背景を知ろう~ (3時間) 1 戦争直後の日本経済 2 高度経済成長 (本時) 3 高度経済成長のその背景
コンテンツ・クリエイティビティ・ビジネス
3 週刊新聞の発生 1609年 Aviso (Avisa)Relation oder Zeitung
第11課 陳志文.
外国ジャーナリズムⅠa:2016 アジア・オセアニアのマス・メディア/ジャーナリズム
外国ジャーナリズムⅠa:2017 アジア・オセアニアのマス・メディア/ジャーナリズム
現代マス・メディア、マス・コミュニケーションの成立の歴史をたどる 参考文献 授業頁 授業資料
メディア業界の戦略構想 ~放送と通信の融合の最前線から~
私たちの暮らしとエネルギー ー現在、過去、未来ー
現代マス・メディア、マス・コミュニケーションの成立の歴史をたどる 参考文献
補足資料.
経営学部 商学科 国際ビジネスコース 岡本隼人
論文紹介 ブランド・マネジメント 定番キャラクターの共通要因
福岡東在宅療養シンポジウム 在宅介護経験者の体験談 2 実話に基づいた寸劇 「ひとり住まいでも大丈夫」 民生員さん達も参加.
本部のバックアップ機能設備、ロボットカメラの機能強化
1DS04167N 稲益晃仁 1NC04010M 久保綾子 1DS04199Y 堀江孝志
3.表現メディアの特性 文字=日時や数値などを正確に伝えることに適している (例)新聞,法律,小説
楊アオ.
日本でのシェア住居と日本での住まい方 MR9068 吉村勇輝(ヨシ).
ジェンダー学:様々な分野の中のジェンダー分析の対象
厚生白書 人口減少社会の到来と少子化への対応 971221 波多野宏美.
子どもの幸せ 社 社会を動かす! 質問1: あなたが幸せだと感じる瞬間は? 質問2: 友だちの話をじっくり「聴いた」とき、
平成から「令和」へ 日本の針路 情報パック4月号.
Presentation transcript:

日本のテレビ放送の歴史 国産テレビの誕生、放送番組の歴史(2) 1.日本のテレビ放送の歴史区分 2.1950年代ー街頭テレビから家族視聴へ 3.1960年代ーカラー化とテレビの定着 4.1970年代ー視聴様式の変化 5.1980年代ーニューメディア時代の幕開け 6.1990年代ー多メディア多チャンネル時代の到来 7.2000年以降ー放送のデジタル化とネット対応

1.日本のテレビ放送の歴史区分 (1)テレビの平均視聴時間でみた区分(田中・小川, 2005) 成長・発展期(1953~1970年代前半) テレビが急速に日本人の生活に浸透し、最も身近なメディアとなった時代。視聴者の旺盛な視聴意欲に支えられ、テレビ視聴の基本的枠組みが形成された。 停滞・減少期(1970年代後半~1980年代前半) 意識面でのテレビ離れが生じ、視聴時間量が停滞し減少した時期。 回復・堅調期(1980年代後半~) 視聴時間が増加に転じ、よく見られるようになったが、機能面に対する批判が強まりテレビ視聴が成熟した時期。

(2)テレビと家族関係の変遷でみた区分(井田, 2004) テレビ普及と家族視聴の時期(1953~1974年) ・濃密な家族視聴が誕生した時期(家族団欒) ・家族みんなで1台のテレビを視聴することで、家族の一体感を味わうことができた。 ・テレビは家族の求心力を高めるための道具であった。 ・テレビが“マイホーム”を作りだした。 ・“ホームドラマ黄金期”と重なる。 テレビと家族の関係が揺らぎだした時期(1975~1984年) ・家族を分散させるテレビ(個別視聴)⇔家族の空白を埋める テレビ。 ・辛口ドラマ(『岸辺のアルバム』)、積極的・主体的に生きる女 性像を描くドラマ(『金曜日の妻たちへ』『くれない族の 反乱』)の出現。

個別視聴が進行した時期(1985年~) 個別視聴の拡大とテレビとの団欒。 「ホーム・レス」なドラマ=トレンディ・ドラマが、若い女性の新しい恋愛や生き方を提示。 テレビを1人で見たい人が増加(2000年には「他の人と一緒に見たい」と「1人で見たい」が35%ほどで拮抗)。 家族全員で夕食を食べる家庭も減少。子供一人で食事をする「孤食(個食)」が夕食でも見られるように。家族団欒もなくなる。 テレビの中の団欒(タレントたちのおしゃべり)に画面越しに参加するようになる。 テレビをつけたままにし、自分の部屋に団欒の空気を漂わせる(「個人を包み込む空気」としてのテレビ)。

(3)受信契約数でみた区分(NHK放送世論調査研究所, 1983) 成長期(1953~1962年) 契約数が全世帯の半数に達し、視聴者と視聴量が増大した時期。 発展期(1963~1972年) カラ―放送が始まり、カラ―契約白黒契約を上回った時期。 成熟期(1973年~) 視聴量が頭打ちとなり、集団視聴から個人視聴へと視聴形態が変わっていった時期。

(4)10年ごとの区分(NHK放送文化研究所, 2003) ラジオからテレビへ(~1964年) 白黒テレビが普及 娯楽メディアから総合メディアへ(1965~1974年) カラーテレビが普及 テレビの日常化と個人化(1975~1984年) テレビの複数台所有が一般化 テレビ特性の再認識(1985~1994年) リモコンが普及 メディア環境の変化(1995年~)

2.1950年代ー街頭テレビから家族視聴へ 高度経済成長 1953年 1日4~6時間 受像機 18万円 街頭テレビ 1950年代後半 受像機 18万円 街頭テレビ 1950年代後半 1日8時間 受像機 6万円 三種の神器 高度経済成長

写真1 新橋駅西口広場で街頭テレビに見入る人々 写真1 新橋駅西口広場で街頭テレビに見入る人々

ジェスチャー(NHK, 53~68) 私の秘密(NHK, 55~67) 番頭はんと丁稚どん(毎日, 59~61) クイズ・お笑い ジェスチャー(NHK, 53~68) 私の秘密(NHK, 55~67) 番頭はんと丁稚どん(毎日, 59~61) 光子の窓(日テレ, 58~60) ドラマ 日真名氏飛び出す(KRT, 55-62) 東芝日曜劇場(KRT, 56~) 私は貝になりたい(KRT, 58) アメリカ映画 名犬ラッシー(KRT, 57~64) アイ・ラブ・ルーシー(NHK, 57~60) ヒッチコック劇場(日テレ, 57-62) ペリー・メイスン(フジ, 59-68)

3.1960年代ーテレビの定着とカラー化 (群衆視聴) 街頭テレビ  (近隣視聴)     テレビ もらい湯 (家庭視聴)    テレビ 茶の間

受信契約数 視聴時間 1961年9月 テレビがラジオを追い越す 1962年3月1000万台突破 1962年10月全国世帯の半数 1961年9月 テレビがラジオを追い越す 1962年3月1000万台突破 1962年10月全国世帯の半数 視聴時間 1960年平日 56分   (ラ 1時間34分) 1965年平日 2時間52分(ラ 27分)

カラー化 衛星中継 1960年9月 NHK(東京・大阪)、民放(日本テレビ、KRT、朝日放送、読売テレビ)で本放送。 1964年9月 フジテレビ、1967年4月 NETでカラー放送開始。 1965年10月 東京オリンピック。 1972年3月 カラー契約>白黒契約。 衛星中継 1963年11月 日米間衛星テレビ中継。 ケネディ米大統領暗殺事件。 1965年10月 東京オリンピック、アメリカを介してヨーロッパへ衛星中継。 1969年7月 アポロ11号月面着陸。

ワイドショー 朝・昼・夜の時間帯に定着 木島則夫モーニングショー(NET, 64年4月~68年) スタジオ102 (NHK, 65年4月~80年) 小川宏ショー(フジ, 65~82年) アフタヌンショー (NET, 65~85年) 3時のあなた(フジ, 68~88年)  11PM(読売テレビ, 65~90年)

バラエティ番組 長寿番組 水戸黄門 (TBS, 69~11年) サザエさん (フジ, 69~) 8時だョ!全員集合(TBS, 69~85年) サザエさん        (フジ, 69~) バラエティ番組 8時だョ!全員集合(TBS, 69~85年) 巨泉・前武のゲバゲバ90分(日本テレビ, 69~70年) コント55号の裏番組を吹っ飛ばせ(日本テレビ, 69~70年)

4.1970年代ー視聴様式の変化 1970年 3時間5分 1975年  3時間19分 1980年   3時間17分 70年代の平均視聴時間の変化

テレビ報道の確立 テレビで事件が生中継される あさま山荘事件(72年2月, 総世帯視聴率約90%) 佐藤栄作首相 退陣表明会見(72年6月) テレビで事件が生中継される                あさま山荘事件(72年2月, 総世帯視聴率約90%)  佐藤栄作首相 退陣表明会見(72年6月)  ニュースセンター9時(NHK, 74年4月~88年) RABニュースレーダー(青森放送, 70年4月~)

ホームドラマ 70年代前半はTBSのドラマ全盛期 時間ですよ(TBS, 70年) ありがとう(TBS, 70年) つくし誰の子(日本テレビ, 71年) 前略おふくろ様(日本テレビ, 77年)

新しいジャンルの開拓ー編成の時代 部局横断的番組 NHK特集(NHK, 76年~、89年からはNHKスペシャル) 大型ドラマ   海は甦る(TBS, 77年8月、3時間ドラマ) チャリティー番組 24時間テレビ・愛は地球を救う(日本テレビ, 78年)

5.1980年代ーニューメディア時代の幕開け 1980年代半ばに登場したニューメディア ・文字放送 ・音声多重放送 ・衛星放送 ・都市型ケーブルテレビ ・高度情報通信システム

一般家庭でテレビ視聴に影響を与えたツール 複数のテレビ受像機 個別視聴 家庭用ビデオ録画機 タイムシフト視聴 赤外線リモコン ザッピング

ニュース戦争 ニュースステーション(テレビ朝日, 85年10月) ⇒プライムタイムにおける報道番組 ニュースステーション(テレビ朝日, 85年10月)       ⇒プライムタイムにおける報道番組 フィリピン マルコス政権崩壊(86年2月) 天安門事件(89年6月) ベルリンの壁崩壊(89年11月) ルーマニア チャウシェスク大統領夫妻処刑(89年12月)

6.1990年代ー多メディア多チャンネル時代の到来 多メディア・多チャンネル化は90年代を通して進行 ・1989年6月 NHK 衛星本放送を開始 ・1989年6月 放送法改正 ⇒受託放送事業者と委託放送事業者の誕生 ⇒CS放送開始 ・1990年11月 民放の衛星放送(日本衛星放送, JSB, 通 称WOWWOW)開局

7.2000年以降ー放送のデジタル化とネット対応 放送のデジタル化の先駆けはCS放送             1996年10月 パーフェクTV! 1997年12月 ディレクTV 2000年12月 BS放送でデジタル放送開始 2003年12月 地上波放送のデジタル化開始 放送のデジタル化がもたらしたこと

参考文献 井田美恵子 (2004). テレビと家族の50年―“テレビ的”一家団らんの変遷 NHK放送文化研究所年報, 48, 111-144. 川竹和夫(編著) (1983). テレビの中の外国文化 日本放送出版協会 NHK放送世論調査所(編) (1983). テレビ視聴の30年 日本放送出版協会 NHK放送文化研究所(編) (2003). テレビ視聴の50年 日本放送出版協会 岡村黎明 (1988). テレビの社会史 朝日選書 田中義久・小川文弥(編) (2005). テレビと日本人ー「テレビ50年」と生活・文化・意識 法政大学出版会