聖隷三方原病院 浜松がんサポートセンター 井村 千鶴 聖隷三方原病院 ホスピス 天野 功二 浜松医科大学医学部附属病院 山田 絵莉子

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何でもおたずねください 長崎がん相談支援センター 長崎がん相談支援センター 吉原律子・平山美香・木場英郎 緩和ケア普及のための地域プロジェクト 野田剛稔・藤井 卓 白髭 豊・ 鳥山ふみ子 長崎がん相談支援センター.
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私たちはどうして虐待をしてしまうのか? 誰もが利用者の生活が豊かになることや社会参加を願って福祉の仕事に就いていると 思います。初めから虐待しようなんて思って仕事に就いている人はいないはずです。 ○愛情というエネルギーはとても大きい →自分の思うようにいかないと怒りになります。 ○自己欲・支配欲のエネルギーはとても大きい.
講師紹介 神山 晃男(かみやま あきお) 1978年5月12日生まれ 長野県伊那市出身 慶應義塾大学法学部政治学科卒業
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第6章 ホスピス・在宅ケアについて何を知っておくべきか?
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2007年10月14日 精神腫瘍学都道府県指導者研修会 家族ケア・遺族ケア 埼玉医科大学国際医療センター 精神腫瘍科 大西秀樹.
モジュール 7 喪失・悲嘆・死別 End-of-Life Nursing Education Consortium Japan
学習目標 1.在宅療養者の特徴を理解する. 2.在宅療養の成立条件を理解する. 3.地域社会やシステムの改善の必要性を理解する. 4.保健・医療・福祉の連携の必要性を理解する. 5.施設と在宅を結ぶ看護継続の視点を理解する. 6.在宅看護の継続の視点とそのしくみを理解する. SAMPLE 板書(授業終了まで消さない)
スピリチュアルケアとしてのReflection
てんかんという病気に 向かい合うために ・家族内力動について
WHO Definition of Palliative Care (2002)
作業療法の効果を目指す アセスメントと治療操作の考え方
Evidence-based Practice とは何か
City of Hope: Caring for both children and the elderly
「“人生の最終段階における医療” の決定プロセスに関するガイドライン」
  東海地区医学図書館協議会   患者の立場からの図書館利用について   愛知医科大学 看護学部       渡邉美千代.
事例を読んで、事前にポイントを記入してください。
輝いて、自宅で ~終わりよければすべてよし~
がん患者の家族看護 急性期にあるがん患者家族の看護を考える 先端侵襲緩和ケア看護学 森本 紗磨美
各論1A【症例2】 訪問看護 1 痛みは緩和できているが寝たきり →本人の希望?ポート、カテーテルによる?
末期がん 【症例2】 ・口腔衛生不足 ・歯科疾患(う蝕・歯周病) ・口腔乾燥、口内炎、出血、 味覚異常など ・摂食嚥下機能低下
地域リハビリテーション -訪問リハビリテーションを中心に-
生活支援 中央研修 H26.9.4(木)~5(金) 品川フロントビル会議室 H26.9.6(土)~7(日) JA共済ビルカンファレンスホール
筑波メディカルセンター病院 緩和ケア病棟 佐々木智美
背景:在宅医療の現状と意義 入院・外来に次ぐ『第三の診療体系』として 入院 外来 在宅 意義 ・多様化する病態や『生き方』への対応
先輩インタビュー 看護補助者 櫻岡 愛莉さん A3病棟(消化器内科・外科) 浜松東高等学校 2015年卒 看護補助者 水野 萌子さん
2.介護に必要な「時間」に置き換えて「要介護度」を判定します。 聞き取った「心身の状況(5項目の得点)」から直接、「要介護度」を求めることはできません。病気の重さと必要な介護量は必ずしも一致しないからです。 そこで、調査結果をコンピュータに入力し、その人の介助にどのくらいの「時間」が必要なのかを推計することで、介護の必要量の目安としています。この「要介護認定基準時間」を用いて要介護度を判定します。
事前指示書作成における当院血液透析患者の現状意思調査
在宅医療施策の取組状況と今後の展開(案)
緩和ケアチームの立ち上げ (精神科医として)
南魚沼市民病院 リハビリテーション科 大西康史
PEACE Palliative care Emphasis program on symptom management and Assessment for Continuous medical Education 1.
平成25年 (2013) NPO法人 ホスピスケアを広める会
若年性認知症の人への支援 若年性認知症支援コーディネーター これらの支援を一体的に行うために を各都道府県に配置
Ⅳ.生活支援コーディネーターが行うべきアセスメントと支援の視点
乳がん患者が、子どもへ病気を説明する際の精神的苦悩
未病はなぜよくならないのか? 医療者の問題 ① 未病をみることができない ② 健診に携わる医師や総合内科医の不足 ③ 患者さんとの意思疎通力の不足 患者さんの問題 ① 未病の概念をしらない ② 「薬」に対する絶大な信仰心.
浜松医科大学附属病院・磐田市立総合病院 チャイルド・ライフ・スペシャリスト 山田 絵莉子
Presentation transcript:

聖隷三方原病院 浜松がんサポートセンター 井村 千鶴 聖隷三方原病院 ホスピス 天野 功二 浜松医科大学医学部附属病院 山田 絵莉子 2009/1/27 OPTIM 緩和ケアセミナー 家族ケア 聖隷三方原病院 浜松がんサポートセンター 井村 千鶴 聖隷三方原病院 ホスピス       天野 功二 浜松医科大学医学部附属病院   山田 絵莉子

本日のメニュー Ⅰ 緩和ケアにおける家族ケア Ⅱ がん患者を家族に持つ子ども達のケア Ⅲ チャイルド・ライフとグリーフケア

家族とは 家族とは,絆を共有し,情緒的な親密さによって互いに結びついた,しかも,家族であると自覚している,2人以上の成員である      Friedman

家族  家族メンバーの変化は必ず家族全体の変化   となって現れる  家族の力は総和以上のものとなる  家族は変化に対応して安定をとり戻そうとする

がん患者の家族の体験 家族はケアの提供者・キーパーソン しかし,患者とともに悩み,苦しむ存在でもある ・心理的サポートの提供(家族自身の感情の抑圧) ・さまざまなケアの提供 ・意思決定の共有 ・経済的問題 ・家族の安定の維持 ・変化への適応

がん患者の家族を知る がん患者とその配偶者は,がんの全過程を通じて,同じレベルの強い精神的苦痛を経験している.相互の気持ちの理解を促進するコミュニケーションが重要 がん患者の家族の10-30%に何らかの精神医学的な疾患(不安・抑うつなど)が認められる 家族の受診率は低く,サポートが十分ではない可能性がある 介護する家族の身体状態   免疫能の低下,心疾患,慢性的な睡眠障害が多い

がん患者の家族へのサポート がん患者の家族 Second-order patient <第二の患者> がんは「家族の病気」として扱われなければならない (Holland)

End of Life -介護における家族の負担- 介護のための時間とロジスティックス   昼夜を問わない介護 身体的負荷   移動の補助など 経済的負担  精神的負担   悲しみ,罪悪感,怒り,不全感,不安・抑うつ 健康のリスク   介護負担のある老齢の家族の死亡率は高い Rabow et.al ,JAMA 2004

End of Life 家族へのサポート - 医療者に期待される役割 - 家族とのよいコミュニケーション ケアプランを進め,意思決定をサポートする   意向や価値観について話し合う 在宅ケアへのサポート “家族は自分たちが何を知らないかを知らない” 精神的負担へのサポート   家族の気持ちへの共感 悲嘆のケア 患者が亡くなった後も家族にかかわる等 Rabow et.al ,JAMA 2004

Davies B , Textbook of Palliative Nursing 2006 2009/1/27 緩和ケアにおける家族ケア 患者・家族の希望を保つためのケア   治癒への希望・・・苦痛の緩和,安楽,good death ケア全面における家族へのかかわり   意思決定    患者の身体ケアへの参加   子どもたちへのサポート 情報提供   これから起こること(体の変化,変化のプロセスなど) オープンなコミュニケーション Davies B , Textbook of Palliative Nursing 2006

End of Life 家族のニーズ 患者の状態を知りたい 患者の側にいたい 患者の役に立ちたい 感情を表出したい 2009/1/27 End of Life 家族のニーズ 患者の状態を知りたい 患者の側にいたい 患者の役に立ちたい 感情を表出したい 医療従事者から受容と支持となぐさめを得たい 患者の安楽を保証して欲しい 家族メンバーからのなぐさめと支持を得たい 死期が近づいたことを知りたい   (Hampe , S.O)                                                     夫婦間(患者ー家族間)で対話の時間をもちたい 自分自身を保ちたい          (鈴木)

家族ケアのポイント 患者・家族にとって重要なこと,ゴールを共有する 患者・家族のニーズを満たす 病状の理解・対処ができるようにサポートする 家族内のコミュニケーションを促進する 患者・家族の意思決定をサポートする 家族の悲嘆を理解し,ケアする 死や死のプロセスについて話し合う ライフレビュー等を通じて新たな意味づけを支援する 準備することをサポートする(未整理の仕事など)

予期悲嘆 大切なひととの別れなど,喪失を予期して嘆き悲しむ こと.死別に対するこころの準備を整え,死別が現実 のものとなった時,その衝撃や悲嘆を少しでも軽くする のに役立つといわれる ① 第一期 感情,思考の麻痺 ② 第二期 悲しみ,怒り,罪悪感 ③ 第三期 死別が近いという現実への認知的対処 家族の感情を受け止め,必要な時には感情表出を促す

患者・家族の視点からのサポート 希望をコミュニケートする ・希望を共有する どうすれば希望がかなえられるかという視点をもって コーディネーションする ・実現可能な目標の探索をサポートする ・できることを提示する 身体症状の緩和,心理的サポート,ケア,尊厳の維持 ・一日一日の生活に焦点をあてる

患者・家族の視点からのサポート ・医療者への非難 ・民間療法 ・面会に来ない家族 問題と捉えるのではなく, ・医療者への非難 ・民間療法 ・面会に来ない家族 問題と捉えるのではなく, 言動の背景にある家族の感情に気づく    自責感,無力感,状況への怒り,否認    そばにいられない気持ち    苦しみの意味への問い 「気づいてあげられなかった」「何もしてやれない」

まとめ  家族の個別の体験を知り,サポートする 家族それぞれのありように寄り添う 家族の“たえざるゆらぎ”を支え続ける