『失業克服の経済学』 橘木俊詔著 E040037 市野 翔
第1章 失業する人は誰か 失業する人…若年と高年に集中 失業者を出現させている産業…建設・製造・流通・金融業 第1章 失業する人は誰か 失業する人…若年と高年に集中 失業者を出現させている産業…建設・製造・流通・金融業 企業規模別の差・職業による差 → あまりない (ただし、従業上の地位の差、パートタイマーや派遣労働者は失業者になる確立が相当高い。) 失業する理由…非自発的な場合(倒産やリストラ)が急増 次の職が見つからない → 若年…ふさわしい仕事に遭遇していない → 中・高年…年齢と賃金
第2章 失業率はなぜ高くなったか 原因 (これがすべてではない。これらの要因が複雑にからまったもの。) 産業構造の変化と空洞化 第2章 失業率はなぜ高くなったか 原因 (これがすべてではない。これらの要因が複雑にからまったもの。) 産業構造の変化と空洞化 規制緩和策の影響 公共・民間投資の減少 家計消費の低迷 高い賃金払い 企業経営の不振と倒産 労働市場におけるミス・マッチ
第3章 失業の経済学 4つの理論(わが国の失業の実態を考えて) 賃金を代表にして労働コストが高いこと 有効需要の不足がある 第3章 失業の経済学 4つの理論(わが国の失業の実態を考えて) 賃金を代表にして労働コストが高いこと 有効需要の不足がある 労働市場におけるミス・マッチの存在 物価下落というデフレの状態にある
失業を理解するうえで重要な視点 労働保護 職探しの理論 賃金決定の中央集権型・分権型 プロフィット・シェアリング
第4章 失業保険制度の充実を わが国の失業保険制度…他の先進諸国、特にヨーロッパ諸国と比較すると、給付額と給付期間の双方で見劣る。 第4章 失業保険制度の充実を わが国の失業保険制度…他の先進諸国、特にヨーロッパ諸国と比較すると、給付額と給付期間の双方で見劣る。 失業保険への加入資格が厳しい、失業保険に加入しない人がいる → 公的な強制保険制度の精神に反する。 ⇒ 制度改革が望まれる。 保険財政の健全化のため、保険料アップ。 給付決定が、過度に年齢や勤続年数に依存。
第5章 危険なインフレ・ターゲティング デフレ解消、あるいは不況からの脱出のために、意図的に物価上昇を行う(=インフレ・ターゲット論)には、賛否両論がある。
◎4つの理由 世界一高いわが国の物価水準を意図的に上げるのは、「内外価格差是正」を政策目標にしていたことと矛盾する。 意図的に物価を上げる手段、特に金融政策に関していえば、実行可能性に限界がある。 新規国債の日銀引受けや日銀による株、土地の購入という強硬策は、臨界点を超えたインフレになる恐れがある。 不況対策としての代替案があるので、まだインフレ・ターゲティングという非常手段の時期ではない。(不良債権処理の必要性)
もう1つの問題点 政府当局が日銀を、日銀が政府当局を、といったように、政策担当の相手側に責任を押しつける雰囲気がややある。
第6章 ワークシェアリング 雇用維持型と雇用創出型 わが国は雇用維持型を目指す → 手探り状態 雇用創出型には程遠い
第7章 豊かさを分かち合う精神を ワークシェアリング = 「豊かさを分かち合う」精神の発露 第7章 豊かさを分かち合う精神を ワークシェアリング = 「豊かさを分かち合う」精神の発露 税金で分かち合う…国民の多くから、特に高所得者から税を徴収して、その財源を国民の教育や職業訓練に支出して、国民の資質向上に努める方法。多くの国民の労働生産を高めるし、失業の低下にも貢献する。
第8章 望ましい労使関係を求めて 「終身雇用」「年功序列」「企業別組合」→ 大きな変革期にある 「終身雇用」「年功序列」「企業別組合」→ 大きな変革期にある 「労働流動化」「能力・実績主義」「労働組合の変化」 労使関係のあるべき姿…協調的な労使関係 うまくいっていたのは、大企業のフルタイマーを中心とした労働側と経営側が協調関係にあったことによる。中・小企業では、労働条件が劣っていた為に労使関係は満足できるものでなかった。
第9章 企業活力強化に向けて 失業者を生まない為、雇用者の数を増加するには、企業の活性化が必須 企業活性化の具体策 第9章 企業活力強化に向けて 失業者を生まない為、雇用者の数を増加するには、企業の活性化が必須 企業活性化の具体策 労働賃金や社会保険料負担の削減策 企業の福祉からの撤退 規制緩和や競争促進 付加価値の高い産業へのシフト 売上高の上昇や法人税の減税を含んだコストの削減 労務管理やコンポレート・ガバナンス
第10章 失業を減らすための政策 失業問題は解決できる。国民と企業が失業問題に危機感を共有して事にあたれば、失業者の数は減る。 そのために、 第10章 失業を減らすための政策 失業問題は解決できる。国民と企業が失業問題に危機感を共有して事にあたれば、失業者の数は減る。 そのために、 政策の根幹として、 ①ワークシェアリング(労働時間短縮を中心とした仕事の分かち合い) ②時間あたりの賃金率の低下策
これらによって労働者の名目所得水準はやや落ちるが、デフレ下なので物価の下落と、名目賃金(名目所得)の下落が同時に進むので、実質所得の低下は少しですむ。 ⇒ 家計消費への影響は非常に限定的となる。むしろ、失業から脱却して新しく職を得た人たちの新しい所得と、パートの人たちの所得が加わるので、消費の増加が期待できる。
労働時間短縮によるゆとりある生活は、賃金の減少を補うものがある。 時間あたり賃金率の下落による労働費用の節約効果は、企業の活性化と利潤の向上に役立つ。 新しい人を雇用できる余裕が生じるメリットが、第1の目的。
国民の失業に対する不安感の解消 ⇒ 社会保険制度の改革 労働市場に存在する求人・求職のミス・マッチを最小に。 労使の協調関係 企業の福祉からの撤退 企業に活力をあたえる政策 新しい仕事、新しい企業、新しい産業の創出
参考文献 『失業克服の経済学』 橘木俊詔著 岩波書店 2002・6・6