はじめに 民主党はマニフェストに記載された両施策実施に向け検討 「人と環境にやさしい交通」の実現に対して逆行 両施策の不合理性と代替案を整理.

Slides:



Advertisements
Similar presentations
日本再生と復興の条件 産経新聞特別記者 田村秀男 2011年6月 30 日. 日本のデフレは 1997 から始まった.
Advertisements

ふるさと納税 名古屋大学 柳原光芳ゼミナール. 発表の流れ  研究動機  ふるさと納税の概要説明  研究の流れ  地方交付税とは  ふるさと納税による地方交付税への影響の分析 ( 結果 )  ( 国から地方自治体 B に資金が流れていた場合の考察 )  ( 地方自治体 A から地方自治体.
2005/2/23 長野県経営者協会 1 これからの税財政・社会保障 と 企業の対応 2005 年 2 月 23 日 日本経団連 藤原清明.
本牧LRTの 実現に向けて 平成 18 年 2 月 7 日. 1 交通に関する時代の状況 LRTへの期待感の向上 – クルマへの過度の依存への反省 – 環境・高齢社会への対応 – 都市再生、中心市街地の活性化 – コンパクトシティ、TOD 各人が個別交通システムを所有 → 共用交通システムを利用.
近畿税理士会 平成 27 年 中学生用Ⅱ. 1. 税理士って何です か? 納税者(個人や会社)が税金を納める計算をするお手伝いをし ています。 税金のことでわからないことがあったら相談にのります。 納税者の代わりに税務署などと、話し合いをします。 信頼のバッジ 1.
最近の税制改正について 08bc134k 畑 優花 /17. 「 2011 年度税制改正」を創設するために、 ここ数カ月で様々な提案がなされている。 たばこ税 ペット税 環境税 エコカー減税 法人税減税 論点証券優遇税制 今回の発表.
1 経済学-第 9 回 医療保険① 2008 年 6 月 6 日. 2 日本の公的医療保険  制度の目的  制度体系  給付と負担.
制度経済学Ⅰ ①. 制度経済学とは何か 制度 institutions 最も根本的な制度は・・・・ 言語、法、貨幣 いずれも経済、そして経済学に関係する それらなしに、経済は成立しない.
否定派 ロードプライシン グ導入の是非. ロードプライシングとは? 特定の道路や地域、時間帯における自動車 利 用者に対して課金することにより、自動車 利用 の合理化や交通行動の転換を促し、自動車 交 通量の抑制を図る施策 前提条件 今回のディベートでは、 交通量が著しい一般道路を対象 導入達成を「2020年東京オリンピッ.
租税の基礎理論 財政学(財政学B) 第 2 回 畑農鋭矢 1. 日本の税負担は重いのか? 主要先進諸国の税負担率(%, 対 GDP 比) 出所:畑農・北野・中東 「租税構造の国際比較 」 PRI Discussion Paper Series 03A-22 .
ミクロ経済学I 10 丹野忠晋 拓殖大学政経学部 2016年7月6日
  環境税導入の是非     -否定派-     神野・上原・入江.
多々納 裕一 京都大学防災研究所社会システム研究分野
乗数効果 経済学B 第6回 畑農鋭矢.
エコ税制.
産業経済学A 12 丹野忠晋 拓殖大学政経学部 2016年7月19日
1.クルマ離れと 鉄道の活躍への期待.
公共経済学 24. 地方分権と政府間の役割分担.
ベーシックインカム導入の是非 肯定派 神谷・棚倉・水田・安塚.
赤井伸郎 大阪大学大学院国際公共政策研究科 教授
トラック事業の現状と課題.
租税の基礎理論 財政学(財政学B) 第1回 畑農鋭矢.
第6章 税金と財政の あり方を考える.
第16章 総需要に対する 金融・財政政策の影響 1.総需要曲線は三つの理由によって右下がりである 資産効果 利子率効果 為替相場効果
大阪都構想の是非 否定派 嘘 成田・下田・山本.
現代の金融入門   -第1章 金融取引- 08BA210Y  一二三 春菜.
6 需要、供給、および政府の政策.
東北地方の 二重ローン問題         10bd020p 小瀬村 愛子.
企業再生支援機構 2010年6月18日 08BC101Z 高橋幸弓.
入門B・ミクロ基礎 (第7回) 第4章続き 2014年12月1日 2014/12/01.
再分配政策 公共経済学(財政学A ) 第7回 畑農鋭矢.
内航海運活性化・グリーン化に関する懇談会 中間とりまとめ【概要】
地方公共財とクラブ財.
民営化とグローバリゼーション 国家の役割は何か.
第四章ケース紹介.
電力自由化の是非 肯定派.
公共政策大学院 鈴木一人 第7回 政治と経済の関係 公共政策大学院 鈴木一人
名古屋市の自動車から排出される CO2を削減するには
書評 五十嵐敬喜・小川明雄/共著 『道路をどうするか』 岩波新書、2008
労働運動への発信 Common Sense              号外 2011.4.29 政権を取って財源がないことに気付いたからできないものをはっきりさせる-マニュフェスト政治の破たん‥‥。 ウソの看板で票を集めた言われかねない行為に結果として加担したという自責の念すらある。
政府の経済的役割 平成16年 6月 18日(金).
租税の基礎理論 財政学B(財政学) 第2回 畑農鋭矢.
現代の経済学B 植田和弘「環境経済学への招待」第1回 第1章 自然と人間の共生へ 第2章 環境経済学入門 京大 経済学研究科 依田高典.
人と環境にやさしい交通を目指す全国大会 in 京都
経済情報入門Ⅱ(三井) 公共事業と社会保障.
多額の税金投入を 要しない鉄軌道事業の実現
NPOのミッション・課題 ・・・・・・ミッションが命!!・・・・・・
市場の失敗と政府の役割 経済学A 第8回 畑農鋭矢.
公共政策大学院 鈴木一人 第7回 政治と経済の関係 公共政策大学院 鈴木一人
前期ゼミまとめ スラックス経済.
道路特定財源の見直しにあたっては「納税者の理解」が前提
財政論I / II introduction 麻生 良文.
公共経済学 24. 地方分権と政府間の役割分担.
暫定税率 (ガソリン税) 相模原新宿教室 高1 K.K.
市場の失敗と政府の役割 経済学A 第9回 畑農鋭矢.
第8回講義 マクロ経済学初級I .
2017年度版  フード連合 産業政策.
地球温暖化防止に必要なものは何か E 石井 啓貴.
日本大学 理工学部 社会交通工学科 平成20年度 前期 軌道工学 第4回(後半) 満員電車がなくなる日(4) 第1章 満員電車の現状と歴史
公共経済学 23. 地方分権と政府間の役割分担.
ロードプライシングによる環境に優しい街づくり
財務的な観点からみた 新市立病院計画 小樽商科大学大学院 堺 昌彦
まちづくりと交通 (株)ライトレール 阿部 等
今までにないコスト合理化や収益拡大を目指す東電改革
有料道路事業(阪神高速)約1,600億円 【阪高出資金:なし】
2006. 9. 29 地域経済の展望と革新的企業        法政大学学事顧問               清成 忠男.
特集 『豊かなモビリティ社会』=「誰もが安全で自由な移動を享受できる社会」 ■政策1 「サポートカー限定免許」の創設
ミクロ経済学I 13 丹野忠晋 拓殖大学政経学部 2017年7月5日
ミクロ経済学I 11 丹野忠晋 拓殖大学政経学部 2018年7月4日
環境学 第9回目 (H ) 環境法と循環型社会 p.68~
Presentation transcript:

第4回「人と環境にやさしい交通を めざす全国大会」in 東京 高速道路無料化と暫定税率廃止の 不合理性と代替案 (株)ライトレール 代表取締役社長 阿 部   等 http://www.LRT.co.jp 平成21年12月5日

はじめに 民主党はマニフェストに記載された両施策実施に向け検討 「人と環境にやさしい交通」の実現に対して逆行 両施策の不合理性と代替案を整理

1.民主党のマニフェスト

(1) 高速道路無料化 原則無料化で地域経済を活性化 政策目的 具体策 所要額1.3兆円程度 流通コストを引下げて生活コストを引下げ 消費地へ商品を運びやすくし地域経済活性化 高速道路の出入口を増設して渋滞などを軽減 具体策 割引率の順次拡大などの社会実験を実施して影響を確認しながら高速道路を無料化 所要額1.3兆円程度

(2) 暫定税率廃止 目的を失った道路諸税の暫定税率廃止 政策目的 具体策 所要額2.5兆円程度 課税根拠を失った税を廃止し税制の信頼回復 2.5兆円減税で国民生活を守る、移動を車に依存する地方の負担軽減 具体策 ガソリン税等の暫定税率廃止して2.5兆円減税 将来、地球温暖化対策税(仮称)を創設、自動車取得税は廃止し消費税との二重課税回避 所要額2.5兆円程度

2.高速道路1000円施策の結果

(1) 激しい道路渋滞 高速道路の渋滞 インターチェンジ周辺一般道の渋滞 GWは前年の216回から420回 お盆期間は307回から482回 渋滞長も伸び、時間損失は計り知れない インターチェンジ周辺一般道の渋滞 生活破壊も

(2) 環境負荷の増大 環境負荷の軽い鉄道・高速バス・航路から自動車へ大量にシフト 土休日の高速料金引下げに伴うCO2排出増は204万t/年 貨物を含まず、高速道路の渋滞による排出増も加味しておらず現実より低めの試算 それですら、旅客・貨物合せた鉄道全体CO2排出826万t/年の4分の1

(3) 公共交通機関の経営への影響 鉄道・高速バス・航路 JR四国 フェリー会社 利用者・売上げとも大幅に減り経営へ大打撃 H19年度の260億円に対し21年度は▲32億円 18億円が景気悪化・新型インフルエンザ等 14億円が高速道路1000円施策 フェリー会社 瀬戸内海を中心に大きな影響を受け倒産も

(4) 地域の足の衰退と財政負担 バス会社の多く それを避けるために自治体は財政支援 高速バスでの収益を地域の路線バスへ 高速バスの経営悪化は地域の足の切捨て それを避けるために自治体は財政支援 財政支援して航路を維持している自治体も

3.高速道路無料化

(1) マニフェストに盛込まれた経緯 H15年のマニフェストから盛込み 高速道路無料化の発案者 経済評論家の山崎養世氏 「日本列島快走論」と称して多数の著作・論文 高速道路無料化は行き詰った日本経済・社会を再生へ導く

(2) 高速道路無料化で予測されること 1000円施策の4項目がより激しく起きよう 地域が活性化するとは言っても、 高速道路沿いが主体 自動車アクセスに向かない旧市街地や駅周辺はむしろ寂れ公平性を欠く 物流コストが下がるとは言っても、 コストではなく自動車利用のコスト負担が減る 自動車の非利用者から利用者へ所得移転 自動車利用を奨励することを意味

4.ガソリン税の暫定税率廃止

(1) 過去50年間の道路投資資金の流れ S33~H19年度の高速等を除く道路投資 自動車ユーザー “暫定的に”税率を高く=事実に反する 270兆円=国165兆円+地方105兆円 旧道路特定財源は155兆円、総投資の60%弱 残りは一般財源を投入 一般財源の投入比率は地方が高い 自動車ユーザー 便益の60%弱のみ費用負担 “暫定的に”税率を高く=事実に反する 50年間、自動車関係諸税を不合理に低く抑え、国を挙げて自動車利用を奨励

(2) 暫定税率廃止で予測されること 高速道路無料化と同様の弊害を助長 山崎氏は、高速道路無料化を賄う財源として道路特定財源の充当を提案 長距離ばかりでなく短距離の移動にまで影響 地域の公共交通を疲弊さす 山崎氏は、高速道路無料化を賄う財源として道路特定財源の充当を提案 両施策を同時に実施することは自己矛盾

5.両施策に代わる代替案

(1) 道路利用の受益者負担 社会の効率的資源配分の実現には、 道路特定財源制度 両施策は実施せず 受益と負担を一致させ需要と供給を適正化 ムダな道路作りの諸悪の根源? 入りと出を適切に司れば、本来は有効な制度 両施策は実施せず 一般財源の投入をやめて受益と負担を一致 税金と高速料金で集められる金額(=市場のサイン)を道路投資の上限に ムダな道路作りを止める

(2) 交通機関間の役割分担の調整 道路財源の一般財源化と高速道路無料化 自動車ユーザーは受益に応じた費用負担 道路投資の判断と交通機関間の役割分担を政治・行政に任せる 政治家と官僚は全知全能でなく理想実現せず 自動車ユーザーは受益に応じた費用負担 異交通機関に公平に競わせ望ましい分担 市場機構のみでなく政府の出番も 都市から所得移転し地方の重い負担を軽減 費用負担を適正化すれば自動車利用は減り大きな影響を受ける関連産業をケア

(3) 社会秩序維持と高速道路有効活用 税金による民業圧迫 公平な競争環境で敗れたなら、 高速道路1000円施策での敗者は犠牲者 フェリー会社が破綻し多くの労働者が失職 自由主義競争社会の根幹を揺るがす事態 公平な競争環境で敗れたなら、 市場から退場してもらうのが社会の発展 高速道路1000円施策での敗者は犠牲者 両施策は実施せず、 犠牲者の増大、社会秩序の崩壊、高速道路の機能喪失、環境負荷の増大、地域交通の衰退を防ぐべき

おわりに 多くの国民 本稿は民主党政権へのエール これを機に、 自民党と民主党のバラマキ合戦に辟易 過剰サービスや見かけの低負担でなく、持続可能な仕組みを求めている 本稿は民主党政権へのエール 高速道路1000円施策は、市場機構の活用放棄が社会へ弊害をもたらすことを充分に証明 これを機に、 道路利用の費用負担と交通機関間の役割分担の調整に関する合理的な施策実施を切望