5.4.1) 14族 C, Si, Ge, Sn, Pb : C, Siが非金属元素に分類されるが、Ge、aSnは半導体(金属でない)

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5.4.1) 14族 C, Si, Ge, Sn, Pb : C, Siが非金属元素に分類されるが、Ge、aSnは半導体(金属でない) 5章 共有結合 ②                12/14 5.4) 結晶 5.4.1) 14族 C, Si, Ge, Sn, Pb : C, Siが非金属元素に分類されるが、Ge、aSnは半導体(金属でない) ●C(carbon, 地殻濃度480ppm)より成るダイヤモンドは典型的なsp3共有結合結晶であり、巨大分子とも言える。結晶構造は閃亜鉛鉱型(CuCl型)で2種の元素を炭素にしたもの。充填率は0.340であり、高価な割に隙間だらけの物質である。 L Q O P

●重要な課題ダイヤモンドの大量・大型サイズ結晶の人工合成と、ダイヤモンドに導電性を付与できる手法の開発、新たな半導体素子 ●黒鉛、グラフェン、フラーレン、ナノチューブはp電子を含む炭素化合物である。 C60 C70 黒鉛 フラーレン ナノチューブ C60-C60

●Si(silicon,半導体・太陽電池の原材料、濃暗灰色結晶、地殻濃度277100ppm)。SiO2(二酸化ケイ素、シリカ、石英)として地殻に存在, 還元(電気的に)して99.999999999% (11N)とし半導体の基板に使用する。 バンドギャップが常温付近で利用するために適当な大きさであること、BやPなどの不純物を微量添加させることにより、p型半導体、n型半導体のいずれにもなることなどから、電子工学上重要な元素である。半導体部品として利用するためには高純度である必要があり、このため精製技術が盛んに研究されてきた。現在、ケイ素は15Nまで純度を高められる。 ●重要課題:SiO2→高純度Siの安価な精製技術 シリカ シリコン単結晶

14族、15族、16族の金属:Ge, Sn, Pb, Bi, Po ●Ge(germanium, 灰白色結晶、1.8ppm)はダイヤモンド構造の元素。初期のトランジスタに使われ、安定性に優れるケイ素(シリコン)が登場するまでは主流だった。石英を用いたレンズに添加すると屈折率が上がり、また赤外線を透過するようになるので、光学用途にも多用される。 ●Sn(tin, 地殻濃度2.2ppm)はスズ(灰色スズ)⇌スズ(白色スズ)⇌スズの3種の同素体があり、普通の金属スズはbで13.2℃でaに極めてゆっくり転移。金属スズを曲げると独特の音がするが、これはスズ鳴き (tin cry) と呼ばれる。結晶構造が変化することにより起こる。同様の現象は、ニオブやインジウムでもある。 スズはダイヤモンド構造の非金属で、Sn-Snの結合エネルギーは小さく、脆い。b →aの転移速度は30℃以下で急速に進み、腫物状に膨張しボロボロになる(スズペストとナポレオンのロシア遠征の敗退)。

●四塩化スズ(SnCl4 爆発性、水との反応でHCl発生)は常温で発煙性の液体(融点33 ●四塩化スズ(SnCl4 爆発性、水との反応でHCl発生)は常温で発煙性の液体(融点33.3℃)でありSn4+と塩素原子との結合はイオン的でなく共有結合。 ●銅との合金:青銅(ブロンズ)、鉛との合金は半田として利用、鉄板にメッキするとブリキ ●重要課題 毒性のない(鉛フリー)はんだの開発 ITO(indium tin oxide): 酸化インジウムと酸化スズの混合物で、透明な電導膜であり、液晶、有機ELの透明電極材料である。インジウム(地殻濃度0.049ppm)は中国のレアメタル戦略物質。 ●重要課題Inを含まない透明電極の開発

●Pb(lead, 地殻濃度14ppm)は金属、共有結合性はない。軟らかい金属で紙などに擦り付けると文字が書けるため、古代ローマ人は羊皮紙に鉛で線および文字を書き、これが鉛筆 (lead pencil) の名称の起源。 鉛蓄電池(自動車バッテリー)、放射線遮蔽材、 毒性:テトラエチル鉛(アンチノック剤)のような脂溶性の有機物質は細胞膜を通過して直接取り込まれるため、非常に危険である→ローマの滅亡。

表5.3 解離熱(kJ mol1)、単結合の結合エネルギー(kJ mol1) 共有結合結晶 解離熱 結合 結合エネルギー ダイヤモンド 715 C-C 347 O-O 138 Si 456 Si-Si 176 S-S 213 Ge 377 Ge-Ge 159 Te-Te Sn 305 P-P Au-S* 10の桁 *: Au-S結合は金の表面にチオール基の付いた分子を反応させて合成されるSAMs(自己組織化膜, 4章囲み6参照)に見られる。10 kJ/molの桁は実験より推定されたもの(H. Skulason et al., J. Am. Chem. Soc., 122、9750(2000)), 他に40 kJ/mol(計算: K. M. Beardmore et al., Chem. Phys. Lett. 286, 40(1998), 120 kJ/mol, 実験: R. G. Nuzzo et al., J. Am. Chem. Soc., 109, 733-740(1987))、209 kJ/molの報告もある。

表5.4 ダイヤモンド構造の炭素、ケイ素、Ge、Snの諸性質 融点 C 3572 1410 937.4 231.97 沸点 C 4800 2360 2830 2270 比重 3.515 2.33(18C) 5.32(25C) 5.80(20C)* 硬度 10 7.0 6.5 1.5 比誘電率 5.5 11.9 16.1 屈折率 2.417 3.35 4 4.70( = 1000 nm) 比抵抗 /Ωcm 0.61013(15C) 2.3105 46 11106 (20ºC) 相 g /eV (0 K) 5.4 1.17 0.744 金属 電子移動度 /cm2V1s1 1800 1350 3600 正孔移動度 /cm2V1s1 1200 480

2 1 半導体(semiconductor), 絶縁体(insulator) 伝導帯 ギャップ eg 価電子帯 4原子 (分子) 結晶 2原子 (分子) 伝導帯 ギャップ eg 価電子帯 1 1原子 (分子)

 宝石ダイヤモンド  ●大部分のダイヤモンドは有色であり、特に黄色(窒素が入ることによる)のものが多い。色がごく薄いもの(約10 %)が宝石となる。ただし、有色ダイヤモンドのうち青色や桃色の石は珍しく高価である。 スミソニアン博物館にあるホープのダイヤモンドはブルーダイヤモンド(結晶としてⅡ型B: 天然のダイヤモンドでは百万個に1個の割合)で、半導体の性質がある。青色は炭素にホウ素が入ることによる。 ジルコニア ●ブリリアンカットは58面カットをいう(屈折率2.4のダイヤモンドをもっとも美しく見せるための設計なので他の石には通用しない:合成ルチル、チタン酸 ストロンチウム、ジルコニアなど屈折率 がダイヤモンドに近いものは、ブリリア ンカットで美しい輝きを示す)

 宝石ダイヤモンド  ●モアッサンはフッ素の単離、電気炉の開発で1906年ノーベル化学賞を得た。他に、黄色のダイヤモンドの脱色やダイヤモンドの合成研究を行った。それは、熔融鉄に多量の炭素を溶かし込み急冷する方法で、ダイヤモンドの合成に成功したとされたが、その成功は助手の偽造による。ゼネラル電気の合成ダイヤモンドは、熔融したニッケルを溶媒に用いており、発想は類似である。 ●産地はロシア、ボツワナ、コンゴ、オーストラリア、南ア、カナダで全産出量15600万カラットの90%である(2004年)。人工ダイヤは1億カラット以上生産されている。   

ダイヤモンドの導電性 SF小説「アンドロメダ病原体」、「ジュラシック パーク」で著名な作家マイケル クライトンの作品に「コンゴ」がある。 コンゴの鉱山で青色のⅡ型Bダイヤモンドが発見される。ボロンを含む青色ダイヤモンドは102 cmの桁の半導体で、光を通し、融点が極めて高いことから、超高密度にトランジスターを搭載しても、発生する熱で融解することがない超LSIの基板として、シリコンに置き換わるものと判断した米国の半導体開発会社が、探索隊を派遣する所が序となる。 小説の中では、それまでに行われたダイヤモンドへのホウ素のドーピングは(p型ダイヤモンド)全て不成功であったと記してあるが、最近ドーピングが成功し、得られたダイヤモンドが超伝導を示すと報告された。次は、n型ダイヤモンドの開発が必要である。

ジョン・マイケル・クライトン(John Michael Crichton、1942年10月23日 - 2008年11月4日) アンドロメダ病原体 失われた黄金都市 ジュラシック・パーク

5.4.2) 共有結合+イオン結合  原子の電気陰性度(electronegativity)の違いにより、異種原子より成る共有結合結晶には何らかのイオン性が混入する。電気陰性度は、ポーリングおよびマリケンにより定義された2種がある。 ポーリングの電気陰性度:結合A-Bの解離エネルギー(eV単位)をD(A-B)とすると、結合A-B中のイオン構造A+Bの寄与は5.25式である。ポーリングはΔABの平方根を結合A、B原子の電気陰性度の差とし、この関係が多くの結合で満足するように各原子の電気陰性度の値xを決めた(表5.5)。金属の仕事関数 と5.27式で関係するとされたが、きわめて粗い近似である。 ΔAB=                            (5.25) (5.26)    = 2.27x + 0.34 eV (5.27)

色をつけた原子は、水素より電気陰性度の高いもので、水素結合を形成する。 表5.5 ポーリングによる原子の電気陰性度  H 2.20 Li 0.98 Be 1.57 B 2.04 C 2.55 N 3.04 O 3.44 F 3.98 Na 0.93 Mg 1.31 Al 1.61 Si 1.90 P 2.19 S 2.58 Cl 3.16 K 0.82 Ca 1.00 Ga 1.81 Ge 2.01 As 2.18 Se 2.55 Br 2.96 Rb 0.82 Sr 0.95 In 1.78 Sn 1.96 Sb 2.05 Te 2.10 I 2.66 Cs 0.79 Ba 0.89 Tl 2.04 Pb 2.33 Bi 2.02 Po 2.00 At 2.20 色をつけた原子は、水素より電気陰性度の高いもので、水素結合を形成する。 マリケンの電気陰性度:各原子のイオン化ポテンシャルと電子親和力との和を電気陰性度とした。                                    (5.28)

5.5  Ⅱ-Ⅵ、Ⅲ-Ⅴ化合物 ●Ⅱ-Ⅵ化合物、Ⅲ-Ⅴ化合物はイオン性と共有結合性の両者を持つ。 ●Ⅱ-Ⅵ化合物の例としてZn-Sを考える。Zn(4s2)とS(3s23p4)のイオン結合ではZn2+(3s23p63d10)S2-(3s23p6)の電子配置であり、共有結合ではsp3結合を考えZn2-(4s4p3)S2+(3s3p3)である。ポーリングの電気陰性度を用いイオン性を計算すると17~18%のイオン性が予測される。一方、誘電性結晶の結合のイオン性度が半経験的理論により得られ、その値は62%である(表5.6)。 閃亜鉛鉱:蛍光体 ●II-VI化合物のCd-Teは薄膜太陽電池、巨大磁気抵抗(GMR:強磁性体と金属を交互に張り合わせたデバイスで、強磁性体の揃ったスピンと同一方向に金属内に電流が流れるときは電気抵抗が小さく、反対方向に流れるときは大きな電気抵抗となることを利用している)に利用される。

●Ⅲ-Ⅴ化合物の例としてIn-Sbを考える。In(5s25p)とSb(5s25p3)のイオン結合では、In3+とSb3–(5s25p6)の電子配置であり、共有結合ではsp3結合を考えIn(5s5p3)とSb+(5s5p3)である。ポーリングの電気陰性度を用いイオン性を計算すると1~3%のイオン性が予測される。表5.6によるとイオン性は32%である。 ●III-V化合物のGa-Asは発光ダイオード、固体レーザー、光電池、携帯電話に、Ga-N(g = 3.39 eV)は高輝度青色発光ダイオードに用いられている。 ●重要課題可視光を用いた太陽電池、可視光の全領域での光伝導体素子には、可視光の全領域(1.05~3.25 eV)か少し小さめのバンドギャップを必要とする。

表5.6 2原子結晶の結合のイオン性とエネルギーギャップg (eV) II-VI  g III-V ZnO 0.79 3.2 MgO 0.84 7.83 InP 0.42 1.35 ZnS 0.62 3.6 MgS 4.5 InAs 0.36 0.35 ZnSe 0.63 2.7 MgSe 4.05 InSb 0.32 0.18 ZnTe 0.61 2.35 GaP 0.38 2.26 CdO 2.32 GaAs 0.31 1.43 CdS 0.69 2.42 GaSb 0.26 0.78 CdSe 0.70 1.74 CdTe 0.67 1.45

5.6)15族元素(窒素族元素)N, P, As, Sb, Bi 非金属元素はN, P、 ●窒素N(nitrogen, N2) 空気中の78%, 沸点77K 反応性低い(NN), 寒剤(食品、急速冷凍、受精卵保存) ●生物にとっては非常に重要でアミノ酸やタンパク質、核酸塩基など。これらを分解すると生体に有害なNH3となるが、動物(特に哺乳類)は窒素を無害で水溶性の尿素として代謝する。しかし、貯蔵はできないためそのほとんどは尿として体外に排泄する。そのため、アミノ酸合成に必要な窒素は再利用ができず、持続的に摂取する必要がある。 ●多くの生物は大気中の窒素分子を利用できず、微生物などが窒素固定によって作り出す窒素化合物を摂取することで体内に窒素原子を取り込んでいる。 ●重要課題:N2の容易な解離法の開発、NOxの無害化          

非共有(孤立)電子対 N 不対電子 2p sp3 2s 1s 1s NH3

●リンP (phosphorus,地殻濃度1000ppm):リンの用途 ヒドラジン NOx 笑気 価数 +5 +4 +3 +2 +1 -1 -2 -3 化合物 N2O5 NO2 N2O4 N2O3 NO N2O N2 NH2OH N2H4 NH3 ●リンP (phosphorus,地殻濃度1000ppm):リンの用途 の7割は肥料。最も一般的な白リン(毒性強い、P4型正四面体、透明なロウ状固体で発火しやすい)を空気のない状態で300℃に加熱すると赤リン(毒性弱い、マッチの摩擦面)となる。白リンを燃やすと五酸化二リン(P2O5)を与える。 ●P2O5は極めて優れた乾燥・脱水剤である。P2O5を水中で加熱するとオルトリン酸(H3PO4)となり、H3PO4は金属表面に金属腐食を守る不溶性薄膜を形成するので、自動車車体塗装前の車体のリン酸処理に用いられる。

●リン酸のCa塩のCa(H2PO4)2は水に可溶で肥料やガラスの製造原料である。さらにCaHPO4となると、不溶性で歯磨き粉の研磨剤となる。Ca5(PO4)3(OH)はハイドロキシアパタイトと言い、脊椎動物の歯や骨を校正する主成分で、虫歯の治療や人工骨など外科医療などに利用される。 ●生体内では、遺伝情報の要である DNA や RNA のポリリン酸エステル鎖として存在するほか、生体エネルギー代謝に欠かせない ATP(次頁)、細胞膜の主要な構成要素であるリン脂質など、重要な働きを担う化合物中に存在している。また、脊椎動物ではリン酸カルシウムが骨格の主要構成要素としての役割も持つ。このため、あらゆる生物にとっての必須元素であり、農業においてはリン酸が、カリウム・窒素などとともに肥料の主要成分である。

アデノシン三リン酸とは生物体で用いられるエネルギー保存および利用に関与するヌクレオチドであり、すべての真核生物がこれを直接利用する。生物体内の存在量や物質代謝における重要性から「生体のエネルギー通貨」とされている。略記として ATP (Adenosine Triphosphate) が一般的に用いられる ATP

 ●無機As(arsenic)は有毒(しかし、形状依存が大きく三酸化二ヒ素は毒性をもちながら急性骨髄性白血病治療薬である。有機ヒ素化合物は毒性が弱くサルバルサンは薬として、かって使われた)。ファンデルワールス半径や電気陰性度等さまざまな点でリンに似た物理化学的性質を示し、それが生物への毒性の由来になっている。 ●Sb(antimony)は非常に毒性が強い。俗説に「ある修道会で豚にアンチモンを与えたら(駆虫薬として働き)豚は丸々と太った。そこで栄養失調の修道士に与えたところ、太るどころではなく死んでしまった。それゆえアンチ・モンク(修道士に抗する)という名が与えられた」というものである。 ●AS, Sb, Biは半金属である。

●Bi(bismuth)常温で安定に存在し、凝固すると体積が増加する。ビスマス化合物には医薬品の材料となるものがあり、他の窒素族元素(As, Sb)の化合物に毒性が強いものが多いことと対照的である。医薬品(整腸剤)の原料として、日本薬局方に収載されている。単体のBiと他の金属(Cd、Sn、Pb、Inなど)との合金は、それぞれの金属単体より低い融点となる。このため、鉛フリーはんだに添加されたり、あるいはより低温で溶けるウッド合金のような低融点合金に使われる。 ●Biは大きな熱電効果を示す物質であり、特にTeとの合金は熱電変換素子として実用化されている。化合物としては、銅酸化物高温超伝導体の1成分としても用いられ、Biを含む超伝導物質はしばしばビスマス系高温超伝導物質または単にビスマス系と呼ばれる。 ●高比重・低融点で比較的柔らかく無害である事から鉛の代替として注目され、散弾や釣り用の錘、鉛・Cdの代替として黄銅への添加剤、ガラスの材料などとして用いられている

5.7) 13族元素 ホウ素(B boron) ●単体は黒みがかっていて、非常に硬く、単体元素としてはダイヤモンドに次ぐ硬度9.3を示す。半導体の性質を持つ。 ケイ素にドープしp型半導体。 ●身近な用途で使用される場合は、ホウ砂やホウ酸の状態であることが多い。 ホウ酸(boric acid)はホウ素のオキソ酸であり、殺菌剤、殺虫剤(ホウ酸団子としてゴキブリ駆除) 、医薬品(眼科領域)、難燃剤、原子力発電におけるウランの核分裂反応の制御、そして他の化合物の合成に使われる弱酸の無機化合物である。化学式はH3BO3、時にB(OH)3とも書く。常温常圧では無色の結晶または白色粉末で、水溶液では弱い酸性を示す。

ホウ砂:塩湖が乾燥した跡地で産出することが多い。古くはチベットの干湖からヨーロッパへもたらされ、特殊ガラスやエナメル塗料の原料だった。19世紀から20世紀にかけてはアメリカ大陸西部においてデスヴァレーなどの産出地が相次いで発見された。今日では、アメリカ・ロシア・トルコ・アルゼンチンのほか、イタリアのトスカーナ地方やドイツなどでも産出される。日本ではほとんど産出されない。 ホウ砂の利用 陶芸用の釉薬溶解剤、ガラスに混ぜると熱衝撃や化学的浸食に強いホウケイ酸ガラス(ビーカー、フラスコなど)となる、耐熱ガラスなどの原料、水溶液は弱アルカリ性となり、洗浄作用・消毒作用があるため洗剤や防腐剤、目の洗浄・消毒、銀塩写真の現像液のアルカリ調整剤、ホウ素がポリマーを架橋しゲル化する反応を利用し理科の実験でのスライム、植物の必須微量要素であるホウ素の肥料。

ホウ砂の利用(続) 原子炉の放射線遮蔽材として。原子力船むつが遮蔽リングの設計ミスにより放射線漏れを起こしたとき、応急処置としてホウ素を含むホウ砂を混ぜ込んだ米を貼り付けることで漏れを防いだ。 アリ、ゴキブリ、ノミなどの昆虫の駆除に(日本ではゴキブリにはホウ酸のほうがよく使われている)。

ボラン: モノボラン(BH3)、ジボラン(B2H6) モノボランは不安定でジボランとして存在 空軌道 不対電子 B 2p sp3 2s 1s 1s BH3

窒化ホウ素(BN)xは、ジボランB2H6と過剰のアンモニアの高温反応で得られる無機ベンゼンと言われるボラゾールB3N3H6を縮合するか、ホウ砂と塩化アンモニウムを過熱すると得られる白色脂肪状難溶性の粉末で、常圧では3000Cで昇華し、加圧下では3000Cで融解する。六方晶系グラファイト構造に似て(h-BNと云われる)、面内でのB-N間距離は1.45 Åで2重結合性がある(B-N単結合は1.60 Å)。面間は3.30 Åである。結合にはB+••Nのイオン結合性を持つ。良い絶縁体で耐酸化性に優れ空気中1000℃の使用に耐えるので良質のルツボとなる。他に、立方晶系閃亜鉛鉱型構造のc-BN(ボラゾン)、六方晶系ウルツ鉱型構造のw-BNがあり、c-BNはダイヤモンドに次ぐ硬さをもち研磨剤や工具に使用される。 ボラゾールと窒化ホウ素h-BN

5.8) 16族元素(酸素族元素、カルコゲン元素) O, Sが非金属元素 5.8) 16族元素(酸素族元素、カルコゲン元素)     O, Sが非金属元素 ●酸素O(oxygen, O2) 空気中の21%、沸点90K, 融点56K, 100万気圧を超えた高圧下では金属光沢を持ち、125万気圧、0.6 K では超伝導金属となる。 ●オゾン (ozone) は、3つの酸素原子からなる酸素の同素体である。分子式は O3 で、折れ線型の構造を持つ。腐食性が高く、生臭く特徴的な刺激臭を持つ有毒物質である。大気中にもごく低い濃度で存在している ●オゾンの破壊 CF3Cl  →  CF3・ + Cl・            O3 +Cl・ → O2 + ClO・               2ClO・ → O2 + 2Cl・ 紫外線  連鎖反応 

● 2O(1s22s22p4)→O2 基底状態の三重項(triplet)状態では不対電子を持つため常磁性体である。また活性酸素の一種で反磁性である励起状態の一重項(singlet)酸素も存在する。 一重項酸素(2種) 三重項酸素

活性酸素(reactive oxygen species)は、大気中に含まれる酸素分子がより反応性の高い化合物に変化したものの総称。一般的にスーパーオキシドアニオンラジカル(通称スーパーオキシドO2-)、ヒドロキシルラジカル(OH-)、過酸化水素(H2O2)、一重項酸素の4種類とされる。活性酸素は、酸素分子が不対電子を捕獲することによってスーパーオキシド、ヒドロキシルラジカル、過酸化水素、という順に生成する。スーパーオキシドは酸素分子から生成される最初の還元体であり、他の活性酸素の前駆体であり、生体にとって重要な役割を持つ一酸化窒素と反応してその作用を消滅させる。 活性酸素による多くの生体損傷はヒドロキシルラジカルによるものとされている。

●硫黄S(sulfur, sulphur S8) 30 種以上の同素体  H2O(液体)→H2S(気体猛毒)→H2Se(気体猛毒)→H2Te 硫酸(化学工業上、最も重要な酸), 黒色火薬の原料、合成繊維、医薬品や農薬、また抜染剤などの重要な原料、さまざまな分野で硫化物や各種の化合物が構成されている。 農家における干し柿、干しイチジクなどの漂白剤には、硫黄を燃やして得る二酸化硫黄(SO2)が用いられる(燻蒸して行われる)。 ゴムに数%の硫黄を加えて加熱すると(架橋により)弾性が増し、さらに添加量を増やすと硬さを増して行き、最終的にはエボナイトとなる。 また、金属の硫化鉱物は半導体の性質を示すものが多い。

●セレンSe(selenium) 金属セレンは、半導体性、光伝導性がある。これを利用してコピー機の感光ドラムに用いられる。またセレンは整流器(セレン整流器)に使われたり、光起電効果によりカメラの露出計やガラスの着色剤、脱色剤に使われる。毒性がある為、現在は使用が制限され多くの用途において代替物質が使用されている。 セレンは自然界に広く存在し、微量レベルであれば人体にとって必須元素であり、抗酸化作用(抗酸化酵素の合成に必要)があるが、必要レベルの倍程度以上で毒性があり摂取し過ぎると危険であり、水質汚濁、土壌汚染に係る環境基準指定項目となっている。これはセレンの性質が硫黄にきわめてよく似るため、高濃度のセレン中では含硫化合物中の硫黄原子が無作為にセレンに置換され、その機能を阻害されるためである。

●テルルTe(tellurium) 金属テルルと無定形テルルがあり、金属テルルは銀白色の結晶(半金属)で、六方晶構造である。にんにく臭がある。化学的性質はセレンや硫黄に似ている。燃やすと二酸化テルルになる。天然に元素鉱物として単体で存在することがある。テルル単体及びその化合物には毒性があることが知られている。また、これらが体内に取り込まれると、代謝されることによってジメチルテルリドになり、呼気がニンニクに似た悪臭(テルル呼気)を帯びるようになる。 ●ポロニウムPo(polonium) 銀白色の金属(半金属), 放射性(a線) リトベンコ、アラファト暗殺?

白燐を高圧下(1.2 GPa)で加熱(200C)することにより、不活性な鉄灰色で金属光沢のある無臭の固体の黒燐がブリッジマン(1946年ノーベル物理学賞)により得られた(1914年)。P-P間距離 = 2.224 Å, 2.242 Åで、燐原子は凸凹の2次元平面をac面内に形成し、それらがb軸方向にA層とB層のくりかえしで積層する。層間距離 = 3.68 Åで、A層とB層はa軸方向にずれている。黒燐は熱および電気(RT~1 Scm―1, g = 0.35 eV)の良導体で、高圧下で超伝導を示す(Tc~6 K, 16 GPa)。常圧で4.2 Kに冷却した後に加圧するとTcは上昇する(Tc= 10.7 K, 29 GPa)。これは2次元無機高分子超伝導体の例である。 黒燐の結晶構造

● ホスファゼンは、窒素と燐の交互に並んだ環状および鎖状の化合物群で5.29式で得られる。 PCl5 + NH4Cl (NPCl2)n (環状)         (5.29) Cl4P(NPCl2)nNPCl3(鎖状)               環状のホスファゼン1は平面で、2は非平面(いす型か舟型)で、P-N結合はほぼ同じ長さ(1.56~1.59 Å)である。この結合長は通常の単結合(1.77 Å)より短くp(N原子)d(P原子)結合を示唆する。この結合は分子全体に非局在化して擬芳香族性を与える。nの大きな鎖状化合物3はゴムの様な伸縮性があり、無機ゴムといわれる。燐原子上の塩素は反応性に富み、アルキル基、アリール基などと置換することができる。