信用貨幣の創造と銀行 中央銀行の発展 金本位制の変質

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1章 国際決済と外国為替 1 国民通貨と決済システム 貨幣の発生とその機能 / 商品貨幣と名目貨幣 / 現金通貨と預金通貨 / 銀行決済システムと中央銀行 2 国際決済と外国為替 内国為替と外国為 替 / 並為替と逆為替 / 信用状付輸出手形 3 国際決済と銀行 外国為替取引と銀行間決.
金利、金融政策及び資金循環 金利の概念 金利体系 日本銀行の政策手段 資金循環. 金利の概念 金利とは:資金の貸借取引における資 金の価格である。 金利の機能:資金の配分や景気の調整。
1 IV 長期における貨幣と価格. 第11章 貨幣システム 物々交換 欲望の二重の一致 1.貨幣の意味 貨幣の機能 – 交換手段 – 計算単位 – 価値貯蔵手段 富 流動性 貨幣の種類 – 商品貨幣 金本位制 – 不換紙幣.
1 第 6 週 § 2(決済システムの安定化政策)続 き 前回の講義で学んだこと: ◆ だれが通貨をどのように供給するか ◆ 振り込み、振り替えのしくみ ◆ 日銀当座預金の役割とは ◆ 銀行の行う信用創造とは ◆ 銀行取り付けの可能性とその実例 (テキスト対応範囲: p.23 ~ 31 )
1 国際金融市場 伝統的金融市場 オフショア市場 ユーロ市場 デリバティブ市場. 2 国際金融市場の意義 資金過剰部門から資金不足部門への, 国際的な資金の調達や運用が行われる 場 個別経済次元 ①再生産に関わる資本 の節約や有給貨幣資本の動員 ②ヘッ ジ,投機,裁定のための取引 ③手数 料稼ぎ 国民経済次元.
貨幣の役割と貨幣市場 経済学B 第 9 回 畑農鋭矢 1. 貨幣の役割 価値尺度 財の価値を表す共通の尺度 交換手段 物々交換⇒欲望の二重の一致 貨幣によって交換が容易に 価値の保蔵手段 安全資産としての保蔵手段.
金融概論(小川担当分) 貨幣供給. 金融概論(小川担当分) ハイパワードマネーと マネーストック ハイパワードマネー or マネタリーベース or ベースマ ネー =中央銀行が供給する現金通貨。 ハイパワードマネー( H )は、公衆保有の現金通貨 ( C )と銀行保有の支払準備(
短期均衡 (2) IS-LM モデル 財市場 IS 曲線 – 財市場の均衡 – 政府支出の増加,減税 貨幣市場 LM 曲線 – 貨幣需要,貨幣市場の均衡 – マネーサプライの増加 IS-LM モデル – 財政政策の効果,金融政策の効果 – 流動性の罠 – 実質利子率と名目利子率の区別 貨幣供給.
QE 出口戦略 利上げ先行型. 前提 主張 1 超過準備対策として利上げは有効である 主張 主張 1 超過準備対策として利上げは有効である 主張 2 保有資産の売却は経済に悪影響を与える 主張 3 利上げは経済の安定に寄与する 以上三点により、 QE 出口戦略利上げ先行 型を主張します.
第 6 章 金融政策と金融規制・ 金融監視政策の関係 07 BA 035 W 板津昌宏. 多くの中央銀行の金融政策の目的は 中央銀行はどの様な金融政策を行うべきか? 物価の安定を通じた経済の安定物価と雇用の安定 資産価格の安定を目的に掲げる国はな い.
1 経済学(第 9 週) 第 3 章 貨幣と金融取引 [1-2] 前回のキーワード: ◆ 資金過不足の発生 ◆ 資金と資産 ◆ 貨幣とは何か ・ 価値基準財(ニュメレール) ・ 決済手段,一般受領性 ・ 流動性と収益性 ・ 通貨の区分( M 1
1.欧州. 特許会社  特許会社とは …. 経営権が国に保留されている事業の、 一部または全部の経営権を、法律などに より付与された会社。  世界で最初の特許会社 モスクワ会 社.
第14章 銀行業と信用創造.
マクロ経済学 I 第4章 久松佳彰.
(第4週)第1章(3) §1~§2(p.5~17) キーワードの確認 ■ 決済手段 ■ 管理通貨制度
15 パクス・アメリカーナの時代 1 アメリカの戦後構想とIMF体制 2 IMF体制の成立と発展,ドル危機 3 固定相場制の崩壊と変動相場制
(第7週)第2章(3) 前回のおさらいとキーワード: ■ システミック・リスク ■ セーフティー・ネット ・ 競争制限的規制
貨幣の役割と貨幣市場 経済学B 第11回 畑農鋭矢.
ユーロ危機の中でケインズとハイエクから学ぶ
第16章 総需要に対する 金融・財政政策の影響 1.総需要曲線は三つの理由によって右下がりである 資産効果 利子率効果 為替相場効果
藤女子大学人間生活学部 内田博 現代資本主義分析
マネーサプライを増やせ! 岩田・伊藤・浜田・若田部・勝間
第3章 実態経済に大きな影響を及ぼす金融面の動向
通貨統合 第5回 国際金融論.
マネーサプライを増やせ! 岩田・伊藤・浜田・若田部・勝間
ECの成立へ マーストリヒト条約の成立 通貨統合
戦時中の高度成長期 高度成長期にはいくつかの制度がある。 一つ目は金融機関の専門化戦中に金融機 関が均質化したのとは著しくことなり、 高度成長期の金融制度は各金融機関ごと の分業主義に沿って組織化された。
『手に取るように金融がわかる本』 p.202~p.223 part1~5
EUにおける通貨同盟(ユーロ) 一橋大学大学院商学研究科 小川英治 2016/5/13 EU入門.
14 パクス・ブリタニカの盛衰 1 国際金本位制とポンド体制 2 両大戦間期の国際通貨体制と通貨ブ ロック 3 戦後IMF体制とポンドの凋落
14章 パクス・ブリタニカの盛衰 1 国際金本位制とポンド体制
世界金融危機と国際通貨体制 一橋大学商学部 小川英治 マクロ金融論2016.
日本における ベイルイン導入の是非 〜否定派〜
第2章 銀行による貨幣の供給 前章の確認: ● マネーストックの区分 ● クレジットカードや電子マネーは貨幣か ● 日銀当座預金とはなにか
第7章 どのように為替レートを 安定化させるのか
固定為替相場制度 vs. 変動為替相場制度 マクロ金融論2010.
金 融 統 計 金融市場の基本概念 金融統計の体系 マネーサプライ統計 金利統計 資金循環分析 証券投資分析.
(景気が良くなり)ハンバーガーの需要が拡大すると
バブルについて  .
経済学(第10週) 第3章 貨幣と金融取引[2-1] 前回の確認とキーワード ■ 貨幣需要と債券需要 ・ 証券の利益を構成する2つの要素
金融の基本Q&A50 Q41~Q43 11ba113x 藤山 遥香.
三、安定成長期(1973年~1986年) 1 高度成長の挫折 2 産業構造の変化 3 円高と貿易摩擦 4 逆輸入と内需拡大.
4 国際通貨 1 国際通貨の基礎理論 2 国際通貨の機能と選択 3 管理通貨制度下の国際通貨 国際金融2002(毛利良一)
国際経済学入門 11 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2014年1月23日
金融の基本Q&A -Q21~Q24-  小瀬村愛子.
手に取るように金融がわかる本 PART6 6-11 09bd139N 小川雄大.
国際経済学入門 10 丹野忠晋 跡見学園女子大学マネジメント学部 2013年12月23日
マクロ経済学 II 第5章 久松佳彰.
通貨統合と最適通貨圏 一橋大学商学部 小川英治 マクロ金融論2016.
最近の中国と通貨に関する動向 08ba231c 松江沙織.
公共政策大学院 鈴木一人 第7回 政治と経済の関係 公共政策大学院 鈴木一人
世界金融危機とアジアの通貨・金融協力 日本国際経済学会関東支部研究会2010年1月9日.
現代資本主義分析 前期の復習 藤女子大学人間生活学部 内田博.
第1章 貨幣とは何か②  §2.貨幣の系譜・歴史 第3回 
V. 開放経済のマクロ経済学.
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V. 開放経済のマクロ経済学.
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貨幣供給・需要 専修大学 経済の世界 作間 逸雄.
元高の原因を追求    九州産業大学 金崎ゼミ 張 雷 徐 雲飛 .
財務サイクルと情報フロー                田宮治雄.
金融論 2回目講義.
お金の仕組み!.
計画と市場の比重 計画>市場 計画=市場 計画<市場
2009年7月 為替相場講演会資料 株式会社三菱東京UFJ銀行/東アジア金融市場部
80年代のアメリカ経済 現代資本主義分析.
現代資本主義分析 フォード主義的蓄積体制の危機 藤女子大学人間生活学部 内田 博.
経済学入門 ミクロ経済学とマクロ経済学 ケインズ経済学と古典派マクロ経済学 経済学の特徴 経済学の基礎概念 部分均衡分析の応用.
IV 長期における貨幣と価格.
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信用貨幣の創造と銀行 中央銀行の発展 金本位制の変質 銀行の発展と金本位制の変質 信用貨幣の創造と銀行 中央銀行の発展 金本位制の変質

商品貨幣から信用貨幣へ 銀行券の発生 銀行業(banking)の発生 金貨の預け先としての金匠(Goldsmith) 金匠手形(Goldsmiths’ note) 銀行業(banking)の発生 金匠銀行家(Goldsmith banker)から銀行へ 金匠手形から銀行券(bank note)へ

銀行券の発生 金  匠 商人B 商人A 金匠手形 金匠手形 金貨 金貨 金貨

金匠手形による支払い 金  匠 商人B 商人A 金匠手形

金匠手形から銀行券へ 銀  行 商人B 商人A 銀行券 銀行券 金貨 金貨 金貨

銀行券による支払い 銀  行 商人B 商人A 銀行券

銀行券入手のための振り込み 銀  行 商人B 商人A 銀行券 金貨 銀行券

貸し出しと部分準備制度 クローク・ルーム・システムからの逸脱 貸し出しの発生 貨幣の増大 金 100 銀行券100 金 10 貸付 90 金 100 銀行券100 金  10 貸付 90 銀行券100

信用創造 信用創造の2つの意味 信用創造の成立要件 事前的な貯蓄なしの貸付の発生 信用貨幣の創造 銀行の債務が信用貨幣へ 貸付の発生 金融システムと決済システムの一体性

銀行預金の振り替え 商人Bの預金口座へ 振り込み 商人Aの預金口座から 引き落とし 銀 行 商人B 商人A 小切手 小切手 小切手

銀行券と銀行預金 共通点と相違点 信用貨幣としての共通点 支払い方法の相違 準備 10 貸付 90 銀行券100 準備 10 貸付 90 準備 10 貸付 90 銀行券100 準備 10 貸付 90 預金100

サウンド・バンキング 銀行の経営の健全性 安全性と収益性のトレード・オフ 取り付け騒ぎ、金融恐慌の発生 決済システムの健全性確保 規制強化と規制緩和の終わりなき循環 取り付け騒ぎ、金融恐慌の発生 決済システムの安全性確保

銀行制度の整備への道のり 経営の不健全な銀行の存在 信頼の出来る銀行の必要性 イングランド銀行の設立 取り付け騒ぎの頻発 法定金利を超える高利の要求 信頼の出来る銀行の必要性 財産の安全な預託先 低利での資金調達の場 イングランド銀行の設立 1694年、ウイリアム3世により設立認可

地金論争 銀行券の兌換停止と銀行制限法 金の値上がり フランス革命(1789)から対仏大同盟へ フランス軍上陸の噂と取り付け騒ぎ(1797) イングランド銀行券の兌換停止(2月27日) 銀行制限法(Bank Restriction Act、5月3日) 金の値上がり 1オンスの金、£4 12s.10.5d. リカードゥ『地金の高い価格』1810年。

地金報告 地金委員会任命(1810年2月19日) 地金論争 『地金報告』(1810) 地金主義者 反地金主義者 貨幣数量説の政策への適用 金の高い価格は銀行券の過剰発行による 解決策として兌換再開が必要 反地金主義者 『地金報告』(1810) 貨幣数量説の政策への適用

通貨論争 通貨主義の台頭 通貨学派の主張 兌換再開(1821.5.1) 金融恐慌(1825、36~39) 発券銀行特別委員会(1840) 銀行券の発行量の保有金量による規制 銀行券の発行の一元化 オーバーストーン、トレンズなど

銀行主義の反論 銀行券管理の必要性の否定 真正手形学説(real bills doctrine) 商業銀行主義 商人の判断は常に正しいか 貨幣は必要があるから出て、必要がなくなれば回収される。 商業銀行主義 真正手形の割引にのみ専念する。 商人の判断は常に正しいか バブルの発生の可能性

銀行の手形割引と銀行券 企 業 商 人 家 計 銀 行 生産要素 銀行券 商品 手形

通貨論争の争点 貨幣量をコントロールする必要はあるか 銀行券はコントロール出来るか 銀行券をコントロールすれば貨幣量のコントロールになるか 貨幣量のコントロールは出来るか 通貨学派 ある できる なる 銀行学派 ない できるが恐慌の起こる可能性がある ならない できない

中央銀行の確立 ピール条例の成立(1844) 通貨学派の一時的な勝利 バジョット『ロンバート街』1873年 イングランド銀行への発券の集中 発券部と銀行部への分離 通貨学派の一時的な勝利 恐慌の続発(1847, 57, 66) バジョット『ロンバート街』1873年 中央銀行の最後の貸し手機能 金融恐慌の終焉

戦間期の金本位制 第1次世界大戦(1914~18) イギリスの戦後の金本位制復帰 金本位制のゲームのルール 戦時における金本位制離脱 『カンリフ委員会報告』(1918、1919) 金本位制の自動調整作用の評価 金融政策の役割の分析 金本位制復帰(1925) 金本位制のゲームのルール

ケインズの金本位制批判 ケインズ『貨幣改革論』1923年 平価切り下げかデフレーションか 為替の安定か、物価の安定か 公定価格(£1=$4.866)と市場価格(£1=$3.20)の乖離  為替の安定か、物価の安定か アメリカの金融政策への従属 金本位制復帰か金本位制放棄か 金は野蛮の遺物

為替の安定と物価の安定 貨 幣 為替レート 物価  金  商 品 (アメリカの金融政策)

金本位制への復帰をめざして ジェノア会議(1922) さまざまな金本位制への復帰 金不足のための対策 1919 アメリカ 金本位制 金為替本位制 国際清算制 さまざまな金本位制への復帰 1919 アメリカ 金本位制 1924 ドイツ 金為替本位制 1925 イギリス 金地金本位制 1928 フランス 金地金本位制 1930 日本 金本位制

さまざまな金本位制 金貨本位制 金流通本位制(純粋・混合) 金貨の流通しないもの 金地金本位制 金為替本位制 金核本位制

アメリカの金融政策 金の不胎化政策(1920年代前半) イギリスの誤算 国内インフレへの懸念 金本位制の国際均衡優先に対する批判 旧平価解禁によるデフレの深刻化

日本の金本位制復帰 新平価解禁か旧平価解禁か 旧平価解禁とデフレ 新平価解禁のためには法律改定が必要 旧平価解禁の場合、制令のみで可能 軍事費抑制のための手段 旧平価解禁とデフレ 金本位制復帰(1930) 大恐慌のさなかの金本位制復帰 不況の深刻化

大恐慌から大不況へ 暗黒の木曜日(1929年10月24日) 金融恐慌と大不況 ドルの切り下げと為替安定資金の設立 株価の大暴落から不況へ 銀行休業日(1936年3月6日) 禁輸出禁止令公布(4月19日)金本位制停止 銀行再開(20日) ドルの切り下げと為替安定資金の設立 40.94%の切り下げ、金1オンス35ドルに

管理通貨制度 金本位制のゲームのルール無視 イギリスの方針転換 金融政策は時刻の国内均衡のために 為替レート維持の必要性 為替安定基金の創設 イギリスの方針転換 『マクミラン報告』1931年。 管理通貨制度の提唱

通貨ブロック ロンドン国際通貨会議(1933年) イギリスのポンドブロック アメリカのドルブロック フランスの金ブロック 合意の不成立とブロック化 イギリスのポンドブロック ロンドンでの資金決済システム アメリカのドルブロック フランスの金ブロック 金本位制維持をめざす欧州各国

為替安定のための国際協調 三国通貨協定(1936) 第2次世界大戦の勃発 アメリカ、イギリス、フランスの3国 相互の安定資金の金への交換の保証 24時間の予告を持って解除可能 24時間金本位制 第2次世界大戦の勃発 協定の自然消滅