ゆとり世代の消費行動 ~ゆとり教育の影響は?~ 名古屋学院大学 経済学部4年 上山ゼミ 朝日 順紀 水野 友裕
目次 1.背景 2.目的 3.研究内容 ①ゆとりとは? ②教育の実態 4.アンケート調査 ①質問内容 ②結果 ③考察・分析 5.まとめ ①ゆとりとは? ②教育の実態 4.アンケート調査 ①質問内容 ②結果 ③考察・分析 5.まとめ 6.参考文献
1.背景
1. 背景 現在の若者に対する世間の目が変化している ↓ インターネット依存 学力低下に対する懸念 コミュニケーションの不足 消費意欲の欠如…など 本当に「ゆとり教育」の影響なのか?
1. 背景 詰め込み教育に対して提唱された教育 2002年度施行、学習指導要領による教育 →「ゆとり世代」の語源 →「ゆとり世代」の語源 ゆとり教育やゆとり世代について賛否両論は あるが、それが全てではない
2.目的
2.目的 ゆとり教育は様々な物事に影響を与えている 経済・学力・仕事・人格形成 etc. ↓ 特に若者の「消費」「貯蓄・投資」「金融リテラシー」に焦点を当てて調査を行う 消費行動や傾向を分析し、その実態を捉え、中学時代の教育内容が現在の消費行動等に影響しているかどうかを明らかにする。
2.目的 ゆとり教育を受けた若者とそれ以外の若者 非ゆとり世代 → 1985~1986年(現在29~30歳) 非ゆとり世代 → 1985~1986年(現在29~30歳) ゆとり世代 → 1991~1992年(現在23~24歳) 脱ゆとり世代 → 1996~1997年(現在18~19歳) それぞれ中学3年間の期間に絞りこれからの研究及びアンケートを進めていく。 特にこの三者の傾向の違いに注目し、どのような変化が見られるのかを研究する。
3.研究内容
3ー① ゆとりとは?
3-① ゆとりとは? 昭和22年3月 学校教育法の制定 学習指導要領の編集・改訂・刊行 ・昭和26年 ・昭和33年 ・昭和43年 昭和22年3月 学校教育法の制定 学習指導要領の編集・改訂・刊行 ・昭和26年 ・昭和33年 ・昭和43年 ・昭和52年 ・平成元年 ・平成10年 ← 「ゆとり」の始まり ・平成20年
3-① ゆとりとは? 「平成10年の改訂」 「21世紀を展望し、我が国の教育について[ゆとり]の中で[生きる力]をはぐくむことを重視すること」を提言した。 平成8年 「幼稚園、小学校、中学校、高等学校、盲学 校、聾学校及び養護学校の教育課程の基準 の改善について」 →平成10年に教育課程審議会から答申を受けた
3-① ゆとりとは? ❶豊かな人間性や社会性、国際社会に生きる日本人としての自覚の育成を重視すること ❷多くの知識を一方的に教え込む教育を転換し、子供達の自ら学び自ら考える力の育成を重視すること ❸ゆとりある教育活動を展開する中で、基礎・基本の確実な定着を図り、個性を活かす教育の充実を図ること ❹各学校が創意工夫し特色ある教育、特色ある学校づくりを進めること
3ー➁ 教育の実態
3-➁ 教育の実態 非ゆとり教育 ゆとり教育 脱ゆとり教育 学校日数 週6日制 週5日制 授業時間数 (3年間) 3,150時間 2,940時間 3,045時間 授業内容 (増加) 5教科 外国語 総合学習 選択教科 保健体育 評価方法 相対評価 絶対評価
3-➁ 教育の実態 ~PISAによる調査~ PISA:経済教育開発機構(OECD) 加盟国の生徒の学習到達度調査 対象:義務教育終了段階の15歳児 分野:数学的リテラシー 科学的リテラシー 読解力 調査サイクル ・2000年に第一回目の調査を実施 以後3年サイクルで調査を継続
3-➁ 教育の実態 ~PISAによる比較~
3-➁ 教育の実態 ~PISAによる比較~
3-➁ 教育の実態 ~PISAによる比較~
グラフから読み取れること どの分野においても日本は2006年(ゆとり世代)の成績が悪かった ゆとり教育を開始して以降、右肩下がり ゆとり教育を廃止してから右肩上がり 他国の成績が日本に影響することは 全く無いとは言えないが少ないと思われる ゆとり世代の学力低下が見てとれる
4.アンケート調査
調査の概要 インテージweb調査「若者の消費・貯蓄行動と金融知識」から本研究の必要な年齢層(18・19・23・24・29・30歳)のサンプルを抽出して使用した。 調査期間:2015年10月13日~16日 調査方法:調査委託会社インテージ登録モニターによるネット調査 サンプル数:1352 ※サンプル数の欠損値は0
回答者の属性 分類 非ゆとり世代 ゆとり世代 脱ゆとり世代 対象年齢 29・30歳 23・24歳 18・19歳 サンプル数 459 453 440 男性比率 227人 (約49.5%) 222人 (約49%) 217人 (約49.3%) 三大都市圏在住比率 245人 (約53.3%) 249人 (約55%) 237人 (53.8%) ※サンプル数の欠損値は0
回答者の属性(つづき) 分類 非ゆとり世代 ゆとり世代 脱ゆとり世代 高校生 0人 231人:52.5% 大学生 5人:1.1% 122人:26.9% 188人:42.7% その他 (正規雇用) 454人:98.9% (203人) 331人:73.1% (132人) 21人:4.8% ※サンプル数の欠損値は0
回帰分析 影響される変数(被説明変数)にどのような変数(説明変数)が影響を与えるのかという因果関係を検証する分析方法 (最小二乗法を用いて分析する)
アンケート質問① 今10万円の臨時収入があったとします。 あなたは何に使いますか?(いくつでも) 回答選択肢 1.貯蓄(預貯金) あなたは何に使いますか?(いくつでも) 回答選択肢 1.貯蓄(預貯金) 7.国内旅行 2.有価証券に投資 8.海外旅行 3.保険に加入 9.キャリアアップ 4.借入返済 10.趣味・娯楽(旅行除く) 5.生活費 11.その他 6.高額商品購入
アンケート質問①
注)***は1%水準、**は5%水準、*は10%水準で有意であること 分析結果(回帰分析) 被説明変数:投資選択の有無(選択=1) 説明変数 係数 / (p-値) 定数項 -3.190 / (0.36) 非ゆとりダミー(29・30歳) 3.159 / (0.13) ゆとりダミー(23・24歳) 2.247* / (0.051) 年齢 -0.137 / (0.45) 注)***は1%水準、**は5%水準、*は10%水準で有意であること
注)***は1%水準、**は5%水準、*は10%水準で有意であること 分析結果(つづき) 被説明変数:投資選択の有無(選択=1) 説明変数 係数 / (p-値) 男性ダミー 1.223*** / (0.00) 都市ダミー -0.135 / (0.60) 大学生ダミー 0.310 / (0.54) 高校生ダミー 1.125 / (0.25) 正規雇用者ダミー 1.325*** / (0.00) 注)***は1%水準、**は5%水準、*は10%水準で有意であること
アンケート質問② 回答選択肢 0~100%(10%刻み)で一つ選択 今100万円の臨時収入があったとします。 100万円のうち大体何%貯蓄しますか? 回答選択肢 0~100%(10%刻み)で一つ選択
アンケート質問②
分析結果(線形回帰分析) 被説明変数:希望貯蓄率(0~100%:0~10%刻み) 説明変数 係数 / (p-値) 定数項 67.315*** / (0.00) 非ゆとりダミー(29・30歳) 0.680 / (0.95) ゆとりダミー(23・24歳) -3.366 / (0.53) 年齢 0.036 / (0.97) 注)***は1%水準、**は5%水準、*は10%水準で有意であること
分析結果(つづき) 被説明変数:希望貯蓄率(0~100%:0~10%刻み) 説明変数 係数 / (p-値) 男性ダミー -4.295*** / (0.00) 都市ダミー -1.116 / (0.41) 大学生ダミー 3.392 / (0.18) 高校生ダミー -0.614 / (0.86) 正規雇用者ダミー -0.418 / (0.82) 注)***は1%水準、**は5%水準、*は10%水準で有意であること
アンケート質問③ あなたの金融(金融全般・証券投資・保険等)に 関する知識はどの程度お持ちだとお考えですか? 回答選択肢 関する知識はどの程度お持ちだとお考えですか? 回答選択肢 1.平均よりもかなり劣る 2.平均よりも少し劣る 3.平均的 4.平均よりも詳しい 5.平均よりもかなり詳しい 6.分からない
アンケート質問③
注)***は1%水準、**は5%水準、*は10%水準で有意であること 分析結果(線形回帰分析) 被説明変数:金融知識自己評価 説明変数 係数 / (p-値) 定数項 1.642* / (0.54) 非ゆとりダミー(29・30歳) 0.100 / (0.84) ゆとりダミー(23・24歳) 0.127 / (0.59) 年齢 0.005 / (0.92) 注)***は1%水準、**は5%水準、*は10%水準で有意であること
※ 実際の金融知識の水準も自己評価と大きく変わらなかった 分析結果(つづき) 被説明変数:金融知識自己評価 説明変数 係数 / (p-値) 男性ダミー 0.218*** / (0.00) 都市ダミー -0.034 / (0.57) 大学生ダミー 0.188* / (0.09) 高校生ダミー 0.367** / (0.02) 正規雇用者ダミー 0.511*** / (0.00) ※ 実際の金融知識の水準も自己評価と大きく変わらなかった
説明変数 係数 / (p-値) 自己評価 実際水準 定数項 1.642* / (0.54) 0.221 / (0.67) 非ゆとりダミー(29・30歳) 0.100 / (0.84) 0.351 / (0.24) ゆとりダミー(23・24歳) 0.127 / (0.59) 0.165 / (0.25) 年齢 0.005 / (0.92) -0.010 / (0.72) 男性ダミー 0.218*** / (0.00) 0.215*** / (0.00) 都市ダミー -0.034 / (0.57) 0.055 / (0.13) 大学生ダミー 0.188* / (0.09) 0.274*** / (0.00) 高校生ダミー 0.367** / (0.02) 0.184* / (0.05) 正規雇用者ダミー 0.511*** / (0.00) 0.233*** / (0.00)
回帰分析から読み取れること 投資 ゆとり教育の影響あり →貯蓄は当然として将来を見越して投資する? 貯蓄 ゆとり教育の影響なし →日本経済の停滞を目の当たりにしているため? 金融リテラシー →中学3年間で直接影響しないのではないか?
5.参考文献 文部科学省 「学習指導要領改訂の過程」より 文部科学省ホームページ:国際学力調査 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/idea/__icsFiles/afieldfile/2011/03/30/1304372_001.pdf 文部科学省ホームページ:国際学力調査 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/gakuryoku-chousa/sonota/detail/1344310.htm 京都大学大学院教育研究科:韓国のPISA調査分析結果 http://www.educ.kyoto-u.ac.jp/collabo/sys/wp-content/uploads/2011/06/3